『徘徊老人かな?』
ヘビが来るからやめろ、と親に咎められたことがある。
「~~~♪」
覚えたての口笛でミッキーマースマウチをぴゅ~たら吹いたあの夜。
当時小学生だったアタシは、ヘビがなにより怖くて昼ですらもぴゅ~ぴゅ~~吹くのをやめてしまった。
──もっとも、表玄関に広がるは田んぼ、裏玄関からは山が立ち塞がるド田舎住みだったもので、妙なリアリティがあったんだけども。
「…これでアタシは闘え、と…? ヨーヨーで?」
暗い森…いや、山の中で。
古びたベンチに一人座りながら、アタシはヨーヨーをギュルギュル回していた。
バトル・ロワイアルだかなんだか知らないけど、どうやらこの玩具が『支給武器』とのこと。
「スケバン刑事かッ…」
「……………」
「…殺し合いって割とマジな感じでやると思ってたんだけど…、案外ほたるちゃんクオリティなわけ??」
あのグッダグダなオープニングセレモニーらしいっちゃらしい、ポンコツ武器とは言えるけど。
念の為、他の人に会うまで緊張感は解かないようにすべきとアタシは考えた。
「~~~~♪」
…と、思いつつも。
同じく『支給品』であるフエラムネを吹くことはやめられない。
ボンカレーだのオロナミンだのボロボロなポスターが、木造りの塀にビラビラ貼られる昭和の時代から、今でも駄菓子の重鎮として君臨しているこのフエラムネ。
アタシのデイバッグには、そいつが何十パックもぎっしり入っており、あとはおまけの玩具が如く支給武器があるのみだった。
仮に、この殺し合いが『マジ』なやつだったら、アタシは大ハズレ引いちゃってるわけで。
ダークもいいところのお先真っ暗であった。
「~~~♫ …いや、ほんとに真っ暗じゃん…。今いるここも真っ暗過ぎ…」
目の前の崖からは渋谷というメトロポリスの輝かしい光が映える。
ただ、光と影というか…。
アタシの周りは木々で囲まれてめちゃくちゃ暗い。
『とな□のトトロ』で、夜にバス停で待つシーンがあるんだけど。
あれからトトロと雨とネコバスの登場を省いた場所まんまを移してきたのが、今いるここ。つまりは、ホラーだった。
…そいえば、メイとサツキは死んでる…とかゆう怖い話あったなぁ。
「~~♪」
恐怖を紛らわす為に、アタシはひたすらフエラムネを奏で続ける。
ぶーーんぶーん、と時折耳の近くを通過するベース担当がなんとも煩わしい。
カナブンか、カメムシか、…Gかは知らんけど、ただでさえ露出の多い肩とか脚には止まってほしくない。
…あーー、気持ち悪いっ。
とにかく、今はアタシのソロパートなんだ。
お前ら羽虫は邪魔してくんな、と声を大にしてアタシは言いたい。言いくるめたい。
「~~~♪……」
そして、とにかく今いる暗い山が怖くて仕方なかった。
…こっえーー。
こんな時に限って、脳内ではどう森の『うたたねのゆめ』が無限リピートしてくる…。
朝、早く来ないかなぁ。
今の季節からして日の出は四時くらい、か…。
それまでの耐久となると…、まぁ頑張れなくもない気はするけど。
「………………てか、今何時か分かんなくない…?」
あいにく時計台らしいもんは見当たらないので、これは随分と精神的長丁場になりそうだった。
「…~♪」
夜中に口笛を吹いたらヘビが来る──。
…だなんてのは、さすがに今では迷信だと分かってるし、信じちゃいないけども。
調べたところによると、空き巣や泥棒仲間のコミュニケーションの一環で口笛がされるらしく、タブーになるのもそういう理由があるからと知った昨今。
か細い笛の音色が、木々に浸透する夜にて。
後々、アタシはフエラムネを吹いたことを激しく後悔させられることとなる。
ガサッ
「…ブフォッ!! ひっ、ひぎっ!!!?」
少し離れた草むらから、パーカッションが発せられた。
アタシの情けない声とラムネが、ポンと口から飛び出る。
イノシシか、シカか、…参加者か。
