Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo
「……困った」
深い森の中であたしは溜息を一人吐く。
ようやく座れそうなとこを見つけて、いつの間にか持ってたデイパックを開いた矢先の事だ。
あたしが覗いた中にはロクなものが入ってなかった。
何が入ってたかというと、
ようやく座れそうなとこを見つけて、いつの間にか持ってたデイパックを開いた矢先の事だ。
あたしが覗いた中にはロクなものが入ってなかった。
何が入ってたかというと、
「……このくちゃくちゃごてごてで趣味の悪いセンス。ど派手な輝き。
最悪だ。
それ以上に、こんなのどうやって使うかもわからん」
最悪だ。
それ以上に、こんなのどうやって使うかもわからん」
振り回せばいいのか? ほんとうにそれだけなのか!?
ワケ分からん。槍なのかも斧なのかも不明だぞ。
他に入っているものがないかと探してみれば、見つかった事は見つかった。
けど、それもやっぱりアホっぽい。
ワケ分からん。槍なのかも斧なのかも不明だぞ。
他に入っているものがないかと探してみれば、見つかった事は見つかった。
けど、それもやっぱりアホっぽい。
「くずかごのーと……。くちゃくちゃイタいぞ、コレ」
よく分からん絵とか意味不明な文章がいっぱい踊ってる。
『今にも政略結婚が行われようとしたその時、秘密の抜け穴を通って王子様は大聖堂からお姫様を連れ出すことに成功したのでした』
『山里のお寺に住む妖怪さんは物知りだけど一人ぼっち。友達を欲しがっていつもいつも泣いています』
『古い、古い昔の遺跡。そこにはドロボウさんなら誰でも欲しがる神秘のお宝が眠っていたのです』
『山里のお寺に住む妖怪さんは物知りだけど一人ぼっち。友達を欲しがっていつもいつも泣いています』
『古い、古い昔の遺跡。そこにはドロボウさんなら誰でも欲しがる神秘のお宝が眠っていたのです』
「……ダメだな、コレ書いたやつ」
さっさと二つともしまいこんであたしはようやくひと心地つく。
だけど、何であたしがこんな事をしなくちゃいけないのかを思い出して一気に沸騰した。
だけど、何であたしがこんな事をしなくちゃいけないのかを思い出して一気に沸騰した。
「……ふかーっ!!」
いったいなんなんだあのモジャは!!
いきなし殺し合いだなんてふざけすぎじゃこんちくしょー!!
なんであたしたちがそんなことしなくちゃいけないんじゃボケー!
いきなし殺し合いだなんてふざけすぎじゃこんちくしょー!!
なんであたしたちがそんなことしなくちゃいけないんじゃボケー!
そう思ったんだけど、すぐにあたしの頭に浮かんできたものがあった。
……死体だ。
思い出すだけであたしの体に震えが走る。
……死体だ。
思い出すだけであたしの体に震えが走る。
あたしはたくさんの猫を世話してきた。だから、その分死ってものに立ち会ったことがある。
死ぬ前にいきなりいなくなっちゃう猫もいるけど、そうじゃないこともある。
死ぬ前にいきなりいなくなっちゃう猫もいるけど、そうじゃないこともある。
あの、タカアキって人は本当に死んじゃった。
他にも、3人も。
皆死んじゃって、あたしたちもそんな中に放り込まれた。
他にも、3人も。
皆死んじゃって、あたしたちもそんな中に放り込まれた。
……さっき見た名簿の中にこまりちゃんがいなくてほんとに良かった。
はるかもみおもクドも、くるがや以外はみんないなくて安心した。
だけど、他に不安な事ができてしまった。
ここには、理樹がいる。
バカ兄貴やくるがやなら殺したって死なない。ほっといても平気だ。
馬鹿二人も死ぬはずない。あれであいつらは強いんだ。
だけど、理樹はそうじゃない。
……あんなモジャとかカタナ男なんかと会ったら、簡単に死んじゃうに違いない。
他の連中は死なないけど理樹は死ぬ。
だから、あたしはそんな事は絶対にさせない。
ここにはいないけど、探して探して探して――――見つけたら、どうやってでも守り抜いてやる!
あ、もちろん殺したりなんかはしないぞ、絶対にだ!
はるかもみおもクドも、くるがや以外はみんないなくて安心した。
だけど、他に不安な事ができてしまった。
ここには、理樹がいる。
バカ兄貴やくるがやなら殺したって死なない。ほっといても平気だ。
馬鹿二人も死ぬはずない。あれであいつらは強いんだ。
だけど、理樹はそうじゃない。
……あんなモジャとかカタナ男なんかと会ったら、簡単に死んじゃうに違いない。
他の連中は死なないけど理樹は死ぬ。
だから、あたしはそんな事は絶対にさせない。
ここにはいないけど、探して探して探して――――見つけたら、どうやってでも守り抜いてやる!
あ、もちろん殺したりなんかはしないぞ、絶対にだ!
「安心しろ、理樹。お前はあたしが守ってやる」
そう呟いた瞬間、
きゅ~~~~~~。
……おもっきしあたしの腹がなった。
そういえば、まだ食事前だったのにいきなりあそこに飛ばされたんだ、あたし達は。
今何時なんだろ。
森の中なので、どんだけ時間が経ったのかもよく分からん。
そういえば、まだ食事前だったのにいきなりあそこに飛ばされたんだ、あたし達は。
今何時なんだろ。
森の中なので、どんだけ時間が経ったのかもよく分からん。
「……何はともあれ腹が減っては猫まっしぐらだ。
何か、食べるものを探しにいくか」
何か、食べるものを探しにいくか」
呟いて、とりあえず歩き始めたその時。
すごくすごく美味しそうなニオイがあたしの鼻に届いた。
すごくすごく美味しそうなニオイがあたしの鼻に届いた。
◇ ◇ ◇
ぐつぐつ、ぐつぐつ。
琥珀色をした不透明のソースが丁寧に丁寧に煮込まれている。
ソースの中に混ざるのは、何種もの野菜だ。
琥珀色をした不透明のソースが丁寧に丁寧に煮込まれている。
ソースの中に混ざるのは、何種もの野菜だ。
えぐみの全くない、生で食べても甘ささえ感じる人参。
ほくほくと、噛み締めるたびに口の中に柔らかなデンプン質を解き放つジャガイモ。
じっくりと時間をかけて、飴色になるまで炒めたタマネギ。
これらを基本として、他にも数多の野菜がそのエキスを存分にソースに溶かし込む。
そんな野菜の旨みがたっぷり詰まった鍋の中で煮込まれているのは、豚バラ肉。
その過程で余分な脂はソースに満遍なく分散する。
残るのは適度な量の脂を持った、噛み応えのある味わい深い肉だ。
口の中に放り込み、噛む。
それだけでソースの味成分をたっぷり含んだそれはとろけ、口の中に脂の甘みと肉の旨みを染み渡らせてくれる。
ほくほくと、噛み締めるたびに口の中に柔らかなデンプン質を解き放つジャガイモ。
じっくりと時間をかけて、飴色になるまで炒めたタマネギ。
これらを基本として、他にも数多の野菜がそのエキスを存分にソースに溶かし込む。
そんな野菜の旨みがたっぷり詰まった鍋の中で煮込まれているのは、豚バラ肉。
