エリアE-5に位置する八十神高等学校の屋上。
ルッカは巨竜の咆哮を耳にすると、即座に行動を開始した。
「あなた、名前は?」
「え?えっと……如月千早です」
「OK、チハヤ。私はルッカ。あと彼はN。
話を聞きたいのはやまやまだけど、今は逃げるわよ!」
ルッカはそう言いながら、屋上の扉を指さした。
情報共有よりも安全確保を優先するべきだと、ルッカの勘は告げていた。
「え、でも……あの人の無事を確認しないと」
「ルッカはまずココから離れよう、と提案しているんだ。
彼の生死については、校舎から出て確認しに行けばいい。
それよりもこのまま屋上に居続けるのは、ハイリスクだよ」
落ちていたデイパックを千早に押し付けながら、早口で説明するN。
この緊急事態に、こちらの意図を汲んだ行動をしてくれるのは非常にありがたい。
千早は全てを理解できたわけではないようだが、それでも頷いて扉へと駆け出した。
自分も落ちているデイパックを拾い、急ぎ屋上を去ろうとした直後である。
グオオオオッ
「あっ……!」
より間近で聞こえてきた雄叫びに、ルッカは思わずよろけて膝をついた。
振り向いたとき、フェンスの向こう側からせり上がるように黒竜は姿を現した。
そして黒竜の背中に騎乗しているのは、メガトンボムで吹き飛ばしたはずの男。
男は飛び降りて屋上に着地すると、滞空している黒竜に告げた。
「ブラックドラゴン、焼き尽くせ」
ルッカはゾッとした。
命令を下した男の表情は、数分前に泣き叫んでいたとは思えないほど冷酷だったからだ。
(マズイ!)
ドラゴンの口元に橙色の光を見たルッカは、次に放たれる攻撃を予測して背筋を凍らせた。
扉までの距離を目測する。雄叫びに委縮したせいでギリギリだ。
「それなら!」
ルッカは走りながら、ナパームボムを自身のすぐ後ろに落とした。
その目的はドラゴンに当てることではない。巻き起こる爆風を追い風にすることだ。
(痛いのは我慢……!)
爆発と同時に、さながらビーチフラッグを取るような前傾姿勢で、開いた扉へと飛び込む。
迫り来る熱を背中に感じながら、転びそうになるのを耐えて階段を駆け下りると、ようやく炎は弱まりを見せた。
「はぁはぁ……」
「だ、大丈夫ですか!」
千早とNの二人は、先行して階段を下りていたおかげで無傷らしかった。
わずかに焦げた腰のあたりをさすりながら、ルッカは次の行動を考える。
「イタタ……平気よ、それより早くアイツから逃げないと」
「そうですね……」
「いや、焦る必要はないよ」
その言葉をきっかけに建材が音を立てて崩れ始め、ほどなく階段は大量の瓦礫で埋まった。
驚いている千早と対照的に、Nは予想していたかのように平然としている。
「……どうしてわかったんですか?」
「この建物の建築手法と経年劣化から、あれだけの火力を食らえば壊れると踏んだんだ」
「でも、古い建物に見せかけただけかもしれないんじゃ?」
「その可能性もあった。だから経年劣化の判断基準には音も入れたんだ。
廊下を歩く音、ドアを開く音、壁を叩く音。これらと見た目を合わせて判断した」
こともなげに語るN。その頭の回転の速さにルッカは舌を巻いた。
素性は杳として知れないが、優秀な頭脳を持ち合わせていることは疑いようもない。
「とにかく。これで多少でも時間は稼げるわ」
瓦礫のおかげで、三階から屋上へと向かう階段を通ることはできなくなった。
ドラゴンの力を利用して瓦礫をどかすことができたとて、それ相応に時間はかかる。
つまり今こそ絶好の逃げるチャンスなのだ。
「二人ともすぐに――」
しかし、ルッカの指示は壮絶な音でかき消された。
音の発生源は下。吹き抜けになっている部分から階下を覗くと、そこにあったのは直径三メートルほどの球体。
「あれ、屋上にあった給水タンク!」
千早の叫び声で、ルッカも屋上にあった給水タンクを思い出した。
つまり、屋上から運んだ給水タンクを、外から勢いよく投げ入れたことになる。
そう考えていると続けざまに、フェンスや室外機など屋上に置かれていたものが玄関に放り込まれていく。
「ドラゴンに投げ入れさせているのか。先手を取られたわけだ」
「そうみたいね」
冷静なNの呟きに、ルッカは同意した。
散乱したガラスの破片や倒れた下駄箱も含めて、もう気軽に下校することはできない。
安全に玄関から脱出する道は、ほとんど閉ざされたと考えていいだろう。
「ハハハハハ!」
出入口が埋め尽くされたあとに外から響いてきた哄笑は、もちろん男のものだ。
ルッカたちを仕留められなかったのにもかかわらず、愉快そうに笑い声を上げている。
「まんまと逃げ果せたと、希望を見出していたか?
