“銃煙の騎士”串間 秋彦
- ロイス:大切な約束 P:尽力/N:悔悟
高校の制服を着た由佳を見て、思う。
少し前まで父親の影に怯え震えていた小さな少女が――
「今度は私がお兄ちゃんを助けるからね」と、胸を張っていえる程に大きくなった。
由佳はもう一人じゃない。俺以外にも、由佳のことを考え守ってくれる人達がいる。
だから俺は――安心して旅立てる。
俺の決意に、由佳は顔を曇らせ――俺の決意が固いことを悟ると、とびっきりの笑顔を見せた。
「わかった。もう私、お兄ちゃんを引き止めない。
でも――明日の入学式には絶対に来てよ?
高校生になった私を、お兄ちゃんの目に焼き付けて欲しいから――」
当然だ。
今度は決して――遅れない。
“ソロモンの指輪”松戸 慎吾
- ロイス:ぽっかりとあいた穴 P:慕情/N:虚無感
休職届を残し、アリスが失踪した。運良く入れ替わるように山田助手が戻ってきたことを考えれば、仕事に支障はない。
しかし、教授はアリスを探していた。自分の持てるすべてを使って、あの雪の街で別れたアリスの姿を探していた。 アリスがいなくなって、松戸は気が付いたのだ。
この胸にぽっかりと開いた穴をふさぐことができるのは――アリスを置いて他にいないということに。
だが、どれだけ手をつくしてもアリスの行方を掴むことはできなかった。
しかし二ヵ月後――唐突に、アリスは教授の前に現れた。
“舞姫-The dancer-”水上このえ
- ロイス:積み重なる焦燥感 P:遺志/N:焦燥感
“クレイジーバロン”は倒され、私達は“プレイヤー”ではなくなった。もう私の回りで馬鹿げた“ゲーム”は開催されない。 “クレイジーバロン”を倒したことで、R.P.G.そのものをたどる糸は途切れてしまった。もう私に彼らを追う術はない。もう私は巻き込まれないからと、無関心を決め込んだところで誰も咎めまい。
けれど、本当にそれでいいのだろうか?
私が知らない世界のどこかで、R.P.G.の“ゲーム”は開催されつづける。“ゲーム”は多くの不幸な犠牲者を生み、悲しい思いを生み出していく……
『もう……だれも不幸にしたくない……だから、だから――』
胸に堆積していく焦燥感と戦いながら、このえは走りつづける――
“フロストブレイク”薄野 伊織
- ロイス:漠然とした不安 P:幸福感/N:不安
両親が、S市で代わりに伊織を守ってくれたお礼に水上先生や串間先輩、K市支部の人達を招いて昼食会を開きたいと言い始めた。そこまでする必要ないのに、と反対したんだけど両方とも聞きやしない。
暖かな春の陽気、庭でのバーベキュー大会。少し肌寒かったけど、外で皆で食べるバーベキューは格別の味だった。悪いことはすべて終わったんだから、なおさらだ。
――本当に、すべて終わったの?
誰かが、伊織の耳元で囁いた。