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ロウヒ
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gensousyusyu
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ロウヒ/Louhi
フィンランドの叙事詩『カレヴァラ』に登場する魔女。
荒涼とした異境の地ポホヨラの女主人。「古りしポホヨラの歯抜け婆」などと形容される。
花嫁を探しにポホヨラを訪れた老詩人ワイナミョイネンは、体中傷だらけで髪も髭も伸びきって乱れていた。彼は湖のほとりを彷徨いながら、故郷を思って何日も泣いていたが、その泣き声を聞いたポホヨラの乙女がロウヒにそれを伝え、ロウヒはワイナミョイネンを見つけ出した。ロウヒは彼を小舟で住まいへ連れて行き、食事を与え、濡れた服を乾かし、こわばった手足を擦って暖め、介抱する。回復したワイナミョイネンをポホヨラに安住させようとするが、ワイナミョイネンはやはり故郷に帰ることを要求し、泣き出した。ロウヒは要求を受け入れ、サンポを鋳造すれば自分の娘と結婚させてやると約束した。ワイナミョイネンはロウヒによって橇に乗せられ、カレワラへの帰途についた。
やがて鍛冶師イルマリネンがポホヨラにやって来ると、ロウヒは着飾った娘に出迎えさせ、館において食事や酒で彼をもてなした。そしてイルマリネンに、「サンポを鋳造してくれれば娘と結婚させる」と提案した。イルマリネンが完成させたサンポを、ロウヒは喜んで丘に運び、銅の山中の9つの岩の後ろに隠した。イルマリネンは約束どおり娘を求めたが、娘は彼との結婚を拒んだ。落ち込んだイルマリネンが帰国しようとすると、ロウヒは彼のために食糧を整え、彼を小舟の舳先に乗せて北風を吹かせて船を進めた。
次いでレンミンカイネンがポホヨラにやってきて、ロウヒに対して娘を求めた。ロウヒは彼が女たらしであることを理由に、雪靴を履いてヒイシの鹿を狩ってくるという難題をふっかけた。それが達成されると、次はヒイシの駿馬を捕えることを要求した。これもまたレンミンカイネンが達成すると、ロウヒはトゥオネラの河で白鳥を一射で射止めることを求めた。しかしレンミンカイネンは盲目の男に殺されてしまう。
やがてレンミンカイネンの母がポホヨラを訪ね、息子の消息をロウヒに聞いた。ロウヒは、娘との結婚の条件として鹿・馬・白鳥の捕獲を依頼したことを打ち明けたが、その後どうなったかは知らないと答えた。
ワイナミョイネンとイルマリネンがロウヒの娘に求婚するため、再びポホヨラを訪れた際は、娘にどちらを結婚相手にするか聞き、より多くの財宝を船に乗せていたワイナミョイネンを選ぶよう勧めた。しかし娘は、老人であるワイナミョイネンとの結婚を嫌がり、サンポを鋳造し、より若く容姿端麗なイルマリネンを選んだ。
ロウヒは、イルマリネンに対してトゥオネラの森でトゥオニの熊とマナの狼を捕えることを結婚の条件として課した。イルマリネンがこれをやり遂げると、今度はトゥオネラの河で巨大な梭魚(グツ)を網や手を用いずに捕まえることを要求した。イルマリネンが持ってきた梭魚は頭が切れ、腹が裂かれて胸骨が取られた無残な状態であったため、ロウヒはケチをつけたが、イルマリネンに押し切られ、ようやく娘とイルマリネンの結婚を認めた。
イルマリネンと娘の婚礼の儀にあたって、ロウヒは祝いのためビールを醸造法を聞き、これを作る。そして祝宴のための食事やパンを用意した。