その過程で余分な脂はソースに満遍なく分散する。
残るのは適度な量の脂を持った、噛み応えのある味わい深い肉だ。
口の中に放り込み、噛む。
それだけでソースの味成分をたっぷり含んだそれはとろけ、口の中に脂の甘みと肉の旨みを染み渡らせてくれる。
これらを纏め上げるのがスパイスだ。
ターメリック、クミン、コリアンダー、ショウガ、コショウ、シナモン、唐辛子。
エトセトラエトセトラ。
いくつものいくつもの香りが味覚のありとあらゆる部分を刺激する。
まさしくそれは香りのオーケストラ。
あまりにも複雑で、あまりにも魅惑的。
だから、食べ飽きない。
いくら食べてもそれを分析しきる事はできはしないのだから。
野菜も、肉も。
スパイスを浸透させる事で、他の料理には及びもつかない嗜好性をその内部に備えるのである。
ターメリック、クミン、コリアンダー、ショウガ、コショウ、シナモン、唐辛子。
エトセトラエトセトラ。
いくつものいくつもの香りが味覚のありとあらゆる部分を刺激する。
まさしくそれは香りのオーケストラ。
あまりにも複雑で、あまりにも魅惑的。
だから、食べ飽きない。
いくら食べてもそれを分析しきる事はできはしないのだから。
野菜も、肉も。
スパイスを浸透させる事で、他の料理には及びもつかない嗜好性をその内部に備えるのである。
この料理の呼び名は人によって様々だ。
カレーライス。カリーライス。ライスカレー。ライスカリー。
どんな風に呼んでもいいが、その中に必ず入る単語が一つある。
ライス。
これを以って、この料理は初めて完成する。
カレーライス。カリーライス。ライスカレー。ライスカリー。
どんな風に呼んでもいいが、その中に必ず入る単語が一つある。
ライス。
これを以って、この料理は初めて完成する。
そもそも、カレーという料理は発祥の地とされるインドには存在しない。
彼の地で消費される、多種多様なスパイスを使った煮込み料理。
その総称をイギリス人がカレーと名づけたというだけなのだ。
従って、カレーという料理はある意味無国籍なものなのである。
そしてそれ故に、日本に定着した『カレーライス』は、日本の米に相応しいアレンジがなされているのだ。
それはトロみの存在である。
たっぷり小麦粉を炒めて、それをルゥと共に鍋の中に流し込む。
こうする事で、満遍なく米に絡むソースを作る事ができるのだ。
日本以外の国で主に食される米はインディカ米。
粘り気が少なく、パサパサした食感が特徴のこの種にはさらさらとしたトロみの少ないソースは確かに合う。
だが、日本人の好むジャポニカ米はモチモチとした食感が特徴であり、炊いた時に水分を多く含む。
それ故に、水分の多いスープのようなソースよりも、トロみをつけたソースのほうが相性がよいのである。
彼の地で消費される、多種多様なスパイスを使った煮込み料理。
その総称をイギリス人がカレーと名づけたというだけなのだ。
従って、カレーという料理はある意味無国籍なものなのである。
そしてそれ故に、日本に定着した『カレーライス』は、日本の米に相応しいアレンジがなされているのだ。
それはトロみの存在である。
たっぷり小麦粉を炒めて、それをルゥと共に鍋の中に流し込む。
こうする事で、満遍なく米に絡むソースを作る事ができるのだ。
日本以外の国で主に食される米はインディカ米。
粘り気が少なく、パサパサした食感が特徴のこの種にはさらさらとしたトロみの少ないソースは確かに合う。
だが、日本人の好むジャポニカ米はモチモチとした食感が特徴であり、炊いた時に水分を多く含む。
それ故に、水分の多いスープのようなソースよりも、トロみをつけたソースのほうが相性がよいのである。
小麦粉を混ぜる理由はそれだけではない。
香ばしさ。
パンやクッキーなどで分かるとおり、加熱した小麦粉は食欲をそそる香りを放っている。
それを加える事で、カレーの旨さを非常に引き立てる事を可能とする。
香ばしさ。
パンやクッキーなどで分かるとおり、加熱した小麦粉は食欲をそそる香りを放っている。
それを加える事で、カレーの旨さを非常に引き立てる事を可能とする。
野菜。肉。スパイス。小麦粉。
これらを均一になるまで煮込み、極限まで洗練したソースをライスにかける。
米の一粒一粒に至るまでをソースに絡ませ、熱々の内に口に入れる。
これらを均一になるまで煮込み、極限まで洗練したソースをライスにかける。
米の一粒一粒に至るまでをソースに絡ませ、熱々の内に口に入れる。
スプーンの先のルゥとライスの混合物が、何百という数の香りの成分を放っている。
顔に近づけるだけで食欲の中枢を刺激するそれを、がぶりと一口。
口内に広がるのはあまりにも鮮烈すぎる芳香の交響曲。
全体として一つの主題を奏でながら、一つ一つは嫌味なく調和した完成度の高い芸術品だ。
顔に近づけるだけで食欲の中枢を刺激するそれを、がぶりと一口。
口内に広がるのはあまりにも鮮烈すぎる芳香の交響曲。
全体として一つの主題を奏でながら、一つ一つは嫌味なく調和した完成度の高い芸術品だ。
次いで舌の上にそれらを置けば、まさに気分は夢心地。
脂の甘さ。肉のコク。野菜の甘さ。スパイスの刺激。小麦粉の香ばしさ。米の滋味。
一体となったそれらは中毒性のある旨みとなって、我々を虜にさせるに違いない。
直後に襲ってくる辛味が舌に残るクドさを洗い流してしまうために、いくらでも食べられそうな気にさえなってしまう。
脂の甘さ。肉のコク。野菜の甘さ。スパイスの刺激。小麦粉の香ばしさ。米の滋味。
一体となったそれらは中毒性のある旨みとなって、我々を虜にさせるに違いない。
直後に襲ってくる辛味が舌に残るクドさを洗い流してしまうために、いくらでも食べられそうな気にさえなってしまう。
そうしてライスを食べながら、ごろごろと転がる肉を口に放り込む。
汗を流しながらひたすらがっつく体にとって、まさしくそれはスタミナ回復の為の一手。
噛み締めるごとに広がる肉々しい味わいを、体はご馳走として受け止めてくれるだろう。
そうして昇ってくるのはただ一言だ。
汗を流しながらひたすらがっつく体にとって、まさしくそれはスタミナ回復の為の一手。
噛み締めるごとに広がる肉々しい味わいを、体はご馳走として受け止めてくれるだろう。
そうして昇ってくるのはただ一言だ。
――――ああ、美味い。
余韻に浸りながらも、今度は野菜に手を伸ばす。
いい具合に煮崩れたジャガイモや、自然な甘さの柔らかい人参。
溶ける寸前まで煮込まれたタマネギをたっぷりソースに絡めていただく。
そしてまた、はふはふと息を荒げながらライスを平らげていく、そのローテーション。
いい具合に煮崩れたジャガイモや、自然な甘さの柔らかい人参。
溶ける寸前まで煮込まれたタマネギをたっぷりソースに絡めていただく。
そしてまた、はふはふと息を荒げながらライスを平らげていく、そのローテーション。
こんなに美味しいものがB級グルメだなんて!
