末っ子れいむの帰還 14KB
- 久しぶりにSSに手をつけたら、自分がこれまで書いた部分の記憶がすっかり無くなっててびっくり。
派生作品書きすぎて収拾つかないよ。もう過去作品との食い違いはご愛嬌ということで。
の冒頭に入れ損ねたというだけのエピソードなので、ボリューム不足は否めません。
まあ、なんも書かれてないとゆっくり出来ない人のための、補完用と割り切ってください。
『末っ子れいむの帰還』
D.O
「ゆっくちしちゃいよ・・・。」
夏も後半、ゆっくり愛好者御用達のキャンプ場に程近い森の中に赤れいむは居た。
偶然舞い込んだ奇跡により、赤れいむを含むれいむ一家は、灼熱の町から風もさわやかな森へとたどり着いた。
しかし、ついに見つけた本物のゆっくりプレイスだと思った森は、
突然の豪雨によって地獄と化し、赤れいむから家族と、仲良くなった群れ全員の命を押し流していった。
家族の末っ子であった赤れいむは一匹で取り残され、森での孤独な生活を余儀なくされたのであった。
とはいえ、群れの使っていたおうちと、おうちの中の保存食料は、
赤ゆっくり一匹では一冬越すどころではないほど残されている。
毎日おうちを取り換えても、いつまでかかれば回り切れるか、れいむには想像もつかないほどだ。
まして、近所にはゆっくり愛好者のキャンプ場もあり(最近ゆっくりに会えずに意気消沈気味だが)、大型獣は現れない。
群れが追い払った小型の野生動物も、当分は戻ってこないであろう。
森は、ゆっくりの群れが消滅した後も、安全性に関して言えば、相変わらずゆっくりプレイスであり続けた。
「ゆーん。ゆっくちたべりゅよ!むーちゃ、むーちゃ・・・それなりー。」
「ごーきゅごーきゅしゅるよ!ごーきゅ、ごーきゅ・・・ふしあわせ。」
「すーやすーやしゅるよ!おやしゅみにゃしゃい!・・・・・・ゆぅ。」
だが本来、森暮らしの野生ゆっくりですら独り立ちまでは数か月を要する。
家族どころか友ゆ一匹いない孤独な生活は、何一つ不自由なくともれいむをゆっくりさせなかった。
ガササッ!
「ゆっ!にゃんにゃにょ!?ゆっくちしにゃいででてきちぇにぇ!」
カサカサッ!
「ゆぴぃぃぃいいいい!ゆっくちしちぇぇぇぇええ!」
先祖をさかのぼっても数十代に渡って町暮らしのれいむは、街灯一つない森の闇夜に全く対処できない。
音の正体が夜行性の昆虫の類であっても、捕食種に一晩中狙われているかのような想像を働かせてしまう。
「もりしゃんはゆっくちできにゃいよぉ・・・。」
結局、10回夜を過ごした頃には、
れいむはあのゆっくり出来ない人間さんの町へと帰る決心をしていた。
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しばらく我慢して森で生活した結果、かろうじて赤ちゃん言葉の抜けたれいむ。
孤独に耐えられなかったとはいえ、さすがに赤ゆではない。
無計画に町への帰還を試みたわけではなかった。
「まちさんにはかわさんがあったよ!かわさんをたどれば、まちさんにかえれるよ!」
ゆっくりらしい高度な知性を働かせた見事な計画である。
れいむにとって幸運(町に帰ることを幸運と言えればだが)だったのは、
この川が本当に故郷の町までつながっていたことであろう。
群れを根こそぎ飲み込んだこの川、町にたどりつく頃には結構な川幅になっており、
高い堤防と広い河川敷を持つようになる。
用水路も多く造られ、町内や、その手前の農地に流れる小川は大体この川を大本にしているのだ。
要するに、
れいむが、母と住んでいた広場と、隣町の小学校を隔てていた小川も、
れいむの祖母が春に竜巻に巻き込まれて散った河川敷も、
この川を下っていけば、いつか必ずたどり着くことができるのだ。
無事に旅を終えることが出来れば。
「ゆぅぅ・・・みちさんはゆっくりしてね。」
れいむの旅は、出発初日に早くも大きな壁にぶつかっていた。
川に沿ってひたすら歩み続ける。それは、ゆっくりが考えるほどやさしいことではない。