いよいよ祝宴が行われる日、ロウヒが家で支度をしていると、軍勢がやって来る音を聞いた。敵軍かと思ったがそれは花婿イルマリネン一行だった。ロウヒはイルマリネンの馬を選りすぐりの大麦や、よく煮た小麦や、よく搗いたライ麦を食べさせてもてなした。そうして厩に案内し、黄金の輪で柱に繋ぎ、良質な糠が入った槽を目の前に置き、セイウチの骨の櫛で毛を痛めないよう丁重に梳いた。それから黄金で織られた筵・銅でこさえた馬衣をかけさせ、特別な待遇で休ませた。更に、村の若者を呼びだしてイルマリネンを家へ案内させ、帽子や手袋を脱がせた。またイルマリネンの頭がぶつからないように家の閂を取り去り、靴が触れないように閫を下げ、戸が広く開くように戸柱を後ろへ下げた。またテーブルや長椅子や壁や床を綺麗に拭き上げた。家の両側の壁はハリネズミの骨、後ろの壁はトナカイの骨、前の壁は狼の骨、閂は子羊の骨、梁は林檎の木、柱は樺の木を用い、炉の周りに睡蓮を置き、天井は鯛の鱗で、長椅子は黄金製やサキソンの錫で造り、テーブルは金張りにし、床に絨毯を敷き、銅で輝く暖炉と石造りの席を造った。こうしてロウヒはイルマリネンを歓待し、鮭や豚肉の料理や、バターやバター菓子、麦酒でもてなした。
やがて祝宴に招待されなかったことに怒ったレンミンカイネンがロウヒの家を訪れ、ロウヒやポホヨラの主人に暴言を吐き、食事を要求すると、ロウヒは給仕女に命じて彼にひどくみすぼらしい食事を与える。激昂したレンミンカイネンと主人は呪文による勝負に発展したが、その末にレンミンカイネンは主人を殺す。ロウヒは怒り、呪文で武装した英雄たちを召喚した。するとレンミンカイネンは逃げ出した。
レンミンカイネンはポホヨラの軍勢に故郷を焼かれたことの復讐を誓い、幼馴染のティエラと共にポホヨラへやってきた。ロウヒはこれに対し、魔法で湖を凍らせて一行の船を進めなくした。
その後、妻を亡くしたイルマリネンはロウヒを訪ね、第2の娘を要求する。ロウヒは怒ってこれを拒んだ。しかしイルマリネンは娘を奪い去ってしまう。
ワイナミョイネンとイルマリネン、レンミンカイネンがサンポを奪回すべくポホヨラに来ると、ロウヒは怒って軍勢を差し向けた。しかしワイナミョイネンが奏でる音楽により軍勢やロウヒは眠りにつかされた。レンミンカイネンの歌でようやくロウヒが目を覚ますと、既にサンポは一行により奪われた後だった。ロウヒは激昂したが、体に力が入らない。そこで雲の乙女・霧の娘やイク=トゥルソを差し向けた。
ロウヒは100人の剣士、1000人の射手を用意し、ワイナミョイネンの船を追いかけた。ワイナミョイネンが魔法で起こした暗礁でロウヒ一行の船が大破すると、ロウヒは5つの鎌・6つの鍬を爪に変え、船の破片を集めて翼に変えて鷲のような姿に変化した。更に軍勢を翼や尾に乗せたままワイナミョイネンの船に襲い掛かり、沈めようとした。ロウヒが船からサンポを掴みだすと、レンミンカイネンが繰り出した攻撃をかわしたが、ワイナミョイネンが湖中から取り上げた槲の丸材で殴打され、ロウヒは転落した。しかしサンポが爪に引っかかったため、サンポは粉々に砕けてしまった。サンポの欠片は各地に散らばり、その地を富ませたが、ポホヨラは貧しくなる一方だった。ロウヒは嘆き悲しみながら帰っていった。
ロウヒは復讐のため、ウッコ神に祈った。するとロヴィアタルが妊娠したので、ロウヒは彼女を湯殿へ連れて行って出産させた。ロヴィアタルは9人の息子を産み、ロウヒは彼らをワイノラに送りこみ、疫病を流行らせた。しかしこれはワイナミョイネンの活躍により失敗に終わった。
カレワラが健康になったことを知ったロウヒは更に怒り、荒れ野の凶悪な熊オッソを目覚めさせ、家畜を全滅させるためにカレワラに送った。しかしこれもワイナミョイネンに倒される。
次いでロウヒは、ワイナミョイネンの竪琴の演奏を聞きに寄ってきていた太陽と月を盗み出し、岩や山に隠した。さらにカレワラの火を奪った。こうしてカレワラは闇に包まれた。ワイナミョイネンはまず火を取り返し、次いで太陽と月を取り返すための武器の鋳造をイルマリネンに依頼した。ロウヒは鷹の姿でイルマリネンの鍜治場に飛来し、彼に何を作っているか尋ねた。イルマリネンが「ロウヒを山の中腹に拘束するための首輪だ」と答えると、ロウヒはいよいよ諦め、太陽と月を解放した。