何と日本人は贅沢なんだろう。
そんな事を思ってしまうほどに、カレーの魅力というのは抗いがたいものなのである。
何と日本人は贅沢なんだろう。
そんな事を思ってしまうほどに、カレーの魅力というのは抗いがたいものなのである。
◇ ◇ ◇
それは、見る人が見れば非常に彼女らしい行動だと納得した事だろう。
二人の少女を前に木影から棗鈴が行ったり来たりを繰り返しながらも、もの欲しそうに何かを見つめているのである。
視線の先にあるのは、カレーの鍋。
……要するに、カレーを食べたいにもかかわらず、人見知りが災いして近づけないのだ。
そんな鈴の様子を見て、カレーを作っていた二人も当初の警戒を解いて苦笑していた。
二人の少女を前に木影から棗鈴が行ったり来たりを繰り返しながらも、もの欲しそうに何かを見つめているのである。
視線の先にあるのは、カレーの鍋。
……要するに、カレーを食べたいにもかかわらず、人見知りが災いして近づけないのだ。
そんな鈴の様子を見て、カレーを作っていた二人も当初の警戒を解いて苦笑していた。
「えーと、あの。そちらの人はこんな殺し合いなんかに乗ってるわけじゃないんですよね……?」
「ふにゃっ!?」
「ふにゃっ!?」
大人しそうな少女が眉を下げた笑いで話しかけると、鈴は驚いて飛び退いた。
傍から見ればバレバレとはいえ、本人は気づかれていないつもりだったらしい。
びくびくと木陰に隠れながら、恐る恐る顔を覗かせて少女達の方を見る。
ここは森の中のキャンプ場。
二人の少女は焚き木などを集めて、カレーを作っていたらしい。
二人の内、今鈴に話しかけたほうの少女は警戒させないように気を使いながら、ゆっくりと自己紹介を始めた。
傍から見ればバレバレとはいえ、本人は気づかれていないつもりだったらしい。
びくびくと木陰に隠れながら、恐る恐る顔を覗かせて少女達の方を見る。
ここは森の中のキャンプ場。
二人の少女は焚き木などを集めて、カレーを作っていたらしい。
二人の内、今鈴に話しかけたほうの少女は警戒させないように気を使いながら、ゆっくりと自己紹介を始めた。
「あ、あの、えーと……。わたしは間桐桜って言って、こんな殺し合いに乗ったつもりはないんです。
だから、安心してください」
だから、安心してください」
にこりと微笑む桜と名乗った少女。
その手にあるお玉にはカレーがこびりついたままで、本人の言葉通りまったく殺し合いには似つかわしくない。
こいつは大丈夫かもしれないな、と鈴は内心の警戒のレベルを下げる。
カレーを呑気に作っている人間が、殺し合いなんかをするとは思えない。
その手にあるお玉にはカレーがこびりついたままで、本人の言葉通りまったく殺し合いには似つかわしくない。
こいつは大丈夫かもしれないな、と鈴は内心の警戒のレベルを下げる。
カレーを呑気に作っている人間が、殺し合いなんかをするとは思えない。
「そして、こっちの女の子もわたしと同じで殺し合いなんかしないって言ってる人です。
名前は……」
名前は……」
先ほどから俯いたままだった、もう一人の少女を見ながら桜が告げようとする。
と、その少女は顔も上げないままピースサインをして名乗りをあげる。
と、その少女は顔も上げないままピースサインをして名乗りをあげる。
「……清浦刹那、です。よろしくです」
向こうから挨拶をしてきた。ならば、こちらも言葉を返さなければなるまい。
それは彼女自身も分かっているとはいえ、鈴の動きは遅々として進まない。
つい先日まで旧バスターズメンバー以外とは殆ど話もできないような状態だったのだ、その人見知りは生半なものではない。
それでも、彼女はどうにか言葉を紡ぎだす。
――――どこかの世界で、何かを学び、糧として成長した事を証明するように。
それは彼女自身も分かっているとはいえ、鈴の動きは遅々として進まない。
つい先日まで旧バスターズメンバー以外とは殆ど話もできないような状態だったのだ、その人見知りは生半なものではない。
それでも、彼女はどうにか言葉を紡ぎだす。
――――どこかの世界で、何かを学び、糧として成長した事を証明するように。
「あ、あたしは、……棗、鈴だ。も、もちろん殺し合いなんてするつもりない!
あんなモジャの言う事聞いてたまるかボケ! ふざけんな!
つーかなんだ!? 何でこんな事する必要があるんだ! バカ兄貴の策略か!?」
あんなモジャの言う事聞いてたまるかボケ! ふざけんな!
つーかなんだ!? 何でこんな事する必要があるんだ! バカ兄貴の策略か!?」
……まあ、テンパリすぎて支離滅裂な事を口走っていたりもしたのだが。
とはいえ、そんな彼女の内面など知りようもない桜と刹那は戸惑うしかない。
威嚇するように肩をいからせる鈴に、どう対応したらいいものか狼狽していたのだが、しかし。
とはいえ、そんな彼女の内面など知りようもない桜と刹那は戸惑うしかない。
威嚇するように肩をいからせる鈴に、どう対応したらいいものか狼狽していたのだが、しかし。
きゅ~~~~~~。
鳴り響いた音に、緊張は一気に解ける事になる。
見れば、鈴が腹を押さえて顔を真っ赤にしている。直前までの勢いなど欠片も残っていない。
だから桜は、くすりと笑いながらもどうにか鈴を誘う言葉をかけることができた。
見れば、鈴が腹を押さえて顔を真っ赤にしている。直前までの勢いなど欠片も残っていない。
だから桜は、くすりと笑いながらもどうにか鈴を誘う言葉をかけることができた。
「くす、お腹が減ってたみたいですね、棗さん。
お近づきのしるしって事で、一緒にカレー食べませんか? 先輩仕込みだから美味しいですよ?」
お近づきのしるしって事で、一緒にカレー食べませんか? 先輩仕込みだから美味しいですよ?」
えっへんと立派な胸を張る桜。
その自信満々な様子と、何よりあたりに漂うカレーの食欲を誘う香ばしさ。
これら二つにより、鈴には生来の人見知りを負かすほどの欲求が湧き上がった。
その自信満々な様子と、何よりあたりに漂うカレーの食欲を誘う香ばしさ。
これら二つにより、鈴には生来の人見知りを負かすほどの欲求が湧き上がった。
「食べる! 腹減ってたんだ、ありがとう! さくら、お前いいやつだな!」
満面の笑みでカレー鍋のあるこちらに向かって突っ込んでくる鈴に、桜もまた微笑み返す。
その微笑に鈴は安堵のようなものを得ながら、えも知れない充実感を何となく感じていた。
それは自分ひとりで他の人間とコミュニケーションを取れた事に対してなのか、それを誰かに誇りたいからなのか。
ようとして知る事はできなかったが。
その微笑に鈴は安堵のようなものを得ながら、えも知れない充実感を何となく感じていた。
それは自分ひとりで他の人間とコミュニケーションを取れた事に対してなのか、それを誰かに誇りたいからなのか。
ようとして知る事はできなかったが。
◇ ◇ ◇
間桐桜は幸運に喜んでいた。
こんな短時間で、二人もこちらを信頼してくれる人間が現れたのだから。
こんな短時間で、二人もこちらを信頼してくれる人間が現れたのだから。
この殺戮会場に呼び寄せられた時、彼女はいつも通り衛宮家で夕食の準備をしている真っ最中だった。
正確にはいつも通り、ではなかったのだが。
正確にはいつも通り、ではなかったのだが。
――――聖杯戦争。
極東の地、冬木で行われる、万能の願望機を巡る戦いがとうとう勃発したのである。
余人のあずかり知らぬ所で、だ。
