プロメテスことロボは、病院への新たな侵入者を追跡していた。
 これまでに一階から二階へ、そして三階へと移動する影をアイセンサーで捉えていた。
 より正確に言うならば、アイセンサーに捉えたと思いきや逃げられる、の連続であった。
 最初に侵入者を感知してからは、ゆうに十五分以上経過していたが、この事実はロボの欠陥を示すものではない。
 事実としてこれまでのロボは、侵入者を発見すると即座に排除行動へと移行して、それにより侵入者を排除していた。
 むしろロボに対して即座に逃げの一手を打ち、そこから逃げ続けている、新たな侵入者の能力の高さをこそ示している。

「シンニュウシャの追跡をゾッコウしマス」

 三階の各部屋をくまなく捜し終えると、ロボは屋上に出る階段のある方向を見た。
 今や侵入者の逃走経路は二つに一つ。入れ違いで階下に降りたか、屋上へと出たか。
 その一方で、侵入者を追跡するロボに取れる選択肢は一つしかない。そう、屋上である。
 屋上に侵入者はいないと判断しないかぎり、階下へ戻ることはできない。

「シンニュウシャの追跡を――」

 無機質な音声は途中で途切れた。
 ロボの演算機能は、オーバーテクノロジーと評するに相応しい。
 スムーズな自律移動に加えて、人間との意思疎通を行い、それを合体技として戦闘行為に反映させているのだ。
 現在はプログラムを書き換えられている都合上、合体技を発動する機会こそないだろうが、それでも優秀な思考回路は、並大抵のことではストップするはずがない。
 それならば何故?

――バタン!ドシン!

 立て続けに発された物音で、ロボは我に返ったように動き出した。
 音の出処はロボのいる階より上から。改めてロボは屋上への階段へと向かう。

「――続行しマス」

 ロボはそのまま階段を上り、扉に手をかけたが開かない。
 何度か体当たりを食らわせてもびくともしない扉を、ロケットパンチで破壊。
 扉の反対側に置かれていたらしい長椅子の残骸を踏みつけながら、屋上の中心まで足早に歩を進める。
 これによって、侵入者が背後から奇襲するつもりだったとしても対処可能である。

「?」

 しかし、ぐるりとアイセンサーを一周させたロボは首を傾げた。
 病院の屋上には、誰一人いない。端から端まで確認しても結果は同じだった。
 つい数分前に大きな物音を立てて扉を塞いだ人物は、どこかへと消え失せていた。
 排除すべき対象を見失ったロボは、しばらくすると階段を下りて屋上を後にした。
 「いったい侵入者はどこへ消えたのか?」という疑問に頭を悩ませることはない。
 ロボットはただ、プログラムされた命令を遂行するだけだ。


【D-5/病院内部/一日目 昼】
【ロボ@クロノ・トリガー】
[状態]:ダメージ(中)、MP消費(小)
[装備]:ベアークロー@ペルソナ4 、たべのこし@ポケットモンスター ブラック・ホワイト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1個
[思考・状況]
基本行動方針:病院内に侵入した敵を排除する
1.ワタシの名前はプロメテス。

※主催者によって、ジョーカーである参加者(イウヴァルト、ホメロス、ネメシス)は感知出来ないようになっています。
他にも何らかの理由で感知できない参加者、NPCがいるかもしれません。




 侵入者のソリッド・スネークは、いかにして屋上から消え失せたのか?
 その疑問の答えは、スネークの現状の姿を見れば一目瞭然である。

「……」

 スネークはパラセールを広げて滑空していた。
 パラセールとは、かのハイラル王からリンクへと譲られたアイテム。
 いわゆるハンググライダーと似たアイテムだが、それと比較して非常に軽量、かつ精密な動作を可能としている。
 三つ目の支給品であるこれを病院の屋上から使用して、ロボットから逃げおおせたのだ。