何せその旅程の前半は、森の中をひたすら進むことになるのだ。
「ゆあーん。がけさんばっかりだよぉ。もうあるけないよ。」
舗装された道路どころか、そもそも道がない。
大きな岩や太い木の根が行く手を防ぎ、
でこぼこ道はゆっくりからすると崖の連続にしか見えない。
ロープやピッケルなど使えるはずもなく、
段差の下に降りるには、我慢してべちょりと落下するしかない。無理だ。
ちなみにこの賢いゆっくりには、いったん川から離れて、進みやすい道を進むという選択肢もない。
「ゆーん。れいむ、もうまちさんにかえれないよ・・・。」
「ゆふーん!れいむ、なにないてるんだぜ!」
「ゆゆっ!?」
うなだれて涙目になっていたれいむに声をかけたのは、川にぷかぷかと浮かぶ数百匹のまりさの群れを率いた、一匹の森まりさだった。
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「ゆんゆん。よっくわかったのぜ!たびはみちづれなのぜ。」
「ゆん?」
「まりさたちもかわさんをくだっていくのぜ。れいむもいっしょにいくのぜ!」
「ゆぅ・・・でもれいむはおぼうしさんないよ。」
「ゆふーん。おちびひとりくらい、まりさがいっしょにのせてあげるのぜ。」
「ゆっ!ありがとうだよ!」
「ななつのうみをまたにかける、まりさかいぞくだんにおまかせなのぜ!」
どこで覚えた言葉かは不明だが、れいむが襲われないあたり、まりさのいう海賊とは、要するに義賊の類と思われる。
意味もなく眼帯(のつもりらしい葉っぱ)をつけてみたり、口に茎の長い草をくわえているあたり、何かの影響を受けたのだろう。
ともあれこうして、森の奥深く、キャンプ場から離れた小さな池に住んでいたのであろう自称海賊まりさの一味に出会い、
れいむは川を下っていったのであった。
「ゆーん。まりさたちはどこにいくの?」
「ゆふん!まりさたちは、おやさいさんをひとりじめしてるのうかりんから、おやさいさんをいただきにいくのぜ!」
「ゆゆっ!?おやさいさんはとってもゆっくりできるよ。のうかりんはひとりじめしてるの?ゆっくりしてないね。」
「おまけにわるいにんげんさんといっしょになって、ゆっくりたちをおいはらうのぜ!ゆるせないのぜ!」
「でも、にんげんさんとけんかするとあぶないよ。ゆっくりきをつけてね。」
「ゆん。にんげんさんなんてどってことないのぜ。まりさはきょうぼうなねこさんも、たおしたことがあるのぜ!
でも、はんせいしておやさいさんをくれるなら、せいさいするのはのうかりんだけにしてあげるのぜ。」
「ゆーん。まりさはすごいね!」
こんな会話を交わしながらも、通常池や浅瀬を渡るのがやっとのゆっくりまりさからすれば、激流と言ってよい川を、
海賊まりさはこともなげに下っていく。
町までは一緒に行けないまでも、れいむの旅も大幅に期間を短縮できそうであった。
ちなみに周囲では、饅頭がバランスを崩しては水没し、その数はれいむに出会った当初の七割程度になっていたりするが、誰も気にしなかった。
そして、人間から見れば小さな小さな、ゆっくりからしたら致命的な大きさの、滝がすぐ先に迫っていることにも、当然誰も気を留めなかったのであった。
「ゆへん!たきさんにはびっくりしたけど、なんとかのうかりんのはたけまでこれたのぜ!」
「ゆーん。れいむはまちにいくから、ゆっくりおわかれだね。まりさもがんばってね。」
「ゆーん。せいぎはかつのぜ!れいむもゆっくりがんばってね!」
れいむは、まりさ海賊団の6匹全員にすーりすーりして別れを告げ、人間によって整地された川沿いの道を町へと歩いて行った。
「ゆーん。ゆっくりしたみちさんだよ。ゆっくりしたまりさたちのおかげで、まちさんにいけるよ!」
れいむと別れたまりさ海賊団は、無事目的地ののうかりんの畑にたどり着いていた。
ちなみに、入り口の看板には「国営実験農地」の文字。
実験と言っても、別に特殊な植物が育てられているわけではない。
実験対象は、まりさ達に目の敵にされているのうかりんの方である。