荒涼とした異境の地ポホヨラの女主人。「古りしポホヨラの歯抜け婆」などと形容される。
花嫁を探しにポホヨラを訪れた老詩人ワイナミョイネンは、体中傷だらけで髪も髭も伸びきって乱れていた。彼は湖のほとりを彷徨いながら、故郷を思って何日も泣いていたが、その泣き声を聞いたポホヨラの乙女がロウヒにそれを伝え、ロウヒはワイナミョイネンを見つけ出した。ロウヒは彼を小舟で住まいへ連れて行き、食事を与え、濡れた服を乾かし、こわばった手足を擦って暖め、介抱する。回復したワイナミョイネンをポホヨラに安住させようとするが、ワイナミョイネンはやはり故郷に帰ることを要求し、泣き出した。ロウヒは要求を受け入れ、サンポを鋳造すれば自分の娘と結婚させてやると約束した。ワイナミョイネンはロウヒによって橇に乗せられ、カレワラへの帰途についた。
やがて鍛冶師イルマリネンがポホヨラにやって来ると、ロウヒは着飾った娘に出迎えさせ、館において食事や酒で彼をもてなした。そしてイルマリネンに、「サンポを鋳造してくれれば娘と結婚させる」と提案した。イルマリネンが完成させたサンポを、ロウヒは喜んで丘に運び、銅の山中の9つの岩の後ろに隠した。イルマリネンは約束どおり娘を求めたが、娘は彼との結婚を拒んだ。落ち込んだイルマリネンが帰国しようとすると、ロウヒは彼のために食糧を整え、彼を小舟の舳先に乗せて北風を吹かせて船を進めた。
次いでレンミンカイネンがポホヨラにやってきて、ロウヒに対して娘を求めた。ロウヒは彼が女たらしであることを理由に、雪靴を履いてヒイシの鹿を狩ってくるという難題をふっかけた。それが達成されると、次はヒイシの駿馬を捕えることを要求した。これもまたレンミンカイネンが達成すると、ロウヒはトゥオネラの河で白鳥を一射で射止めることを求めた。しかしレンミンカイネンは盲目の男に殺されてしまう。
やがてレンミンカイネンの母がポホヨラを訪ね、息子の消息をロウヒに聞いた。ロウヒは、娘との結婚の条件として鹿・馬・白鳥の捕獲を依頼したことを打ち明けたが、その後どうなったかは知らないと答えた。
ワイナミョイネンとイルマリネンがロウヒの娘に求婚するため、再びポホヨラを訪れた際は、娘にどちらを結婚相手にするか聞き、より多くの財宝を船に乗せていたワイナミョイネンを選ぶよう勧めた。しかし娘は、老人であるワイナミョイネンとの結婚を嫌がり、サンポを鋳造し、より若く容姿端麗なイルマリネンを選んだ。
ロウヒは、イルマリネンに対してトゥオネラの森でトゥオニの熊とマナの狼を捕えることを結婚の条件として課した。イルマリネンがこれをやり遂げると、今度はトゥオネラの河で巨大な梭魚(グツ)を網や手を用いずに捕まえることを要求した。イルマリネンが持ってきた梭魚は頭が切れ、腹が裂かれて胸骨が取られた無残な状態であったため、ロウヒはケチをつけたが、イルマリネンに押し切られ、ようやく娘とイルマリネンの結婚を認めた。
イルマリネンと娘の婚礼の儀にあたって、ロウヒは祝いのためビールを醸造法を聞き、これを作る。そして祝宴のための食事やパンを用意した。
いよいよ祝宴が行われる日、ロウヒが家で支度をしていると、軍勢がやって来る音を聞いた。敵軍かと思ったがそれは花婿イルマリネン一行だった。ロウヒはイルマリネンの馬を選りすぐりの大麦や、よく煮た小麦や、よく搗いたライ麦を食べさせてもてなした。そうして厩に案内し、黄金の輪で柱に繋ぎ、良質な糠が入った槽を目の前に置き、セイウチの骨の櫛で毛を痛めないよう丁重に梳いた。それから黄金で織られた筵・銅でこさえた馬衣をかけさせ、特別な待遇で休ませた。更に、村の若者を呼びだしてイルマリネンを家へ案内させ、帽子や手袋を脱がせた。またイルマリネンの頭がぶつからないように家の閂を取り去り、靴が触れないように閫を下げ、戸が広く開くように戸柱を後ろへ下げた。またテーブルや長椅子や壁や床を綺麗に拭き上げた。家の両側の壁はハリネズミの骨、後ろの壁はトナカイの骨、前の壁は狼の骨、閂は子羊の骨、梁は林檎の木、柱は樺の木を用い、炉の周りに睡蓮を置き、天井は鯛の鱗で、長椅子は黄金製やサキソンの錫で造り、テーブルは金張りにし、床に絨毯を敷き、銅で輝く暖炉と石造りの席を造った。こうしてロウヒはイルマリネンを歓待し、鮭や豚肉の料理や、バターやバター菓子、麦酒でもてなした。
