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「あっ、みつけた!」

「わわわっ、ごめんねえ!おどろかすつもりはなかったの」

「怖がらなくてもいいよ。ほら、きずぐすり」

「これで回復してあげるね!……うん、これでよし!」

「よかったら、これもどう?ミックスオレ」

「甘くてすっごくおいしいよ!」

「はい、どうぞ!」

「……ねえねえ、あたしのポケモンにならない?」

「あたし、こないだ旅をはじめたばかりだし、おっちょこちょいだし」

「まだやりたいこともみつかってないけど……」

「でも、あなたと一緒に旅したいって、思ったの!」

「夢をみせるってステキだし、それにカワイイんだもん!」

「あっ、ごめんね。あたしばっかり話しちゃって」

「……どうかな?」




「おはなちゃん!おはなちゃん!」

 ぐったりと地面に転がるムンナと、その名前を呼ぶ美希。
 メルトアから放たれた高熱のレーザーは、ムンナに当たっていた。
 ムンナの肌が火傷のようにただれているのを見て、美希はくちびるを噛みしめた。
 美希を護るために、ムンナが身を挺してレーザーをその身に受けたのだと理解したからだ。

「カカカ……飼い主の盾となったか。けなげなことよ」

 言葉とは裏腹に、あざけるような声色のメルトア。
 きっとにらみつける美希だが、メルトアは意に介した様子もない。

「正面から食らったのだ。無事ではあるまい……なに!?」
「……むう」
「おはなちゃん!」

 悠然と構えていたメルトアの表情が揺らぐ。
 ムンナは傷を負いながらも、ふたたびメルトアと対峙していた。

「おはなちゃん、大丈夫なの……!?」
「むううん」

 心配して声をかける美希。ムンナの返事は先程よりも弱い。
 かなり無理をしていることは、誰の目から見ても明らかだった。

「……小癪なモンスターめ!」

 いうが早いか、メルトアのレーザーがムンナを襲う。
 二度目の直撃に、ムンナは苦しげな声とともに吹っ飛ばされた。

「おはなちゃん!」
「……む……むう」

 ムンナへと駆け寄り、息をのむ美希。
 美希は惨たらしい傷跡を見たわけではない。
 ムンナの身体が、ほのかな光を帯びていたのだ。

「これが、つきのひかり……?」

 美希は数時間前に9Sから聞かされていたことを思い出す。
 9Sはモンスターボールを解析した際、ついでにとムンナの覚えている技も分析していた。
 ボールと同梱の説明書に書かれていた技のうち、サイケこうせん以外は用途が不明だった。
 その技のひとつが、つきのひかりである。体力回復のための技だと9Sから説明を受けた。
 たしかに月光のように柔らかい光だと、実際に目にしてすなおに感じた。
 最初のレーザーの直撃後にも、この技を使用したのだろう。

「……むううん!」

 よろよろとしながらも、メルトアへと近づくムンナ。
 その姿を見て、気持ちを察して、美希は拳をギュッと握りしめた。
 どれだけ体力を回復したとしても、痛みを感じなくなるわけではない。
 レーザーに吹っ飛ばされて地面に転がって、痛くないはずがないのだ。

「……」

 三度目のレーザーは、もはや言葉もなく放たれた。
 ムンナの意地か、わずかに直撃したその場で耐えたものの、結局は数メートル飛ばされてしまった。

「む……う……」
「……おはなちゃんっ!」

 起き上がろうとして、いよいよ力尽きたように倒れるムンナ。
 美希はムンナのもとへと駆け寄ると、その身体をやさしく抱き上げる。
 ひどく傷ついたムンナ。その呼吸は浅く、危険な状態だと直感した。

(とにかく、ここから逃げないとなの!)

 美希とムンナは、互いにかなり消耗している。
 この状況を打開する方法は、今の美希にはない。
 それならば、取るべき手段はひとつ。逃げの一手である。

(でも、どうする?すなおに逃がしてくれるワケないし……)

 美希は弱々しいムンナを撫でると、周囲をチラッと見た。
 石造りの歩道は遠くまで続いており、道中に人影らしきものが複数ある。
 歩道を進んでいく場合は、人影らしきもの、つまりモンスターへと対処することになる。

(……ううん、逃げるのは難しい。なら時間を稼ぐしかないの。
 ナインズくん、カミュ、ハンターさん……誰かは異変に気づいてくれるはず)