この地域での、ゆっくり農業適正試験が良好な成績を達成できれば、
現在施設管理など限定的な作業にのみ従事する、公務ゆっくりの活動範囲は大幅に拡大される事であろう。
優秀な胴付きゆっくりは、もはや人間社会に有用な労働力の一つなのである。
「ゆーんん、ゆふふーん。ゆゆー・・・」
そんな使命を知ってか知らずか、のうかりんは今日も鼻歌交じりに農作業にいそしんでいた。
好きな植物を好き勝手に育てられないのは多少不満だが、人間さんだってやりたいことだけやっているわけでもない。
少なくとも、自分の能力を十分に発揮できる環境を与えられていることに、のうかりんは満足していた。
まりさ海賊団が畑を進むと、(ゆっくりコンポストではない)普通のコンポストの中をのぞきながら、
ふんふんと満足げにうなずいているのうかりんが見えてきた。
「ゆほん!そこののうかりん!よっくきくのぜ!」
「?」
「ゆっくりおやさいさんをごうだつにきたのぜ!ひどいめにあいたくなかったらさっさとよこすのぜ!」
「・・・・・・。」
10秒後、畑の隅に新たに生まれた茶色い小山の前で、また肥料の材料が増えたと言うかのように、のうかりんは満足げに目を細めていた。
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その30分後、見事に道に迷ったれいむは、結局頼りになる海賊まりさ達に合流するため、のうかりんの畑に戻ってきていた。
「ゆぅ。みちさんがかわさんからはなれちゃったからわるいんだよ・・・。
れいむはあかちゃんじゃないから、みちさんにまよったりしないんだよ・・・。」
自分に言い訳しつつ畑を進むと、茶色いものを猫車に入れて運んでいるのうかりんに出会った。
「ゆ。のうかりんはゆっくりしたのうかりん?」
「ゆっくりしたゆっくりにはゆっくりしてるよ。」
「ゆーん!まりさがわるいのうかりんがいるっていってたから、しんぱいしちゃったよ!」
「でも、この畑さんはゆっくりしてないから、早く出ていった方がいいよ。」
「ゆゆっ!?でもまりさたちにあわないと・・・」
「・・・ここにさっき来たまりさ達は、もう逝っちゃったよ。」
「ゆーん。まりさ、もういっちゃったの?こまったよ。」
「何かあったの?」
「れいむはまちさんにかえりたいんだよ。でも、みちさんがゆっくりわからないんだよ。」
のうかりんに案内され農場の隅には、数台のトラックが止められていた。
残念ながらのうかりんに使用が許可されているのは耕運機くらいだが、一応本物の農場なのでトラックくらいはある。
「あの右側のすぃーが町にいくわ。人間さんにみつからない方がいいと思うから、こっそり荷台にでも入ってなさい。」
「ゆっくりありがとう!」
「ゆーん、ゆっくりした子ね。町さんには私の妹もいるから、もし会ったらよろしくね。」
「ゆっくりりかいしたよ!ゆっくりさよーなら!」
こうしてれいむは、のうかりんに教えられたとおり、左側のトラックにこっそり乗り込み、
のうかりん印の新鮮野菜を運ぶトラックに便乗して、無事、森のキャンプ場へとたどり着いたのであった。
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「どうじでもりさんにもどってきてるのぉぉおおおお!」
れいむは、きっとすぃーに乗っていた人間さんに見つかって、イジワルされたに違いないと、すっかり落胆してしまった。
もうすぐ日が暮れようとしている。今日一日は結局全て無駄になってしまったわけだ。
ともあれ、今日は疲れたのでおうちに帰って休もうとしていたところで、れいむは一匹のゆっくりと出会ったのだった。
「ゆ?ちょうどいいところに来たみょん。ちょっと聞きたいことがあるみょん。」
「ゆゆっ!?みょん?」
れいむの住んでいた元・群れのゆっくりプレイスにやってきたのは、一匹のみょんであった。
銀色の髪の毛はサラサラと輝き、青い両目も涼しげな、美みょん。
そのあご下には、鋼のごとく鍛え上げられた特大ぺにぺにがそびえ立っていた。
