系譜
- 父はラエルテス、母はアンティクレイア。
- エウリピデス作「アウリスのイピゲネイア」では父はシシュポスとされる。
- 妻はペネロペ。子はテレマコス、ポリポルテス。
- 妻はカリュプソ。子はラティノス。
- 妻はキルケ。子はテレゴノス。
- 妻はカリディケ。子はポリュポイテス。
- 妻はトアスの娘。子はレオントポノス。
解説
オデュッセイアでのエピソード
- 流浪のオデュッセウスを故郷イタケに帰国させることが神々の集会で決まった。(第1歌)
- 筏を作り、オギュギア島を発った。ポセイドンが大波を送って筏をバラバラに砕くが、彼はなんとか陸を発見し上陸した。(第5歌)
- ナウシカアに助けられ、町まで案内された。(第6歌)
- アルキノオスの屋敷で助けを求めた。(第7歌)
- 競技会の円盤投げで見事な腕を示した。自分の冒険を語り始めた。(第8歌)
- イスマロスの町を攻めたこと、ロトパゴイ族の国に行ったこと、キュクロプス族の国で囚われたこと、などを話した。(第9歌)
- アイオロスの島に行ったこと、ライストリュゴネス族の国に行ったこと、女神キルケの島で一年を過ごしたこと、などを話した。(第10歌)
- 冥府に行き、テイレシアスの予言を聴いたことなどを話した(第11歌)
- セイレンの海を通ったこと、怪物スキュラとカリュブディスのいる岩を抜けたこと、トリナキエの島に行ったこと、女神カリュプソの住む島へ着いたこと、などを話した。(第12歌)
- パイエケス人の国を発ち、無事イタケの島へ着いた。(第13歌)
- 乞食姿で豚飼エウマイオスを訪ね、親切なもてなしを受けた。(第14歌)
- 豚飼と食事をして語り合う。(第15歌)
- テレマコスと父子の再会を果たした。(第16歌)
- 広間で食物を乞うて求婚者の間を回った。(第17歌)
- 乞食のイロスと闘った。(第18歌)
- 乞食姿でペネロペと対面する。老女エウリュクレイアは足を洗う時、古い傷痕を見て、彼の正体に気付く。(第19歌)
- 屋敷で求婚者たちから挑発や罵倒を受ける。(第20歌)
- 弓の腕競べに名乗り出て、弓を試みて成功する。(第21歌)
- 求婚者を全員誅殺した後、不忠の山羊飼や女中を処刑する。(第22歌)
- ペネロペと本当の再会を果たす。(第23歌)
- 農園で父ラエルテスと再会を果たす。(第24歌)
エピソード
トロイア戦争以前
テュンダレオスに助言する テュンダレオスの娘ヘレネが婚期となった時、多数のギリシャの王族たちがスパルタにやってきて、彼女に求婚した。オデュッセウスもその一人だった。テュンダレオスは誰か一人を選ぶことで、彼らが争いになるのを怖れた。オデュッセウスは、もしペネロペとの結婚をテュンダレオスが支援してくれるなら、この問題を円満に解決すると約束した。テュンダレオスはすぐに同意した。オデュッセウスは、ヘレネの夫を決める前に、ヘレネの夫となった者が危害を受けたらその者を助けることを、求婚者全員に誓わせるよう助言した。この計略はうまくいき、ヘレネはメネラオスを選んで無事結婚した。オデュッセウスもペネロペを娶って妻にすることができた。
トロイア戦争
トロイア戦争に呼ばれる 数年後、ヘレネがトロイアの王子パリスに誘拐された時、メネラオスは上述の宣誓によって求婚者たちに妻を取り戻す協力を求めた。こうしてトロイア戦争は起こった。オデュッセウスは戦争に行ったら長く故郷に戻れないことを神官から予言されており、狂気を装って戦争参加を避けようとした。彼は鍬にロバと牛をつないで曳かせて(歩幅が違うので全然進まない)、畑には塩をまいた。アガメムノンの命令で召集に来ていたパラメデスは彼の狂気を見破ろうとして、彼の幼い息子テレマコスをすきの前に置いた。オデュッセウスは鍬の向きを変えてこれを避けたので、彼の狂気は偽りだと見破られた。オデュッセウスは戦争の間パラメデスを恨んだ。
アキレウスを呼びにいく オデュッセウスは、スキュロス島に女装して隠れていたアキレウスを見破って戦争に参加させた。彼はそのためにトランペットの音を使った。女なら反応しないその音にアキレウスは反応してしまったのだった。