 考えた末、美希は時間稼ぎという消極的な手段を取ることにした。
 手負いのムンナを抱えた上では、思い切った行動も取りづらいからだ。
 悪意をむき出しにしたメルトアを相手にして、どれだけ時間を稼げるかが勝負だ。
 ゆっくりと深呼吸して、美希はメルトアと対峙する。

「カカカ。ずいぶん手のかかるモンスターだ。
 しかしそれだけが原因でもあるまい。あの方より頂いたチカラも万全ではないか……」
「……あの方?」

 余裕の態度を見せつけるメルトアの発言に、美希は違和感を抱いた。
 その違和感について考えるよりも速く、口をついて質問が出た。

「……ねぇ!あの方って誰?」
「カカカ、知る必要もないことだ」

 にべもないメルトアの応対に、美希は食い下がる。

「……きっと、かなりスゴイ人なんだね」
「そうだとも。この世でもっとも偉大な、わらわの愛しき方よ……」

 褒められて気をよくしたのか、メルトアは語り出した。
 もとは単なる美女の壁画であったが、あの方に生命を与えられ造り出されたこと。
 あの方から賜った「次元を超えて人間を吸収するチカラ」を用いて暗躍したこと。
 かつて栄華を誇ったプワチャット王国を滅亡させるあの方の策略に協力したこと。
 美希は話に適当な相槌を打つことで、時間稼ぎをはかる。

「しかもあの方は、いちど消滅したわらわを、ふたたびこうして――」
「うんうん」

 それまで調子よく話していたメルトアが、我に返ったように言葉を切る。
 わずかに恥じるように、コホンとひとつ咳払いをするメルトア。

「……少々、話しすぎたようだ」

 眼光には冷徹さが戻り、美希は射竦められる心地がした。
 そのメルトアから美希に対して、無慈悲な宣告が行なわれる。

「さあ、神への祈りは済ませたか?」
「……するつもり、ないの!」

 美希は毅然と反論したものの、未だに打開の手立てはない。
 ほほに一筋の汗が垂れる。いよいよとなれば、体力が枯渇するのを覚悟でサンダーを放つしかない。
 美希の胸に抱かれたムンナのことを一瞥し、メルトアがあざ笑う。

「その盾も、もはや使えまい」
「これはおはなちゃん!盾じゃないの!」
「カカカ……最期までおろかな小娘よ。では……おや?」
「えっ!?」

 メルトアの深紅の瞳が、攻撃のために閉じられようとしたとき。
 美希とメルトアは、ほとんど同時に気づいた。ムンナの様子がおかしい。
 身体全体が、奇妙に震えているのだ。

「……むうっ!」

 傷ついていたムンナが、ひとつ鳴き声を上げる。
 すると、ムンナの身体が発光し始めた。

「なにこれ!?」

 美希は驚き、抱いていた手を離してしまう。
 ムンナは空中に浮遊した状態で、光り続ける。
 つきのひかりとも違う、それよりも強力な輝き。

「……なんだ?」

 メルトアは警戒したのか、瞳を閉じるのを止めていた。
 ムンナの身体は、発光しながら風船のように膨張していく。
 やがて、まばゆい光が収まるにつれて、ふたたび姿が現れる。

「むしゃあ!」

 ムンナはムシャーナに進化した!




 いったいなぜ、おはなちゃんことムンナは、このタイミングで進化を遂げたのか。
 その疑問を解消し得る推論を提示するためには、まずポケモンの進化の条件を紐解く必要がある。

 ポケモンの進化の条件は、長年にわたり研究され続けている。
 現状における進化の条件は大きく分けて三種類。レベルアップ、進化専用の道具、通信交換である。
 この三種類は、さらに条件を細分化することが可能である。レベルアップであれば、特定の場所に赴いた上でのレベルアップや特定の技を習得した上でのレベルアップ、ポケモンがトレーナーに対して充分になついた上でのレベルアップ、などが挙げられる。
 これ以外にも、数年に一度の周期で新たな進化の条件が発見されていることから、ポケモンの進化の条件には無限の可能性があるといっても、過言ではない。

 それでは、問題となるムンナの進化の条件は何か。
 それはもちろん、進化専用の道具である石のひとつ、“つきのいし”を使用することである。
 有識者の研究によれば、“つきのいし”をはじめとする進化の石は放射線を発している。そして、その放射線がポケモンの遺伝子に働きかけて進化を促すとされている。
 しかし、当該のムンナに対して“つきのいし”は使用されていない。となれば、別の要因によって進化したことになる。
 その要因たりえるものとは何か。ずばり、メルトアのレーザーである。

