(あれは……シルビア!?)
遠くで見えたのは、かつての仲間の一人。

そして、見知らぬモンスターがいる。


「ポッド、頼む!」

イレブンの指示を受け、ポッドは銃弾をマシンガンのように放つ。

(!?)
ポッドの放った弾は、全てネメシスから逸れた。
外したようには見えなかった。だが、弾は不自然な弾道を持って、敵から外れたのだ。
『推奨:退却。ネメシス・T型の周りに電磁波確認。恐らく遠距離武器全て無効。』

「そんなことするわけないだろ!!」

何やらポッドは、敵の情報を知っているようだが、逃げる気は全く起きなかった。
また恥ずかしくなる可能性があっても、勇者の決意が仲間を見捨てることを許さなかった。


魔力はない。ポッドの銃弾は何故か当たらない。従って、この鎌のみが頼れる武器になる。
いつ恥ずかしくなってしまうのかも分からない。
だが、人を襲っているモンスターを見逃すわけにはいかない。
ましてや、襲われている人の一人が、かつての仲間だ。


絶望の鎌を振り回し、ネメシスに斬りかかる。
しかし、ネメシスは後ろに飛びのいて、斬撃を躱す。

巨体らしからぬ身のこなしに驚くイレブンに、多数の触手が襲い掛かる。


(!?)
「鎌と言うのは、こう使うのだ。」

しかし、その触手はイレブンに触れることなく切り落とされた。
イレブンの鎌の使い方を見かねた魔王が、鎌を奪い、触手を即座に切り落としたのだ。


そして魔王はもう一閃。追加で何本かの触手が切り落とされ、ネメシスの胴体にも裂傷が入る。


本来草刈りや麦刈りで使われる鎌は、敵との戦いでは上手くダメージを与えるのは難しい。
だが、その反面一たび使い慣れれば、遠心力を用いて剣や槍にも劣らぬ威力を発揮する。


そして、対ネメシス勢力が優勢になったのは、魔王に新たな武器と、戦力が手に入ったことのみではなかった。

「ちょっと、そこのアナタ!!女の子をおぶって戦うなんて危険よ!!アタシに貸して!!」
「この剣、あげるニャ!!あの怪物はボクじゃとても倒せないニャ!!」



サクラダとオトモが、それぞれイレブンのアシストを行う。
ここまで視線を浴びたのは、ニズゼルファを倒し、イシの村から称賛を受けた時以来だ。
イレブンは視線を落としてしまう。


(やっぱり……恥ずかしい……。)
「イレブンちゃん、何やってるのよ!行くわよ!!」
シルビアがツッコミを入れ、イレブンを奮い立たせる。


再度戦線復帰し、魔王とイレブンが前線。シルビアが一歩引いてそのサポートを行う。


「S.T.A.R.S!!」
ネメシスの拳が魔王に襲い掛かる。
だが、イレブンがネメシスの二の腕を斬り付けたため、パンチのスピードが落ちる。
魔王は後ろへ退き、カウンターとばかりに鎌の一撃を見舞う。


シルビアが魔王が付けた裂傷の部分に青龍刀を突き刺し、傷が治る前に広げる。


「S.T.A.R.S!!」
ネメシスは懐まで飛び込んできたシルビアを、ハエでも払うかのように両腕を振り回して攻撃する。

だが、魔王が片腕を斬り付け、攻撃をキャンセルさせる。


今度は魔王達が、ネメシスを押し始める。
即席で作ったメンバーにしては、非常にバランスが取れた戦いだった。
魔王の鎌と、イレブンの片手剣、そしてシルビアの短剣。
それぞれリーチが異なる反面、それぞれ異なる攻撃が出来る。
加えて、魔王とイレブンにはシルビアのバイキルトがによって、攻撃力がさらに増している。

勢いに乗るイレブンとシルビアは、既にゾーン状態に入っていた。


だが、イレブンも魔王も、そしてシルビアも引っかかる所があった。

この怪物は、いつになったら倒れるのかと。
ダメージこそ着実に増やしている。
だが、ネメシスはなおも生命どころか、スタミナ切れする気配すら見せない。
常に全力、フルスイングで攻撃して来る。


「イレブンちゃん、れんけい技行くわ!!メラハリケーンよ!!」
「……わかった。」

イレブンはシルビアの案に同意する。

ゾーン状態の勢いを魔力に替えたれんけい技なら魔力がない今の自分でも、破壊力に優れた攻撃を入れることが出来る。
だが、自分とシルビアが今まで使ったれんけい技は、味方を補助する技が多かった。

数少ない攻撃の中でもメラハリケーンだけでは完全に倒しきるのは難しいような気がした。



「S.T.A.R.S!!」
ネメシスが唸り声をあげて、まだ斬られていない触手を振り回す。
だが、それが当たる前に、シルビアが竜巻魔法を、イレブンが炎魔法をネメシスにぶつける。

