「あ~ダメダメ!お鍋が吹きこぼれてる!」
火元から鍋を遠ざけたのは、サクラダだった。
「あの……すいません。」
顔を真っ赤にし、謝るイレブン。
ことの発端は、以下の通りだ。
ネメシスを倒し、シルビアの遺体を埋葬してから、残ったメンバーはイシの村に残った。
メンバーこそは豊富だが、この中で魔法を使える者が今おらず、戦闘要員も限られる中で、動き回るのは難しいと判断し、一度近辺のイシの村にて休憩を取ることにした。
その地が第二の故郷であるイレブンは、自宅に他の仲間を招き入れ、彼らの支給食料も合わせた料理を作ることにした。
本当は集団でいると恥ずかしいため、一人でできる料理を進んでやっていたのだが。
しかし、支給食料の固形スープや、家に置いてあった野菜・薬草などでスープを作っていると、ふと思い浮かぶ。
自分はキャンプで仲間たちと話すのが苦手だったため、良く一人で食事を作る役を担っていた時のことを。
作った料理は、確かに仲間の中で評判は良かった。
だが、それは仲間内でのみ美味しかった料理なのではないか。
ここのメンバーの口に合わないんじゃないか。
そもそも支給品と僅かな野菜や干し肉だけで、美味しい料理が作れるのか。
そう思うと、料理中ながらも恥ずかしくなってしまった。
大丈夫かと料理を心配しに来たサクラダの予想は、当たってしまった。
「謝らなくていいわよイレブンちゃん。それと助けてくれてうれしかったわ。
そうそう、火の後始末お願いね。」
そう言いながら鍋を、他のメンバーがいる方に持っていくサクラダ。
まだ立ちぼうけていたイレブンの目線に、あるものが映りこんだ。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
一方で、イレブン宅の2階。
イレブンに睡眠魔法をかけられていたベルは、久々に目を覚ました。
「あ、目を覚ましたニャ?」
隣でオトモが立っていた。
「え?君……だれ?」
ポケモンのような、そうでもないような風貌のオトモに話しかけられ、驚くベル。
「ボクはオトモ、それでここはイレブンの旦那のお宅ニャ。イレブンの旦那は、キミを運んでくれたニャ。」
「そう……。」
相手に敵意がないことで安堵するも、ベルはその表情を曇らせる。
「ねえ、オトモって言ったね。お供って言うことは、トレーナーもいるの?」
「旦那様のことかニャ?この戦いにいるみたいだニャ。」
「もしも……もしもよ。その旦那様がいなくなっちゃったら?」
「……それは、難しい質問ニャ。長い事オトモを務めていたから、大切な旦那様のいない生活なんて考えたことないニャ。」
首を傾げ、考えるオトモ。
一瞬、ベルは自分がまずい質問をしてしまったのではないかと焦る。
「きっと、ボクは悲しんで、それでも生きていくニャ。
ご主人様がこう言ってたニャ。「人のみならず、どの生き物でもいつかは死ぬ。だからこそ、命の受け止め方が重要なのだ」って。」
「かっこいいね、その人。」
「だから、ボクは付いていくと決めたニャ。」
自分が従えるのではなく、ポケモン自身が付いていきたくなるような、共に戦いたいようなトレーナーになる。
『どんなトレーナーになりたいか』と聞かれればそう答える人は多いが、実際にそうなれるトレーナーは少ない。
ご主人というのはどの人か分からないし、オトモはポケモンでもあるし、そうでもないようにも見えるが、尊敬されるべき人物であると分かった。
「じゃあ、私も決めた。チェレンのこと、もう悲しまない。」