 レーザーとは、光を発生させる装置、またその装置を用いた光線のことを指す。
 レーザーは通常の光とは異なり、指向性と収束性に優れた、ほぼ単一波長の電磁波である。
 専門用語の詳細はさておき、ここでは“レーザーは電磁波である”という事実を重要視する。
 メルトアのレーザーは、当該のムンナの体表に接触し、焼け焦げたような傷を負わせている。
 このことから、メルトアのレーザーが高エネルギーを有していることは明らかだ。

 さて、高エネルギーと聞いて思い当たる人もいるだろう。そう、放射線である。
 放射線にはさまざまな種類が存在しており、その性質から電磁放射線と粒子放射線に大別される。
 そして、電磁放射線は読んで字のごとく、高エネルギーの電磁波であり、ガンマ線やX線がこれに該当する。
 ここでも専門用語はさておき“一部の放射線は電磁波である”という事実を重要視する。
 補足として、進化の石から出る放射線の種類は解明されていない。

 これまでに示した、端的な二つの事実から、ある推論を導き出せる。
 「メルトアのレーザーと進化の石の放射線は、ともに高エネルギーの電磁波であり、それがムンナの進化に関係している」というものだ。
 レーザーと放射線。この二つが同質であったため、当該のムンナはレーザーをその身体に受けたことで“つきのいし”を使用したときと同様に進化したと考えられるのだ。
 とはいえ、メルトアのレーザーの性質も進化の石の放射線の性質も、現実世界と同じ尺度で語れるものとは限らない。
 そして実測不可能である以上、この推論は机上の空論に過ぎない。
 ゆえに、これは不思議で満ちた世界の現象を、現実の世界に即して理解しようとしたときの、ひとつの可能性だ。

 ここで、もうひとつの推論を挙げる。
 それは「星井美希がムンナの進化に関係している」というものだ。
 トレーナーを含めた周囲の環境が、ポケモンの生態および進化に対して影響を及ぼすことは珍しくない。
 前述したトレーナーに対するなつき度合いや、特定の時間帯ないし場所に起因する進化は、複数観測されている。
 あるいは、ポケモンの進化中には意図的な進化キャンセルを行なえるように、直接的な影響の及ぼし方もある。

 そして、ムンナの生態を見るに、周囲の環境から影響を受けやすいことは明白だ。
 ムンナとその進化系のムシャーナは、人やポケモンの見る夢を食べることで知られている。
 ムンナが夢を食べたあとは頭部から煙を吐き出すのだが、その色は夢の性質によって変化する。
 食べた夢が楽しい夢ならばピンク色の煙を、悪夢ならば黒っぽい煙を、それぞれ吐き出すのだ。
 これはムンナが実体のない現象であるところの“夢”に、多大な影響を受けていることの証拠だ。

 一方の星井美希は、ムンナとは対照的に、周囲の環境に影響を与えるタイプの人間である。
 こう考える根拠には、星井美希がアイドルとして大勢の観客の感情を動かしてきた、という事実も当然ある。
 しかし、それだけではない。それ以前に、星井美希という人間には、スター性と呼ぶべきものが備わっているのだ。
 学校では男女問わず人気があり、とくに男子からは毎月数十人単位で告白を受けているとは本人の談だ。
 この数が問題で、数人ならまだしも数十人となると、単にルックスや性格が優れているというだけでは説明がつかない。
 すなわち、存在するだけで周囲の人間を惹きつけ虜にしてしまう、天賦の魅力。すなわちスター性が、星井美希にはある。

 無論、当該のムンナと星井美希とは、現状ポケモンとトレーナーの関係にはない。
 とはいえ、当該のムンナは星井美希から夢を摂取したり、歌やダンスを見て気分を良くしたりしている。
 このことから、本来のトレーナーに近しい雰囲気の星井美希に対して好感情を抱いていると推測することができる。
 これらの状況を総合すると、星井美希の歌声などに対して、当該のムンナの遺伝子が反応を見せた可能性も充分にあるといえる。

 閑話休題。




 目を閉じて空中に浮遊する、ピンクのモンスター。
 姿を変えたムンナ――ムシャーナに、美希はおそるおそる声をかけた。

「……おはなちゃん、なの?」
「むしゃあ」

 するとムシャーナは、くるりと振り向いてひと鳴き。
 会話や意思疎通は可能だと分かり、美希は胸をなでおろした。

「……驚いた。姿を変えるモンスターとは」

 メルトアの声は、苛立ちからか鋭さが増していた。
 何度レーザーをお見舞いしても復活してくるモンスターは、鬱陶しいに違いない。
 それでいて、詳細不明でうかつに攻撃を手を出せないことも、苛立ちを増幅させるだろう。
 これまでのメルトアの行動から、しばらくは様子見をするはずだと美希は判断した。

