遊園地で私と握手 ◆EAUCq9p8Q.
「見事に見慣れない物ばっかり」
「遊園地は初めてですか?」
「故郷にはなかったからなあ。こういう面白いの」
「辺境の出身なのですね」
森を抜けたというのに馴れ合うような縁は続いている。続いているというより、再び目的が一致したのでどちらとも言わずに再び延長となったと言った方が正しいかもしれない。
薬物で強化された超視力、魔法少女の超視力が森を出るより早く共に捉えたのは、異様な空間の揺らぎだった。
遠目でも魔力による認識阻害、あるいは別種の魔力干渉が一目で見て取れた。
どちらが言い出すでもなく。いや、どちらも相手とは関係なく。
アサシンは自身の隠密能力に任せ、聖杯戦争を更に上手く立ち回れるよう情報を収集するために。
アーチャーはその魔力の発生源のサーヴァントを見定め、自身の飽くなき欲求を満たすために。
別れを切り出すことを後回しにして、ただ暗殺者として、戦闘狂として、小学校の空間の揺らぎに乗り込んだのだ。
飲み込まれるような感覚、身体にまとわりつくような異様な空気。
一歩でそこが現実世界とは異なる世界――キャスターのクラスの陣地であると理解できた。
揃って様子を見回す。賑やかな外装は、聖杯戦争エリア内にある遊園地にやや似ている。
だが、こちらの陣地は遊園地というよりは廃墟に近く、人の気配をまるで感じない。
アトラクションと思わしき巨大な施設も、朽ちていたり、壊れていたり、止まっていたり、活気がないというよりは死んだ遊園地でも呼ぶべきか。
アサシンのそんな感想が、正鵠を射ていたことはすぐにわかった。
「……ですが、所有者が不在というわけではなさそうですね」
アーチャーが一方を見つめながら呟く。
少し離れた場所をぞろぞろ歩く人の群れが目に入った。彼らは一様にアサシンにもアーチャーにも目をくれず、よろりよろりとよろけるようなスピードで何処かに向かって歩いている。
「……」
『そういう者』を見てきたアサシンには一目で分かった。あの人々は死者と傀儡だ。
うっ血したような赤黒い肌に傷ついた身体を引きずる死者の群れ。目から光の抜け落ちた生きた屍・傀儡の群れ。
意思なき者たちが揃ってどこかへ向かおうとしている。それは、統率者の存在の何よりの証明と言えた。
『死んだ遊園地』とはよく言ったものだとお菓子を摘みながら、アサシンは続けてその統率者について考える。
『誰か』――推定この陣地の持ち主は、アサシンと違いとても積極的に……いや、自滅覚悟かつ手当たり次第に配下を増やしているらしい。
小学校という人の出入りの多い場所を陣地との接点に選ぶ点や、こんな大規模な陣地を野ざらしにしておく点も加味すれば、生き急いでいるのか、それとも自信過剰なただの馬鹿か。
どちらにせよ、この陣地の持ち主と一戦交える際はそういう『向こう見ず』『無茶苦茶やる』『加減を知らない』部分があることをきちんと頭に入れておくべきだろう。
きんこんかんこん。
アサシンとアーチャーに向けて、どこかから響いてくる鉄琴の音。チャイムのように四回。
その後、何かが擦れるような、鼠が鼻を鳴らすような、小さすぎて音としか認識できない何かが数十秒続き。
きんこんかんこん、もう一度チャイム。
それが、ようやくの茶番閉幕の合図だった。
「……それでは、私はこのあたりで失礼しましょうか」
アサシンはチャイムの鳴った瞬間のアーチャーの反応を見逃さなかった。
エルフのように尖った耳が少し持ち上がり、その後に少しだけ表情が変わった。
アーチャーの特性についてはよく理解している。
気配遮断をしていたアサシンの咀嚼音すら聞き逃さない聴覚を持ってすれば、あの放送の
つまり、アーチャーはあの放送の衣擦れ程度の音に何かを聞き出した。
そして放送の主はアーチャーを引きつける何かを口にした。
気になる部分は多い。
アーチャーの超聴覚を見抜いた人物が誰なのか。
念話ではなく校内放送を使うというあたり、アーチャー自身のマスターではないのだろう。