残念、お前たちは閉じ込められたのと同じなんだよ!
逃げ出そうとすれば、瞬間このドラゴンの餌食になる!」
男の言葉に呼応するかのように咆哮が轟いた。
あの男はドラゴンを完全に使役しているのだとルッカは確信した。
「震えろ!怯えろ!殺されるのを、指を咥えて待つといい!」
そう告げると、男は再び哄笑した。
「……好き勝手に言ってくれるわ」
ルッカは舌打ちをすると、脱出経路を探すために千早へ質問する。
「ねえチハヤ、この建物、玄関以外に出られる場所は?」
「えっと……わかりません。私、ほとんど屋上から動いていないので」
「はあ!?もうここに来てから十二時間も経つのよ?
まさか、ずっと歌い続けていたなんて言うんじゃ……」
「……そうです」
「あ、じゃあもしかして、強力な魔法やアイテムが使えたりする?」
「……いいえ」
きまりが悪そうに俯いて答える千早に、ルッカは呆れた。
屋上にいる歌い手は実力者か、はたまた人をおびき寄せる怪物かと考えていた頃の自分に、答えを教えてあげたい。
まさか、殺し合いに呼ばれたのに歌うことだけ考えている参加者がいるとは思うまい。
「まったく、度胸があるというべきか、命知らずというべきか」
「無謀だったのは認めます。ですが……」
「いいの、別に責めたいわけじゃないわ。
でもそうなると、脱出する方法を探す必要があるわね」
ルッカとNは八十神高校に来たばかりで、ロクに探索をしていない。
つまり当然、脱出方法のアテは掴んでいないことになる。
「それならいい案がある!」
背後からの声に振り向くと、そこには黄色いネズミがいた。
こげ茶色の鹿撃ち帽を頭に乗せて、ルッカたちと同じ首輪をしている。
そして、黒ずくめの服装に身を包んだ男に両腕で抱えられていた。
ルッカはその特異な状況に困惑して、思わず曖昧な質問をした。
「あなたたち……何?」
□
(我ながら間の抜けた見た目をしているんだろう)
ソリッド・スネークは、ピカチュウを抱きながら内心でそう思う。
校舎に潜入してピカチュウと廊下で出くわしたときから、イヤな予感はしていた。
「オレは名探偵ピカチュウ。このとおり、れっきとした参加者だ。
もちろん、こんなふざけた殺し合いには反対だ。おっさんもそう思うだろ?」
話を振られたので「ああ」と短く返すと、ピカチュウは満足気に頷いた。
「……ひとまず信用してみるわ。
私はルッカ。そちらのダンディなおじさまは?」
「コイツは……えーと……」
「ソリッド・スネークだ」
どうやら名前を忘れられていたらしい。
「そう!ソリッド・スネークだ!スネークは二人いるから紛らわしいな」
「……OK、ピカチュウとスネークね。
ここだと外から見えて危険だから、近くの部屋に隠れない?」
ルッカの誘導で、全員で三階の手近な教室に移動する。そこは放送室と書かれていた。
ピカチュウからジェスチャーで頼まれたので床に降ろすと、ピカチュウは再び口を開いた。
「オレたちは別行動していて、この学校でたまたま再会したんだ。
まさか再会を喜ぶより先に閉じ込められるとは思わなかったけどな」
ひょいと肩をすくめるような動作をするピカチュウを見て、スネークはふと思い出した。
数時間前の出会いの場で、ピカチュウはまるで気合を入れ直すように頬を叩いていた。
やけに人間味のある動きをするものだと、妙に感心したのを覚えている。
(……まあ、だからどうという話ではないんだが)
「それで、ピカチュウ。いい案って?」
大ぶりな眼鏡をかけた少女、ルッカはピカチュウに話を促した。
背後の二人の名前を教えなかったことから察するに、まだ警戒されているようだ。
「ああ。オレはこの八十神高校で待ち合わせをしているんだ。
悠とティファ、それに里中千枝。三人とも腕に覚えのある参加者だ」
「悠……千枝……?」
「それで?」
「三人と協力すれば、あのドラゴンを倒せる!」
根拠に乏しい論理だ。希望的観測と言い換えてもいい。
