ダーケフオス危機とはシンテーア暦1679年に発生した経済危機であり、レーウス大不況の発端となった事件である。レーウス大不況はその後の
レーウス経済戦争へと発展し、ジエール・サーヴァリア戦争のきっかけとなる。
概要
レーウスバブル
1660年にゴルギア戦争が終結すると、各地で終戦から復興景気が発生した。レーウスでは都市シールドジェネレータの技術が登場し、台風や落雷などの気象から都市を守ることができるようになった。ただし、この都市シールドジェネレータは設置にコストがかかり、この技術を実用化した国家は公共事業都市、大都市へのシールドジェネレータの設置に注力した。
この公共事業は賃金と物価の上昇をもたらし、生活環境の向上も相まって、急速な人口増加をもたらした。しかし、地価の高騰により、都市部に住めない若年層が続出した。
サーヴァリア王国連合の大企業であるダグデェガデの営業部長マーゴット・ビェドは地方をダグデェガデのグループ会社総出で開発し、居住環境と労働環境を与えるというマーゴットプランを発表した。人気のない惑星の地方をダグデェガデ傘下の建設会社を使い開発し、さらに資源の掘削場や工場など様々な労働環境をすべてダグデェガデ・グループで運営するという完全自社完結の開発プランである。
このマーゴットプランは巨大企業ならではの開発計画であり、若者からの支持を受け大成功を収めた。各国はこの手法をまねようとしたが、サーヴァリアほどの大企業優遇政策をとっている国は少なく、唯一統合経済システムを採用している
ジエール帝国連邦のみが一定の成功をおさめた。
プトーキオンとジクラールの宇宙進出
建設バブルは拡大し、非星間国家であるプトーキオンの宇宙進出が始まった。プトーキオンはサーヴァリアからの融資を受け、ホムゼラガ・ビェダ社のプランで惑星サーゴットへ入植した。サーヴァリアは惑星サーゴットでのインフラ整備に協力する代わりに、資源採掘の利権を獲得した。宇宙進出の夢をかなえたプトーキオン人は精力的に働き、入植地を次々に拡大させた。
これを見た地域大国のジクラール社会主義共和国も宇宙進出を決意し、ジエールからの融資と技術供与を受け、惑星ゲイロンへと入植した。プトーキオンとジクラールは新興星間国家として、すさまじい国民の熱狂の下開発競争を繰り広げた。
ドルヴァ・リントウィン金融社の台頭
独占禁止法の規制もあり、マーゴットプラン式都市開発で後れを取ったヴァルエルクであるが、惑星フィアネにて新興金融企業であるドルヴァ・リントウィン金融社が台頭する。同社はマーゴットプラン式の移住をローンにて賄い、またそのローンをトークン化し、債権として証券取引所で売買できるという、ライフパッケージ&サポート戦略を開始した。
ライフパッケージ&サポート戦略は夢見る若者を応援したい資産家が支援するという登場した。惑星フィアネはライフパッケージの販売で獲得した資金をサーヴァリアの大財閥が請負、地方都市のまるごと開発と、ヴァルエルク系企業の誘致を受け急速な入植と発展を遂げる。
このライフパッケージ債権は世界的に流行し、プトーキオンやジクラールでも発行され、世界中の証券取引所で売買された。しかし、ジエール経済省証券取引委員会はこの現象を不健全なバブルと評価し、規制を開始した。しかし、世界的な潮流から逸脱し機会損失を招くと判断した国民は猛反発し、国外の取引所で売買を続けた。
ペルソナユニット・トラストの登場
ドルヴァ・リントウィン社はさらなる事業拡大のために、ライフパッケージトークン保有高を担保に社債を発行し、惑星フィアネの開発を続けた。すでにドルヴァ・リントウィン社の開発計画は完全にキャパシティを超えており、ヴァルエルクの信用格付け会社である、K&L社がドルヴァ・リントウィン社の格付けを引き下げる中、開発計画を完遂させるために、社債を発行し続けなければならなかった。
ドルヴァ・リントウィン社は債務者がライフパッケージトークンを保有し、高値で売却すれば自身の債務を縮小できるという、ペルソナユニット・トラストを発表。これにはヴァルエルク証券取引委員会が警告を出したが、開発バブルは過熱しており、ユーフォリア状態となっていた一般民衆が大量に手を出してしまう。