アーチャーの超聴覚を見抜いた原理は。
彼女も英霊である以上、『その道では有名』なのかもしれないが、外見のみで見抜けるとすれば余程の知識を持った人物と言える。
その人物と接触を出来れば、アーチャー暗殺のいい足がかりになるかもしれない。
そして、その人物はアーチャーの姿とともにアサシンの姿を見たのか。
八房を隠している今、この服装だけならば、アサシンの正体を見抜かれることはないだろうが、情報が出回らないに越したことはない。
もし見られたならば、いずれは殺しておきたいものだ。
興味は尽きないが、アーチャーが『切り上げる』と言った以上、このだらけきった関係は終了だ。
ここからは、暗殺者と暗殺対象。
そして、絶対強者と追われる獲物。
明確な敵対関係が、ここからようやく幕を開ける。
「じゃ、またいつか」
「ええ、生きていればそのうちに」
にこやかに挨拶を交わし、駆けていくアーチャーの背を見送り、アサシンはその場にとどまったまま再び考える。
アーチャーや放送の主のことも気になるが、同時にやはり、『統率者』のことも気になる。
この死体・傀儡たちを斬るのは容易い。だが、ここで斬り殺して得られるものはほとんど無い。
それよりも、この尖兵たちが向かう先の方に価値はあるだろう。
これだけの大所帯を動かすとなれば、それだけの意味が向かう先にあると考えるのが普通だろう。
昼間ほどの乱戦はなくとも、交戦は必至。
となると暗殺者が暗躍するにはもってこいの舞台が整うというわけだ。
(そのためには……まず、安全の確保が重要かな)
まさかまだ律儀にアサシンの帰りを待っているとは思わないが、あの変なところで意地を張るマスターが残っている可能性もないわけではない。
まずは彼女の不在を確認しておいたほうが良いだろう。
なにせ中学校はすぐ傍だ。もしマスターをあの歩く屍に変えられてしまえば、アサシンとしてもやりづらくなるのだから。
(……ん……あれ、マスターが傀儡になったら、どうなるんだろ)
ふと、『
山田なぎさを八房にストックする』というイメージが浮かぶ。
マスターをストックした場合、契約中のサーヴァントはどうなるのか。他のマスターならば、きっと契約を維持したまま八房に収めることが出来るだろう。
ならば、アサシンが自身のマスターをストックしたら?
(……後回し、でいっか)
実際に試してみるまで、答えが出ないことは分かりきっている。
ならば、その時が来た時にしっかり考えればいいだろう。
無理に試すにはリスクの高い行動だ。まだしばらくは、なぎさには生きていてもらわなければ困る。
今はまず、目の前のことから片付ける。アサシンにはそれだけでも一杯一杯だ。
【D-2/小学校傍/1日目 夜】
【アサシン(
クロメ)@アカメが斬る!】
[状態]実体化(気配遮断)中
[装備]『死者行軍八房』
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
0.中学校を確認後、再びこの陣地の『傀儡』たちの向かった方へ。
1.戦闘の発生に注意しながら索敵。
2.機会を見てマスターのもとに帰る。その時のマスターの様子次第で知世を躯人形に。
3.アサシンらしく暗殺といった搦手で攻める。その為にも、骸人形が欲しい。
4.とりあえずおとなしく索敵。使えそうな主従を探す。
5.アーチャー(クラムベリー)は殺したいけど、なにか方法は……
6.もし山田なぎさを八房にストックすれば、どうなる?
[備考]
※
双葉杏をマスター(仮)として記憶しました。
アーチャー(クラムベリー)、
江ノ島盾子&ランサー(姫河小雪)、高町なのは、大道寺知世、
白坂小梅&バーサーカー(
ジェノサイド)を確認しました。
※八房の骸人形のストックは一(
我望光明)です。
※B-3(廃工場地帯)でアーチャー(
森の音楽家クラムベリー)の襲撃を受けたという情報を流すと宣言しました。
どの程度流すかはその時のアサシンのテンションです。もしかしたらその場しのぎのはったりかもしれません。