どれにしろ、心臓はとんでもない勢い加速して、全身は凍りついたみたいに動けなくなってしまう。
ガサ…
ガサッ ガサガサ…
ザッ、ザッ、ザ
「…………、ぁ………………。………っ」
ギギギ、と無理やり動かすように、アタシは砂利が踏まれる音の方へ首を向けた。恐る恐るに。
街灯もない山道だ。
目が慣れなくてはっきりと確認できなかったが、人形の影がヨロヨロと徐々に大きくなってくるのが分かる。
そいつは、間違いなくこちらに近づいている…。
もし、そいつが幽霊や妖怪だとしたら。
──泡を吹いてぶっ倒れるくらい直感的に怖い。アタシはホラーが大の苦手だ。
もし、そいつが人間だとしても。
──殺される可能性はやっべーから怖い。
二つの未知なる恐怖が螺旋のように絡み合って、恐怖のピークに達する寸前のとき。
そいつは、既にベンチのすぐ近くへと歩き切っていた。
「……ぁ、あ…………。ぁあ…ひっ……………………──」
「──…あ?」
そいつは、持っている杖をピタリと止め立ち尽くす。
いかにも高級そうな気品高い和服を着たそいつは、ボリボリと人差し指で頬を掻く。
シワだらけの年季が入ったその頬。
続いて、鼻の下に伸びる三日月のヒゲは真っ白で、…というか髪の毛も何もかもが白髪染めであった。
ヨボヨボと杖を持つ手を震わすそいつと目が合ったのは、しばらく眺めて十数秒後。
ごわついた声で、なおかつ独特なトーンと間を置きながら、そいつはアタシに向かってニタニタと語りかけるのだった。
「…血沸き………。そして、肉躍る…………、狂宴………!!」
「ワシの細胞を活性化させるような……クズ共の生命の奪い合い……!!」
「ワシはこれが見たかった…。これが……!! 破滅…絶望…死………! これこそが、愉悦となる娯楽、と………!」
「そうは思わぬか………? …小娘……!」
────悪魔が来りて笛を吹く。
────『悪魔』を呼び込んだことを、まだ知らなかったアタシはこの時、ボソリと呟くことしかできなかった。
「…徘徊老人かな?」
◆
「のぅ…、小娘…………!」
「ワシは、自分のことを『聖人』だと思っている……………!!」
「…え? …あ、何か言った? おじいちゃん」
「カカカ……っ!! 崇高たる『王』という者……。普通は下々の前には姿を現すわけにはいかん………っ。いかんわけじゃが…………っ!!」
「ワシはこうして現れとる……。貴様の眼の前に…!」
「へ? へ? は、はぁッス」
「貴様が今五臓六腑に感じているじゃろう……、ワシの圧倒的優しさ…! このワシを『聖人』と言わずして誰が聖人じゃっ…?!」
「ククク……っ」
「カーカッカッカッ!! クキキ…! カーカッカッカッカッ!!!」
…うわぁ。
こりゃ相当症状進んでんなあおじいさん。
ネタで認知症扱いしてたわけだが、もしかしてガチで介抱しなくちゃならないわけなのかな?
カツ、カツ…と隣の杖が砂利を蹴る。
今、アタシはじいさんと話しながら、暗い山を降ってる途中だ。
「しかし、まぁ……。小娘、貴様とこうして歩くのも…、また悪くない………!」
「…んまぁー、傍から見たら孫と祖父のお散歩ですからねー」
(──…迷惑老人を連れ戻す家族とも言えるけどもねッ!)
「うむ…。価値はないに等しいが…、これもまた僥倖……!」
「……ワシの息子に和也というのがおるんじゃが………。ヤツめ、親の気持ちも分からずして、未だに子供を作らん………っ!」
「とどのつまり、『孫』という幻想を追い求めて彷徨ったら…、貴様と出会った……! 小娘、ワシはそう考えとる…──」
「──のう、小娘よ……!」
…しっかし、
おじいさん口悪いにも程があんでしょ。
この全ての人間を軽蔑し見下した態度…。
うちの学校の東大卒の高圧的教師思い出して、カチンと来ちゃいそうだ。
ボケる前は皇族か財閥の長でもやってたわけ?
妙に人馴れしてないというか……、小娘小娘ってうっさいてーの!