それだけ三名の実力を信頼しているのだろうが、ある前提を抜かしてしまっている。
スネークは何か言いたそうにしているルッカを手で制して、ピカチュウにこう伝えた。
「じきに放送が始まる。話の続きはそのあとだ」
「おっと……そうか。もうそんな時間か」
虚を突かれた反応をするピカチュウ。
「今回は何人呼ばれるんでしょうか……」
「人数を推定するのは難しいだろうね。ボクでさえ未来を見える気がしない」
不安そうに眉をひそめる長髪の少女。早口で話す帽子の少年。
この二人は立ち居振る舞いから戦場に慣れていないとスネークは判断した。
『みんなお疲れ、色々と頑張ってるみたいだねぇ』
そして始まる放送。気怠そうな男の声による放送は、放送室の空気を重苦しいものにした。
主催者でさえ予想外のペースだという、前回の放送より増えた死者の人数。
「残り参加者は四十人……か」
「えっと……禁止エリアはどこだっけ」
冷静に見えた帽子の少年やルッカでさえ、態度に動揺を隠せていない。
やはり、年相応に未熟な部分もあるということだろう。
「四条さん……萩原さん……」
一方で、長髪の少女は知人らしき名前を呟いて、見るからにショックを受けていた。
「なんてこった、悠……!ティファ……!」
ピカチュウはといえば、震える小さな手を床に打ち付けていた。
鳴上悠とティファ・ロックハート。落ち合う予定の三名のうち二名は命を落としたと宣告を受けたのだ。
当人からするとショックだろうことはもちろん、合流する前提で脱出案を考えていた以上、その案は破綻したことになる。
落ち込む名探偵をそのままに、スネークは全員に向けて口を開いた。
「ナーバスになるのはいいが、脱出する方法を探らなければならない。
ここでお互いの持つアイテムを確認したいと考えているが、どうだ?」
「そうね、スネーク。Nも協力して。チハヤは大丈夫?」
「……はい。大丈夫です」
それからは互いの支給品を確認するのと同時に、情報を共有することにした。
○
「なんだよ、人の顔をジロジロと」
「いや、生のピカチュウを見るのは初めてでね」
「おお!お前はポケモンを知っているんだな!」
「ああ。ボクはイッシュ地方にいたんだ。ポカブと同じさ」
「ポカポカ!」
「キミはどこから来たんだい?カントー、ホウエン、それともシンオウ?」
「ライムシティを知ってるか?人とポケモンの共存・共栄する街さ」
「へえ……それは興味深い。ぜひ行ってみたいな」
○
「ピカチュウさん、もしかして天城雪子って人に聞き覚えありませんか?」
「ん……そういえば悠のやつが仲間だって言ってたな。どうしてだ?」
「私、雪子……さんに屋上で助けてもらったんです。
そこで話したとき、悠さんや千枝さんの名前を聞いていたので、もしかしたらと思って」
「そうだったのか……その、雪子は?」
「下の保健室にいます。千枝さんには、せめて会わせてあげたいですけど……」
「ああ……無事だといいんだが」
○
「……うーん、首輪の解析はまだ先になりそう」
「ルッカは爆弾に詳しいのか?」
「まあね。サイエンス全般は任せて。工具さえあれば、首輪を解析できそうなんだけど」
「工具……?もしかして、黄色いロボに心当たりがあるか?」
「えっ!?どうしてそれを?」
「病院でロボに襲われたんだが……そのロボの顔が描いてある工具箱が、悠に支給されていたんだ!」
「それ、私のやつ!今どこにあるの?」
「たしか……悠の荷物にあったはずだ」
「じゃあ目的地は決まりね!」
「E-4の方角にいるはずだ」
○
こうした会話を耳に入れながら、スネークは黙考していた。
待望の武器となる拳銃は手に入れたものの、状況は思わしくない。
ソリダスやオセロット、それに警戒すべきカイム及びハンターは未だ生存している。
オタコンの名前が呼ばれなかったのは不幸中の幸いだが、やはり今すぐにでも合流したい。
ここでネックになるのは戦闘員の人数だ。ここにいる参加者五名のうち戦闘員と呼べるものを有しているのは二名。