※アーチャー(クラムベリー)と
情報交換しました。どの程度聞いたのかは後続の書き手の方にお任せします。
※アーチャー(クラムベリー)と敵対しました。彼女が『油断や慢心から一撃を受ける可能性』と『一撃必殺の宝具ならば簡単に殺せる可能性』を推測しました。
※キャスター(
アリス)の陣地とオトモダチを確認しました。魔力素養のあるもの・サーヴァントならば遠距離からでも視認が可能です。
また、キャスターの性格にアタリをつけています。
◇◇◇
チャイムの間に聞こえた声は、アーチャーの興味を引いてやまない言葉を口にした。
『えー、森の音楽家クラムベリーさん、森の音楽家クラムベリーさん。
聞こえてましたら、至急警備員室まで来てください。
繰り返しまーす。森の音楽家クラムベリーさーん。殺し合い殴り合い大好きのクラムベリーさーん。
聞こえてるんでしょ? 会いに来てよ、警備員室で待ってるからさ』
最小音量に設定されたマイク越しに、空気を揺らすか揺らさないかほどの声で告げられたメッセージ。
姿を見ただけでアーチャーを『森の音楽家クラムベリー』であると断じることが出来る人物がいるということ。
そしてその人物はアーチャーとの邂逅を望んでいるということ。
それに心を動かされないわけがない。当然罠の可能性もあるが、それならそれで面白い催しだ。
アーチャーに迷いはなかった。
◇◇◇
踏み込む前から、その小学校が異常事態の最中にあることは十分に理解できた。
かつりかつり。長く続く廊下に響くのはアーチャーの足音だけ。
時刻はもう八時に迫っているから、児童の姿が見えないのはそこまでおかしなことではないだろう。
だが、それでも、話し声どころか呼吸音すら聞こえないというのはやはり引っかかる。
消音系のスキル・魔術が働いていないことは自身の足音の反響の仕方で理解できた。
ということは、この小学校にはもう人っ子一人居ないのだろう。
仕事をしているはずの教師や、泊まり込みの警備員がどうなったのか。
その答えも、既にアーチャーは目撃している。
手駒の増やし方に一切の躊躇がないのは好感が持てる。
きっと、心置きなく戦うことが出来るだろう。
雑魚を蹴散らしながらの戦闘、というのは特撮ヒーローのようでアーチャーにはあまり似合わないかもしれないが、それでも物量戦というのは心が躍る。
そんなことを考えながら歩いていれば、すぐに目的の場所にたどり着いた。
ノックを二回。返事はない。ノブを回してドアを開ける。
警備員室は、夜の闇に大半を明け渡していたが、ドア向かいの壁一面だけは朝ぼらけのように光と闇が溶け合い紫色に輝いていた。
明るく輝くモニターの群れと、輝くようなピンクの髪。ぼんやりとした明かりの作る輪郭から、その髪の持ち主は女性だと分かる。
この場に居るのが彼女だけならば、彼女が呼び出した人物で間違いはないのだろう。
「貴女が、私の名を?」
アーチャーの声に、待っていましたとばかりに、少女はゆっくりと振り返った。
暗闇でも明るく光るピンク色の髪が宙で踊り、続いてその人物の姿が柔らかな光に照らしあげられる。
黒く太いセルフレームの眼鏡。寝ぼけたようにとろんとした瞳。
白い肌とぼさぼさの髪、身にまとった白衣も合わせれば、上から下までパソコンに齧りつきのギークのような印象で統一してある。
アーチャーと向き合った少女の、眼鏡の奥の瞳が優しく歪む。
「ようこそ、私の世界へ。はじめまして、森の音楽家クラムベリー」
背負った無数のモニターから放たれるブルーライトが、少女の笑顔を照らす。
無数のモニターが、ギーク風の少女を照らす。その光景は、少女の類稀な美貌も相まって、アーチャーが生前に見てきた魔法少女たちを思い出させた。
だが、魔力的なあれこれは感じない。どう見ても普通の人間だ。
姿を見て逸話に至り真名を当てたという可能性は限りなく低そうだが、一応尋ねてみる。
「あなたは……どうして私の名を?」
「そっから聞いちゃう? もっと聞きたいことないの?