「まったく優秀なロボットだ」

 ようやく操作に慣れてきたスネークは、病院を脱出できた安堵から胸をなでおろした。
 リスクを承知の上で侵入した成果は――主目的の医療道具が漁られていたおかげで――決して芳しいとは言い難いが、正体不明のロボットと会敵して死なずに済んだだけで儲けものだと己を納得させる。
 スネークは病院に足を踏み入れてすぐ、戦闘の痕跡や二名の参加者の遺体を目の当たりにして、警戒のランクを引き上げて潜伏に努めた。それからは慎重を期したのにもかかわらず、何度か捕捉されかけたことから、優秀なロボットと評したのだ。
 優秀なのは索敵能力だけではない。屋上に続く鉄製の扉を、障害物ごと吹き飛ばす音を聞いたときは、さすがに肝が冷えた。

「銃器の類を内蔵されていないのはラッキーだった」

 病院に残されていた戦闘の痕跡に、弾痕と見受けられるものは存在しなかった。
 そして先の侵入に際して、もしロボットが銃器を内蔵していたなら、発砲して侵入者の行動を牽制できたはずだ。
 以上を踏まえて、スネークはあのロボットに銃器の類は内蔵されていないと判断した。無論、そうだとして脅威であることに変わりはないが。
 ひとまずは、滑空している間に背中を撃たれなかった幸運に感謝していた。

「あれをオタコンに見せたら、さぞ興奮するだろう」

 ジャパニメーションをこよなく愛する友人を思い浮かべて、スネークはそうひとりごちる。
 おそらく自律駆動しているロボットに対して、目の色を変えるであろうことは想像に難くない。

「ん?あれは……」

 もうじき着陸の用意という時、スネークは遠方に視線を向けた。
 窓の位置から三階建てと思われる建物、その屋上付近に浮遊する物体。
 まだ距離は遠いためハッキリとは見えないが、ヘリやドローンではありえない挙動をしていた。
 目を凝らすと見えてくるのは、まるで鳥のように羽ばたく翼。

「……いよいよオタコンの出番か?」

 ドラゴン。思い浮かんだ単語を口にするのは憚られて、スネークはシニカルに呟いた。
 非現実の度合いで言えば、ドラゴンはロボットよりさらに上。それこそアニメやゲームの世界の住人である。
 やや辟易しながら、それでも建物の屋上に複数の人影らしきものを視認したことで、スネークの行先は決定していた。
 パラセールを操縦して開けた場所に着地すると、コンパスと地図を確認する。

「あの方角は、八十神高等学校か。
 ……ハイスクールなら不良生徒の一人や二人いるだろう」

 せめてタバコでも吸わないとやっていられない。
 病院で獲得した唯一の成果であるジッポーをもてあそんで、スネークは歩き出した。


【D-5南側/一日目 昼】
【ソリッド・スネーク@METAL GEAR SOLID 2】
[状態]:全身に軽い火傷と打撲(処置済)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、音爆弾@MONSTER HUNTER X(2個)、パラセール@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド、首輪(ジャック)、ジッポー@現実
[思考・状況]
基本行動方針:マナやウルノーガに従ってやるつもりはない。
0.八十神高校へ向かう。あのドラゴンは現実なのか?
1.オタコンの捜索。偽装タンカーはもちろん、他の施設も確認するべきか。
2.武器(可能であれば銃火器)を調達する。
3.クラウドに会って伝言を伝えるため、可能性のあるカームの街に寄る。
4.カイムと狩人の男。オセロット、ソリダス、イウヴァルト、セフィロスに要警戒。
5.装備が整い次第、セフィロスを倒すか?
6.ソニックと言う名前に既視感、および不快感。だがこの際言ってられないか?

※参戦時期は少なくとも、オセロットがソリダスも騙したことを明かした後以降です



【パラセール@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
ソリッド・スネークに支給されたアイテム。
空中で使用すると、風を受けて滑空ができるアイテム。リンクがハイラル王から譲り受けたもの。

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最終更新:2025年02月09日 03:20