「師匠たちに挨拶しに来たみょん。でも、群れがどこにもいないみょん。」
「ゆ、ゆぅ・・・」
「群れが全滅かみょん・・・。残念みょん。」
「みょんのししょうさんって?」
「群れの長のまりさ師匠と、側近のみょん師匠だったみょん。
とってもゆっくりしてたのに、大雨で死んじゃうなんて、らしくないみょん。」
「ゆーん。」
その夜、れいむは旅みょんと夜遅くまで話に花を咲かせ、久しぶりに他のゆっくりの温もりを感じながら眠ることができたのであった。
「みょんは町に用事があるみょん。よかったら一緒に行くみょん。」
「ほんとうに!?やったよー。れいむひとりじゃまちさんにいけなかったんだよ。」
「みょんはもう何度も町に行ってるから心配無用だみょん。ゆっくり旅するみょん。」
「ところでれいむ、みょん。」
「なに?」
「すっきりーしたくないかみょん?」
「・・・れいむはこどもだから、すっきりーしちゃいけないっておかーさんがいってたよ。」
「もう赤ちゃんじゃないから大丈夫みょん。ちょっとすっきりーするだけみょん。」
「・・・きょうはしたくないよ。」
「そうかみょん。したくなったらいつでも言って欲しいみょん。」
「れいむ、みょん。」
「どうしたの?」
「すっきりーしたくないかみょん?」
「きょうはしないよ。」
「そうかみょん。」
「れいむ、みょん。」
「なに?」
「今日は天気も良くて絶好のすっきり―日和だみょん。」
「しないよ。」
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「着いたみょん。」
「やっとついたんだね。やったよ、おちびちゃんたち!これからはここがれいむたちのおうちだよ!」
「「「やっちゃあ!ゆっくち!ゆっくち!」」」
旅を始めてからひと月後、れいむが子ゆっくりからすっかり成体に成長した頃、
ついに母と住んでいた町の広場にたどり着いたのであった。
みょんの頭上には、赤れいむが2匹と赤ありすが一匹乗せられている。
旅の最中にれいむがみょんとすっきり―して出産した可愛いおちびちゃんたちだ。
「じゃあ、れいむ、おちびちゃんたち、みょんはもう行くみょん。」
「ゆぅ。ほんとうにいっちゃうんだね。」
「おとーしゃんいきゃにゃいでー。」
「みょんにはやらなければならないことがあるみょん。
それを忘れて、れいむ達としあわせーな家族にはなれないみょん。」
「ゆあーん。ぴゃぴゃー、ありしゅたちをしゅてないでにぇー。」
「ゆぅぅ。れいむたちはずっとまってるよ。みょんがかえってくるのをまってるからね!」
「・・・やくそくするみょん。全部お仕事が終わったら、必ず迎えに来るみょん。」
ゆあーんおとーしゃーん、はやきゅかえってきちぇにぇー・・・
「必ず帰ってくるみょん、今度こそアレに優勝して、必ず帰ってくるみょん・・・。」
みょんはれいむ達のもとを去り、以降れいむ達が生きている間、みょんが再びこの広場に戻ってくることはついになかった。
こうして、れいむはついに町へと戻った。
季節は秋を迎えて、もう酷暑に悩まされることはなくなったが、母も姉達も戻ってくることはない。
以前使っていたおうちは奇跡的に荒らされてはいなかったが、
みょんも去って、これから先、3匹のおちびちゃんを育てながら生きていくことは、並大抵のことではない。
ともあれ、これから先の物語については別の章に譲ることとして、本章は筆を置くこととする。
引越して、ネットから離れている間に「新人あき」さんが「そのまんまんあき」さんになっていたり、
餡庫SSがすごい勢いで増えていたりと、ビックリ。
穴場だと思って主戦場にしたんだけど、油断していると置いていかれるなあ。
過去作品
『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど)
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最終更新:2009年10月21日 18:39