マキリサクラは五回目となるその戦乱の疑似聖杯であり、また、マスターとして参戦する予定の魔術師だった。
だが、その権利を彼女は放棄した。
兄である間桐慎二にマスター権を委譲し、自身は戦う事を望まなかったのだ。
それもこれもすべて、彼女の先輩であり、かけがえのない人間である衛宮士郎の為だ。
一応彼も魔術師ではある。だが、聖杯戦争を半人前の魔術師である衛宮士郎は知りえない。
間違いなく一般人同然といっていいだろう。
極東の地、冬木で行われる、万能の願望機を巡る戦いがとうとう勃発したのである。
余人のあずかり知らぬ所で、だ。
マキリサクラは五回目となるその戦乱の疑似聖杯であり、また、マスターとして参戦する予定の魔術師だった。
だが、その権利を彼女は放棄した。
兄である間桐慎二にマスター権を委譲し、自身は戦う事を望まなかったのだ。
それもこれもすべて、彼女の先輩であり、かけがえのない人間である衛宮士郎の為だ。
一応彼も魔術師ではある。だが、聖杯戦争を半人前の魔術師である衛宮士郎は知りえない。
間違いなく一般人同然といっていいだろう。
桜は思った。衛宮士郎を守らねばならないと。
彼は、無鉄砲で正義の味方を目指す人間だから。
元々彼に接触したのは彼の現状を調査する為だったのだが、しかし桜は今ではそんな事を抜きに純粋に好意を抱いていた。
だから、マスター権を放棄して彼の日常を守る……、いや、守ったはずだったのに。
唐突に、それは失われた。
バトル・ロワイアル――――人数だけなら、聖杯戦争も遥かに超える規模の殺し合いに巻き込まれる事で。
彼は、無鉄砲で正義の味方を目指す人間だから。
元々彼に接触したのは彼の現状を調査する為だったのだが、しかし桜は今ではそんな事を抜きに純粋に好意を抱いていた。
だから、マスター権を放棄して彼の日常を守る……、いや、守ったはずだったのに。
唐突に、それは失われた。
バトル・ロワイアル――――人数だけなら、聖杯戦争も遥かに超える規模の殺し合いに巻き込まれる事で。
最初は混乱した。どうすべきかも分からず、物影に怯えて縮こまるだけだった。
――――だが、デイパックの存在を思い出して中を改めた時、その思考は一変する事になる。
中に入っていた名簿。その中に、衛宮士郎の名が入っていたのだ。
彼女がやっとのことで祖父から掴み取った彼の安全。
それを、こんな形で脅かされる事になるなどとは思いもしなかった。
――――だが、デイパックの存在を思い出して中を改めた時、その思考は一変する事になる。
中に入っていた名簿。その中に、衛宮士郎の名が入っていたのだ。
彼女がやっとのことで祖父から掴み取った彼の安全。
それを、こんな形で脅かされる事になるなどとは思いもしなかった。
……そこからの行動は、彼女自身でも驚くほど早かった。
彼女のデイパックの中に入っていたランダム支給品。
残念ながら直接戦えそうな武器はなかったものの、一つのアイテムが彼女にアイデアを思いつかせたのだ。
彼女自身の得意とする、あるものを経由させる事で非常に有効に利用できそうだということを。
彼女のデイパックの中に入っていたランダム支給品。
残念ながら直接戦えそうな武器はなかったものの、一つのアイテムが彼女にアイデアを思いつかせたのだ。
彼女自身の得意とする、あるものを経由させる事で非常に有効に利用できそうだということを。
それを実行に移す為にまず周囲を探索した所、幸運にも一人の同行者を得る事ができた。
清浦刹那と名乗った彼女は口数は少ないものの、ピースサインをするクセがあったりと意外とお茶目だ。
出会った当初は警戒されたものの、どうやらこちらが殺し合いに乗っていないと判断してくれた様である。
とりあえず、彼女と情報交換するためにその場を作る次第となり――――、空腹を満たす為にも料理をしようということになった訳だ。
キャンプ場ゆえか近場の店にカレー材料が揃っていたので、キャンプの設備を使って簡単にカレーでも作ろうとしたところで現れたのが、棗鈴という少女だったのである。
清浦刹那と名乗った彼女は口数は少ないものの、ピースサインをするクセがあったりと意外とお茶目だ。
出会った当初は警戒されたものの、どうやらこちらが殺し合いに乗っていないと判断してくれた様である。
とりあえず、彼女と情報交換するためにその場を作る次第となり――――、空腹を満たす為にも料理をしようということになった訳だ。
キャンプ場ゆえか近場の店にカレー材料が揃っていたので、キャンプの設備を使って簡単にカレーでも作ろうとしたところで現れたのが、棗鈴という少女だったのである。
現在は三人で焚き火やその上のカレー鍋と飯ごうを囲み、情報交換をしているところだ。
カレーが出来るまでまだ少しはかかる。その時間を利用して、協力できそうな事を示し合わせておこうというわけだ。
……とは言っても、先ほどから話しているのは桜と鈴だけだったのだが。
性格なのか、刹那は出会った当初から俯いたままでほとんど話さない。
実の所、出会って1時間は経っているのに桜はまだ彼女の顔もまともに見てもいない。
質問をすれば答えてくれるとはいえ、多少のやりにくさを感じるのは仕方ないだろう。
カレーが出来るまでまだ少しはかかる。その時間を利用して、協力できそうな事を示し合わせておこうというわけだ。
……とは言っても、先ほどから話しているのは桜と鈴だけだったのだが。
性格なのか、刹那は出会った当初から俯いたままでほとんど話さない。
実の所、出会って1時間は経っているのに桜はまだ彼女の顔もまともに見てもいない。
質問をすれば答えてくれるとはいえ、多少のやりにくさを感じるのは仕方ないだろう。
そんな訳で、一度打ち解ければはきはきと答えてくれる鈴と出会ってからは、桜はまずそちらの持つ情報を収集することに専念した。
同時にこちらの知る情報も彼女達に開示していく。
リトルバスターズという、彼女の仲間の事。
衛宮士郎という少年の事。
鈴自身の行動方針。
それらを聞きながらも、カレー鍋をかき混ぜる手は休めない。
同時にこちらの知る情報も彼女達に開示していく。
リトルバスターズという、彼女の仲間の事。
衛宮士郎という少年の事。
鈴自身の行動方針。
それらを聞きながらも、カレー鍋をかき混ぜる手は休めない。
そんな折、こちらの手伝いとしてルゥを投入してくれた直後、刹那が珍しく自分から口を開く事で情報交換は一時中断された。
顔を赤らめながらのその言葉は、彼女の挙動や様子から予測した通りのものだった。
顔を赤らめながらのその言葉は、彼女の挙動や様子から予測した通りのものだった。
「……あの、間桐さん、棗さん。ちょっと、……その、お手洗いに……」
もちろん桜に断る意味などない。
むしろ、我慢などしてもらっては後々厄介な事になりかねないので推奨するくらいだ。
むしろ、我慢などしてもらっては後々厄介な事になりかねないので推奨するくらいだ。
「あ、はい、どうぞ刹那さん。私たちはここでお待ちしてますね?」
桜が言うなり、ぺこりと頭を下げて刹那は暗闇の方へ消えていく。
駆け足なあたり、もうだいぶ我慢していたのかもしれない。
苦笑しながらも、桜は思う。
……ちょうどいい頃合だ、と。
駆け足なあたり、もうだいぶ我慢していたのかもしれない。
苦笑しながらも、桜は思う。
……ちょうどいい頃合だ、と。
「……あの、鈴さん。ちょっとわたしのデイパックの中から取ってきて欲しいものがあるんですけど、いいですか?」
