「…は?おっさん、いったい何言ってんだ?」
花村陽介は、呆気にとられた表情で目の前の男を見つめる。
今、目の前の男は、とんでもないことを告白してきた。
「二度も言わせるな。私の名はホメロス…ウルノーガの部下だった男だ」
「…マジ、で言ってんのか」
「ああ、ウルノーガによりこの殺し合いを促進させるジョーカーとなり、支給品も優遇されている。この場に呼ばれた何人かの知り合いに聞けば、確実だろう」
「…ああ、そうかよ」
ホメロスの告白を聞いた陽介は、俯いたまま肩を震わせる。
やがて、顔を上げると、キッと怒りの表情でホメロスを睨みつける。
「ペルソナァ!」
もう一人の自分、ペルソナ。
困難に立ち向かうための人格の鎧、ジライヤが陽介の背後に現れる。
ホメロスはペルソナを見て一瞬驚いた表情となるが、しかしすぐさま真面目な表情となって話を続ける。
「話は最後まで聞け。私はウルノーガの部下ではあったが…今はウルノーガの敵だ」
「はぁ!?何意味の分かんねえこと言ってやがる!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ホメロスは、打倒ウルノーガの為の仲間を探していた。
しかし、その為には障害があるのだ。
(私の素性…【魔軍司令ホメロス】としてのかつての顔を、グレイグや勇者一行は知っている。奴らの協力を得るのは容易ではない)
グレイグはともかく、勇者一行については彼らの仲間を死に追いやり、あげくその魂を幻覚により侮蔑したという過去もある。
受け入れてもらうのは簡単なことではないだろう。
(だがそれ以上に厄介なのは…グレイグや勇者一行により、私の悪評が広められることだ)
かつて、勇者を【悪魔の子】として喧伝するウルノーガの策に加担してきたホメロスだからこそ、自分がその立場に立たされることの厄介さは分かっているつもりだ。
今はまだ影響が少ないだろうが、放送後に配られるらしい名簿によりホメロスの名が明らかになれば、彼らはこぞって自分の悪評を同行者に広めてしまう。
(それならばいっそ、なにもかも打ち明けるべき…か)
結果、ホメロスが出した結論はこれだった。
どうせ隠してもバレるなら、いっそのこと全てを打ち明けてしまえ。
隠してバレるより、最初からバラす方が心証もいいだろう。
「…あそこに誰かいるな。さっそく接触するか」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…と、こういうわけだ。私はたまたま公園にいたお前が殺し合いには乗っていないと聞き、あえて協力を申し出るために素性を明かした」
話を終えたホメロスは、陽介の様子をうかがう。
「関係あるかよ!」
陽介の表情は…依然変わりなく怒りの表情だった。
「てめえはウルノーガの…完二を殺した奴らの仲間なんだろ!そんなの…許せるわけねえだろうが!」
「カンジ…誰だそれは?」
「最初の場所で首輪を爆破された男だよ!俺の後輩で…俺達の仲間だった完二を、てめえらは殺した!」
陽介の言葉に、ホメロスはチッと舌打ちした。
よりにもよって、あの時死んだ男の仲間だとは。
これは、初手から相手を間違えたかもしれない。
「いっけえジライヤ!突撃だ!」
「…仕方ない。ひとまず無力化するか」
気絶させた後、生かしておけば少しは信用を得られるだろうと考えながら。
こちらへ向かってくるジライヤと呼ばれる謎の戦士に対し、ホメロスは武器を構えて衝撃に備え…
「…なに?」
…ようとした。
しかしいつまでたっても衝撃は来ない。
何故ならジライヤは、ホメロスの目前で、動きを止めているのだから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(許せねえ…許せねえ!)
陽介は、目の前の相手に対して怒りを燃やしていた。
こいつが、こいつの親玉が、完二を殺した。
それはつまり、完二の仇も同然だった。
「いっけえジライヤ!突撃だ!」
何が協力だ。
こんな奴の話を聞く必要なんか…
—落ち着け!
(…………え?)