ポケモントレーナーを戦闘員に数えるかは微妙なところだが、身体能力を考慮に入れて今回は数えない。
ドラゴンに騎乗する男は、数時間前に対峙した、主催者の手先の可能性がある相手だ。
脱出に際して、警戒をしてし過ぎるということはない。
「……」
いずれにせよ迅速な行動は必須だ。悠長に動いて火でも付けられたら目も当てられない。
この閉ざされた空間から、非戦闘員含めた全員を無事に逃がすために。
伝説の傭兵ソリッド・スネークは行動を開始する。
【E-5/八十神高校/一日目 日中】
【ソリッド・スネーク@METAL GEAR SOLID 2】
[状態]:全身に軽い火傷と打撲(処置済)
[装備]:傭兵用ハンドガン(15/15)@BIOHAZARD 3
[道具]:基本支給品、音爆弾@MONSTER HUNTER X(2個)、パラセール@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド、首輪(ジャック)、ジッポー@現実
[思考・状況]
基本行動方針:マナやウルノーガに従ってやるつもりはない。
0.八十神高校から脱出する。イウヴァルトとドラゴンは……。
1.オタコンの捜索。偽装タンカーはもちろん、他の施設も確認するべきか。
2.武器(可能であれば銃火器)を調達する。装備は多いに超したことはない。
3.カイムと狩人の男。オセロット、ソリダス、セフィロスに要警戒。
4.装備が整い次第、セフィロスを倒すか?
※参戦時期は少なくとも、オセロットがソリダスも騙したことを明かした後以降です
【ピカチュウ@名探偵ピカチュウ】
[状態]:健康
[装備]:モンスターボール(ポカブ)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(確認済み、1~3個)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める。
0.この八十神高校から脱出する。
1.脱出後はE-4でルッカの工具箱を探したい。
2.悠とティファの仲間、ポカブのパートナーを探す。
3.千枝、無事でいてくれ……。
※本編終了後からの参戦です。
※電気技は基本使えません。
※ティファからマテリアのこと、悠からペルソナのことを聞きました。
【如月千早@THE IDOLM@STER】
[状態]:焦燥
[装備]:肝っ珠@ペルソナ4、ロイヤルバッジ@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(0~1個) 天城雪子の支給品(0~1個)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残って、歌い続ける。
0.八十神高校から脱出する。
1.急に様子がおかしくなったイウヴァルトに違和感。
2.里中千枝を雪子と会わせたい。そして雪子の最期を伝えたい。
【ルッカ@クロノ・トリガー】
[状態]:ダメージ(小)、MP消費(小)
[装備]:水の羽衣@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2個(工具の類は入っていません)、医療器具 図書館の本何冊か(何を借りたかは次の書き手にお任せします。) 素材(機械生命体の欠片、ネジ、金属板など)
[思考・状況]
基本行動方針:人と工具を集め、ロボを正気に戻す。
また首輪を集め、解析、あるいは景品交換用に使う。
0.八十神高校から脱出する。
1.E-4方面へと向かい工具箱を回収する。
2.多少は割り切ることも必要なのかもしれないわ……。
3.工具箱が見つかれば、この首輪の解析でもしてみようかしら。
4.首輪を集めたら、首輪景品交換所を使う。
5.Nって不思議な人……だけど優秀な頭脳なのは間違いないわ。
6.何のためにあんな機械を?