やがて祝宴に招待されなかったことに怒ったレンミンカイネンがロウヒの家を訪れ、ロウヒやポホヨラの主人に暴言を吐き、食事を要求すると、ロウヒは給仕女に命じて彼にひどくみすぼらしい食事を与える。激昂したレンミンカイネンと主人は呪文による勝負に発展したが、その末にレンミンカイネンは主人を殺す。ロウヒは怒り、呪文で武装した英雄たちを召喚した。するとレンミンカイネンは逃げ出した。
レンミンカイネンはポホヨラの軍勢に故郷を焼かれたことの復讐を誓い、幼馴染のティエラと共にポホヨラへやってきた。ロウヒはこれに対し、魔法で湖を凍らせて一行の船を進めなくした。
その後、妻を亡くしたイルマリネンはロウヒを訪ね、第2の娘を要求する。ロウヒは怒ってこれを拒んだ。しかしイルマリネンは娘を奪い去ってしまう。
ワイナミョイネンとイルマリネン、レンミンカイネンがサンポを奪回すべくポホヨラに来ると、ロウヒは怒って軍勢を差し向けた。しかしワイナミョイネンが奏でる音楽により軍勢やロウヒは眠りにつかされた。レンミンカイネンの歌でようやくロウヒが目を覚ますと、既にサンポは一行により奪われた後だった。ロウヒは激昂したが、体に力が入らない。そこで雲の乙女・霧の娘やイク=トゥルソを差し向けた。
ロウヒは100人の剣士、1000人の射手を用意し、ワイナミョイネンの船を追いかけた。ワイナミョイネンが魔法で起こした暗礁でロウヒ一行の船が大破すると、ロウヒは5つの鎌・6つの鍬を爪に変え、船の破片を集めて翼に変えて鷲のような姿に変化した。更に軍勢を翼や尾に乗せたままワイナミョイネンの船に襲い掛かり、沈めようとした。ロウヒが船からサンポを掴みだすと、レンミンカイネンが繰り出した攻撃をかわしたが、ワイナミョイネンが湖中から取り上げた槲の丸材で殴打され、ロウヒは転落した。しかしサンポが爪に引っかかったため、サンポは粉々に砕けてしまった。サンポの欠片は各地に散らばり、その地を富ませたが、ポホヨラは貧しくなる一方だった。ロウヒは嘆き悲しみながら帰っていった。
ロウヒは復讐のため、ウッコ神に祈った。するとロヴィアタルが妊娠したので、ロウヒは彼女を湯殿へ連れて行って出産させた。ロヴィアタルは9人の息子を産み、ロウヒは彼らをワイノラに送りこみ、疫病を流行らせた。しかしこれはワイナミョイネンの活躍により失敗に終わった。
カレワラが健康になったことを知ったロウヒは更に怒り、荒れ野の凶悪な熊オッソを目覚めさせ、家畜を全滅させるためにカレワラに送った。しかしこれもワイナミョイネンに倒される。
次いでロウヒは、ワイナミョイネンの竪琴の演奏を聞きに寄ってきていた太陽と月を盗み出し、岩や山に隠した。さらにカレワラの火を奪った。こうしてカレワラは闇に包まれた。ワイナミョイネンはまず火を取り返し、次いで太陽と月を取り返すための武器の鋳造をイルマリネンに依頼した。ロウヒは鷹の姿でイルマリネンの鍜治場に飛来し、彼に何を作っているか尋ねた。イルマリネンが「ロウヒを山の中腹に拘束するための首輪だ」と答えると、ロウヒはいよいよ諦め、太陽と月を解放した。
別名
参考文献
- フェリックス・ギラン編/小海永二訳『ロシアの神話』青土社
- 山北篤,佐藤俊之監修『悪魔事典』新紀元社
- 松村一男,森雅子,沖田瑞穂編『世界女神大事典』原書房
- 森本覚丹訳『フィンランド国民的叙事詩カレワラ(上)』講談社学術文庫
- 森本覚丹訳『フィンランド国民的叙事詩カレワラ(下)』講談社学術文庫