チェレンが何で死んだのかは分からないが、いつまでも悲しんでいれば周りの人も暗い気持ちになってしまう。
それに死別ではなくても、いくつもの別れを経て、それでも先へ進むのがトレーナーのはずだから。
(きっと、チェレンも私のこと、忘れないよね。)
「そうと決まれば、腹ごしらえニャ。下でイレブンの旦那たちが、ご飯を作っているニャ。」
下の階からいい匂いが漂ってきた。
それにつられて、オトモとベルは下へと急ぐ。
「あら、起きたのね!心配したわ~。」
「………。」
「…………。」
ねじり鉢巻きに、禿げ頭の男は気さくに話しかけてくれるが、イレブンと、顔色の悪い長身の男は黙ったままだ。
「んもう、せっかくベルちゃんが起きたのに、みんな愛想悪いわね~。さ、このスープをおあがり!!」
机に鍋を置いた後、人数分の皿にスープを配るサクラダ。
元々二人だけの家だったため食器が不足してるかと思いきや、コップや瓶にもにも注いでいく。
支給されていたパンも忘れず千切っては配り、千切っては配り。
「ありがとう、私、ベルって言うの。ポケモントレーナーよ。」
「アタシは、大工のサクラダ、こっちはイレブンちゃん、さっきまで見張りをしてくれたこっちは……。」
「魔王だ。皆まで言うな。」
「え?魔王って、あのおとぎ話の魔王!?」
ベルは目をきらめかせながら魔王に聞く。
その顔には怯えなどの負の感情はない。
「何のことかはわからないが、そちらの判断に任せる。」
そう言いながら魔王はパンの一かけらをスープに付け、食べ始めた。
同調するかのように他のメンバーも食べていく。
「うん、美味しいわね。」
「イレブンちゃんも中々料理上手なのね。モテるわ。」
「この素朴な味、ご主人様が作ってくれた料理にも似てるニャ。」
「………。」
「…………。」
つい先ほど、厳しい戦いと離別に晒された後でもあったため、5人の間に張りつめていた空気が、僅かながら解れた。
体力も完全ではないとはいえ回復出来て、これならば再び外にも出られそうだ。
「あの………。」
長いこと沈黙を貫いていたイレブンが、声を出していた。
「首輪をどうにかする方法、あるかもしれません。」
しばらくイレブンを除いて話をしていたメンバーが、全員黙り込んだ。
「誰かに話を聞かれているかもしれん、イレブン、ここに書け。」
魔王は家の中に会った本を一冊渡し、空白のページを向ける。
『このオーブの力で、首輪を解除できるかも。』
右手で書きながら、左手でポケットから出したのは、青い宝玉だった。
「キレイね!!何それ!!」
「んま~、イイ男に似合いそうな、海のように蒼い宝石ね~。」
「それで武器でも作るのかニャ?」
『このオーブ、あらゆる魔力を解除できる力があります。何故か僕の家のキッチンにありました。』
ざわざわ、と空気がどよめく。
かつてはクレイモラン王国の宝であった、ブルーオーブ。
イレブンが受け取ってから、命の大樹へと向かう道標として、働いたオーブの一つだ。
だが旅の途中で奪われてしまい、再び目にしたのは魔王ウルノーガと戦う直前。
彼の親衛隊の一人、邪軍竜王ガリンガが、自分達にかかった強化魔法を解除する道具として使っていた。
『だが、奴らがそんなものを転がしておくほど、マヌケにも見えない。』
魔王が沸き上がった空気を冷ますような内容を書き綴る。
『僕もそう思う、だからこれだけでは、解除は出来ない』
「ちぇっ、結局無理なのかニャ……。」
「待って待って、イレブンちゃん、アナタ今「これだけ」って言ったわね?