鍋を混ぜながらの台詞。これなら鈴に、鍋の側から離れられないことを印象付けられる。
そして、予想通りに鈴が腕を組みながら、自分の背後数メートル先のデイパックに向かって歩きはじめた。
そして、予想通りに鈴が腕を組みながら、自分の背後数メートル先のデイパックに向かって歩きはじめた。
「了解だ。なに取って来ればいいんだ?」
――――そう、絶好のポジションだ。
自分が鍋に向かって何をやっても、彼女の位置からは見えはしない。
「えっとですね、……ガラムマサラが入っていると思うんです。それをお願いできますか?」
言いながら、間桐桜は服のポケットから一つのものを取り出す。
――――シアン化カリウム。
青酸カリの入った、カプセルを。
それが彼女に与えられた支給品の一つだった。
――――シアン化カリウム。
青酸カリの入った、カプセルを。
それが彼女に与えられた支給品の一つだった。
間桐桜は思う。
これを集団の料理に紛れ込ませれば、そいつらを一網打尽に出来ると。
鍋のような、全員で突っつけるものが望ましい。
個数は全部で4つ。その一つを、今、使う。
これを集団の料理に紛れ込ませれば、そいつらを一網打尽に出来ると。
鍋のような、全員で突っつけるものが望ましい。
個数は全部で4つ。その一つを、今、使う。
自分は料理が得意だ。
それもこれも、全て料理の師匠である衛宮士郎のおかげである。
何と素晴らしいのだろう、彼から授かった技能で彼を守る事ができるなんて。
それもこれも、全て料理の師匠である衛宮士郎のおかげである。
何と素晴らしいのだろう、彼から授かった技能で彼を守る事ができるなんて。
間桐桜は幸運に喜んでいた。
こんな短時間で、二人もこちらを信頼してくれる人間が現れたのだから。
こんな短時間で、二人もこちらを信頼してくれる人間が現れたのだから。
――――ふふ、なんて殺しやすいんでしょうかね。
他の人もこのくらい殺しやすければ嬉しいんですけど。
他の人もこのくらい殺しやすければ嬉しいんですけど。
先輩を守る為なんです。
申し訳ないですけど、死んでもらえますよね?
申し訳ないですけど、死んでもらえますよね?
ほくそ笑みながら、背後でごそごそやっている鈴を尻目にカプセルを鍋に伸ばす。
刹那がいない今こそ、絶好の機会だろう。
そうして改めて鍋を見た瞬間、彼女は気付く。
刹那がいない今こそ、絶好の機会だろう。
そうして改めて鍋を見た瞬間、彼女は気付く。
「……カレーが、光っ――――?」
それが彼女の見た最期の光景となった。
◇ ◇ ◇
森の中を駆け抜ける。出来る限り、急いで。
清浦刹那と名乗った少女は、キャンプ場から即座に離脱する事を選んだ。
間もなくあの場所には人が集まってくるだろう。爆音を聞きつけて。
そうなる前にさっさとあの場を離れなければいけない。
間もなくあの場所には人が集まってくるだろう。爆音を聞きつけて。
そうなる前にさっさとあの場を離れなければいけない。
おそらく二人とも死んだだろうとは思うが、確信までは至らない。
何らかの間違いで生き残った場合、自分が犯人であると思われてはいけないのだ。
一応その為に、自分の良く知るある人物に成りすます事はしておいた。
幼馴染である、清浦刹那。
彼女の癖や特徴は熟知しているし、出来る限りまともに顔を見せることや目立つ行動もしなかった。
そもそもたった数十分から1時間強程度しか一緒に行動しなかった以上、ろくな記憶もないとは思うが完璧ではないだろう。
単なる『支給品の実験』で、今後の行動を制限されてはたまらない。
何らかの間違いで生き残った場合、自分が犯人であると思われてはいけないのだ。
一応その為に、自分の良く知るある人物に成りすます事はしておいた。
幼馴染である、清浦刹那。
彼女の癖や特徴は熟知しているし、出来る限りまともに顔を見せることや目立つ行動もしなかった。
そもそもたった数十分から1時間強程度しか一緒に行動しなかった以上、ろくな記憶もないとは思うが完璧ではないだろう。
単なる『支給品の実験』で、今後の行動を制限されてはたまらない。
『清浦刹那』は、――――いや、西園寺世界は思う。
自分は、絶対に無事に帰らなければいけないのだから、と。
自分は、絶対に無事に帰らなければいけないのだから、と。
西園寺世界がこの殺し合いの場に呼ばれたのは、ある年の末の事だった。
それまであった色々な問題がひと段落し、名実共に幸せな日々の真っ最中。
そんな平穏を、彼女はいきなり奪われた。
それまであった色々な問題がひと段落し、名実共に幸せな日々の真っ最中。
そんな平穏を、彼女はいきなり奪われた。
殺し合い。
初めは、そんな馬鹿なことがあるかと思った。
しかしそれはいとも簡単に否定される。
あまりにも無残な殺戮が目の前で行われた事で。
初めは、そんな馬鹿なことがあるかと思った。
しかしそれはいとも簡単に否定される。
あまりにも無残な殺戮が目の前で行われた事で。
見せしめとして殺された四人の人々。
見知らぬ場所に一人飛ばされた世界は、それを思い出すだけで震えが走るのを実感する。
自分なんかが生き残れるはずがない。
そんな恐怖に苛まれた彼女を救ったのは、彼女と共にいた人間だった。
――――そう。彼女は、一人ではなかった。
見知らぬ場所に一人飛ばされた世界は、それを思い出すだけで震えが走るのを実感する。
自分なんかが生き残れるはずがない。
そんな恐怖に苛まれた彼女を救ったのは、彼女と共にいた人間だった。
――――そう。彼女は、一人ではなかった。
正確には一人と計算していいものかは分からない。
何故ならその人間は、――――彼女の胎内にいたのだから。
何故ならその人間は、――――彼女の胎内にいたのだから。
西園寺世界は、妊娠していた。
自分が母親だという自覚。
それが彼女に強い意思を与えたのである。
絶対に、生きて帰ると。この子を産んでみせると。
それが彼女に強い意思を与えたのである。
絶対に、生きて帰ると。この子を産んでみせると。
その為に。
生きる為に、彼女はまずその手段を得る事を求めた。
手始めに支給されたデイパックの中身を確認し、そこにあったアイテムの説明書きを読む。
そして世界は理解する。
ある意味その支給品はアタリだったのだろう。
だが、使いどころが非常に難しいのだ。
直接的に危害を加えてくる人間に対抗するのには無力だとも言える。
第一、体に負担をかけて胎児に悪影響を及ぼしたりなどすれば元も子もないのだ。
生きる為に、彼女はまずその手段を得る事を求めた。
手始めに支給されたデイパックの中身を確認し、そこにあったアイテムの説明書きを読む。
そして世界は理解する。
ある意味その支給品はアタリだったのだろう。
だが、使いどころが非常に難しいのだ。
直接的に危害を加えてくる人間に対抗するのには無力だとも言える。
第一、体に負担をかけて胎児に悪影響を及ぼしたりなどすれば元も子もないのだ。
従って、世界は集団に加わる必要性を大いに知らされる事になる。
突然殺し合いをしろと言われて、はいそうですかと頷ける人間も確かにいるだろう。
だが、そんな人間に対抗する為の集団もおそらくいるはずだ。
彼らと出会えれば、自分の安全はある程度確保できるだろう。
戦闘なども今の自分は迂闊にこなせない以上、それを代わりにやってくれる人間がいるというのもありがたい。
突然殺し合いをしろと言われて、はいそうですかと頷ける人間も確かにいるだろう。
だが、そんな人間に対抗する為の集団もおそらくいるはずだ。
