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E115 治安部隊SS

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匿名ユーザー

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治安部隊結成☆


「知ってのとおり、新領民を受け入れることになった。お前達には治安維持活動を担当してもらう。しっかりはげめよ。」

越前藩国の凸凹コンビの夜薙当麻と鴻屋心太は、厳めしい表情で訓示を行っている黒埼をじっと見つめていた。
この30代半ばの痩身の男は、越前の電脳摂政という肩書をもつ。
だが、うっかり摂政という二つ名の方が実はNW中に鳴り響いていたりする。
しかし、彼はそのことを未だに喜べていない素直じゃない人間である。

それはそれとして、心太に治安維持の仕事が舞い込んできた。
にゃんにゃん共和国から、難民がどっと帝國押し寄せたためだ。
万年人手不足の越前藩国において藩士のお役目の掛け持ちはあたり前。
なので馴れっこであるが、今回はなんか様子がちがう。

「治安維持の必要性は、理解してるけどなぁ…」

心太が言いにくそうに口を開く。
その表情には戸惑いの色がありありと浮かんでいた。
彼の視線の先には、訓示前に手渡された巨大ハリセン。

「…これで暴徒をおさえこむつもりか?」

半ばあきらめ顔の夜薙が言葉を繋ぐ。

「その通り。お前達は白兵戦のエリート教育を受けたからな。ただの竹光でも素人相手だと立派な武器になる。その点、これは全く殺傷能力はない。」

黒埼はハリセンを軽くなでる。ただの紙でできたものだった。

「少しでも領民たちの不安を軽減するための政策はうっていく。が、これだけの人数を受け入れるとなると、治安も多少悪くなると予想される。しかし、だからといって完全武装した治安部隊がうろうろしたんじゃ、余計なストレスを与えかねないからな。藩王と相談して決めた。」

表情を全く変えず淡々と話す黒埼。

「…それに。お前達には扱い慣れた武器だろう?」

そう言って、ようやく彼の口元は笑みで崩れた。

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「あ、心太くん、夜薙さん。これ、せっしょうさまから頼まれてつくったよ。」

心太はいつの間にか難民受け入れ臨時本部と化した政庁の広間で、ぱたぱた走り回ってる少女、閑羽に声をかけられた。
心太と同年代だが、彼よりは頭一つ分身長が低い。
しかし、手先は器用で、越前藩国の女性藩士にはめずらしく、料理や手芸といった手仕事の腕は超一流だった。

「治安維持活動にまわる藩士はこれを着るんだって。」

きちんとたたまれた法被を、心太と夜薙に渡す。

「おおきに。しずはちゃん。」
「閑羽は、ここで待機か?」
「うん。しずは、ここで新領民の登録作業のお手伝いするの。」

広間は政庁中の机が集められ、その上に通信機材が並び、藩士や犬士が忙しく動いている。
政庁に勤めるもののほとんどは、新領民の受け入れに謀殺されていた。

「おお、よかった。まだいたか。」

政庁から出て行こうとしている二人に、黒埼が声をかける。

「どないしたん、摂政さま?」

凸凹コンビが黒埼に向き直る。

「治安維持活動に加えて、広報活動もやってきてくれ。」

黒埼はチラシでパンパンにふくれた鞄を二人に渡した。
心太はその一枚を手にとり読み上げた。

「【万笑節】のご案内。来る満月の夜、【万笑節】を中央区広場で開催いたします。心からの笑いをあなたに。空飛ぶハンバーガー教団…って、なんやこれ!?」

空飛ぶハンバーガー教団とは、越前藩国に突然現れた謎の宗教である。
他人を笑わせるという教義を持つことから、芸人の集団でもあるらしい。
教団そのものは今のところ害はなさそうなので政治的には放置されている。
ちなみに、越前国藩王が実は教主だというまことしやな噂もあったりする。

「いや、藩王がこういうときこそ笑いが必要だといってな。国内の団体に笑いの祭典の参加の打診をしたところ、条件が合ったのが…これでな。」

黒埼の回答は歯切れがわるい。

「摂政様は、この【万笑節】がどんなもんか、もちろん、知ってはりますよね?」

ジト目で黒埼に突っ込む心太。

「もちろん、知ってて当然だよなっ!なんせ、開催承認は摂政の名前で出すから…」

しばしの3人の間に気まずい沈黙が流れる。
見事夜薙のフォローは空振りした。

「…なるほどなぁ。中身を確認せずにうっかり承認…」
「ほっとけやっ!!」

今日も涙声の混じったうっかり摂政の叫びが政庁中に響き渡る。


【文責:鴻屋 心太@越前藩国】

【イラスト:鴻屋 心太@越前藩国】


なまはげ治安部隊!?


