狂花水月

きょうかすいげつ

収録作品:星のカービィ トリプルデラックス[3DS]
作曲者:安藤浩和

概要

タランザのおくる ささげものは、言葉(ことば)は、
かのじょにはもう とどかない。()すべてを
うしない ぼう(そう)する かつて女王(じょおう)であった
()そうな むくろ…。世界(せかい)をとりこみ なお()
しゅうちゃくする かのじょに、とわなる…ねむりを!()


本作のストーリーモードのラスボスである、「クィン・セクトニア」の最終形態1戦目及び、真・格闘王への道においての「セクトニア ソウル」の第1形態戦で流れるBGM。

通常ボス戦闘曲である「とびだせ! 奥へ手前へボスバトル」、メインテーマである「きせきの1つ」の二曲を組み合わせたアレンジである。
寂しげなピアノのイントロから始まり、一度ブレイクした後に少しずつ疾走感を増して行き、本作のメインテーマのアレンジとなっているサビに突入するという、まさにラストバトルにふさわしい盛り上がりを見せる曲でありながら、全メロディが一貫して幻想的でかつ、どこか切なく悲壮的な曲調となっており、セクトニア最終戦の「この星をかけた魂の戦い」と同じく、非常に高い人気を持つ。

第8回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100では、前年の王者であり前作のラスボス曲である「CROWNED」に全ランキング唯一となる100票越えの大差をつけ、初登場にして1位という快挙を成し遂げた。
みんなで決める星のカービィBGMベスト100他、複数のランキングでも1位を獲得しており、今なお本ランキングにおいて上位にランクインし続けている。
人気の高さは 「キーボード・マガジン 2017年7月号 SUMMER」でのインタビューでも取り上げられており、これに安藤氏は「私はまず、ピアノの音色で曲を考えるのですが、その最初のピアノがいい感じだと、ピアノを残したくなるんです。」と語っている。
実際この曲はイントロを始めとして全体的にピアノがそこそこ目立つ曲であり、安藤氏は最初にピアノで考えていたイメージが良かったことがいい方向に出たのではないかと推測している。

儚い幻という意味の、「鏡花水月」をかけた曲名となっており、ただひたすら美と言う目に見えて触れる事が適わない「儚い幻」に執着して、「鏡」の強い力で「狂」ってしまい、強大な力を持つ「花」に寄生し、「水」色の巨大な満「月」を背景に戦うという、まさにストーリーの観点から見てもこれ以上無い曲名となっている。

ちなみに海外版でのタイトルは「Moonstruck Blossom」であるとHAL研究所のイシダ氏がMiiverseでコメントを出している。
「Moonstruck」とは、旧来"狂気"というのは"月の光"によって生み出されるものという考えから生まれた「狂った」という意味の言葉である。
「Blossom」が「花」であることを合わせると、やはり英訳も語源を含めてシチュエーションに合ったタイトルと言えるだろう。

この曲名を名付けたのはディレクターの熊崎信也氏。
以前のカービィシリーズでは、曲名を考える時間があれば作曲の時間に充てるということで単調な曲名になっていたのだが、熊崎氏がディレクターに就任して以降は熊崎氏が曲名を付けるようになったことでカービィシリーズの曲名が様変わりしている。
この曲名は熊崎氏が手掛けた曲名の中でも特に秀逸なもののひとつであることは疑いようがないが、この曲を含めどのような考えで曲名を付けたかについては『星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート』のパンフレットで以下のように語っている。

サウンドトラック向けに曲名も付けるのですが、前半はおなじみのカービィらしくストレートなものにし、後半は過去のシリーズ以上にメッセージ性を込めた奥深いものにしています。物語のテキストを書くときも、文章の表現やセリフまわしも同じ考えで書いています。エンディングをプレイされる頃には、そのゲームに愛着が湧いているはず。その気持ちに応えられるような曲名にもします。間口は広く、奥は深い……遊びはもちろん、文章や曲名までも通じている部分と考えています。