※遊園地廃墟にある、首輪景品交換所の情報を知りました。
【N@ポケットモンスター ブラック・ホワイト】
[状態]:健康
[装備]:モンスターボール(トンベリ)@FF7、毒牙のナイフ@DQ11(トンベリが所持)
[道具]:基本支給品 本何冊か
[思考・状況]
基本行動方針:ルッカの理想に付き合う
0.八十神高校から脱出する。
1.ルッカと共に行動をする
2.新しい理想を手に入れる。
【イウヴァルト@ドラッグオンドラグーン】
[状態]:狂気(大)
[装備]:アルテマウェポン@FF7
[道具]:基本支給品、モンスターボール(空) ゴールドオーブ@DQ11
[思考・状況]
基本行動方針:フリアエを生き返らせてもらうために、ゲームに乗る。
1.ドラゴンと共に、破壊の限りを尽くす
2.もう、帰れない
※空っぽのモンスターボールは野生のポケモンの捕獲に使えるかもしれません。
【支給モンスター状態表】
【ブラックドラゴン@ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて】
[状態]:健康
[持ち物]:なし
[わざ]:テールスイング おたけび 噛みつき はげしいほのお
[思考・状況]
基本行動方針:破壊の限りを尽くす
【トンベリ@FINAL FANTASY Ⅶ】
[状態]:健康
[持ち物]:毒牙のナイフ
[わざ]:ほうちょう みんなのうらみ
[思考・状況]
基本行動方針:Nと行動を共にする、自分のほうちょうがほしい。
【ポカポカ(ポカブ ♂)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト】
[状態]:健康、満腹
[特性]:もうか
[持ち物]:なし
[わざ]:たいあたり、しっぽをふる、ひのこ
[思考・状況]
基本行動方針:ベルを探す
1.ピカチュウ達について行き、ベルを探す。
2.強くなってベルを喜ばせたい。
【
支給品紹介】
【傭兵用ハンドガン@BIOHAZARD 3】
天城雪子に支給された拳銃。
モチーフはSIGPRO SP2009。装弾数15発。
U.B.C.S. が傭兵に支給しているハンドガン。ゲーム本編ではカルロスの初期装備。
【共通備考】
※八十神高校の三階から屋上に続く階段及び正面玄関は、瓦礫等が障害物となっています。
※お互いの支給品を確認して、適宜交換しました。
描写したのは、傭兵用ハンドガンを雪子からソリッド・スネークに移したのみです。
■
第二回放送からさかのぼること十数分。
花村陽介と里中千枝の二人は、休息よりも先に作業をしていた。
その作業とは、戦闘で命を落とした二人――鳴上悠とティファ・ロックハート――の遺体を安置することだ。
現在は晴れているが、いつ天気が崩れるかはわからない。「これ以上遺体を傷つけたくない」という千枝の提案に、陽介も賛同した。
とはいえ遠くまで移動するのは大変なので、付近で崩壊を免れた建物のソファへと二人を寝かせた。
「本当なら、きちんと弔ってやりたいけど……今はこれで我慢してくれよ」
ここにいない完二や雪子、ホメロスまで含めて黙祷を捧げた陽介は、横目で千枝の様子を確認した。
泣き腫らして赤みを帯びた目で遺体を見つめながら、小さく声を漏らす千枝。
「鳴上くん……」
鳴上悠は、名実ともに自称特別捜査隊のリーダーだった。
落ち着いているのに不思議と発言力はあり、メンバーの精神的支柱になっていた。
ダンジョンの戦闘はもとより、学校生活という日常においても助けられたことは数多い。
もちろん陽介は、千枝のプライベートこそ知らないが、千枝もまた悠に助けられたのであろうことは、常日頃の接し方から想像できた。
(大切な仲間の死を、そうそう吹っ切れるワケねーよな。
しっかり前を向いて現実と向き合おう……か。我ながらムズイこと言うぜ)
つい先ほど千枝に伝えた言葉は、そのまま陽介の意思表明でもある。
陽介はその難しさを理解している。己のシャドウとの対峙、そしてもう一つの経験からだ。
(俺だって……これが初めてじゃないから、まだ冷静でいられるだけだ)
大切な相手を喪う経験は、陽介にとって初めてではない。
小西早紀。自分から一方通行に想いを寄せていた相手でさえ、亡くなったと聞いたときはショックを受けた。
そのショックを、陽介は“連続殺人事件を解決する”という目標で抑え込んで行動してきた。
現実と向き合えているかと言えば、そうではないのかもしれない。
(それでも進まなきゃいけねぇ)
だからこそ。陽介は千枝に「一緒に進もう」と伝えたのだ。
現実と向き合うのは難しいことで、一人では挫けてしまうから。
「里中、とりあえず休憩だ。メシ食おうぜメシ。あ、もう食った?」
「ううん」
「ってか俺の食料、ビフテキ串10本なんだけど!?正気かよ!