「おはなちゃん、ここから逃げるの!」
「むにゃ?」

 逃げるチャンスは今だと確信して、美希はムシャーナを抱きかかえた。
 そして、脱兎のごとくメルトアから離れようとする。

「させぬ……!」

 さすがにそれを看過するわけはなく、メルトアの指パッチンが鳴りひびく。
 集合してきた三体の屈強なマッスルガードに、美希は行く手を阻まれてしまう。

「くっ……」
「むしゃあ!」

 ムシャーナが意気を込めて鳴くと、マッスルガードたちは即座に入眠した。
 あくびよりも命中率は劣るが即効性の高い技、さいみんじゅつによる眠りだ。

「やったの!」
「むしゃ」

 美希は抱きかかえたムシャーナに声をかける。
 ムシャーナもそれに応える。目を閉じていてもちゃんと見えているようだ。
 この調子なら逃げ出せるかもしれない、という希望が美希の中に生まれる。

(このまま走り抜けるの……!)

 勢い込んで、美希は歩道の先へと目線を向けた。
 そして歩を進めようとした美希の眼前を、レーザーが通り過ぎた。

(……!)

 美希はその場に立ち尽くした。
 一歩先にいたら、レーザーに貫かれていた。
 その恐怖で、両脚がすくんで動くことができない。

「調子に乗るでない、小娘ども。
 わらわの手からやすやすと逃げられると思うな」
「むしゃあ……」

 メルトアの威圧に対して、ムシャーナが鳴いた。

「なに!?」

 メルトアの驚愕の声に、美希は振り向いた。
 すると、メルトアの真正面にも、暗い煙らしきものが浮かんでいる。
 驚いているということは、メルトア本人の仕業ではないと思われる。

(何が起こるの……?)

 煙の中から現れたのは、奇妙な姿をした人影だった。
 しかし、それが人ではないことを、美希は即座に直感した。
 死人と見間違うほど青白い肌、トサカのような赤髪、側頭部の角。
 そして何より人間離れしているのは、全身から放たれる威圧的な気である。

「おお……ウルノーガ様!」

 頭を下げて畏まるメルトアの言葉で、美希は現れた人影の正体を理解した。
 同時に、ぼやけた記憶を取り戻す。この殺し合いを宣言したマナと、ともにいた人物だ。

(これは、本当にマズいの……)

 新たな来訪者に、美希の心から希望が消えていく。
 この殺し合いを主催している存在が目の前に現れれば、誰しも死を覚悟する。
 しかし、ウルノーガは美希たちには目もくれずに、メルトアの方へと向き、ひとことこう告げた。

「この小娘を逃がせ」
「えっ?」
「な……しかし、ウルノーガ様……!?」

 わかりやすく困惑しているメルトア。
 当事者の美希も、同じくらいに困惑していた。
 ウルノーガは無表情のまま、その大柄に見合う重低音を鳴らした。

「我の命令が聞けぬか?」
「……まさか!偉大なるウルノーガ様は絶対」

 ひどく恐縮したメルトアを見て、美希は思い至る。
 このウルノーガが、メルトアの話していた、あの方なのだろうと。

「そうだ。ならばわかるな?」

 有無を言わさないウルノーガの言葉。
 言葉をかけられていない美希でさえ、緊張で喉が渇ききっていた。
 メルトアの感じている重圧がどれほどのものかは、推して知るべし。
 その圧に、メルトアはそれ以上の口答えをせず、美希へと向き直った。
 そして、不満そうな表情をいっさい隠さずに、ゆっくりと重々しく口を開いた。

「……ウルノーガ様の命令だ。この場は見逃そう。
 しかし、わらわの美しさを侮辱したこと、忘れはせぬぞ」

 メルトアの胸元のカギが再び怪しく光る。
 暗い感情の込められたメルトアの声を聞きながら、美希は光に包まれた。




 女性の絵画の前で、美希は目を覚ました。
 身体を起こすと、美希の隣でムシャーナが寝息を立てていた。
 美希はクスリと笑って、ムシャーナをゆっくりと抱え上げる。

「お疲れ様なの」

 美希はムシャーナにねぎらいの言葉をかけた。
 ムシャーナがいなければ、おそらく美希の生命は断たれていた。
 命の恩人であるムシャーナの身体を撫でながら、もといた場所に戻る。