彼らと出会えれば、自分の安全はある程度確保できるだろう。
戦闘なども今の自分は迂闊にこなせない以上、それを代わりにやってくれる人間がいるというのもありがたい。
それに加え、自分の支給品は、集団内でこそ真価を発揮するアイテムだという理由もある。
西園寺世界に支給されたアイテム。
それは、いわゆるプラスチック爆薬だった。
西園寺世界に支給されたアイテム。
それは、いわゆるプラスチック爆薬だった。
コンポジションC4のブロック。
扱いやすさと信頼性を兼ね備える、理想的な爆薬だ。
そして、それを起爆する為の時限式の信管。
起動後三分経過で爆破するというこれらの組み合わせは、邪魔な相手を一気に吹き飛ばす事ができる。
だが、三分は戦闘中に使用するにはラグがありすぎる。
これらを有効に使えるシチュエーションはどんなものか。
扱いやすさと信頼性を兼ね備える、理想的な爆薬だ。
そして、それを起爆する為の時限式の信管。
起動後三分経過で爆破するというこれらの組み合わせは、邪魔な相手を一気に吹き飛ばす事ができる。
だが、三分は戦闘中に使用するにはラグがありすぎる。
これらを有効に使えるシチュエーションはどんなものか。
……それは、自身を仲間だと思って油断している人間たちをまとめて排除するという状況だ。
例えば――――、殺し合いの終盤で、その集団以外の外敵を殆ど排除した後のような。
仮に、本当に一人しか脱出できないとしたら。
そんな場合を考えれば、機さえ逃さなければ非常に有用なのは間違いない。
……もしも、誠や言葉といった知人がいたとしても。
今の自分が最優先するのは腹の中の子供だ。その時は容赦は出来ないだろう。
例えば――――、殺し合いの終盤で、その集団以外の外敵を殆ど排除した後のような。
仮に、本当に一人しか脱出できないとしたら。
そんな場合を考えれば、機さえ逃さなければ非常に有用なのは間違いない。
……もしも、誠や言葉といった知人がいたとしても。
今の自分が最優先するのは腹の中の子供だ。その時は容赦は出来ないだろう。
ただ、そんな状況で少しくらい怪しい行動をしても怪しまれないくらいの信頼を得る必要は、ある。
同時に、自分が爆薬を持っていることも知られてはならない。
あくまで無力な保護対象であると認識してもらわなければ、集団に入るのにもままならないだろう。
同時に、自分が爆薬を持っていることも知られてはならない。
あくまで無力な保護対象であると認識してもらわなければ、集団に入るのにもままならないだろう。
保身を第一に考える今の世界にとって、C4というアイテムの特性はまたもありがたいものになってくれた。
その自由自在に形を変える可塑性は、デイパック以外の場所にいくらでも仕込む事を可能としてくれたのだ。
髪の中や下着の中、靴の中。
そうした場所に少しずつC4を仕込んでしまえば、デイパックをいくら探しても見つかる事はない。
その自由自在に形を変える可塑性は、デイパック以外の場所にいくらでも仕込む事を可能としてくれたのだ。
髪の中や下着の中、靴の中。
そうした場所に少しずつC4を仕込んでしまえば、デイパックをいくら探しても見つかる事はない。
こうして全てのC4を仕込み終えた直後に出会ったのが、桜だったという訳だ。
かくして、世界は桜を相手にC4の使い勝手を試す為の実験をすることにした。
やはり説明書きの使い方を読んだだけでは分からないことはいっぱいある。
実際に試して、いざという時に使えるようにならなければならない。
鈴とも出くわしたのは偶然だったが、幸いどちらの人間も殺し合いに乗らなさそうな呑気な人間だ。
試し撃ち、いや、試し爆破としては申し分ない。
他の参加者との接触が殆どないうちに、さっさと済ませてしまうべきだろう。
かくして、世界は桜を相手にC4の使い勝手を試す為の実験をすることにした。
やはり説明書きの使い方を読んだだけでは分からないことはいっぱいある。
実際に試して、いざという時に使えるようにならなければならない。
鈴とも出くわしたのは偶然だったが、幸いどちらの人間も殺し合いに乗らなさそうな呑気な人間だ。
試し撃ち、いや、試し爆破としては申し分ない。
他の参加者との接触が殆どないうちに、さっさと済ませてしまうべきだろう。
だから世界は、念のために清浦刹那を名乗り、ルゥと一緒にC4をカレー鍋の底に流し込んで早々に離脱した。
その結果が――――、
その結果が――――、
「……あ、爆発……したんだ」
轟音となって、世界の耳に訪れた。
一瞬、猛烈な後悔が世界を包み込む。吐き気すら催しそうだ。
……だが、世界はそれを一息の下に呑み込む。
自分は絶対に生き残らねばならないのだからと、それだけを考えるようにして。
一瞬、猛烈な後悔が世界を包み込む。吐き気すら催しそうだ。
……だが、世界はそれを一息の下に呑み込む。
自分は絶対に生き残らねばならないのだからと、それだけを考えるようにして。
これから自分はどうすべきかということに意識を移し、それだけを考えるようにする。
まず大前提として、とにかく頼れる集団に属する必要があるだろう。
身の安全が第一だ。
敢えて殺し合いに乗る必要はない。放っておいてもどうせ人数は減っていく。
それができ次第、自分の知人を探す事を集団に伝える事ができれば御の字だ。
まず大前提として、とにかく頼れる集団に属する必要があるだろう。
身の安全が第一だ。
敢えて殺し合いに乗る必要はない。放っておいてもどうせ人数は減っていく。
それができ次第、自分の知人を探す事を集団に伝える事ができれば御の字だ。
自分の恋人、誠。
一時期いがみ合ったものの、今では友人として接している誠のもう一人の恋人、言葉。
幼馴染の刹那。
一時期いがみ合ったものの、今では友人として接している誠のもう一人の恋人、言葉。
幼馴染の刹那。
刹那に関してはもし桜や鈴が生きていたら迷惑をかけるかもしれないが、自分から彼女に成りすました事を言う必要はないだろう。
とりあえず、生きて会えたらそれを喜ぼう程度に考える。
とりあえず、生きて会えたらそれを喜ぼう程度に考える。
と、そこで思いつく。
もしかしたら、服で自分だと特定されるかもしれない。
念のため着替えておいた方がいいだろう。
もしかしたら、服で自分だと特定されるかもしれない。
念のため着替えておいた方がいいだろう。
それを肝に銘じ、世界はゆっくりと歩き出す。
とりあえず目指すは北だ。キャンプ場からは出来る限り離れないといけない。
中心街のような、治安のよさそうな場所なら安全かもしれないので、そこを目指す事にする。
とりあえず目指すは北だ。キャンプ場からは出来る限り離れないといけない。
中心街のような、治安のよさそうな場所なら安全かもしれないので、そこを目指す事にする。
西園寺世界は、自覚のないエゴイストだ。
我が身可愛さに人を踏み躙る事もしばしばである。
……本人がそれに気付いているか否かは別として。
『子供の為』という大義名分を得た彼女が、それを楯に人々に何をもたらすのか。
それを知る事は、今はまだ叶わない。
我が身可愛さに人を踏み躙る事もしばしばである。
……本人がそれに気付いているか否かは別として。
『子供の為』という大義名分を得た彼女が、それを楯に人々に何をもたらすのか。
それを知る事は、今はまだ叶わない。
【C-3南西部 森/一日目 深夜~黎明】
【西園寺世界@School Days L×H】