「う~ん、だんだん治安が悪くなってきましたなぁ…」
「うむ、何とかせねばいかんな」

難民を受け入れ、人口密度がエライことになった越前藩国。
王宮の執務室では、藩王・セントラル越前と摂政・黒埼紘が会話をしていた。

「今はまだ、問題が起きるレベルではありません。しかし、こと治安維持に限っては、問題が起きてからでは遅すぎるかと」
「ふむ、今回ばかりは『よきにはからえ』ではいかんのだろうなぁ…」

う~む、と二人同時に頭を抱える。

「失礼します。お茶をお持ちしました」

午後のお茶と茶菓子をもって、夜薙当麻が入ってくる。

ぴこーん。

藩王と摂政の頭上に、同時に電球がついた。

「そういえば最近、風陣・雷刃は全く活動しておらんなぁ…」
「それでしたら、彼らに治安活動をやらせましょう」
「と、言うわけだ。夜薙よ、よきにはからえ」

ぽむ、と夜薙の肩におかれる藩王の手。

「…………………はい?」

たっぷり5秒、夜薙が答えあぐねた末に発した言葉だった。

     ○     ○     ○

翌日、夜薙は自分の王である鴻屋心太と共に難民受け入れ地区へとやってきた。

「ふむー。お屋形様と摂政の言うとおりだ。確かに治安が悪くなっているな…」
「せやねぇ。夜薙さん、どないしよ?」

越前の国風には似合わないワルそうな人々。
まだ犯罪を起こしてはいないが、これは先手を打つに越したことは無い。

「よし、アレをやるか…」
「アレ……?」

     ○     ○     ○

【イラスト:鴻屋 心太@越前藩国】

「わりぃごはいねがぁ~~~。」

フンドシ一丁&ハリセンでなまはげになる夜薙。

「おお、お見合い防衛隊以来のフンドシ姿!……ってまたんかいっ!!」

『すぱーんっ!?』
ハリセンでおもいっきりツッコミを入れる鴻屋。
周囲に、ハリセンのよい音が鳴り響いた。

「ぎゃふん!」
「ほら!アホやっとらんで、とっとと見回り行くで!」

自分より大柄な剣を引き摺り、ずんずんと歩き去る少年王。
その姿は、受け入れた難民 ―特に子供達― に、畏れを焼きついたという。

【文責:夜薙当麻@越前藩国】


アメノチニジ


それは、そう。ひどく雨の降る日だった。

雨の無い国から来た少年にとって、それは見慣れぬ光景だったからずいぶんと長い間記憶に残っていた。


<雨ノチ虹>


越前の国境に近付くにつれ湿度が増してくる。
フワフワとした金髪が垂れさがり、じれったい。浅黒い肌からは何とも言えず不快な汗がべっとりとまとわりついていた。

当時の少年の知識にはなかったが、そうした気候は東国特有の四季というもので、その当時がちょうど梅雨に入った頃だというのは、随分と後から知ったことだった。

蟻の群れのような人波の中では、思考より先に足が前へと進む。
まるでただ歩くための機械と化した人波に飲まれ、少年は思考を忘れていた。


少年は、難民の中にいた。


/*/

姉が気に入っていた猫の旗が引き裂かれたのを見てから数日。
何もかもわからぬまま少年は三つ上の姉に手を引かれて戻らぬ旅に出た。
何度も家に帰ろうと懇願し見上げた少年を姉はその度黙って手を引っ張った。

いつしか少年は話しかけるのをやめた。

姉がどこに向かっているのか少年にはさっぱりわからなかった。
姉自身もわかっていなかったに違いない。だが歩き続けていると次第に、同じ方向に似たような人々が歩くようになった。