例えばマスターなのかNPCなのかとか、この陣地の主なのか違うのかとか、もしかしてあなたが噂のキークちゃんなのですかとか、他に聞きたいことはないの?」
少女はつまらなさそうに眼鏡をゴミ箱目掛けて投げ、片手に持っていたリモコンを操作して画面を切り替えていく。
先程までアーチャーが居た、遊園地と小学校の狭間。
少女――つい先程アーチャーが襲撃したマスター・白坂小梅が歩いている校門前。
無人の場所。壊れた屋上。スキップをしながら駆け回る一人の少女。
そして、それらのすべてが瞬間で消滅した。
カメラの機能が死んだわけではない。カメラとモニター、その他『小学校だったもの』のすべてが消滅したのだ。
アーチャーたちの周囲の環境も、瞬き一つのうちに変貌を遂げていた。
鬱蒼と生い茂る薔薇の園。その真ん中に置かれた木製のテーブルと様々な種類の椅子。
テーブルの上には山のように積まれたティーカップと口から湯気を噴いているティーポット。慎ましやかながらお茶菓子も並んでいる。
この場がまるでいつか読んだ『ふしぎの国のアリス』に出てくるお茶会の会場のようだ、なんて思うのは、やはり周囲が変わらず安全だと耳が教えてくれているからだろう。
「んー、まあいいや。じゃあヒントを出すから当ててみてよ。そんくらいはいいでしょ」
少女はさして驚いた様子もなく、傍においてあったティーセットを手に取りお茶を注ぎながら続ける。
その姿は既にギーク風のものではない。そして瞬きすれば今の容姿も過去になる。
次々に、目まぐるしくモチーフを変えながら、少女は無意味な問いを口にした。
「ではここでクエスチョン! 小学校の警備員室に居た少女はどうして森の音楽家クラムベリーの名前を知っていたのでしょうか!」
「一番、僕が古今東西の魔法少女史にすこぶる詳しいから」
「二番、俺様が今日の歴史の授業でちょうどクラムベリーの試験についてを勉強をしたから」
わざとらしく一拍置いて、少女は顔を上げる。
そして紅茶の注がれたティーカップをアーチャーに差し出しながら、キメ顔でこう言った。
「そして三番、私様のサーヴァントが、森の音楽家クラムベリーについてとーっても詳しい、因縁浅からぬサーヴァントで。
私様はそのサーヴァントの記憶を夢経由で知ることが出来ていたから」
少女の瞳は真っ直ぐアーチャーを見つめている。考えるまでもなく、答えは三番で間違いなさそうだ。
いくつもの英霊像が頭に浮かび、そのどれもが通り過ぎるように消えていき。
最後に残ったのは、目の前の少女の笑顔だった。今はどんな過去よりも、今は少女が気にかかる。
アーチャーを呼び出した理由。真名を餌に自身の場所まで釣り出す、なんて危険を犯してまで、彼女がアーチャーとの交流を望んだ理由とは何か。
自身のサーヴァントの正体を半ば明かした理由。聖杯戦争についての価値観が大きく異なるとしか言いようのない、この会話の切り出し方はなんなのか。
理由があるか。いや、理由なんてないのかもしれない。
少女の瞳は無邪気な子供のように澄んでいて、それでいてどこまでもどす黒い。
「ねえ、よければお話でもしませんこと?」
「アンタがマスターを襲って殺そうとするようなやつじゃないのは百も承知さね」
「だからこそ、友好的にお話がしたいんでありんす」
「孤独な森の音楽家も事此処に至れば去るなどという選択をするはずもなく!」
「面白い話、面白くない話、どんなことでも構いません」
「すわっ!」「すわっ!」「すわわっ!+^o^+」
「すわぁーて、はじめませう! 二人っきりのお茶会を!」
アーチャーは少し考えてみせた後で、ティーカップを受取り、傍の椅子を引き寄せて腰掛けた。
不明だらけの少女像の中で、一つだけ、理解できることがあった。
彼女は、きっといい火種になる。状況さえ整えれば、会場のすべてと参加者の全員を燃やし尽くせるほどの大きな火種にだってなってくれる。
何度も何度も殺し合いの試験を開いた『森の音楽家クラムベリー』の嗅覚は、確かにそれを嗅ぎ分けた。
【D-2/陣地『不思議の国のアリス』/夕方】
【アーチャー(森の音楽家クラムベリー)@魔法少女育成計画】
[状態] 健康、手の傷(治癒中)
[装備] 黒いフード付きコート
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針: 強者との闘争を求める
1.江ノ島盾子に興味。
2.戦闘を行う主従にも興味。
[備考]
※
木之本桜&セイバー(
沖田総司)、江ノ島盾子、
蜂屋あい&キャスター(アリス)、高町なのは、アサシン(クロメ)、白坂小梅&ジェノサイドを確認しました。
※
フェイト・テスタロッサを見つけてもなのはに連絡するつもりはありません。
※小学校屋上の光の槍(フェイト)を確認しました。
※アサシン(クロメ)と情報交換しました。どの程度聞いたのかは後続の書き手の方にお任せします。
※アサシン(クロメ)から暗殺を宣言されました。ちょっとワクワクしています。
※アーチャーに詳しい魔法少女のサーヴァント(クラムベリーの子供達、魔王塾生など)が居ることを察しました。
【江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ】
[状態]健康、絶望的にハイテンション
[令呪]残り三画
[装備]
諸星きらりの携帯端末
[道具]なし
[所持金]大金+5000円分の電子マネー(電子マネーは自分の携帯を取り戻すまで使用できません)
[思考・状況]
基本行動方針:絶望を振りまく
0.アーチャー(森の音楽家クラムベリー)と情報交換。絶望的に行こうね。
1.次なる絶望の仕込み。ここらで一発スペシャルなオシオキとかどっすか?