【装備】: 時限信管@現実×4、BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C4(残り約0.9kg)@現実
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康、妊娠中
【思考・行動】
基本:保身を第一に考える。元の場所に帰還して子供を産む。
0:……ごめんね、間桐さん、棗さん。
1:大集団に加わって安全を確保する。知人と一緒に帰還できない様なら、優勝する為機を見てまとめて爆破する。
2:誠や言葉、刹那を探す。
3:積極的な殺人はしない。しかし、後々障害になりそうなら知人でも周囲にばれない様に排除。
4:服を着替えて、『清浦刹那』と同一人物であると思われないようにする。
5:とりあえず、中心街の方を目指す。
【備考】
※参戦時期は「『二人の恋人』ED直後です。従って、桂言葉への感情や関係は良好です。
※下着や靴の中などにC4を仕込んでいます。デイパック内部にC4は存在しません。
※時限信管はポケットに入っています。デイパック内部に時限信管は存在しません。
※桜と鈴は死亡したと思っています。ただし、生存の可能性も考慮しています。
※衛宮士郎、リトルバスターズ!勢の身体的特徴や性格を把握しました。
【装備】: 時限信管@現実×4、BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C4(残り約0.9kg)@現実
【所持品】:支給品一式
【状態】:健康、妊娠中
【思考・行動】
基本:保身を第一に考える。元の場所に帰還して子供を産む。
0:……ごめんね、間桐さん、棗さん。
1:大集団に加わって安全を確保する。知人と一緒に帰還できない様なら、優勝する為機を見てまとめて爆破する。
2:誠や言葉、刹那を探す。
3:積極的な殺人はしない。しかし、後々障害になりそうなら知人でも周囲にばれない様に排除。
4:服を着替えて、『清浦刹那』と同一人物であると思われないようにする。
5:とりあえず、中心街の方を目指す。
【備考】
※参戦時期は「『二人の恋人』ED直後です。従って、桂言葉への感情や関係は良好です。
※下着や靴の中などにC4を仕込んでいます。デイパック内部にC4は存在しません。
※時限信管はポケットに入っています。デイパック内部に時限信管は存在しません。
※桜と鈴は死亡したと思っています。ただし、生存の可能性も考慮しています。
※衛宮士郎、リトルバスターズ!勢の身体的特徴や性格を把握しました。
【時限信管@現実】
C4やTNT、ガソリンといった爆発物を一定時間後に起爆させる為の装置。軽量かつ小型なのでポケットにも入ります。
たとえ火の中水の中草の中(中略)あの子のスカートの中でさえも、カレーの中でも作動する信頼性の高さも魅力。
起動後の爆発までの猶予は一律で三分。カップ麺が出来るまで。
接触信管とは違って、戦闘中に使っていられるほどの余裕はまずないだろう。
C4やTNT、ガソリンといった爆発物を一定時間後に起爆させる為の装置。軽量かつ小型なのでポケットにも入ります。
たとえ火の中水の中草の中(中略)あの子のスカートの中でさえも、カレーの中でも作動する信頼性の高さも魅力。
起動後の爆発までの猶予は一律で三分。カップ麺が出来るまで。
接触信管とは違って、戦闘中に使っていられるほどの余裕はまずないだろう。
【BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C-4@現実】
米軍御用達のプラスチック爆薬C4のM5A1ブロック。2.5ポンド、即ちおよそ1.13kg入り。
どんな形状にも変形できる使い勝手の良さと、信管による起爆以外ではまず爆発しない信頼性を持ち合わせる。
逆に言えば、信管がなければ火をつけても普通に燃えるだけなので燃料程度にしか使えない。
破壊力はTNT換算で1.3~1.4倍程度とこちらも優秀。
ちなみにTNTを使用したM26破片手榴弾の装薬量は156gな為、およそ100g強でC4は手榴弾と同程度の爆発力を持つということである。
ただし、破片による殺傷を考慮していない為、上述の量では破壊力そのものは及ばない。
米軍御用達のプラスチック爆薬C4のM5A1ブロック。2.5ポンド、即ちおよそ1.13kg入り。
どんな形状にも変形できる使い勝手の良さと、信管による起爆以外ではまず爆発しない信頼性を持ち合わせる。
逆に言えば、信管がなければ火をつけても普通に燃えるだけなので燃料程度にしか使えない。
破壊力はTNT換算で1.3~1.4倍程度とこちらも優秀。
ちなみにTNTを使用したM26破片手榴弾の装薬量は156gな為、およそ100g強でC4は手榴弾と同程度の爆発力を持つということである。
ただし、破片による殺傷を考慮していない為、上述の量では破壊力そのものは及ばない。
◇ ◇ ◇
背後から強烈な白い光を感じた鈴は、一瞬浮遊感を感じた。
直後に強烈な熱と、背面への痛みが走る。
地面に叩きつけられ、しばし呆けることを強制された。
直後に強烈な熱と、背面への痛みが走る。
地面に叩きつけられ、しばし呆けることを強制された。
が、しかし、そんな場合ではないことをどうにか感じ取り、振り向いたその先には。
「……さ、くら? さくら……。さくらぁぁぁぁああああっぁぁあぁあああぁああっ!!」
胸部から腹部にかけての前半分を失った間桐桜が、店先の魚と同じ目で仰向けに倒れていた。
抉られたそこからはどろどろと小腸と大腸の合挽き肉が零れ落ち、まだ熱を持つ肝臓が夜闇に水蒸気の白い帯をたゆたわせている。
心臓にはとうに穴が開き、どう考えても死体そのものだ。
よくよく見れば、砕けたカレー鍋の破片やカレーそのものが、彼女の死体のあちこちに痕跡を残している。
四肢に突き刺さった金属片のそれぞれからは固まっていない血が流れ出し、カレーは内臓とミックスされて人肉カレーを作っていた。
抉られたそこからはどろどろと小腸と大腸の合挽き肉が零れ落ち、まだ熱を持つ肝臓が夜闇に水蒸気の白い帯をたゆたわせている。
心臓にはとうに穴が開き、どう考えても死体そのものだ。
よくよく見れば、砕けたカレー鍋の破片やカレーそのものが、彼女の死体のあちこちに痕跡を残している。
四肢に突き刺さった金属片のそれぞれからは固まっていない血が流れ出し、カレーは内臓とミックスされて人肉カレーを作っていた。
鈴は知る由もないが、実の所桜のおかげで彼女は奇跡的に軽症で済んでいた。
C4が放り込まれたカレー鍋と鈴の間に桜がいた為、爆風や鍋の破片の飛散に対し、彼女の肢体が肉の楯となったのである。
皮肉な事に――――、鈴を葬り去るため毒を混入しようとしたことで、桜は鈴を救う事となった。
C4が放り込まれたカレー鍋と鈴の間に桜がいた為、爆風や鍋の破片の飛散に対し、彼女の肢体が肉の楯となったのである。
皮肉な事に――――、鈴を葬り去るため毒を混入しようとしたことで、桜は鈴を救う事となった。
「せつな……! どこだ、はやく来てくれ! さくらが! さくらが……!」
しかし、そんな事は鈴には分からない。
捨てられた猫のように、鳴き/泣きながら、自分を拾ってくれた人/桜の体に縋るだけだ。
捨てられた猫のように、鳴き/泣きながら、自分を拾ってくれた人/桜の体に縋るだけだ。
「駄目だ、駄目だ、死んじゃ駄目、さくら……!
