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断片集 吾妻玲二

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断片集 吾妻玲二



歩く。
ただ、歩く。

また亡くしてしまった。
大切な存在を。

護らなければいけなかった存在を。
心の底から愛していた存在を。

今はやすらかに眠っている。

ただ、やすらかに。

吾妻玲二を愛してくれた人が。
吾妻玲二が愛した人が。

俺の腕の中でやすらかに寝ていた。

満足そうに。
幸せそうに。

歩く。
ただ、歩く。

両腕にかかる重さは以前より重たくなってるような気がする。
やすらかに寝ている顔も記憶の中の彼女より大人っぽくなっている。


キャル・ディヴィンス。


俺が愛した少女が俺の腕の中で眠っていた。
その眠りは二度と醒めない類の最悪な眠り。
成長した彼女は俺の帰りをずっと待っていて。
帰ってこなかった俺を恨んで憎んで。

でも

それでも愛してくれていた。

彼女は最期に笑ってくれた。

俺の為に。


それで充分だった。

すれ違いがあったとしても。
悲しい事があったとしても。



―――それで俺は救われている。
―――それで俺はまだ戦える。


キャルを生かす為からキャルを蘇らす為に。
俺はまだ殺し続ける事ができる。

キャルの為に。
キャルを愛してるから。

2年後のキャルでも。
俺の世界とは違うキャルでも。


俺は

全ての『キャル・ディヴィンス』の味方だ。


ずっと待ってくれていたキャルの為に。


俺は戦える。
俺は殺せる。


『ファントム』として。


キャルが笑ってくれるのなら俺は喜んで戦おう。
キャルが生きてくれるのなら俺は喜んで殺そう。

キャルは俺にやすらぎをくれた。
何の為に戦えば解らない俺に理由をくれた。
キャルは俺に全てを教えてくれた。
キャルは俺を愛してくれた。

そんなキャルの為のならば俺は全てを奉げられる。


それがここにいる吾妻玲二の存在理由。

だから吾妻玲二は戦える。
全てをかけて。

キャルも全力で戦っていた。
そんなキャルの為にも全力で戦わなければならないのだから。

何てことは無い。
キャル・ディヴィンスを愛し続けるからこそ戦える……それだけだ。


俺はどんな時でもキャルの味方だ。
キャルを愛しているからこそ生きていられる。
キャルを愛しているからこそ戦える。

全てはキャルの為……簡単だ。





目的の場所に着く。
そこは飲食店の冷蔵庫。
こんな寒い場所にキャルを置いておくのは憚れる思いだ。

それでもキャルの為。
そう想って彼女を静かに安置する。

キャルは微笑んでままで。
俺を見つめていた。

手は組ませなかった。
ここで終わらせるつもりは無い。
キャルの生をこのまま二度と終わらせるつもりは無いのだ。
キャルを蘇生させる。

あいつらから力を奪い取って。

もう一度キャルに笑ってもらう為に。
俺は毛頭諦めるつもりなど無かった。

キャルだけを死なせたまま生き続ける事など絶対にしない。


あの思い出のオルゴールを取り出す。
キャルに贈ったもの。
未だに大切に持っていてくれた。

音を鳴らす。

それは冷たい冷蔵庫の中に響き続けて。
眠っているキャルに届けと心から思う。

吾妻玲二はキャルの味方だ。

そうキャルに届けと思って。

もう二度と屈するつもりは無い。

だから……今は待って居てくれ。

キャル。

そろそろ行かなければならない。


その前に俺はもう一度しっかりと言う。


「キャル……愛している」


だから行こう。
キャルを蘇らせる為に。
『ファントム』として全てに死を。


全てはキャルの為に。
そう誓った。


俺は出る前にふと振り返る。
キャルが見つめているような気がした。

だから、俺はこう言う。

もう二度と曲げない約束。
絶対破らないと誓える約束。
キャルを悲しませない為に。

痛みも哀しみも味方に変えながら。


「大丈夫―――必ず、必ず……帰ってくる」


だから、俺を待っていて。
静かに見下ろしていて。


必ず―――帰ってくる。



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