声が、聞こえた気がした。
思わずジライヤを止めて辺りを見回す。
しかし、声の主——鳴上悠の姿はどこにもない。
どうやら、陽介の脳裏にかすめた幻聴だったらしい。
(『落ち着け!』…あの言葉は)
それは、かつて生田目の病室にて、彼をテレビの中に落とすか否かで揉めていた時のことだった。
興奮していた俺達を、悠は…俺達のリーダーはその言葉で一喝したのだ。
「…どうした?私が許せないのではなかったのか」
ホメロスを見つめる。
正直、憎らしくて仕方ない。
だけど、このまま感情の赴くままに従えば…あの時と同じだ。
今、自分がするべきことは…
「…全部だ。なんでウルノーガに従ってたのかとか。なんで裏切ったのかとか。全部、教えろ。どうするかは…それから決める」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ホメロスは全てを話した。
グレイグと共に高みを目指した青春の日々。
その中で、ウルノーガによって植え付けられた劣等感。
魔軍司令としての悪行の数々。
最後に、グレイグと分かり合えたこと。
そしてこの殺し合いの地にて、自分が道化だと気づかされたこと。
全てを、陽介に話した。
「…これで、大体のことは話したと思うが。納得したか?」
「…正直、俺はやっぱりあんたを許せねえよ。どんな事情があったにせよ、あんたのやったことはそれだけ重いと思う」
「…そうかもしれないな」
「自分のことなのに他人事みたいだな」
「…一つ誤解の内容に言っておくが、私がウルノーガを殺すのは奴が私のプライドを踏みにじったからだ。断じて善意からの行動ではない」
(素直じゃねえ奴)
ホメロスと会話しながら、陽介は思った。
彼がウルノーガを許せないというのは、本心だろう。
しかし、そこに善意が全くないとは、陽介には思えない。
話して見て、感じたのだ。
かつて劣等感を抱いていた親友への、憧憬を。
彼のようになりたいという、想いを。
(なんか、自分を見てるみたいだ)
そんなホメロスを見ていると、陽介は彼のことを思い出した。
親友であり相棒の、鳴上悠のことを。
かつて、自身の影に殺されかかった時、その影相手に一人で立ち向かっていった勇敢な背中。
あの時からきっと、陽介は彼のようになりたいと、心のどこかで思っていた。
(あいつとは対等でありたいのに…まだまだ未熟だな、俺)
こうして感情に任せずホメロスと対話できたのも、直前であいつの言葉を思い出したからだ。
菜々子ちゃんのことで一番つらかったはずなのに、それでも冷静に真実を追求した相棒の言葉を。。
「おい」
「ん、なんだよおっさん」
「まだ答えを聞いてないのだが?私に協力するのかどうか」
陽介はホメロスをじっと見つめる。
確かに彼のしてきたことは許せないと思う。
しかし、ホメロスの過去を聞いた陽介には、もはや彼のことを敵とは思えないでいた。
(こいつも結局…心に影(シャドウ)を抱えた、人間だったってことか)
陽介は事件を追う中で、様々な人の心の闇に触れてきた。
特に親友への劣等感という闇は、かなり身近なものだ。
天城と里中がそうだったし…最近気づいたことだが、俺自身も相棒に対してそんな感情を持っていたことを自覚してきたところだった。
そんな誰でも持ちうる感情を…ウルノーガによって歪めさせられたのだ。
だから陽介は、完二のことでホメロスを恨むつもりはもうない。
憎むべき敵は…マナであり、ウルノーガだ。
答えはもう、決まっている。
「いいぜ、協力してやる。あんたの敵討ちに」
「そうか」
「なんだよ、ノリ悪いな。もっと喜んだっていいんだぜ」
「慣れあうつもりはない、とっとと行くぞ」
ホメロスはそっけない態度で、歩き出した。
そんな彼を、やっぱ素直じゃねえ奴、と思いながらも陽介は追いかけていった。
【C-4/公園/一日目 黎明】
【ホメロス@ドラゴンクエストXⅠ 過ぎ去りし時を求めて】
[状態]:健康
[装備]:虹@クロノ・トリガー
[道具]:シーカーストーン@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド モンスターボール(ジャローダ)@ポケットモンスターブラック・ホワイト 基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:打倒ウルノーガ
1.絶対に殺してやるぞ……!
2.自分の素性は隠さずに明かす
【花村陽介@ペルソナ4】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3個
[思考・状況]
基本行動方針:仲間と共に完二の仇をとる
1.とりあえずホメロスについていく
※参戦時期は少なくとも生田目の話を聞いて以降です
※魔術師コミュは9です(殴り合い前)
最終更新:2019年09月19日 20:47