先輩に会うんだろ、こんなとこで寝ちゃ駄目なんだぞ、さくら……っ!!」
先輩に会うんだろ、こんなとこで寝ちゃ駄目なんだぞ、さくら……っ!!」
その声が届くことは、もうありえない。
殺し合いの理不尽さに怒り打ち震えながら、しかし何も分からないまま。
桜の明確な敵意も、『刹那』の無自覚な殺意も知らないまま。
棗鈴はただ、泣いていた。
どうしようもない現実を前に、一人で泣き続けることしか出来なかった。
桜の明確な敵意も、『刹那』の無自覚な殺意も知らないまま。
棗鈴はただ、泣いていた。
どうしようもない現実を前に、一人で泣き続けることしか出来なかった。
ここには、彼女を助けてくれる幼馴染は、誰一人いないのだから。
【D-3 キャンプ場/一日目 深夜~黎明】
【棗鈴@リトルバスターズ!】
【装備】:ハルバード@現実
【所持品】:支給品一式、草壁優季のくずかごノート@To Heart2
【状態】:背中と四肢の一部に火傷(小) 、空腹、激しい動揺
【思考・行動】
基本:理樹を探し出し、守る。殺し合いには絶対乗らず、生きて帰る。
0:さくら? さくら!? 死んじゃ駄目、死んじゃ駄目だ……!
1:理樹を探し、守る。
2:リトルバスターズメンバーを探し、同行する。
3:刹那を探す。
4:衛宮士郎を探し、同行する。
【備考】
※参戦時期は謙吾が野球に加入する2周目以降のどこかです。故に、多少は見知らぬ人間とのコミュニケーションに慣れているようです。
※くずかごノートの情報に全く気付いていません。
※衛宮士郎の身体的特徴や性格を把握しました。
※『清浦刹那』に関しては、顔もまともに見ておらず、服装や口調、ピースサイン程度の特徴しか認識していません。
【装備】:ハルバード@現実
【所持品】:支給品一式、草壁優季のくずかごノート@To Heart2
【状態】:背中と四肢の一部に火傷(小) 、空腹、激しい動揺
【思考・行動】
基本:理樹を探し出し、守る。殺し合いには絶対乗らず、生きて帰る。
0:さくら? さくら!? 死んじゃ駄目、死んじゃ駄目だ……!
1:理樹を探し、守る。
2:リトルバスターズメンバーを探し、同行する。
3:刹那を探す。
4:衛宮士郎を探し、同行する。
【備考】
※参戦時期は謙吾が野球に加入する2周目以降のどこかです。故に、多少は見知らぬ人間とのコミュニケーションに慣れているようです。
※くずかごノートの情報に全く気付いていません。
※衛宮士郎の身体的特徴や性格を把握しました。
※『清浦刹那』に関しては、顔もまともに見ておらず、服装や口調、ピースサイン程度の特徴しか認識していません。
【草壁優季のくずかごノート@To Heart2】
ポエミィな文章に満ち満ちた、人によっては黒歴史満載な時期の思い出の一品。
……なのだが、それに混じって今ロワについての情報がいくつも追加されているようである。
ただし真偽の程は不明。
しかも玉石混合なため、もしかしたら重要な情報が書いてあるかもしれないが、
それを探し当てるのはウォーリーの国でウォーリーを探すより困難だろう。
ポエミィな文章に満ち満ちた、人によっては黒歴史満載な時期の思い出の一品。
……なのだが、それに混じって今ロワについての情報がいくつも追加されているようである。
ただし真偽の程は不明。
しかも玉石混合なため、もしかしたら重要な情報が書いてあるかもしれないが、
それを探し当てるのはウォーリーの国でウォーリーを探すより困難だろう。
◇ ◇ ◇
もはや何もかもが分からなかった。
意識は混濁し、体が冷たくなっていく事を実感する。
意識は混濁し、体が冷たくなっていく事を実感する。
何がいけなかったのか。何故こんな事になったのか。
彼女には分からないし、分かったとして今更流れを変えることなどできはしない。
これは一つの末路。
他者を省みなかった一人の少女の、数多の可能性の一つである。
彼女には分からないし、分かったとして今更流れを変えることなどできはしない。
これは一つの末路。
他者を省みなかった一人の少女の、数多の可能性の一つである。
――――ただ、たった一つ彼女が間違わなかったのは。
衛宮士郎を守りたいという決意。
それだけは、確かに尊ぶべきものだったろう。
衛宮士郎を守りたいという決意。
それだけは、確かに尊ぶべきものだったろう。
霞む思考の中で、泣き叫ぶ少女の声が聞こえてくる。
マキリサクラはそれを、何故かは分からないがとても嬉しくて、同時にとても申し訳ないと思う。
それきり、もう何を考える必要も無くなった。
マキリサクラはそれを、何故かは分からないがとても嬉しくて、同時にとても申し訳ないと思う。
それきり、もう何を考える必要も無くなった。
最後に残ったモノは、この少女に大切なヒトを守って欲しいなあ、という意識の泡沫だけ。
こうして奮戦は荼毘に付す。
願わくば、愚昧だった彼女の決意が、今際の悲鳴に貶められぬよう。
願わくば、愚昧だった彼女の決意が、今際の悲鳴に貶められぬよう。
【間桐桜@Fate/stay night[Realta Nua] 死亡】
※D-2~D-3付近に爆発音が響き渡りました。
※桜の死体の側にシアン化カリウム入りカプセル×1が落ちています。同じもの×3が、桜の死体のポケットに入っています。
※鈴の側に、デイパック(支給品一式、ガラムマサラ、不明支給品(武器は入っていない)×1~2入り)が落ちています。
※桜の死体の側にシアン化カリウム入りカプセル×1が落ちています。同じもの×3が、桜の死体のポケットに入っています。
※鈴の側に、デイパック(支給品一式、ガラムマサラ、不明支給品(武器は入っていない)×1~2入り)が落ちています。
【シアン化カリウム入りカプセル】
ご存知青酸カリの入ったカプセル。一粒で数人くらいなら殺せる量の毒が入っています。
ご存知青酸カリの入ったカプセル。一粒で数人くらいなら殺せる量の毒が入っています。
007:I AM SACRIFICE BLOOD | 投下順 | 009:狂ヒ咲ク人間ノ証明 |
時系列順 | ||
西園寺世界 | 046:求めなさい、そうすれば与えられる | |
棗鈴 | 042:World Busters! | |
間桐桜 |