2.諸星きらりをプロデュース……は、一旦後回しとかどうにょわかねえ。
[備考]
※木之本桜&セイバー(沖田総司)、森の音楽家クラムベリー、双葉杏、蜂屋あい&アリス、白坂小梅&バーサーカー(ジェノサイド)を確認しました。
※諸星きらりの自宅の位置・電話番号・性格なども事前確認済みです。
※数十分、もしくは数時間、あるいは数日、ひょっとしたら数年は同じキャラを演じ続けられるかもしれませんし、続けられないかもしれません。
※ランサーのスキル『困った人の心の声が聞こえるよ』に対して順応しています。順応に気付いているかいないかは不明です。動揺しない限り尻尾を掴まれることはないかもしれません。あるかもしれません。
※バーサーカー(
悠久山安慈)の敵対のきっかけが『諸星きらりの精神・身体に一定以上の負荷をかけた相手(≒諸星きらりを絶望させた相手)』と見抜きました。
そのラインを超高校級の絶望故に正確に把握しています。彼女自身が地雷を踏むことは(踏もうと思わない限り)ありません。
※小学校校門前での闘争を確認しました。
その過程で
輿水幸子、
星輝子がマスターであると確認済みです。現在白坂小梅が小学校前をうろついているのも確認済みです。
◇◇◇
小梅が小学校に付いた頃にはもう諸星きらりや彼女を引き連れているだろう誰かは影も形もなかった。
戦闘があったようにも見えない。きっと、何事もなかったのだろう。
きらりを探す人物ときらりを連れた人物は無事に出会えたのか。
それとも、きらりがここに来るという情報自体が嘘だったのか。
今となってはそれを確認する方法はない。
少しの寂しさを胸に校門をくぐって外に出ようとした瞬間に、小梅を飲み込むように周囲の風景が変わった。
通学路だったはずの場所には広大な平野が広がっている。
学校だった場所は小さなお城に、世界は観覧車やメリーゴーラウンドで彩られた遊園地に。
空は、まるで古ぼけたレンズで濁った水面を覗き込んだような、薄汚れた色に。
崩れた橋、空に浮く島、地を走るレール。どこか不気味な世界が、果てしなく続いている。
「シラサカコウメちゃん?」
突然名を呼ばれ、驚きながらも振り返る。そこには一人の少女が立っていた。
整った顔貌、透き通るような白い肌、ルビーのように赤い瞳。しゃらりと流れる金髪も愛らしい、お人形のような少女。
重なって見えるのは『キャスター』というクラス名。
それだけで、彼女がサーヴァントであることだけは小梅にも理解できた。
身構え、心構え、当たり前のように念話を送る。
(……バーサーカーさん、この子……)
( (……) )
(……バーサーカーさん?)
( (……) )
返事がない。そばにいるのはきっと確かだが、なぜだか遠くに居る気がした。
キャスターの少女は「大丈夫?」と首を傾げて小梅の出方を見守っている。
「……私に、何か……用?」
「ワタシね、お話を聞いてきたの。
シラサカコウメちゃんは、死んだ人ともオトモダチになれるって!」
にこにこと笑いながら歩いていくる少女に敵意は見られない。
悪い人ではないのかもしれない、という思いがふっと浮かぶが、あの薔薇のアーチャーの前例もある。
念のために距離を保ったまま、そして逃げ出せるように身構えたままで、キャスターに尋ねてみた。
「あの、ここって……」
「ここ? ここはワタシの世界だよ」
キャスターは特別なことはないという風に答えて、そのまま続ける。
「ワタシが、オトモダチと遊ぶために作った世界なの。シラサカコウメちゃんは特別に招待してあげたのよ!」
嬉しいか、と問われても返事は思い浮かばない。事態が急過ぎて追いつけてないというのが本音だ。
そんな小梅の困惑を置き去りに、キャスターはとても楽しそうに話を続けた。
「ねえ、シラサカコウメちゃん。ふたりで遊びましょう!
ここではワタシが女王様だから、ワタシが望んだなら、なんだってできるの!
好きなものが出せるし、好きなことができる、ステキでしょう?」
そう言いながら少女はふいふいと指を揺らして大きなソファーを作り出す。
少女はそこにちょこんと腰掛けて、うきうきと肩を揺らしたが、すぐに飽きたらしく、また小梅の方に歩み寄ってきた。
小梅が一歩下がれば、キャスターは小さな歩幅で二歩迫る。
もう一歩下がれば、もう二歩迫る。一歩、二歩。一歩、二歩。続ける分だけ続いていく。
どうもキャスターは遊んでいると思ったらしく、小梅の歩数の分だけ、スキップしたり、くるりと回ったりと、飛び石を飛ぶように追いかけてきた。
小梅が立ち止まると、キャスターも立ち止まり、楽しそうに頬をほころばせて身体を揺らした。
キャスターが何もしてこないのを理解し、小梅は一つだけ、気になることを尋ねてみた。
「えっと……なんで……なんで私のことを、知ってるの……?」
「エノシマジュンコチャンが教えてくれたの!