…にしても、このおじいさん。
顔を合わせるたびにどっかで見かけたような感じがあるんだけどもー……。
なんだっけな。
「いやてか…、小娘呼ばわりやめてくんないですか?」
「……………あ? あ~~~~~~~~っ………?」
「アタシにも一応名前あるんでー…。なんつか、名前呼びのほうが親しみあるじゃないですか」
うわおっ。
おじいさん、眉毛の角度がジワジワ上がってってる…!
ここまですっげえ露骨に不機嫌な顔するとか有り得ないんだけどぉ~~…。
と、いうわけでアタシは間髪入れず『自己紹介』を差し込んだ。
「アタシ『遠藤 サヤ』ってゆーんで」
「続けて読んだらエンドウサヤ~だなんつって…!」
「…………あ…?」
「まぁ遠藤とかで呼んでくれればいいですよ。…『小娘』よりは」
「……エ…、エンドウ……っ」
「あぁそう。そんな感じで。…あっ、うちにはアニキがいるんですけど、そいつの名前は『遠藤 豆』だから、」
「うちら豆兄妹じゃん…! とか…。なんちって…ハハ」
「………………」
「クククッ…………」
「キキキ…! グキキキ……!! カーカカカカカカカ!!! ククク……!! カーカカカカカカカ……ッ!!!!!!」
あっ、おじいさんウケた。
人が変わったかのような大爆笑っぷり……。
…いやいや…。
どんだけウケてんだ…。
「面白い…!! 素晴らしい…!!! カーカカカカカカ…!! ギギ…! カーカカカカカカ!!!」
おいおいやばいって…。大喝采じゃんか…!
本当にどんだけ………。
ってか、今のしょーもない小ネタでこんだけウケるって…。
もしかして、アタシ…、笑いの才能が密かにあっちゃったり…?
だとかして………??
へへへ…、
へへへへへ…!!
「やはり庶民のジョークはゴミじゃな……!! つまらなさすぎて逆に傑作………!!」
いやざけんなジジイ!
「くふっ…! くふっ…! ……早くワシについてこい! 小娘…!! このグズ…っ! マヌケ…っ!!」
「…………………………………」
………。
…あー、こいつ早く心筋梗塞とかで逝かないかなあ。
…はぁ、やだなぁ。
本家に住んでるおばあちゃん……。
こんなボケ方だけは絶対にしてほしくないなぁー。
まだまだ現役でいてほしいんだけど、人間って加齢に弱い生き物だし。
あー、来たる未来が恐ろしくて堪らない…。
「…見ろ……っ! 小娘…」
…おばあちゃん、あんなでっかい家に一人暮らしだから、いずれアタシらが面倒見なきゃならないんだけど。
そうなった時…、もしもそうなった時はやっぱり『駄菓子』…だよな。
糖分の積極的摂取はボケの予防に良いって、ナンタラの医学で紹介されてたの見たし。
アタシ自身駄菓子にはあんま興味ないけども、そうとなると、暫くココナツのお世話になっちゃう感じか。
……ココナツのお父さん…、駄菓子のことになると早口になってめちゃくちゃ苦手なんだけども…。我慢して通いつめる他ならないわけで。
あっ。あと適度なカフェインは長生きの秘訣らしいから、毎朝淹れてあげるのも心掛けるか。
サヤ・ブレンドの特製珈琲~。
取り寄せた厳選豆に、工夫されつくしたお湯の熱さと、香りを寸前まで際立たせるコーヒーカップ。
ほろ苦い薫りを楽しめる遠藤喫茶でしか飲めないあの珈琲を、毎朝手軽に家で飲むことができるなんて…。
そりゃおばあちゃんもきっと喜…、
「見ろといってるじゃろがっ…!! 制裁っ!!」
────ブンッ!
「うおわっ!!!」
だなんて考えに耽けていたら、ジジイの野郎いきなり杖をアタシに向けてぶん回してきた!!!
やば!!?
「…クソジジ…、おじいちゃんいきなり何すんのっ?! 危ないでしょうがぁ!!!」
間一髪、仰け反ることで回避したけど…。
当たったら顔に傷物だったんですけどっ?!
なに制裁って?!?
デンジャラスじーさん過ぎんでしょ?!!
…これで常にジジイに意識向けて注意しなくちゃならなくなったし…。
絶体絶命しろ!!このーー!!!