パラメデスをはめる オデュッセウスはパラメデスに謀られた事を決して忘れず、トロイアにいる時に彼が軍の人々から石で打ち殺されるよう謀った。その策略とはこうであった。一人のトロイア人が捕虜となった時、オデュッセウスはその捕虜にプリアモス王からパラメデスにあてて書かれたように見える裏切りの手紙を書かせた。そしてパラメデスの兵舎に金を埋め、陣営にその手紙を落としておいた。目論見通り、手紙は拾って読まれ、金も発見されると、アガメムノンはパラメデスを裏切り者として石打ちの刑とした。
- パラメデスが釣りをしている最中に、オデュッセウスとディオメデスによって溺死させられたという説もある。
使節の役をつとめる オデュッセウスはヘレネと財産を平和的に取り戻す要請のためにトロイアへ赴いた外交使節団の一人であった。この使節は失敗に終わった。トロイア人たちは集会を開いた結果、何ものも引き渡すことを拒んだだけでなく、使節団を殺すと脅したが、アンテノルがとりなしたおかげで彼らは命が助かった。また戦争中、オデュッセウスはアキレウスに戦場へ戻るように要請する使いの一人だった。怒りをおさめるよう、アキレウスの恋人ブリュセイスを含む様々な贈物をアガメムノンに代わって約束したが、この使いもまた失敗に終わった。
ヘラクレスの弓と矢を取ってくる アキレウスとヘクトルが死んだ後、トロイアはまだ陥落してなかったが、トロイア攻略に関する新たな神託があり、予言者カルカスはアカイア人たちに、ヘラクレスの弓と矢がなければ彼らが勝利することはないと告げた。予言に従って、オデュッセウスとディオメデス(一説にはネオプトレモス)はピロクテテスが置きざりにされたレムノス島へ行き、策略によって彼の持っていた弓を得て、彼にトロイアへ一緒に戻るよう説得した。
ヘレノスを捕らえる トロイアの町が依然としておちなかったので、カルカスは新たな予言を得て、トロイア人にヘレノスという予言者がおり、彼こそがトロイアを守護する神託を知るただ一人の者だと言った。オデュッセウスがヘレノスを捕らえて、陣営に連れて行き、アカイア人たちは神託を聞きだした。その神託に従って、オデュッセウスはネオプトレモスとトロイアへ赴き、パラディウムを盗み出した。
アイアスと争う アキレウスが死んだ後、彼の武具は最も勇敢だったものに賞として贈られることになり、アイアスとオデュッセウスが争ったが、判定によりオデュッセウスが勝利した。アイアスは気がおさまらず軍勢を率いて攻撃しようとしたが、アテナが彼の気を狂わせたため、彼は牛と牛飼いをアカイア人と思い込んで虐殺した。後に彼はそれに気づいて自ら命を絶った。
トロイの木馬を考案する 力攻めではトロイアは陥落しなかったが、オデュッセウスがトロイの木馬の計略を思いついた。戦士たちはこの危険な道具の中に入り(オデュッセウスもその一人だった)、町に侵入すると、残りの軍勢のために門を開いた。
トロイア戦争後の放浪
キコネス族の国へ行く 戦争が終わり、オデュッセウスは帰国の途についたが、10年間さまようことになった。彼は最初にトラキアにあるキコネス族の国へ行き、イスマロスの町を略奪した。マリオネイアを支配するマロンというアポロンの神官以外、誰も見逃さなかった。
ロトパゴイ族の国に行く オデュッセウスはロトパゴイ族の国に行った。ロートスは甘い果実で、それを食べた者は故国への帰還のことも何もかも忘れてしまうのだった。オデュッセウスは部下たちを無理やり連れ帰って出発した。
[[キュクロプス]]族の国に行く キュクロプス族の国に行くと、彼と部下たちはキュクロプスのポリュペモスに捕われた。ポリュペモスは部下数名を食べてしまった。オデュッセウスは彼に酒を与えて眠らせておいて、目をつぶした。ポリュペモスは仲間に助けを求めたが、オデュッセウスが「誰もおらぬ」と名乗っておいたので、仲間に犯人を伝えられなかった。オデュッセウスはこうして逃げることが出来たが、ポセイドンの怒りを買ってしまった。
[[アイオロス]]の島へ行く 風神アイオロスの住むアイオリア島へ行った。彼はオデュッセウスを歓待し、出航するときには悪い風を封じた袋を彼に与えてやった。イタカの間近まで進んだ時、オデュッセウスが眠ったすきに、部下たちは袋を開けてしまった。逆風が放たれ、船はアイオリア島へ吹き戻されてしまった。再びアイオロスに会ったが、今度は冷たく追い返されてしまった。