なあ、そっちのデイパックには何が入ってた?肉と交換しようぜ」
「……ガム一枚ならいいよ」
「ガムかよ!レートつり合ってないっつの!」
「はぁ?肉ガムだよ?一枚で値千金だって」
「肉と肉を交換してどーすんだよ!」
つとめて明るい振る舞いをしてみたら、千枝もいくらか調子を取り戻したらしい。
こういう単純な部分は助かると、陽介は千枝の性格に感謝した。
そして、改めて伝えておくべきことを口にする。
「いいか?いろいろ考えちまうかもだけど、今は生きるのが最優先だ。
それに俺たちは、悠や完二や天城のことを伝えなきゃならないだろ?」
「うん……」
「だから、これからのことを考えるんだ。まずはお互いに情報を交換して……」
「……」
「おい、聞いてんのか里中?」
「ねぇ、何か聞こえない?バイクの音みたい」
千枝に言われて耳をそばだてると、確かにアイドリング音らしきものが聞こえる。
「まさか、誰か騒ぎを聞きつけて来たのか?」
「どーしよう、とにかく会ってみる?」
「いやいや、危険な相手だったらマズイだろ!まずは様子見で……」
あれこれ話していると、聞こえてくる音はアイドリングから女性の声へと変わった。それも誰かを呼ぶ声だ。
「シェリー!シェリー!」
屋内から外を見やると、そこには必死に声をあげるポニーテールの女性がいた。
女性の呼んでいる“シェリー”とは名簿の“シェリー・バーキン”のことかと予測していると、別の名前を呼び出した。
「クラウド!ティファ!エアリス!」
「ソリッド・スネーク!あとは……ハル・エメリッヒ!」
「誰でもいい、誰かいないの!?」
(クラウドたちを知っている……誰だ?)
女性の悲痛な叫びに同情して出ていくべきかどうか、陽介は思案する。
疲労は肉体と精神ともにピークに達している。不用意に接触して戦闘になれば不利だ。
「どうするの花村?」
「……安全だと確実に思えるまでは、様子見だ」
ここで選択を誤るわけにはいかない。
一歩間違えば命を落とす現状への危機感が、陽介を慎重にさせた。
そして幸運なことに、状況は思いのほか早く動き出した。
『みんなお疲れ、色々と頑張ってるみたいだねぇ』
「この声!?」
「足立の野郎……!」
定時放送を告げたのは、陽介たちのよく知る人物だった。
陽介は数時間前に姿を見ていたので驚きよりも怒りが先に来るが、千枝からすると驚きが大きいはずだ。
放送で呼ばれる名前をメモしているときも、千枝を横目で見ると心ここに在らずといった様子だ。
「なんで足立さんが……?」
「足立については後で話す。それよりあの人は?」
放送後に外を見ると、そこで女性は立ち尽くしていた。
それは死者を告げられて呆然とした表情ではない。むしろ安堵している表情だ。
「ねえ、花村。あの人……」
「ああ……信用しても良さそうだ」
陽介は千枝と目配せを交わして頷いた。
この状況で、あの表情を出せるのは心の底から安堵しているからに違いない。
「あの!お姉さん、誰か探してるんですよね?」
こちらの姿を認めた女性は、怪訝な表情で後ずさりをした。
警戒を解くために、陽介はデイパックを地面に置いて両手をあげてから言葉を述べた。
「俺、花村陽介って言います。こっちは里中千枝」
「もちろん殺し合いには乗ってません!」
「そうなの……私はクレア。クレア・レッドフィールドよ。
向こうのホテルから凄まじい戦闘が見えて、ここまで来たの」
クレアは南の方角にかろうじて見えるホテルを指差した。
陽介はクラウドとの戦闘を思い返す。あの破壊を見てここに駆け付けたくなる気持ちは理解できる。
「それで、誰を探してるんですか?」
「そうね……あなたたち、シェリーという女の子を見たりしていない?」
クレアは疲れた表情を浮かべて、シェリーの特徴を陽介たちに伝えてきた。
あいにく陽介には心当たりはなかったが、千枝にはあったようだ。
「その子……橋の近くで会った子だ!」
「本当!?」
「眼鏡をかけて忍者みたいな格好をした男の人と一緒にいた!