というとまだ話は終わってないってこと?」
だが、サクラダだけはイレブンの話をまだ聞こうとしていた。
『はい。このオーブ、6つ集めると、1つより凄い力があります』
6色のオーブを集めて天空の祭壇で掲げると命の大樹への通路となる虹の橋が現れる。
首輪の解除のみならず、脱出のための架け橋を作られるかもしれない。
「似た色の宝珠があるということ?そうだ、いちごちゃん、いる?」
『否定:私の名前ではない。』
再びイレブンのザックから出て来るポッド153。
「これ、鑑定してくれる?」
『承認。』
何度か点滅するも、結果は分からなかった。
『不可:解析出来ない力あり』
残念ながらポッドのCPUを用いても出来なかった。
だが裏を返せば、それだけ未知の可能性があるということだ。
「ならば、再び出発する時か。これ以外の宝玉を手分けして探すことにしよう。」
魔王が提案した。
ここから先は、東と南、二つの方向がある。
5人まとめて同じ方向へ行くのも非効率だし、危険な相手に狙われやすくもなる。
「僕と……魔王さん……分かれた方が……。」
特に戦闘能力の高いイレブンと魔王が、それぞれリーダーとして、先導することにした方がいいだろう。
そうした認識は全員に伝わった。
「ボクは魔王の旦那と行くニャ!」
「勝手にしろ。」
「アタシは、ハイラル城にも向かいたいから、そっちの方向にするわ。イレブンちゃんも魔王ちゃんもイケメンだし。」
「うーん。私はイレブンの方かな~。」
結局、南へ向かうのがイレブン、ベルと支給品であるランラン、ポッド。
北の廃墟、ハイラル城を見たいため、東へ向かうのが魔王、オトモ、サクラダ。
ネメシス戦の前の組み合わせになってしまったが、組み合わせも決まった以上、イシの村を後にする。
「皆さん……危なくなったら……逃げて。」
イレブンはなおも恥ずかしがりながら、消えゆくように呟く。
「そうだな、それと、合流する時も合わせておくべきではないか?」
「じゃあ、日が沈むまでね。収獲があってもなくても、ここに戻るのよ。」
5人は、共に過ごした村を後にした。
いずれまた、再開できる時を願いつつ。
【A-1/イシの村 外/一日目 午前】
【オトモ(オトモアイルー)@MONSTER HUNTER X】
[状態]:健康
[装備]: 青龍刀@龍が如く極 星のペンダント@FF7
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2個(確認済み) ソリッドバズーカ@FF7
[思考・状況]
基本行動方針:魔王に着いていく。
1.ご主人様、今頃どうしているニャ?
【サクラダ@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
[状態]:健康
[装備]:鉄のハンマー@ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品 余った薪の束×2
[思考・状況]
基本行動方針: ハイラル城を目指し、殺し合いに参加しているかもしれないエノキダを探す。
1.悪趣味な建物があれば、改築していく。魔王、オトモと共に東へ向かう(優先度は北の廃墟>ハイラル城)
【魔王@クロノ・トリガー】
[状態]:HP2/3 MPほぼ1/2
[装備]: 絶望の鎌@クロノトリガー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2個(確認済み、クロノ達が魔王の前で使っていた道具は無い。) 勇者バッジ@クロノ・トリガー
[思考・状況]
基本行動方針:クロノを探し、協力してゲームから脱出する 。もしクロノが死ねば……?
1.オーブを探す
2. サクラダ、オトモと共に東へ向かう(優先度は北の廃墟>ハイラル城)
【イレブン@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
[状態]:MP1/2、恥ずかしい呪いのかかった状態
[装備]:七宝のナイフ @ブレスオブザワイルド ポッド153@NieR:Automata 豪傑の腕輪@DQ11
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(2個、呪いを解けるものではない) ブルーオーブ@DQ11
[思考・状況]
基本行動方針:ああ、はずかしい はずかしい
1.ブルー以外の他のオーブを探す
2.ベルと共に、南へ向かう
※ニズゼルファ撃破後からの参戦です。
※エマとの結婚はまだしていません。
※ポッドはEエンド後からの参戦です。
【ベル@ポケットモンスター ブラック・ホワイト】
[状態]:健康 気疲れ(小)
[装備]:ランラン(ランタンこぞう)@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:チェレンの死を受け止め、歩き出す。
1.イレブンについていく。
2.ポカポカ(ポカブ)を探す。
※1番道路に踏み出す直前からの参戦です。
※ランタンこぞうとポッドをポケモンだと思っています。
【モンスター状態表】
【ランラン(らんたんこぞう)】
[状態]:睡眠中、モンスターボール内
[持ち物]:なし
[わざ]:メラ
[思考・状況]
基本行動方針:ベルについていく
1.睡眠中
【ポッド153@NieR:Automata】
[状態]:健康
[持ち物]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:???
【ブルーオーブ@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
現地設置品。
命の大樹に近づくのに必要な6つのオーブの一つ。
邪軍竜王ガリンガが、自分達にかかった強化魔法を解除する道具として使っていた。
最終更新:2023年07月22日 11:44