「「焼き付くせ!!メラハリケーン!!」」
「グゥオオオOOOオオHHHH!!」


炎の竜巻が発生する。
しかし、紅蓮の蛇に焼かれ、引きちぎられながらも、ネメシスは反撃に出ようとする。
その姿は、さながら炎の巨人、イフリートの様だった。


「こうすれば良いのだな!」


だが、手札はもう一枚あった。
紅蓮の竜巻の色が、更に濃くなる。
魔王は古代のジール王国にいた時、魔法学者から、数人でないと使うことが出来ない魔法があると聞いていた。
そしてクロノ達が自分と戦った際に、そのような技を使っていた。
実際に魔王が使ってみるのは初めてだが、元々魔王の世界にはない、風属性の技が新たな可能性を創り出した。


炎の軌道を調節する力は、竜巻の全範囲に炎を行き渡らせ、壊すことなく火力のみを強くした。
灼熱の渦に魔王のファイガを加わり、火力はネメシスを燃やし尽くすほどに広がり、竜巻もネメシスを覆い隠すほど高く、広くなる。


「スタアァァァ………ァア……ズ!!」
炎の竜に巻かれる、ネメシスの声が聞こえる。

メラハリケーン、もといファイガハリケーンが晴れる。
そこに残っていたのは巨大な消し炭と、唯一竜巻から逃れたネメシスの豪傑の腕輪が付いた片腕、そして切り落とされた触手だけだった。


「すごいニャ!!どうやったらこんな技を出せるんだニャ!?」
「アンタもイケメンだし、強いのね。」
オトモとサクラダが感心して、イレブンの方を見る。

「………!!」

イレブンは急に顔を隠した。
「…何か悪いことしたかニャ!?」
「ごめんね。このコ、ちょっと恥ずかしがり屋なのよ。」


シルビアがイレブンのことを説明する。

「ところでイレブンちゃん。しばらく見ない間に、凄く強くなってない?
見違えたみたいよ!」


「え?それってどういう……。あと、見つめられると……。」
イレブンはシルビアの言葉に疑問を抱く。
シルビアや他の仲間たちと協力して、ニズゼルファを倒して以来、特に手強い敵との戦いや集中的な鍛錬を行っていなかった。

「謙遜しなくていいわ。とりあえず、またよろしくね。」
邪神を倒した者と、倒してない者の違い。
この二人はまだ知ることが無かった。




そして、会話を通じて伝えられることもなかった。




ネメシスの唯一残された、落ちた左腕がズズ、と動く。

「危険:ネメシスの、生存反応、アリ。」

鋭利な触手を掴み、ダーツのように投げる。
この戦いの参加者を死ぬまで、否、死しても狩り続けるように指示されたネメシスの意思だろうか。
それとも、改造に改造を繰り返されたネメシスの生命力だろうか。


狙われたのは、ベルをなおも背負って、かつ反射神経が一般人レベルのサクラダ。
「!!?」

ポッドの声を聞いた後では、もう遅かった。
声にならない悲鳴を上げる。
もう遅い。
背中の少女ごと、貫かれる。


(くそ……くそ……!!)


イレブンは七宝のナイフで、残されたネメシスの腕を滅多切りにする。
肉塊になったそれは、暫くビクビクと痙攣したのち、完全に動かなくなった。


「なん……で。」
「どうしてよ。」


どうしようもない量の血が流れる。
シルビアの赤い服を、更に紅く染めて行く。

「どうして、アナタが死んでるのよ!!」
あの時、触手で刺されたはずのサクラダが、そして無傷で泣きじゃくっている。
咄嗟に騎士道の力を思い出したのか、シルビアがその盾になって、攻撃を受けたのだ。

「シルビア、しっかりしてくれ!!」
「死んじゃダメだニャ!!生き返ってニャ!!」


イレブンは回復魔法が使えない中、どうにかして血を止めようとする。
だが、使えそうな道具は自分の服と水くらいしか無さそうだ。
オトモはカバンをひっくり返し、回復薬になりそうなものを探す。

「アタシ、旅芸人だからさ……。」
「喋ったらダメニャ!!傷が………。」
「皆、泣いて欲しくないわ…。」

「なあ!何か、回復魔法は覚えてないのか?」
「残念だが……。」

イレブンは、佇んでいる魔王にも声をかける。
魔王はその言葉を簡単に終わらせる。



「みんな。アタシがいなくても、がんばってね。」

もう、この場で彼を助けることは出来る者も、出来る道具もなかった。



★★★★★★★★★★★★★★


少しずつ、激痛が収まり、代わりに意識が途切れ途切れになっていったのはシルビアにも理解できた。

(諦めないでね。イレブンちゃん、みんな……。)
(あなた達なら、きっとこの殺し合いも止められるわ)


