『ray』


概要

『ray』とは、滅びた古の王国で「死」を意味する言葉である。
毒を持つ魔物の大群を率い、闇にまぎれて街という街を襲い、ヒトというヒトを食らいつくし、蛻の空にしていく「死の具現者」。
……そのように呼ばれるようになったこの女の本名は「ベツヘレム・イフ」。実はセスの実姉。なので年齢は最低でも21歳か。
しかし弟は姉がこんなことをしてるとは全く知らないし、姉も弟が今どこで何をしているかなど知らないし知ろうとも思っていない。
下記の過去から既に精神崩壊と退行を起こしていて、言動が幼く言葉もたどたどしかったが、鉄婆娑羅衆に連れてこられてからは徐々に回復しつつある。強い人間不信としみついた自虐精神は治りそうにもない。
しかしもとからそういう精神疾患があったのか、よく言葉を詰まらせ、手早く、効率的に話すことはできない。彼女が周りから「普通でない」第一印象を相手に与える主な理由はこれだと思われる。
おまけに過眠症。現実での嫌なことを忘れるための自己防衛本能が働いている為。

物心ついたころから「おかしな子」で、周りには全く馴染めずにいたが、本人にはそれがどうしてか全く理解できなかった。
既に孤独や寂しさを感じていた彼女は何度も理解しようと努力するが、何処で何を間違えたかすら解らず、周りとの溝(両親とすら)は深まるばかりであった。
周りがいう「常識」や「普通」を強制されるように、自分を押し殺す日々が何年も続いた。そこまで絶えても周りから与えられるのは陰口やため息、見下し、そして奇異の視線であった。それでも女は「社会」に馴染もうと必死に努力した。
何年も耐え続け、フラストレーションが溜まり続け、一番身近でありながら自分を一切「理解」しようとしてくれぬ両親にとうとう反発し出奔。この時家族とは縁を切り、新天地で自身の「再生」を試みる。ヒトが多く、様々なヒトがいる大きな場所でなら、まだ自分を受け入れてくれるような気がする。そんな希望を持っていた。
しかし、結果は何も変わらなかった。自分たちが「普通」であると信じて疑わない人々は彼女を糾弾し、見下し、奇異の眼を向ける。
とうとう彼女には理解できなかった。彼女を殺し続けた「普通」とはなんなのか。「常識」とはなんなのか。
「普通でないもの」がこの世に生きられぬのなら、死ぬか、「普通でないもの」で在り続けるしかない。
彼女は後者を選んだ。今まで縋っていたものを一切捨て去らなければならなかった。彼女には結局、孤独と寂しさと悲しみしか残らなかった。

ある日、彼女は悪霊の王「ウンゴリアント」と出会う。毒を扱う魔物や動物であれば、彼女を易々と仲間として受け入れてくれた。昔から動物や植物(特に毒性のもの)は好きだった女は、それらとの意思疎通が昔から可能であった。
「普通ではない」と否定され続けてきたものだったが、彼女はようやっと心に安らぎを覚え始めた。心から望んでいたものだった。
ウンゴリアントらと行動をして少し経つと、ウンゴリアントが産卵期に入る。そこで彼女はウンゴリアントにより良い子孫を残してもらうためにウンゴリアントの配下を率いて数々の街を襲いだす。
餌はなんでもかまわないのだが「野山を単体や少数で走り回る獣より一か所に大勢でだらだらと留まっているヒトを襲う方がずっと効率的である」と考えていた結果である。
ちなみにこの考えは十代半ばの時に自分に話しかけてきた女子たちが「よくあるパニックホラーで襲ってくるエイリアンたちはどうして人間ばかり狙うのか」というメタで下らない談義に花を咲かせ話を振ってきた際に彼女が答えた内容である。
己を殺し続けた「世界」に対する憎悪をぶつけるように街を襲い続け、その後で悲しみと懺悔に押しつぶされそうになる。そんな日々を繰り返していくうちに、未だ「世界」への未練を持ち続けていた彼女はまたも精神的に追い詰められていく。

そんな彼女を拾ったのは鉄婆娑羅衆バケルカンであった。
彼女は餌(ヒトの肉体)を、相手は弾(ヒトの魂)をそれぞれ必要としており、そこに目をつけられたらしい。

現在は鉄婆娑羅衆の移動要塞アクスに身を寄せており、そこに住む子供たちの面倒を見ながら、ウンゴリアント亡き今、かの遺児を護り続けている。


「死の具現者」の言葉

(たどたどしい時)(たまに戻る)
「……いや……もう、わたし……ころされたくない……」
「ほんとうに……つれてきたの……」
「……ごはん……つくる……?」
(少し良くなってきた時)(現在)
「……その、私は、あまり……喋るのは得意じゃない……」
「……ので、もしいらいらするなら……私とはあまり、話をしない方が……いいと思う……」
「あなたが……良いというなら……それでいいと思う……」
(滅多にない普通の時)(ごくたまーにここまで回復する)
「……爪をかりかりするのはやめなさい」
「……ウォッカをコップ半分は多かったかしら……」
「好きよ。……いいえ、好きだった」
「……もう……振り向いてくれないくせに……どうして来るかな……」


その他

◆『ray』の意味が「死」というのはアイヌ語から。読み方は『ライ』らしいです。ライララーイ!
◆酒によるストレス解消もしていたせいか度の強い酒が好き。得意な料理はトマト料理。田舎の味付け。
◆好きな相手は自分に自由と居場所をくれたこのロボットだが絶対に報われないと思っている。
◆処女で初心。ジョークでもデート発言だのロマンス篭絡法だのにもっぱら弱いが自覚はしている。
◆過去の出来事から愛情に飢えている節がある。また自身に対する信頼や自信が全く無い。
鉄婆娑羅衆の面々が「ベツヘレム・イフ」の名を知らないし知ろうともしてこないので本人も名乗っていないし気にしていない。むしろその名は捨てたも同然だと思っている。かといって自ら『ray』を名乗ることもない。
◆そんな大半の面々からは「毒子」と呼ばれているらしい。



最終更新:2014年07月10日 02:07
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