これらのライフパッケージ市場はすでに頂点を迎えており、開発規模に入植者が追いつかなくなってきていた。ペルソナユニット・トラストは市場の最後の一押しとなった。
不良債権化とダーケフオス危機
惑星フィアネの不健全な急速成長の崩壊は現場から始まった。ペルソナユニット・トラストの債権者は保有するトークンの価値を上げ、自身の債務を減らすために過酷な労働を強いられるようになった。開発が滞ったり、過酷な環境を告発すればトークンの価値が下落し、自身の債務が増大すると脅迫されていたからである。
現状に我慢ができなくなったトラスト債権者たちは救済を求めて団結してSNSにペルソナユニット・トラストの現状を暴露した。とたん、大口投資家がトークンを売却し、それに伴い保有者や債務者が次々とパニック売りをした結果市場は混乱状態になった。惑星フィアネの新興金融街ダーケフオスから始まったクラッシュは、ヴァルエルク国内に波及した。また開発のための再建を大量に保有していたダグデェガデ社を通じてサーヴァリア国内、レーウス世界に波及し、世界同時株安を引き起こした。
各国の状況と対応
ヴァルエルク共和国
市場の暴落はヴァルエルク中央市場に波及し、パニック相場を引き起こした。ヴァルエルク政府は当初、ドルヴァ・リントウィンをはじめとする新興金融の売却の斡旋や金融支援を表明し、パニック相場は一端の落ち着きを見せた。しかし、警告を無視して危険な金融商品の販売を続けた新興金融への反発から、一転して公的資金による救済を拒否するという手のひら替えしを行い、マーケットは再びパニック状態となった。
経済損失が拡大の一途をたどると、ヴァルエルク政府は公的資金の投入を再度決定し、大規模な金融緩和の下市場に資金が投入された。金利低下により高インフレが発生し、ウォス安ヴァン高のきっかけとなったが、輸出企業の業績向上から景気対策としての一定の効果は見られた。
サーヴァリア王国連合
大財閥であるダグデェガデは多数の損失を計上し、サーヴァリア政府による財政支援を受けることになった。プトーキオン市場の開発は一定の健全性があったため壊滅的な被害は免れたものの、サーヴァリア企業の財政悪化から開発は停滞した。サーヴァリアでは多くの下請け企業が倒産し、大企業による買収が加速した。
ジエール帝国連邦
ライフパッケージ市場に対して早くから経済省証券取引委員会が警告を出し、国内での取引を行っていなかったことから、直接的な被害は免れた。しかし、経済特区の一部シンテーア人たちは警告を無視して海外取引所で取引していたこともあり、一定の被害を被ったが金融機関への波及は免れた。
しかし、ジエールの主力産業である精密電子部品はサーヴァリアへの輸出に依存しており、サーヴァリア市場の不況により打撃を受け、国内の景気悪化につながった。
エルトワール王国
叔爵以下の貴族たちが爵位や荘園を担保にライフパッケージ商品に手を出していたが、エルトワール財務院がリスクの高い金融商品に対して警戒しており、リスク商品を取り扱う金融機関に金や宝石等の安全資産の担保を増やすよう指示していたこともあり、金融機関の倒産は回避した。
ダーケフオス危機直後、金融市場の混乱に伴う資金繰りから現金への巻き戻しが発生し、安全資産の急落につながったものの、エルトワール財務院は緊急で安全資産の押し目買いを行った。
経済戦争へ
ヴァルエルクが発端となった経済危機により、ウォスの価値が下落、安定資産の押し目買いを行ったヴァンの価値が上昇し、歴史的なウォス安ヴァン高となった。惑星フィアネでは都市の発展に農地の開発が追いついておらず、さらに食料のパニック買いが発生したことから外国向けの輸出食料が激減した。サーヴァリアでは市場の混乱により、資金繰りが悪化し企業の倒産が相次いだうえ、サーヴァリアの主力産業の一つである食料加工産業はヴァルエルクからの原材料輸入が激減し、レーウス世界内では食料危機が発生した。
レーウス世界内での食料供給不足は深刻な経済的対立に至り、
レーウス経済戦争へと発展することとなった。
最終更新:2024年12月11日 20:43