シラサカコウメちゃんは死んだ人とオトモダチとなれるんでしょう?」
ややも間をおかず二度飛び出した『死んだ人』という単語に眉を顰める。
確かに、サーヴァントは過去、あるいは未来に死んだ英雄がなるものだと認識しているが、彼女の口にする『死んだ人』は別のニュアンスを含んでいるように思える。
「だからね、シラサカコウメちゃんなら、ワタシのオトモダチにもなってくれるんだって!」
小梅が疑念を抱いている間に、キャスターは小梅に抱きついたり、覆いかぶさったり、袖を引いたり、人懐っこく甘えてくる。
今度はあまりの速さに逃げることなどまったくできなかった。
だが、衝撃も、不快感も、まったく襲ってこない。高めに感じられたのは驚くくらいに冷たい肌の感触だけ。
「ねえ、シラサカコウメちゃん。二人で遊びましょう?」
再びキャスターと目が合う。その視線は、まっすぐに小梅を求めていた。
他意は感じない。その少女は本当にただ寂しいだけで、本当にただ遊びたいだけ。少なくとも小梅にはそう思えた。
「遊ぶって……なにするの?」
「うーん、何しよっかな。おいかけっこやかくれんぼもいいけど、みんなでお茶会も面白そう。トランプもあるけど、シラサカコウメちゃんは何が得意?」
遊びの内容も、敵意や害意はまったく感じないものばかり。
なんだか、同じアイドル事務所の年下の子にせがまれている気分になる。
ひどく懐かしいようなその感覚に、小梅の心は久方ぶりに穏やかな風に包まれるようだった。
だが、その懐かしさの中で、驚きと戸惑いの連続で薄れていた直前の記憶が鮮やかに蘇る。
小梅がここに来るまでの理由。小梅がここに来た理由。小梅がここに居る理由。
そのすべてが、懐かしい昔から続く今と関係している。
「その……遊ぶの、今度じゃ駄目かな?」
しゅんとした少女の顔は、小梅の良心を締め付けた。
だが、きらりのことが気にかかる。小学校から離れているにしても、小学校に来ていないにしても、きらりと聖杯戦争との関係が消えたわけではないはずだ。
そして、連絡が行き違ったままの幸子のこと。連絡の通じない輝子のこと。
すべてが聖杯戦争に関係しているわけではないだろうが、解決すべき問題であることに間違いない。
小梅にとって、今、この瞬間に大切なのはその三つだ。
アイドル時代からの友人であり、聖杯戦争の場に居るその三人だ。
キャスターには悪いが、その優先順位を覆すことはできない。
「なんで遊んでくれないの? 遊園地がキライだから?」
「ごめんね……私……今、人を探してるんだ。だから……」
「人?」
「うん……私の……えっと、お友達。諸星きらりさん、って言うんだけど……」
「きらりちゃん? あの背の高いきらりちゃん?」
予想外の人物から、予想外の答えを聞き、心臓が高鳴った。
慌てて尋ね返す。声は少し上ずっていた。
「きらりさんを、知ってるの?」
「うん。さっきね、いっしょにお茶してたのよ! エノシマジュンコチャンのオトモダチの子でしょ!」
「エノシマジュンコちゃんって?」
「エノシマジュンコチャンは……うーん、不思議な人? まだオトモダチではないけど。あ、でも、ワタシのマスターのオトモダチなのかな?
