はっ・・・これ・・・小説じゃない!!
ヴァウが世界征服しようとするお話です
誤字は多そうです
「パンパカパーン!パンパンパンパッパカパーン!!!」
豪勢な料理を模したエネルギー触媒の並べられた長テーブルの上座に座る、赤いロボット、ヴァウが歌った。
手にはクラッカー、頭にはパーティ用の三角帽子と、無骨なフェイスパーツに対してその様相はかなり間抜けである。
長テーブルの下座―というよりこの席においては、主賓以外の序列を気にしない「上座以外」と表現するほうが正しい―には、様々な体格、体色、特徴を持つロボットが座している。
「主賓以外」のその数8機。皆、表情、姿勢は違えど一様に声を発さずに主賓の方を向いている。
主賓、上座の赤いロボットが続ける。
赤い主賓がナプキンを外した。
「そのワケが君達、お前達に分かるか!ヒント、それはとても素晴らしい私達の始まりだ。…じゃあ
バサラ君、ほれ、バサラ君!バサラ、答えて見ろ、当てられたらご飯始めていーよ」
そう言って主賓は向かって右列、奥から三番目の木肌色のロボットを指差した。
「あぁ?」
対する木肌色の客、バサラ。とても機嫌が悪い。ついでに態度も悪そうに見える。
主賓以外の最初の言葉が荒々しく機嫌の悪そうな声になった上に、バサラはテーブルに足を乗せるという行動に出た。
しかしそれを気にする人間、もといロボットは一人として居ない。
テーブルに乗せた足を横柄にくねらせ、バサラは続ける。
「この俺のサンクチュアリ緑化計画が整ったのだろう?マッスルグローサーのアトミックシステムが完成した…素晴らしい俺達の始まりとはコレ以外には思いつかぬ」
「ぶっぶーアホーバァカー」
主賓のクラッカーが、堂々と答えたバサラに向かって放たれた。
しかし音だけで中身は無く、その音も一般的なクラッカーのそれではなく、クイズ番組で誤答した時に出るアレ、という説明で通じるような物だった。
「(ビキ)」
音を浴びたバサラの前頭部から、何かが切れるような音が聞こえたが、それもまた誰も気にしない。
「次々に当てて行きたい所だが、まぁそれは止しておこう。お前達はあと残り8人も居るし、多分誰かが当てればバサラの怒りが決定的になってしまうなあ」
「で、何なのさ。ザップ含め9機全員集めるって事はさ、さっき言ったとおり…いや言っちゃないけど、ちゃんと重要な用なんでしょうね」
黙って奇矯な主賓の話を聞いているのにも飽きたのか、主賓から向かって左列手前から二番目の、透明質の体を持つ女性型ロボットが身を乗り出して問う。
「はいそれ良い質問!常識的に考えて物凄く重要でオッキい事何だよこれが。聞いたらお前達も間違いなく一斉賛成だ」
「ばりりー、だからそれを早く言ってってばあ!ごはん冷めちゃうよー!」
左、手前から一番目の黄色いロボット、
バリバが言う。下半身が足ではなく四角い装置である彼は、奇妙な風体で椅子にそのまま乗っている。
「食いたいならもう食っていいんだぞ!でもお前達、ご飯バクバク食ってたら絶対私の話を聞かないじゃん」
「食べちゃだめってことー?ばりり」
「うん」
「ぶー」
バリバが引っ込むと、ヴァウは何故か先ほど外したナプキンをまた付けた。
そしてようやく本題に入ろうと、すうっと大きく息を吸い込んだ。
「今こそ愚劣なる人間共の傲慢さを正す時が来たのだ!!我らヴァウ軍団がこの世界を是正するのだ!!!」
大きく手を広げたヴァウ。
「え、えと・・・え?なに・・・?わかんない」
「興味ないわよ・・・あとつまるところ世界征服したいって事らしいわね」
「アタクシゃあものを燃やせればそれでイイんですヨ…ハフゥ〜」
「む…………ぐ………戦えれば………いい…が…俺の目的は……まだ…フィーク…に…エルティネイン…が…いる…」
「兵器に対する信仰を守れるならば…クスクスクス…それで…クス…良いのです……クスクス」
「ばりりりり!おもしろそーだね!!ぼくはさんせーだよン!!」
「流石我が父足る人物!!!この
ビュールという一筋の超新星の鮮烈デビゥに相応しい舞台を用意されていると思っていた!僕は賛成するよ!大いに!」
「下らんな。俺の望みは人類を根こそぎ抹殺する事だけだ。是正というのはそういう事!!」
今まで喋らなかった面子も含め、各機口々にヴァウの謳った名目に対し自分の感想を口走る。
通常の人間ならば不可能だが、ヴァウのサウンドキャッチホールは全ての子供達の言葉を拾い、理解していた。
そして、明確に目的を理解しやる気を持って賛同している者が一人も居ない事少し落胆した。
「お、お前達…ええい、まぁいい。やる気がないのに世界征服なんてやってもダメだと思うから、賛成をとります!ご飯食べながら返事してね!」
「ぼくはさんせーだよー!」
「僕も賛成です!!」
と、バリバとビュール。
「うるせー!お前らの賛成はさっき聞いたから分かってんだよ!!!もうお前達だけだよ!愛してる!!!…じゃ、
パッチからナンバーズ順にどうぞね」