「チッ……。クズが…っ!」
「あれを見ろと言ってるのが分からんかっ…!! 小娘……っ!!」
は?!
謝罪の言葉もなしに何いってんの??
…と思いつつジジイの方を見たら、杖を夜景に向けてツンツン指しながらグギギギ…歯ぎしりを鳴らしていた。
「…な、こいつ……………」
「小娘よ……、あの一番デカいビルがあるじゃろ」
「いやどうでもいいよっ! …とにかくその杖危ないから貸し──、」
「一応説明すると……、あれは『SHIBUYA S●Y』……!」
「確かに……、確かに…ワシの所有するビルに比べれば、豚小屋同然の……っ!! 小さき建物に過ぎん……! チャラチャラした若屑共が入る………ウドの大木………!!」
「いや話遮るなし!! てかビルがなんなわ──、」
「じゃが、…今は贅沢を言えん……っ」
「ワシはあの高い展望台から、ゴミめらが潰し合う様を眺めたい……。安全な場所から…、外界を見渡したい……っ!!」
「…聞いてないーーしぃ~~~~…!!」
…。
ん?
つかジジイ何を言いたいわけなんだ…?こりゃ。
シブヤスカイどうたら~って……、要するにあのすっごい遠くで、一番存在感を出してるビルのことなんだろけど。
…それがどうしたって…?
こっから歩いたとして一、二時間じゃ到底着かないような場所に立っているんだけども…。
それに、今仮にも殺し合い中で不要な出歩きは控えたい場面なんだけども……。
それを踏まえた上でさ………。
どうしたいって…?
「ただ、年寄りには無理のある距離であることは事実………。これだけ歩いたら……、いわしかねん………! 腰を……!」
…だから、どうしたい、と…?
「じゃから…」
だから…?
「小娘、ワシをおぶさって連れて行け……っ!! 言うなれば人間競馬………っ、」
「…これぞまさしく、『ウマ娘』………っ!!!」
「……………」
「…ククク……っ。キキキ……!」
「あは、はは…」
「キキキッ…?」
「はっ、ははは…?」
「カーッカカカカカカカカ!!! グキキ…ッ! カカーカカカカカカカカカカ!!!!」
「はは…! あーはははははははは!!! おじいちゃんってば…! あははははは!! はは、は…」
「ふっざけんなよもう──────ッ!!! 図に乗るのも大概にしろオオォーー!!! バカにするのも程があんだろオ!!!! やんねぇーーし!!! 死ね────!!!」
「あ? あぁあ?!? あぁーーー??!」
冗談じゃないこと言ってきたァ!!このジジイ!!!
さっきから黙ってりゃ何様だっつーの!!
一人は怖いから、って理由で黙ってついてきたけど…、アタシはお前のお守りロボットじゃないわい!!!
「がっ……?! ど、どこに行く……!! 戻れっ、小娘………!!」
「もうっ! 限界っ!! 戻れってアタシはピカ□ュウじゃないわ!!」
「なんじゃと?! ヒカシュー……?? ……制裁!! 制裁ーっ…!! 乗れ!! …焼き土下座…!! こっちに戻れ!!」
あーあー!
『制裁』大好きっ子じゃんおいっ!!
どんだけ傲慢なジジイなの。まったく…!
もはやこれはジジイとアタシを引き合わせたゴミ主催者にも責任があるわっ…!(…いやそいつは元から元凶だけど…)
とにかくさっさと一人で下山して、警察呼んでもう終わらせるわ。
ワガママなだけならともかく、傲慢で人間を馬鹿にしきったその目、あと特にやばすぎる暴力衝動…!
ちょっと意に沿わないぐらいで簡単に杖突いてくるとか付き合いきれんわ!!
こんなジジイに耐えられるわけないってゆーの!!
「おいっ…!! 小娘……」
うるせー!
一人で山ん中埋まってろーー!ジジイー!!
…こんな酷い人間…生で見るの初めてだわ。
テレビやニュース記事ではこういう腐った奴は見かけるけど、ここまで癪に障る老人ってのは唯一無二ってくらい…。
例えるなら、ワ□ミとか電□とか。
そういうブラックなやつらと同じような不快性の毒物じゃん。
あとは、経営者でいったら帝愛とか、そいつらみたいな傲慢で最低な…………、
……。
『帝愛』………とか…………………?