ストーリーモードでは蒼い満月を背景として、ワールドツリーに寄生し、「星をつかむもの」となったクィン・セクトニアの赤い翅が表示されたと同時に本曲の静かなピアノソロのイントロが流れ、メインメロディの開始と同時にラストバトルが始まり、ソウル戦ではイントロと同時に、「クィン・セクトニア」の屍が4つのきせきの実を喰らって「セクトニア ソウル」と化し、叫び声を上げたと同時にメインメロディが開始するという演出となっている。

どちらも曲名、BGM、演出のシンクロ効果が凄まじく、本曲の評価を大きく上げている理由の一つと言えるだろう。


ディレクターである、熊崎信也氏のコメント
ゲーム完成後、各曲に名を付けるのですが、決戦の曲「狂花水月」はその名の通り、月に映える「妖艶な女性らしさ」がテーマで、かつてのシリーズボス曲にある威厳や怖さより、美しさを意識した、お気に入りの1曲です。ゲーム中のテキスト作成時も、何度もこの曲を聴きながら、敵の叶わぬ願いを感じつつ聴きました。

また「女性の声」も決戦の曲の重要な要素で、叫びや笑い声等で戦いを印象深くしています。天空の民などはサウンドスタッフが、デデデ大王の声は私が担うのですが、じつはこの声の主はカービィと同じだったりします。プロの声の幅の高さに驚かされました。

このように様々なテーマの詰まったクライマックスの曲を、ぜひ最後までプレイして、アクションと音と声に体感していただければと思います。


「…きっと、きせきは()きるのねっ!」

ただ、()いたくて「トリプルデラックス」から (ぎん)ぱつ
おぼっちゃんが きせきが かなうという、あの(さい)だんを
目指(めざ)す! じつは(かれ)も けつ(まつ)は わかっている。けれども
(ひかり)目指(めざ)して ()()たないでは、いられなかった…!


星のカービィ スターアライズ』では「星のタランザ」のバルフレイナイト戦で「Dirty&Beauty」「この星をかけた魂の戦い」とのアレンジメドレー「月魄(げっぱく)のファントム」が流れる。
原曲と比べ電子音とドラムの音圧がすごいことになっているにもかかわらず主旋律の美しさを保っており、切なくも盛り上げる構成となっている。
原曲ではイントロだったフレーズを終盤に持ってくる変則的な曲構成となっているが、その終盤の美しさと切なさと熱さを兼ね備えた曲調は必聴である。
スーパーカービィハンターズ』では、わいわいクエストの超ランクでのタランザ戦で「月魄のファントム」のアレンジ曲が唐突に流れプレイヤーを驚かせた。
これ以外の下位ランクのタランザ戦は「リベンジ オブ エネミー」のアレンジであるため、完全な不意打ちである。
前作よりもドラムがより前面に出ており、また一味違ったものとなっている。
そして狂花水月のサビに入る直前では曲が一瞬途切れており、ドキッとさせられるだろう。
なお、公式Twitterでは「セクトニア」セットの紹介でこの曲の狂花水月のフレーズが使われている。毎度のことながら映像がかなり凝っているので一見の価値ありである。

『星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート』のCDに付属したサウンドトラックには「Eternal Dream」というアレンジ曲が入っているのだが、この曲には歌詞がついており、高橋織子女史*1によるボーカルまである。

過去ランキング順位

「狂花水月」

第8回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 1位
第9回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 14位
第10回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 13位
第11回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 18位
第12回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 25位
第13回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 25位
第14回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 12位
第15回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 3位
第16回みんなで決めるゲーム音楽ベスト100 5位
みんなで決める2014年の新曲ランキング 1位
みんなで決める星のカービィBGMベスト100 1位
みんなで決めるピアノBGMベスト100 8位
みんなで決める夜曲ランキングベスト100 1位
みんなで決めるゲーム音楽歴代ベスト100ランキング 2位
みんなで決める泣き曲ランキング 47位
第2回みんなで決めるラストバトルBGMベスト100 1位
第2回みんなで決める星のカービィBGMランキング 1位
第3回みんなで決める任天堂ゲーム音楽ベスト100 4位

「月魄のファントム」

「Eternal Dream」


サウンドトラック

星のカービィ トリプルデラックス サウンドセレクション


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最終更新:2024年01月11日 01:13

*1 任天堂関連ならスマブラXのメインテーマでも知られる