「あれ、カミュもハンターさんも、まだ寝てるの」

 時計の針は十時四十五分を指していた。そろそろ動き出す予定のはずだ。
 とはいえ、モンスターから悪意を向けられたり、初めて魔法を使用したりと、美希自身の疲れもかなり蓄積していた。

「あはは……もっとスタミナをつけておけばよかったの。
 元の世界に戻ったら、真くんにトレーニング教わろうかな」

 美希は水を飲みながら、菊地真の顔を思い浮かべた。
 卓越した体力の持ち主である真であれば、おそらくここまで疲弊はしていない。
 モンスター相手にも空手で立ち向かい、激闘の末に倒すことができたかもしれない。

「……ミキ、いままでラッキーだったんだね」

 美希はポツリと呟いた。
 この殺し合いが開始してから十時間以上、敵意や悪意と無関係に過ごしてきた。
 それは、放送で呼ばれた人数やカミュとハンターの話、そして先程の出来事を総合して考えると、かなり幸運だったのだ。
 敵意や悪意を向けられるのは、かなりしんどい。美希はすなおにそう思う。

「雪歩も貴音も、それに千早さんも……ラッキーだといいな」

 そう呟きながら、美希はとくに如月千早のことを想った。
 降りかかる辛さを内にしまい込む性質の千早にとって、この場所はストレス過多だ。
 誰か信頼できる人間と合流して、ストレスを軽減できていることを願うしかない。

「でも、これでミキも戦える。ナインズくんに護られるだけじゃなくなる。
 サンダーも使えたし……疲れるけど。でこちゃんが見たら、きっといい反応するの……」

 美希の脳内に、魔法を見て困惑しきる水瀬伊織のビジョンが明確に見えた。
 それ以外も、取り留めのない思考が、美希の脳内に生まれては消える。

「そういえば、なんでウルノーガって人、ミキを見逃したんだろ……?」

 美希からすると、それがいちばんの謎であった。
 殺し合いを命じておきながら、メルトアが美希を殺そうとするのを止めたことになる。
 あれこれ考えてみても思考がまとまらないので、あとで9Sに尋ねてみようと結論づけた。

「あれ、今……」

 ふと、美術館の外から爆発のような音が聞こえたような気がした。
 何が起きたのか確かめなければ、とぼんやり思いながら、美希の意識は飛んだ。




 ムシャーナの悪夢を見せる力により、窮地を脱した美希。
 しかし、未だ悪夢のような殺し合いは終わらない。
 星井美希はもう、夢見る少女じゃいられない。



【B-4/美術館内/一日目 昼】
【星井美希@THE IDOLM@STER】
[状態]:疲労(中)、気絶
[装備]:シルバーバレッタ@FINAL FANTASY Ⅶ、マテリア(いかずち)@FINAL FANTASY Ⅶ
[道具]:基本支給品、モンスターボール(ムンナ)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト
[思考・状況]
基本行動方針:自分にできることをする。
0.……(気絶中)
1.休憩後、四人でイシの村へと向かう。
2.ナインズくんを護りたい。記憶を取り戻す手伝いについては……?
3.メルトアの危険性と、ウルノーガを見たことを伝える。


【ムシャーナ ♀】
[状態]:HP1/3、ねむり
[特性]:よちむ
[持ち物]:なし
[わざ]:サイケこうせん、ふういん、つきのひかり、さいみんじゅつ
[思考・状況]
基本行動方針:美希についていく。
※所有者は星井美希のままですが、モンスターボールをハッキング済みのため9Sがモンスターボールに情報を送ることで遠隔操作に近い指令ができます。
※レベル20になりました。


【全体備考】
※美術館のとある廊下の絵画は、メルトア@ドラゴンクエストⅪのいる世界とつながっています。
 メルトアのいる世界は、壁画世界@ドラゴンクエストⅪと同じ性質のものとします。

【シルバーバレッタ@FINAL FANTASY Ⅶ】
星井美希に支給された髪飾り。
FF7本編ではレッドXIIIの専用武器。マテリア穴は4つ。
これに限らず、髪飾り系統の武器は、人間の使用するものと同じ形である。

【マテリア(いかずち)@FINAL FANTASY Ⅶ】
星井美希に支給されたマテリア。
魔法マテリアのひとつ。FF7本編ではクラウドが最初から装備している。
これを手に持っているか、装備している武器・防具に装着することで魔法が使用可能。
魔法の使用には、魔力かそれに準ずるものを消費する。


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110:革新的に生まれ変われ 時系列順 112:Partial Remission
投下順
102:Androidは眠らない 星井美希 124:マリオネットの心 ──Intro

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最終更新:2024年10月21日 10:56