「ヴァウ・ナンバーズが3、パッチは作戦の参加には賛成しますよお父様ァ。しかしですね(はぐっ)私ゃア征服等に興味は無いのですヨ。それはァ各人私以外のお子に任せます」
「スパゲッティハフハフしながら応えるのは行儀悪いぞ!次、
ゴール。」
「親父殿………さっき…の…通…りだ…俺は闘争以…外…には興味…は無い…しかし…親父殿の……意向と有れば…従おう」
「パッチとだいたい同じという事か!私の意向ウンヌンを言ってくれるあたり良い子だ。次、バサ」
「うるさい、死んでしまえ!!」
「カーッ!!このスネスネマン!スネ夫!分かったよ、次、ドップ…あ、そーだ、アイツは居ないんだった…。7番、
オンギョウ君、どうぞ」
「普通の征服にも闘争にも興味は有りません。スイーツ、珍味、神ゲーを持ってる人が居たらあたしのところまで来なさい」
「クスクス…クス…私もクス…先ほど言った通りですよ…兵器への信仰を試す機会です…クス…父親を慕う気持ち…もある…そう言って…おきましょう……ゴール君と同じですね…」
「なるほど、そう言ってくれるか!じゃザップ、どーなのよ、その辺どーなのよ!?」
「(ちゅるる)えっ・・・あ・・・えと・・・ボク、やだ…こわい…」
「そういうと思ってたよコノヤロー理由は聞かなくても分かるから話さなくていい。」
「え・・・あっ・・・ごめんなさい・・・」
ぷいっと脹れ面(もちろん機械の顔面で脹れ面なのかどうか視覚的に見えるワケではないが)でそっぽを向くヴァウ。
オンギョウがジュース型エネルギー触媒を差し出す事で不機嫌は取り除かれた。
父親に嫌われたと思い込み、落ち込んだザップもオンギョウのケアで何とかなった。
「しかしつまり…参画してくれる者はザップ、バサラ、オンギョウ、都合のドップラーも抜いて…ひぃ、ふぅ、みぃ…なんだ私を含めて6人か…」
「クスクス…これでは……出来るものも…クス…出来ませんな……暗殺のドップラー君…緑地要塞のバサラ君…衛星攻撃のオンギョウ君…局地洪水のザップ君が抜けては……」
「その通りだなー。全く、私はどうしてこうも運に恵まれていないのか!だからといって息子娘の性格を選ぶワケにも行かぬしなあ」
事実、ヴァウの「子供達」の人格プログラムは遠い宇宙に漂う異星アイアメイン―
アトミックネットの母星である―の神秘的存在、「インテグラルスフィア」によりヴァウの作った人格プログラムに補助する形で与えられている。
ヴァウ自身のみで人格をプログラムする事も出来るのだが、「それでは命令を聞くだけの不完全な存在」と気に入らず、アトミックネットの技術供与を受けたのだ。
「クスクス…父様……意外にお優しい……のですね…クス」
「そうだ私は優しい!何よりもロボット…いや引いては人の作り出した人造生命…ゴーレムやアンドロイドも入るな!それらの事をいつも考えているのだ!ウィーアーザロボッツだ!…はっ!!!」
突然、拳を握り締めながら席を立つヴァウ。
他のメンバーも各々タイミングはズレながらもヴァウの方に視線を注ぐ。
ボンカーが「どうなされました」と声をかけるまでぷるぷると体を震わせている。
「思いついたんだよ!!全員揃っていなくても進められる計画が!!!…世界征服とは無縁だが、これは非常に有意義だッ」
「ばりりり、なになにー!!ききたいなー!」
「そうだ、よぉく聞け!!次の目的地はアースガルドだ!!」
「ん?オンギョウ、興味が有るのか?」
「知らない?アースガルドのどっかにゲーム業界に手ェ出して、一発で終わった幻のクソゲーメーカーが有るって…気になっててさ」
「知らん!ちょっと気になるがまぁそれはおいておこう。目的はだな……」
「クスクス…クス…ゴーレムの………人権でも……提唱する御心算ですか…クス……」
「その通りだ、やはりお前は私の事を良く分かっているな、ボンカー!これなら何も武力を行使する必要は無い!科学者の立場から論戦すれば良いだけなんだなーこれが」
「お父さん!!それじゃあダメですよ!!」
「ダメって、何がダメなのだ」
「このビュールの美しき活躍場所が無いでしょう!世界を相手どって戦う、それを楽しみにしていたんですよ!!ねえ、バリバもそう思うだろう!」
「ばりりー、そうだよね!最近バナナが好きになってきたんだよね!」
「聞いてないっ!!」
「まぁ落ち着けよビュール…もはや説明文も何も無くセリフばっかりになってきているのは置いといて、私のあまりに高尚で先進的なゴーレム人権論を妬んで暗殺者を差し向けてくるようなヤツは必ず居るだろうからな、お前達はその暗殺者を全力で吹き飛ばす!コレだ、間違いない」
「VSアサッシン!!お父さん、ヒャクレ○ガー的な暗殺者は来ますか!」
「それは知らんが、お前の美しい見せ場も有るというワケだな!!」
「そうですか!」
「そうだ!!」
何故笑うのか、当事者の二人にしか分からない事だったが、大きな談笑が起こった。
一種異様な世界の数m外は食事に勤しむ兄弟ばかりで、オンギョウだけが呟いた
「元気よねえ…アンタら」
最終更新:2012年03月27日 19:58