でも、でも、とっても面白いヒトから、オトモダチになってほしいなぁ。あとで一緒に誘いに行こうよ!」
確証が持てず、きらりについて幾つかの事を尋ねるが、そのすべてが小梅の知っているきらりの特徴に違いなかった。
ひょっとして、エノシマジュンコという人物があの掲示板の書き込みの主だったのだろうか。
思わぬところから顔を覗かせた解決の糸口に、その少女が本来敵であることも忘れ、身を乗り出してしまう。
「あの……エノシマジュンコちゃんって人……私も会えるかな……?」
「うん! エノシマジュンコチャンもここにいるから、あとで会いに行こうね!」
「今じゃ、駄目……?」
「うーん……いいけど……じゃあ、ひとつだけ、ワタシのお願いも聞いてほしいな!」
「お願い?」
「うん! ワタシと遊ぶの。ワタシはね、ずっと一人ぼっちだったから、とっても寂しくて。ここでずっとオトモダチを待ってたの。
だからワタシと遊んでくれれば、エノシマジュンコチャンのところに連れてってあげる! どうかしら?」
穏便に済ませられるなら、それに越したことはない。
それに、これは暗中模索を続ける小梅にとって最も信頼度の高い手がかりと言えた。
その為ならば、少しくらい遊ぶのも吝かではない。
だから、小梅は当然その答えを口にした。キャスターに対してその答えを口にしてしまった。
「……うん、いいよ……じゃあ、遊ぼう」
「ほんと! よかった! じゃあね、じゃあね!」
キャスターの人懐っこい振る舞いに自然と警戒が解けていたのかもしれない。
成り行き上二度死闘の脇に居ることになったが、それでも命のやり取りに慣れていなかったというのもやはりあるだろう。
それでもやはり大きいのは、白坂小梅という少女が正真正銘、争いとは無縁の世界からやってきた、優しい少女だったということだろう。
だから小梅はやはり、彼女が今まで見てきた『人ならざるもの』と同じように、少女の異常性に気づくことができなかった。
キャスターが細めていた瞳を薄く開いた。その瞳の赤さは、血の色によく似ていた。
「 死 ん で く れ る ? 」
小梅がその言葉の意味を理解する頃には、怪しく光るブリキのギロチンが八方からもうそこまで迫ってきていた。
だが、ブリキのギロチンは、小梅の命を脅かすよりも早く白銀の煌きの前に散った。
ばらばらと音を立て、力なくその場に落ちて瓦礫の山と化す。
白銀の煌きはじゃらじゃらという鎖の揺れる音を引き連れながら空を旋回し、二人の間に現れた男の両手に収まった。
「……どいつもこいつも」
地獄から届くような男の声。鼻を刺すような腐臭が周囲に広がる。
ボロボロのカソックに穴だらけの帽子。体中に巻かれた汚らしい包帯。緑色に光る双眸。
遊園地には似合わない、墓場からそのまま出てきたような男のエントリーだった。
「サーヴァントってのは俺より余程頭のおかしい奴の集まりじゃねェのか」
顔の前で腕を交差させバズソーをキャッチした姿勢のまま、睨み返す。その男こそ、小梅のサーヴァント・バーサーカー。
先の音信不通もなかったことのように、当然のように現れて、当然のように小梅を守り、そして当然のようにキャスターに向けて啖呵を切った。
だが、キャスターは不意打ちの失敗を嘆くでも、取り繕うでもなく、ただ楽しそうな笑顔を浮かべるだけ。
「素敵! あなたも一緒に遊んでくれるんだね!」
「遊びだァ……?」
「うん、皆でいっぱい遊ぼうね! ワタシはアリス!」
バーサーカアーは考える。
目の前の少女・キャスターは、ニンジャなのか。それとも違うのか。分からないが、丁度ニンジャが行うように、自身の名を名乗った。
ちょこんとスカートの裾を持ち上げて行うお辞儀は、愛らしい少女の見た目に相応しい。
纏っている雰囲気だって先ほどとまるで一緒だ。変わらず、ウキウキとしているように見える。
だからこそ、バーサーカーには言葉で説明される以上に理解できた。彼女が話の通じない……理外の敵なのだと。
「それと、こっちは……」
劇場支配人めいて両手を広げたキャスター――アリスの後ろに現れるのはトランプの兵隊たち。
そして、人、人、人。遊園地という舞台の上の演者めいて現れる人の群れ。
だが、ただの人ではないのはひと目で分かる。目の色が違う。
バーサーカーの緑色の眼光と同じだ。この世ならざるモノを見つめる者たちの瞳だ。
そうしてようやく、繋がった。
『死んだ人間と友達になれる』ことに固執した意味とは。
『オトモダチ』とは。『遊ぶ』とは。
キャスターの偽りのない友愛の行為と、襲撃の理由とは。
「ワタシのオトモダチ。そしてあなた達のオトモダチ! 皆死んでる子、静かな子。でもでも、皆いい子だから、仲良くしてあげて!」
酒臭い息が漂う紫霞めいて見えたのは、決して溜息の主の身体が腐乱していたからだけではないだろう。
不気味な色の空の下、アリスの一言によっておどろおどろしいオトモダチの姿がライトアップされる。
バーサーカーと小梅、二人分の指の数よりも多い人の山。
赤黒い皮膚にただならぬ眼光でこちらを見つめる人と、
小梅にはまだ人別のつかぬその人の山に、先に反応したのはバーサーカーだった。
彼のニューロンの、腐敗しても忘れ得ぬ部分が……ニンジャとして、ズンビーとしての根幹の部分が、その存在に共鳴していた。
その赤黒い人の群れは! おお、そうだ、その死体を操る術は!
