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E115 治安部隊SS - (2008/06/18 (水) 20:23:46) のソース

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**治安部隊結成☆

「知ってのとおり、新領民を受け入れることになった。お前達には治安維持活動を担当してもらう。しっかりはげめよ。」

越前藩国の凸凹コンビ…もとい、剣王コンビの夜薙当麻と鴻屋心太は、厳めしい表情で訓示を行っている黒埼をじっと見つめていた。
この30代半ばの痩身の男は、越前の電脳摂政という肩書をもつ。
だが、うっかり摂政という二つ名の方が実はNW中に鳴り響いていたりする。
しかし、彼はそのことを未だに喜べていない素直じゃない人間である。

それはそれとして、心太に治安維持の仕事が舞い込んできた。
にゃんにゃん共和国から、難民がどっと帝國押し寄せたためだ。
万年人手不足の越前藩国において、藩士のお役目の掛け持ちはあたり前なので馴れっこであるが、今回はなんか様子がちがう。

「治安維持の必要性は、理解してるけどなぁ…」

心太が言いにくそうに口を開く。
その面差しには戸惑いの色がありありと浮かんでいた。
彼の視線の先には、訓示前に手渡された巨大ハリセン。

「…これで暴徒をおさえこむつもりか?」

半ばあきらめ顔の夜薙が言葉を繋ぐ。

「その通り。お前達は白兵戦のエリート教育を受けたからな。ただの竹光でも素人相手だと立派な武器になる。その点、これは全く殺傷能力はない。」

黒埼はハリセンを軽くなでる。ただの紙でできたものだった。

「少しでも領民たちの不安を軽減するための政策はうっていく。が、これだけの人数を受け入れるとなると、治安も多少悪くなると予想される。しかし、だからといって完全武装した治安部隊がうろうろしたんじゃ、余計なストレスを与えかねないからな。藩王と相談して決めた。」

表情を全く変えず淡々と話す黒埼。

「…それに。お前達には扱い慣れた武器だろう?」

そう言って、ようやく彼の口元は笑みで崩れた。

//

「あ、心太くん、夜薙さん。これ、せっしょうさまから頼まれてつくったよ。」

心太はいつの間にか難民受け入れ臨時本部と化した政庁の広間で、ぱたぱた走り回ってる少女、閑羽に声をかけられた。
心太と同年代だが、彼よりは頭一つ分身長が低い。
しかし、手先は器用で、越前藩国の女性藩士にはめずらしく、料理や手芸といった手仕事の腕は超一流だった。

「治安維持活動にまわる藩士はこれを着るんだって。」

きちんとたたまれた法被を、心太と夜薙に渡す。

「おおきに。しずはちゃん。」
「閑羽は、ここで待機か?」
「うん。しずは、ここで新領民の登録作業のお手伝いするの。」

広間は政庁中の机が集められ、その上に通信機材が並び、藩士や犬士が忙しく動いている。
政庁に勤めるもののほとんどは、新領民の受け入れに謀殺されていた。

//

「おお、よかった。まだいたか。」

政庁から出て行こうとしている二人に、黒埼が声をかける。

「どないしたん、摂政さま?」

剣王コンビが黒埼に向き直る。

「治安維持活動に加えて、広報活動もやってきてくれ。」

黒埼はチラシでパンパンにふくれた鞄を二人に渡した。
心太はその一枚を手にとり読み上げた。

「【万笑節】のご案内。来る満月の夜、【万笑節】を中央区広場で開催いたします。心から笑いをあなたに。空飛ぶハンバーガー教団…って、なんやこれ!?」

空飛ぶハンバーガー教団とは、越前藩国に突然現れた謎の宗教である。
他人を笑わせるという教義を持つことから、芸人の集団でもあるらしい。
教団そのものは今のところ害はなさそうなので政治的には放置されている。
ちなみに、越前国藩王が実は教主だというまことしやな噂もあったりする。

「いや、藩王がこういうときこそ笑いが必要だといってな。国内の団体に笑いの祭典の参加の打診をしたところ、条件が合ったのが…これでな。」

黒埼の回答は歯切れがわるい。

「摂政様は、この【万笑節】がどんなもんか、もちろん、知ってはりますよね?」

ジト目で黒埼に突っ込む心太。

「もちろん、知ってて当然だよなっ!なんせ、開催承認は摂政の名前で出すから…」

しばしの3人の間に気まずい沈黙が流れる。
見事夜薙のフォローは空振りした。

「…なるほどなぁ。中身を確認せずにうっかり承認…」
「ほっとけやっ!!」

今日も元気に涙声の混じる叫びが政庁中に響き渡る。

【文責:鴻屋 心太@越前藩国】

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【イラスト:鴻屋 心太@越前藩国】


**なまはげ治安部隊!?

「う~ん、だんだん治安が悪くなってきましたなぁ…」
「うむ、何とかせねばいかんな」

難民を受け入れ、人口密度がエライことになった越前藩国。
王宮の執務室では、藩王・セントラル越前と摂政・黒埼紘が会話をしていた。

「今はまだ、問題が起きるレベルではありません。しかし、こと治安維持に限っては、問題が起きてからでは遅すぎるかと」
「ふむ、今回ばかりは『よきにはからえ』ではいかんのだろうなぁ…」

う~む、と二人同時に頭を抱える。

「失礼します。お茶をお持ちしました」

午後のお茶と茶菓子をもって、夜薙当麻が入ってくる。

ぴこーん。

藩王と摂政の頭上に、同時に電球がついた。

「そういえば最近、風陣・雷刃は全く活動しておらんなぁ…」
「それでしたら、彼らに治安活動をやらせましょう」
「と、言うわけだ。夜薙よ、よきにはからえ」

ぽむ、と夜薙の肩におかれる藩王の手。

「…………………はい?」

たっぷり5秒、夜薙が答えあぐねた末に発した言葉だった。

     ○     ○     ○

翌日、夜薙は自分の王である鴻屋心太と共に難民受け入れ地区へとやってきた。

「ふむー。お屋形様と摂政の言うとおりだ。確かに治安が悪くなっているな…」
「せやねぇ。夜薙さん、どないしよ?」

越前の国風には似合わないワルそうな人々。
まだ犯罪を起こしてはいないが、これは先手を打つに越したことは無い。

「よし、アレをやるか…」
「アレ……?」

     ○     ○     ○

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【イラスト:鴻屋 心太@越前藩国】

「わりぃごはいねがぁ~~~。」

フンドシ一丁&ハリセンでなまはげになる夜薙。

「おお、お見合い防衛隊以来のフンドシ姿!……ってまたんかいっ!!」

『すぱーんっ!?』
ハリセンでおもいっきりツッコミを入れる鴻屋。
周囲に、ハリセンのよい音が鳴り響いた。

「ぎゃふん!」
「ほら!アホやっとらんで、レーダー施設行くで!」

自分より大柄な剣を引き摺り、ずんずんと歩き去る少年王。
その姿は、受け入れた難民―特に子供達―に焼きついたという。

【文責:夜薙当麻@越前藩国】
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