眼を開ける。
そこは、真っ暗だった。
真っ暗な空間の先に、紫色の髪の、一人の大柄な男が立っていた。


「案外、早い再会になっちゃったわね。グレイグ。」

★★★★★★★★★★★★★★

「提案:この先の行動の決意。」
ポッドがシルビアを埋葬する暇もなく、電子音を出す。

「時間がない。イレブン。これからどうするか作戦を練るぞ。」
魔王もそれに同意して冷たく言い放つ。
たった今一人の人間が死ぬ所を見せつけられた。
このような怪物が跳梁跋扈している世界では、クロノもいつまで生きているか分からない。


「イシの村に集まろうとしていた……。」
「そうか。私達はハイラル城へ向かおうとしていた。イシの村は横切っただけだが、貴様の仲間らしき者はいなかったぞ。」


時間は残酷だ。
シルビアの死を悲しむ暇も与えてくれない。
むしろこうしている間も、仲間の死の可能性が増していく。


生存している仲間の発見、凶悪な参加者の排除、首輪の解除。
やらなければならないことは山積みだ。


どうするか、どこへ向かうか考えないといけない。
サクラダを見やる。
元々疲れていたからか、今でもベルは寝息を立てている。



イレブンが唯一良かったと思ったこと。
それはベルが、目を覚まさなかったことだった。
彼女に魔物を殺す所、そして、人が死ぬ所を見せずに済んだのが、何よりの救いだった。




【ネメシスーT型@BIOHAZARD3 死亡確認】
【シルビア@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて 死亡確認】
【残り55名】


【A-2/草原/一日目 朝】

【オトモ(オトモアイルー)@MONSTER HUNTER X】
[状態]:健康 疲労(中)  シルビアの死の悲しみ
[装備]: 青龍刀@龍が如く極 星のペンダント@FF7
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2個(確認済み) ソリッドバズーカ@FF7
[思考・状況]
基本行動方針:魔王に着いていく。
1.ご主人様、今頃どうしているニャ?


【サクラダ@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
[状態]:健康 疲労(大) シルビアの死に悲しみ。
[装備]:鉄のハンマー@ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品  余った薪の束×2
[思考・状況]
基本行動方針: ハイラル城を目指し、殺し合いに参加しているかもしれないエノキダを探す。
1.悪趣味な建物があれば、改築していく。魔王、イレブン達と行動する


【魔王@クロノ・トリガー】
[状態]:HP1/3 腹部打撲 MPほぼ0
[装備]: 絶望の鎌@クロノトリガー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2個(確認済み、クロノ達が魔王の前で使っていた道具は無い。) 勇者バッジ@クロノ・トリガー
[思考・状況]
基本行動方針:クロノを探し、協力してゲームから脱出する 。もしクロノが死ねば……?
1. ハイラル城かイシの村どちらかへ向かう


【イレブン@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
[状態]:MP0、恥ずかしい呪いのかかった状態
[装備]:七宝のナイフ @ブレスオブザワイルド ポッド153@NieR:Automata  豪傑の腕輪@DQ11
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(2個、呪いを解けるものではない)
[思考・状況]
基本行動方針:ああ、はずかしい はずかしい
1.イシの村へ向かう?ハイラル城へ向かう?
2.同じ対主催と情報を共有し、ウルノーガとマナを倒す。
3.はずかしい呪いを解く。
4.この殺し合いが開かれたのは、僕のせい……?

※ニズゼルファ撃破後からの参戦です。
※エマとの結婚はまだしていません。
※ポッドはEエンド後からの参戦です。


【ベル@ポケットモンスター ブラック・ホワイト】
[状態]:眠り
[装備]:ランラン(ランタンこぞう)@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:最初の一歩を踏み出す。
1.イレブンについていく。
2.ポカポカ(ポカブ)を探す。

※1番道路に踏み出す直前からの参戦です。
※ランタンこぞうとポッドをポケモンだと思っています。


【モンスター状態表】
【ランラン(らんたんこぞう)】
[状態]:睡眠中、モンスターボール内
[持ち物]:なし
[わざ]:メラ
[思考・状況]
基本行動方針:ベルについていく
1.睡眠中


【ポッド153@NieR:Automata】
[状態]:健康
[持ち物]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:???

※ネメシスの「電磁波発生装置」は崩壊しました。


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075:君の分まで背負うから 時系列順 077:選ぶんじゃねえ、もう選んだんだよ
投下順
063:魔力と科学の真価 シルビア GAME OVER
ネメシス-T型
サクラダ 097:青き光に導かれ
魔王
オトモ
075:君の分まで背負うから イレブン
ベル

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最終更新:2022年06月24日 01:03