「…わっ」
ボスッ、と足元に何かが落ちた。
突拍子もなく、急に。
ただ、誰がそれを投げつけたかは理解できる。…背後のジジイだろう。
サンダルの爪先に放り投げられ落ちた、その『何か』。
そいつが持つパワーは、アタシの歩を止めるのに十分すぎる力があった。
「…チッ、ゴミめが………」
「そいつをやるからさっさと戻ってこんかい…っ!! このアホが……!」
アタシが拾い上げたその何かは──百万円の札束。
諭吉の金太郎飴がズラーーーッと並び尽くす。
正直、めちゃくちゃ悔しかった。
「ったく……。これじゃまるでお年玉だわいっ………。カスめ……っ!」
今、思い出した。
コイツ悪名高い帝愛のトップ看板じゃん、と。
ネットでは有名なブラック会社だからアタシも知っている。
名前は確か……、『兵藤和尊』…。
クソジジイの名はそれだ。
大企業の頂点に君臨する富豪だから、百万など本当にポケットマネーなんだろう。
悔しいし、イライラでいっぱいだった。
──だがしかし、ここは資本主義国家だった。
「おじいちゃ~ん! さっきはゴメ~ン!! あそこまででいいんでしょ? ならさっさと行こっか!! ねえ~~! おじいちゃん」
「フン…、早く来い……!」
悪ぃかよー!! バッキャロー!!
世の中金だ!
金が全て!!
◆
コクリ、コクリ…と涎を垂らし眠りこけるジジイに殺意を抱きながらアタシは草木を踏み続ける。
「はぁ…はぁあ………、はぁ……」
「…、まだ………まだなの…………」
子泣きじじいめ。
思いっきり夢の中だろうに、手足だけはガッチリとアタシにホールドしたままだから体力的にめちゃくちゃキツイ……。
「ぐうっ……。はぁ、はぁあ…………はぁ……」
なんで…。
何でアタシがこんな目に遭ってるわけ…。
よくよく考えれば戦闘向きでもなく人も殺したこともない。
そもそも体力すら人並みではないというアタシが……。
何故こんな殺人ゲームで、しかも無駄な運動をさせられているのさ………。
「んぐっ……、きっつぅ………。はぁ……はぁはぁ、はぁ……………」
汗が目に染みて、痛ぃい…。
どうせぶち込むなら…、ココナツとかアニキみたいな男にやらせりゃいいのに……。
「……いや、冗談でも……。はぁ、…そんなコト考えちゃ…だめだよね……」
特にココナツは、ちょっぴりエロス走ってるけど、優しくて体が強くて、芯があって。
駄菓子のことになると、夢中になって歴史なり食べ方なりを教えてくれてさ。
顔はイケメンの部類ではないんだろうけども、あいつとベンチで座って食べる麩菓子が。
麩菓子の先の部分の特に甘みある部分が、夏の夕暮れ時にはなんだか甘酸っぱくて。
あの味がすごく好きだったから、軽い冗談でもそんなこと思っちゃいけないや。
…アタシは。絶対に。
「どうせぶち込むならアニキにやらせりゃいいのに………はぁ、はぁ……」
熱さでフエラムネはベッタべタになってるであろう中、闇夜の蛇道をひたすら下り続ける。
そんな十五歳の夜の話。
【1日目/D7/渋谷山/AM.00:41】
【遠藤サヤ@だがしかし】
【状態】疲労(重)
【装備】あやみのヨーヨー@古見さん
【道具】フエラムネ10個入x50、100万円札
【思考】基本:【静観】
1:金のため兵藤さま(クソジジイ)にご奉仕
2:SHIBUYA S●Yを目指す
3:クソジジイには死んでほしいと思ってる
【兵藤和尊@中間管理録トネガワ】
【状態】熟睡
【装備】杖
【道具】???、懐にはウォンだのドルだのユーロだの山ほど
【思考】基本:【観戦】
1:展望台の頂上から愚民共の潰し合いを眺める
2:小娘(サヤ)を道具として利用
※この小説はフィクションです。実在の場所や場所、場所などとは関係ありません。
最終更新:2025年06月01日 17:25