[[ライストリュゴネス]]族の国へ行く ライストリュゴネス族の国へ行った。他の船は湾の中に停めたが、オデュッセウスだけは船を用心深く湾の端に停めた。部下3名を調査に送り出した。彼らはその国の王アンティパテスの屋敷を訪ねたが、そこで一人は捕まって食べられてしまった。他の二人は船へ逃げ帰ってきたが、大勢のライストリュゴネス人たちが襲ってきた。彼らは巨人族に似た姿をしており、岩を投げつけてきた。他の船は皆破滅し、オデュッセウスの船だけは逃れることが出来た。
[[キルケ]]の島に行く 次にアイアイエの島に着いた。ここは女神キルケが住んでいた。彼女は魔法の薬で部下を豚に変えてしまった。オデュッセウスは魔法を打ち破り、部下たちを人間に戻させた。オデュッセウスはこの島で一年暮らした後、キルケに帰国を懇願した。帰国の前に、彼らは冥府に下ってテイレシアスの予言を聞かねばならない、と彼女はいった。
冥府に行く オデュッセウスは船で冥府に行き、テイレシアスの予言を聞いた。トリナキエ島ではヘリオスの牛に手をだしてはならないこと、イタカで求婚者たちと戦わなければならないことなどをテイレシアスは語った。さらにオデュッセウスの晩年のことも語った。
[[セイレン]]の海を抜ける セイレンの住む島に着いた。その美しい歌声を聞いた人間は誘惑によって海へ引き込まれる。キルケの指示どおり、部下たちの耳を蝋でふさぎ、オデュッセウスだけはセイレンの歌を楽しみたいため帆柱に縛りつけさせた。セイレンたちが来て歌い、彼は縄をほどくよう叫んだが、部下はよりきつく縛った。こうして誰も失わずその海を抜けた。
[[スキュラ]]とカリュブディスを抜ける それからスキュラとカリュブディスの棲家に着いた。そこは二つの岩の間の狭い海路で、一つの岩には6つの首を持つ恐ろしい怪物スキュラが住んでおり、もう一つの岩の根元には海水を吸い込んで吐き出すカリュブディスがいた。部下たちには何も教えずひたすら漕がせた。恐ろしいカリュブディスを避けて進んでいると、スキュラは6名の部下をさらって、生きたまま食べてしまった。
ヘリオスの島に着く トリナキエの島についた。ここでは強風で一ヶ月も出航できず、部下たちは空腹に耐えかねて禁断の神の牛を食べてしまった。ヘリオスは怒りをゼウスに訴えた。オデュッセウスは船を出したが、ゼウスは嵐を起こし船を打ち砕いた。部下たちは海に落ちて死に、オデュッセウスは船材に捕まって風に流され、カリュブディスの淵に戻されてしまった。カリュブディスが船材を呑んだとき、彼は頭上の樹に掴まって待ち、再び船材を吐き出した時飛びついて両手で漕いで逃れた。
スケリア島に漂着する ヘルメスはカリュプソに、オデュッセウスを帰国させる神々の決定を伝えた。オデュッセウスは筏を作り海へ出た。ポセイドンが大波を送って筏を砕き、彼はパイエケス人の島へ漂着した。オデュッセウスが川で洗濯していたアルキノオス王の娘ナウシカアに助けを乞うと、ナウシカアは彼をアルキノオス王の屋敷まで案内した。
帰国後
イタカに帰国し、求婚者を殺す オデュッセウスはパイエケス人の国を発ち、無事イタケの島へ着いた。オデュッセウスは屋敷で彼の資産を飲み食いしているペネロペへの求婚者たちを見出した。ペネロペは嫌な求婚に苦しんでいた。オデュッセウスは乞食に化けて屋敷に入っている時、ペネロペは弓の腕競べを開催し、弓で的を射抜いた者と結婚することを約束した。求婚者たちは誰も出来なかったが、オデュッセウスは前に出て、的を射抜いた。そして、彼は正体を明かし、テレマコスとエウマイオスとピロエティオスと共に求婚者たちを誅殺した。
遠い地へ行く その後、オデュッセウスは、ネオプトレモス王の裁きを受けた。彼はオデュッセウスを追放した。ある説によると、彼はケパロニアの領土を獲得したくて追放したのだという。オデュッセウスはテスプロティアへ行き、冥府でテイレシアスに指示された通り、生贄を捧げた。彼はそこでテスプロティアの女王カリディケと結婚し、ポリュポエテスをもうけたという。別の説によると、オデュッセウスはアエトリアへ行きトアスの娘と結婚し、レオントポノスをもうけたという。
オデュッセウスの最期 テレゴノスは母のキルケから父はオデュッセウスと聞かされていた。彼は父をさがしにイタカへやってきた。彼はそこで牛を盗もうとし、出てきたオデュッセウスを、アカエイのとげで作った槍で傷つけ殺した。テレゴノスはそれが父親と気付き、深く悲しんだ。別の説によると、オデュッセウスはテイレシアスの予言通り、老衰で死んだという。