一人が二人になり、二人が四人になり。いつしか集団になった。
束の間できた仲間に、少しだけ姉に笑顔が戻った気がした。

だがその笑顔はすぐに消えることになる。

/*/

荒野の真ん中でなんとか軍だとか名乗る大人達に出会った。数台のトラックと共に少年達の目の前で車を止めた。

キミタチを保護する、と出てきた一際大きな男がそう言った。

その口許はだらしなくにやけていて、姉や他の女の子のことをニヤニヤと眺めていた。
姉がつないだ手にぎゅっと力を入れた。

気が付くと大人達は仲間達をトラックに押し込んでいた。
子供達も特に抵抗するでもなく、トラックに入っていく。
うまいもの食わせてやるぞ、などと男達が囃して回っている。

姉の手にさっきよりも強い力が入って我に帰る。痛みを覚えるほどだったが、少年は必死に我慢した。そうしなければいけない気がしたのだ。

そして二人の番が来た。

「この子は?」
先ほどの大きな男がそう聞いた。姉に聞いているようだった。

「弟。一緒に乗せて」
男は無言でトラックを顎で示した。姉は少年を引っ張って
トラックに乗り込もうとした。

その時、俄かに空気が慌ただしくなった。

「帝國軍だ!」

辺りに騒然とした空気が走る。
誰かの叫びと共にトラックが我先に走り出していた。


そして。その時少年にとっては、信じられないことが起きた。
急に走り出した車から、投げ出されたのだ。

姉が、片時も少年の手を離さなかった姉が、少年の手を放していた。

なんで。疑問を覚えるより早く鈍い衝撃と共に、遠ざかっていく姉の姿を一瞬まぶたにとらえ、少年の意識は沈んで行った。

/*/

目覚めた少年は、他の難民の集団に従って歩き始めた。姉の行方を尋ねながら。


その一団は一見して別の難民集団だとすぐに知れた。最初は水を分けてくれともちかけて来たが、難渋を示したこちらに、一方的に突っかかってきたのだ。

いつのまにか乱闘になった。


だが、その中に妙な動きをする連中がいるとまでは、気づかない。


薄笑いを浮かべた男が少年の手をもぎとるようにして引き離して抱きかかえた。

少年は身動き一つできぬまま、姉と引き離されていく。

見れば、他の場所でも乱闘にまぎれて子供達が男達に連れ去られていた。


「ぐ、ぐぐ」


その時だった。

「そこまでよっっっ!」

朗々とした声が辺りに鳴り響く。
大気すら震わせるような声音を発したのは、まだ年端もいかぬと見える少女だった。黒に近いロングコートのような暑苦しい服を着ている。しかしそれが護民官服と言う事を知る者は、生憎この場には誰もいなかった。
だが、そのあまりの大声に乱闘していた難民達も、
子供達を連れ去ろうとしていた男達ですら、動きを止めていた。

「あなたたちは後回し」

つかつかと今まで乱闘に荒らぶっていた男達に歩みより、彼らを一視線で竦ませて少女は、次に少年を抱きかかえる男に歩みよった。その間にいた者たちは次々脇に下がって道を作った。

「その子、あなたの子?」
「そうだ!それがどうした!?」
腕に込める力で少年の口出しを封じつつ、男はぬけぬけとそう言った。

「ふうん。一つ質問」
「な、なんだ」

「あなたの国民番号を教えて」
男は、その言葉に少しだけ安堵の表情を見せた。
思わぬ雲行きに、周囲の者は皆二人のやりとりに目をやっている。

「――×△‐×○×‐××だ。」
少女が目をパチパチと閉じたり開けたりした。

「……文殊照会完了。問題なし、ね」
「……わかったら、俺らを行かせてくれないかい、お姉ちゃんよ」

そこで少女はニヤリと笑みを浮かべた。

「身元情報の改ざんを確認!……摂政かかりました、ビンゴです!」

『よくやった。確保!』

「なっ!?」
「こちら越前当局よ!難民に偽装して子供を誘拐し、人身売買なんて狡いマネ、うちの領内、いえ帝國内で許すわけないでしょ!?」

どよめきが走った。子供を抱えて散っていた男達が次々と少女に迫る。だが、少女は動かなかった。

「まったく、摂政最近人使い荒いんとちゃう?」
「わるいごはいねが~」

難民の中から現れた二つの影があっという間に男達の半分を沈黙させる。
退路をふさがれた男達は、今度こそ少女を狙って殺到した。

「―――さん!」
叫んだ瞬間、難民の中から飛び出した青年が剣を放り投げる。
それを少女が受け取った瞬間―――勝負は決した。
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