リー先生によって生命の尊厳を蹂躙された、バーサーカーの成れの果てとまるで同じではないか!
そこに違いがあるとするならば、彼らは物言えぬ弱き者で、バーサーカーにはニンジャソウルが宿っている強き者、その程度しかないだろう。
「胸糞悪い奴だ。俺は、特に、てめェみてェのが気に入らねえンだ。
なあオイ、てめェみてェな他人の命を好き勝手する奴を、何て言うか知ってるか」
「知ってるわ。とってもさみしがり屋さんって言うんでしょ」
「勝手抜かしやがる」
じゃらりと落ちた鎖は既に、相当の長さが見えている。
既にアリスまでの距離を射程の内に捉えている。
「てめェはな、殺されても文句の言えねェ……死んで当然の糞野郎って言うんだよ。
ドーモ、アリス=サン。ジェノサイドです!」
「きゃはは! さあ、遊びましょう! まずは追いかけっこからよ!」
一歩踏み出したトランプ兵二人が見事細切れに裁断される。
紙吹雪を挟んで、ルビー色の熱い視線とエメラルド色の鋭い眼光が交差する。
それが開戦の合図となった。
紙吹雪が風に吹かれれば、その向こうに控えていた屍人・傀儡・兵隊は散り散りに散らばり。
それぞれがバズソーに当たり、掻い潜り、包囲網を狭めていく。
「ナメやがって……つくづくムカつく奴だ!」
ゾンビーのバズソーが空を裂き、オトモダチと呼ばれた意思なき手札たちが女王を庇いながら指示に従い歩を進める。
陣地に化けた小学校で、再び戦乱の嵐が吹き荒ぶ。
【D-2/陣地『不思議の国のアリス』/1日目 夜】
【白坂小梅@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]魔力消費(中)、恐怖(微)、不安
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]スマートフォン、おさいふ、ワンカップ酒、携帯充電器、なのはの連絡先
[所持金]裕福な家庭のお小遣い程度
[思考・状況]
基本行動方針:幸子たちと思い出を作りたい。
0.キャスター(アリス)への対応。
1.幸子を探す。
2.きらりさんが殺人犯? 真意を知るために学校周辺へ。
3.
チェーンソー男を、ジェノサイドに食べさせる……?
[備考]
※霊体化しているサーヴァントが見えるかどうかは不明です。
※アーチャー(クラムベリー)、キャスター(アリス)、高町なのはを確認しました。
【ジェノサイド@ニンジャスレイヤー】
[状態]霊体化、ダメージ(中)、カラテ消費(中)、腐敗進行(中)
[装備]鎖付きバズソー
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:コウメを……
0.俺はジェノサイド……
1.アリスたちを倒す。
2.【ニューロン腐敗】
[備考]
※ニューロン腐敗症状が見え始めました。継戦や不死能力によって魔力を消費すればその分腐敗が進行し、一時的な心神喪失状態に陥ります。
これは霊体化によっても食い止めることは出来ず、また、霊体化中にも発動します。
【キャスター(アリス)@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)】
[状態] 魔力消費(中)、陣地とオトモダチのMAGにより魔力回復中
[装備] なし
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針: オトモダチを探す
0.白坂小梅&バーサーカー(ジェノサイド)をオトモダチにする。
1.面白そうなのでしばらくエノシマジュンコチャンに同行する。
2.知世をオトモダチにしたい。
3.さくらに興味。
4.サーヴァントのオトモダチが欲しい。
5.親友って素敵なこと?
[備考]
※学校には何人か、彼女と視界を共有できる屍鬼が存在します
※学校の至る所に『不思議の国のアリス』への入口が存在しています
※不思議の国のアリス内部では、二人のアリスが遊園地の完成を目指して働いています
※エノシマジュンコチャンとは魔力パスがつながっていないため念話は使用できません。
※学校に残っていたNPCをオトモダチにしました。
[地域備考]
※一日目夜、小学校の至る部分がキャスターの陣地『不思議の国のアリス』と接続し、入り口が開きました。
小学校に入ろうとした場合、問答無用でこの『不思議の国のアリス』に入ることになります。
入り口から出入りが可能ですが、アリスが望めば入り口を別の場所に移動させることも可能です。
最終更新:2017年11月01日 09:52