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Development of a new methodology for surface science
by adding one more dimension


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FFP as a site-specific probe

DIANAにて\pm60^{\circ}にわたる広い立体角の光電子放出角度分布が容易に測定できることを利用した深さ分解XPS法とsite選択XAFS法を開発した。光電子脱出深さの出射角依存性は深さ方向の情報を与える。他方、前方散乱ピーク強度はsiteごとの情報を内包する。工夫次第でsiteの密度や局所的な電子状態の情報が引き出せる。

Depth profile XPS / FFP

深さ分解XPS

出射角度を変えたときのprobing depthの違いを利用した深さ分解XPSは表層の非破壊組成分析として重要である。DIANAを用いれば表面すれすれ出射から法線方向までの広い角度範囲を一度にカバーできる利点がある。同時に回折パターンやFFPを確認しながら測定できる点は他にはない特徴である。

Fig.[F-dXPS]はSi(111)表面に吸着したIn原子からのPIADである。In 4pの強度をSi 2pで規格化した。表面すれすれ出射方向で強くなる極角依存性を示す。強度はほぼ1/\cos\thetaの曲線に乗るが、これはInが最表面に吸着していることを示す。ただし、こうした方法で深さ分解のXPSを行う際、回折の影響に注意しなければならない。上向き矢印で示した強度の落ち込みはSi 2p強度分布の回折効果によるものである。

FFPのsite選択性

この回折効果を逆手にとるとsite選択的な新しい測定法ができる。Cu(001)表面上に最大4 MLのNi傾斜膜厚(wedge)薄膜を成長させた。Fig.[F-Ni01](a)と(b)はそれぞれ45^{\circ}入射、直入射で測定したNi LMM Augerの放出角度分布(AIAD)である。(a)では中央に[001]のFFPが、(b)では[101]のFFPが現れている。(b)の上方の点線の枠は表面すれすれに出射してきた電子である。[001]や[101]のFFPはそれぞれ表面から3層目、2層目にあるNi原子に由来する。表面すれすれの部分からは最表面の原子由来の情報が抽出できる。

光の照射位置を試料上で走査し、様々な膜厚での二次元光電子分光測定を行った。Fig.[F-Ni01](c)はCuとNiの3pの強度をプロットしたものである。Niの膜厚が増加するにつれCuの強度が落ち、逆にNiの強度が大きくなっていく様子が分かる。Ni LMM AIADのそれぞれの方向の信号強度を規格化して同様にプロットしたものがFig.[F-Ni01](d)である。第一層、第二層、第三層の原子由来の信号が順番に増えていっているが、これはNiの膜がlayer-by-layer状に成長していることを示している[rfShen]。

XPS、XAESとXANES

XPSを測定するとAugerのピークがEDCに現れる。Fig.[F-XAFS](a)はCuとNiのLMM Augerピークに着目したX線励起のAugerスペクトル(XAES: X-ray Auger electron spectroscopy)である。赤い点でNi由来のピークを示した。Fig.[F-Ni01]のパターンはこのNi LMM Auger電子をscreenに投影したものである。

次にDIANAのpass energyを846 eVに設定して光エネルギーをscanしたものがFig.[F-XAFS](b)である。NiのL吸収端近傍の吸収スペクトル(XANES: x-ray absorption near edge structure)が得られた。853 eVあたりにLIII、870 eVあたりにLIIのピークが見えているほか、いわゆる6 eVとよばれているsatellite構造がLIIIの脇に確認できる。AIADの測定ではFFPは円二色性を示さないので立体写真とはならないが、二次電子によるbackgroundが価電子帯によるもの以外ほとんど現れないので短時間で測定ができる利点がある。

Layer選択的XAFS及びXMCD

AIADのFFPからsite選択的な情報が得られることを述べた。また光エネルギーをscanすることによってX線吸収スペクトル(XAFS: X-ray absoption fine structure)が得られることを示した。この両者を組み合わせたのが2D-XAFSである。FFP強度より抽出したXAFSスペクトルから局所的な電子状態の情報が得られる。また円偏光による磁気円二色性(XMCD: x-ray magnetic circular dichroism)測定をDIANAで行うと2D-XMCDとなる。本手法に関連するものとしてAmemiyaらの先進的な仕事がある。彼らは阻止電位型の検出器にfluoresent screenを取り付け、表面すれすれ出射から30^{\circ}の範囲の電子を取り込み、probing depth依存性のXMCD測定を行っている[rfAmemiya04,rfAmemiya05]。DIANAによる2D-XAFSでは回折パターンとFFPを観察しながらの測定となるので、加えてlayerごとの情報を分離して解析することが容易になる。

早速、先に紹介したNiのwedge thin film試料に2D-XAFSおよび2D-XMCDを適応してみた。現在、薄膜のlayerごとの原子・電子・磁気構造について解析を進めている。


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最終更新:2008年05月11日 23:56