たしかシェリーって呼ばれてた……そう、研究所に行くって!」
千枝の言葉で、クレアは表情をみるみる明るくした。
そして「ありがとう」と礼を述べると、早速バイクに乗ろうとする。
そこで陽介はあることを思いついて、バイクに駆け寄り引き留めた。
「待って!ひとつ、頼みたいことがあるんです」
「頼みたいこと?」
「コイツを八十神高校まで届けてくれませんか?」
陽介は隣の千枝に親指を向けた。千枝は驚いた表情だ。
同意を得るより先に、千枝のデイパックに自分の荷物を収めていく。
「ちょ、花村!?いきなり何の話?」
「さっき黄色いネズミの話してただろ。ピカチュウだっけ?
放送で呼ばれなかったってことは、そいつはまだ生きてるってことだ」
「あ、そっか!合流した方がいいよね」
「そういうこと。クレアさん、お願いできませんか?」
クレアはしばらく逡巡して、それでも了承した。
渡されたヘルメットを装着しながら、千枝は花村に問いかけた。
「でも花村、アンタはどうすんの?」
「バイクは最大二人乗りだろ?俺は歩いて向かうよ」
「それなら、これを持っておくといいわ」
「これは……トランシーバー?」
クレアから渡されたのは小型の無線機。操作方法を確認して、デイパックにしまい込む。
「もしかすると白髪の男性に会うかもしれないから、教えておくわ。
私の名前と“サンズ・オブ・リバティ”というワードを言えば味方と伝わるはず」
「それじゃあ花村、八高でね!」
「ああ!」
陽介は遠ざかるバイクの影を見送り、遺体を安置した建物へと戻ると、ソファに勢いよく倒れ込んだ。
殺し合いの開始からここまでの連戦で溜まってきた疲労は、ついに限界を迎えた。
ヘロヘロな状態で、千枝に余計な心配をかけまいと気力で耐えていたのである。
魔術師は寝息を立てて、久方ぶりに身体を休めることにした。
【E-4/一日目 日中】
【花村陽介@ペルソナ4】
[状態]:ダメージ(大)、顔に痣、体力消耗(大)、SP消費(大)、疲労(極大)、決意、睡眠中
[装備]:グランドリオン@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品3人分、不明支給品(1~3個)、トランシーバー@現実
[思考・状況]
基本行動方針:仲間と共に死んだ人たちの仇をとる。
0.Zzz……(八十神高校へ向かう)
1.死ぬの、怖いな……。
2.足立、お前の目的は……?
3.サンズ・オブ・リバティ?
※参戦時期は足立との決着以降です。主催者陣営に足立がいることを知りました。
※鳴上悠との魔術師コミュはMAXになりました。
※クラウドの過去を知りました。
※ペルソナ『スサノオ』を覚醒しました。
【里中千枝@ペルソナ4】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、体力消耗(大)、SP消費(小)、びしょ濡れ、右掌に刺し傷、深い悲しみ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、守りの護符@MONSTER HUNTER X、女神の杖@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて、ルッカの工具箱@クロノ・トリガー、シーカーストーン@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド、モンスターボール(空)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト、シルバーオーブ・LIFE@ゲームキャラ・バトルロワイアル、クラウドの首輪、ランダム支給品(0~1個)
[思考・状況]
基本行動方針:前を向き、現実と向き合う。
0.クレアのバイクで八十神高校へ向かい、ピカチュウ達と落ち合う。
1.鳴上くん……。錦山さん……。
2.自分の存在意義を見つけるまでは、死にたくない
※ミファーは死んだと思っています。
【クレア・レッドフィールド@BIOHAZARD 2】
[状態]:疲労(小)、不安
[装備]:サバイバルナイフ@現実、クレアのバイク@BIOHAZARD2
[道具]:基本支給品、不明支給品(確認済み 0~1個)、パープルオーブ@ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて、薬包紙(グリーンハーブ三つぶん)@BIOHAZARD 2、トランシーバー×2@現実
[思考・状況]
基本行動方針:対主催の集団を作り上げる。
0.千枝をバイクで八十神高校まで送り届けて、それから研究所へ行くため北上する。
1.シェリー・バーキンを探して保護する。
2.首輪を外す。
3.いずれ“セレナ”に寄る。
※エンディング後からの参戦です。
最終更新:2025年01月04日 09:12