『夢で逢えたなら…』
無人の渋谷。
まるで終末世界に彷徨い込んだみたいで、ちょぴっとだけワクワクしながら私は歩いていた。
…あっ、『私たちは』だ。
ふと隣のヒナちゃんから話しかけられる。
「ねぇ陽菜、スマホちょっとかして」
「…いいけどー。何に使うの?」
「ガンガンアプリの更新時間だから。あとユーチューブでジョ●ョ見たい」
「…………はいっ──…、」
「──あっ!! 絶対検索履歴だけは見ちゃだめだよ?! 絶対だからねっ?!」
「?? えっちなサイトでも開いてるの?」
「……っ!! ──……い、いや開いてないけどさぁ……………。とにかく絶対だからね?! 指切りげんまん!!」
「はいはーーい。嘘つ~いたらー、針千本&陽菜ビンタ~~」
「……さっきのビンタに変な技名つけるのやめて?!」
スタ、スタスタスタ
スタ、スタスタスタ……
スタ、スタスタスタ
「ふんふふふ~~~~~~~ん…」
「あっ、ところでヒナちゃんさっきの────…、」
『あぁぁぁああぁぁぁあんっ!! んっ……! んじゅっ、じゅぷぷぷ……!!』
『じゅぱっ……、じゅっぱ……! …はぁ、んんっ………! あぁ、ん…………!』
『あはは…んっ! いっぱい出たね……! はぁ、はぁはぁん…………。じゃ、今度は、はぁ……、私の濡れちゃったところで…本番……しよっか……?』
『あんっ……! あ、あぁん……、あんあんっ!! あぁんいやぁあんっ…! お●んぽが私のお●んこにぃやん………!! 凄く入って……こんな…ぁんっ!! こんなのオ●ニーじゃぁ…味わえないよぉっ!!』
『んほおおおぉぉぉぉぉ♡♡♡ すごいすごぉおおおおぉおぉおぉぉおい♡♡♡♡妊娠確定っ!♡ 出産覚悟!!♡♡ 感度5000倍なんのぉぉおおおおおおおっ──────────────っっっ!!!!!!!!???????!!!!』
『んほおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!♡♡♡♡♡♡』
『んほおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!♡♡♡♡♡♡』
『んほおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………♡♡』
…クロから知ったえっちサイトのmp3が、山彦の如く会場全体に行き渡った。
深夜一時ちょっと過ぎの、そんなお話。
✝Episode『夢で逢えたなら…』✝
──Oral sex master/Nemoto Hina Matsuri.
◆
…
……
「殴られるたび右目がどんどん腫れていく。ゆゆしき事態だこりゃ」
「いやヒナちゃんが九割過失だからねっ?! そらビンタやり慣れてない私も一割悪いけど…一割だけだよっ!!」
はぁ、はぁ………。はぁ……。
──…っ! べっ別に喘いでるわけじゃないからね??! ほんとに!
…内容はともかく、大音量を流しちゃったから大慌てで走り出した私ら二人。
肺活を鍛えたいからランニングを欠かせない私だけど、結構な距離走ったからだいぶ疲れた………。
もう、なんなの………。ヒナちゃんは…。
押すなよ絶対押すなよ芸でほんとにやっちゃう人…割と初めて見た気がするよ…。
…で、
「ヒナちゃん…。さっきからなにしてんの??」
「自販機」
「…自販機…でっ!! なにしてるわけ??」
…まぁ聞かずとも何をしたいんだが一目瞭然だけどさぁー……。
「おなか空いた。でもわたしはお金がない。陽菜も(…エロサイトで金使ったから)ない。だから自販機の下あさってる」
「…小声の部分だだ漏れだからね??」
はぁーあ……。
とんでもない意地汚さ。それに周りの目なんか気にしない大胆っぷり。
一年の頃、ボッチだったクロがやりそうな行動じゃん……。
この子、スクールカーストが浮き彫りになる中学高校に進学したらやっていけんのかな。
「あっ、五百円みっけ。超能力で、ほい~~~~っと」
「バカみたいな力の使い方……」
…あっ、ちなみに。
逃げ走った先──今私達がいる場所は、なんの変哲もない横丁。
…『なんの変哲もない』…はちょっと違うか。これはあとで説明するけど。
周囲は立ち寄りやすいチェーン店やファッション店が軒を並んで、対岸沿いには噴水が存在感をアピール。
ロッテリアのすぐ近くにはダイドーの自販機があって、そこに私たちはいるって感じ。
ほんとにいつも行くような代わり映えのない町並みなんだけど、ただ一つ異物が混じってて…。
自販機の周りは、『御札』がびっしり埋め尽くしていたんだよね…。
……ごめん、変な言い回ししちゃった。
霊的な話じゃないからとりあえず安心して…みたいな。
「『みんなの願いが敵いますように。 今江』────短冊、かー…」
殺し合いショックで忘れかけてたけど、今日は七夕。
みんなが心の底からの願いを、一部の人は大喜利チックに面白い願掛けを、笹に吊るす日。
何があったかは分からないけど、とにかく地面には短冊がいっぱい落ちていた。
織姫と彦星、会えたかな?、と。
ふと夜空を見上げてみれば薄透明の青いバリアが星を覆い隠す…。
願うことなら、殺し合い脱出させてください~!って頼みたいくらいだ。
大喜利でもなんでもなく、心の底からのマジな願いで、ね…。
「…ちょっと思ったんだけど、ヒナちゃんの超能力使えばワンチャン脱出いけるくない??」
「えー。あっ、むりむり。あくまで念動力だけだから。…ルーラつかいたいなぁ~(ガサゴソ」
「無能力じゃん…」
「それよくいわれる」
「……軽い雑談だけどさ。ヒナちゃんさー、願い事書くとしたらなににするー?」
「ねがいごと??」
「うんー。私の学校でも七夕イベントあったんだけどさー、友達がウケ狙いで恥ずかしい願掛け書いてー。しかもヤバい担任のせいで一番目立つ位置に吊るされたから顔真っ赤にしててさー。…はははー──」
「──ヒナちゃんはある意味それを超える願望ありそうだから気になるんだけど。…なんかある?」
「……………………う~~~~~~~~ん」
…ちょっと予想タイム。
……うーん。どうせ『イクラ食べたい』とかそんなのでしょ?
「いくらたべたい」
えー…、私なんかテレパシー使っちゃいましたー?<(^_^;)(なろう主人公風~…)
「あと、とんかつ、ラーメン、おにぎり、カレー、味噌汁、コーラ、フランクフルト、ドーナツ、ぎょうざ、ハヤシライス、ガパオライス、キャベジンと~~」
うわっ、食欲全開だなぁっ!!
こんな感じの戦時中特攻兵の辞世の句あったなー………。
…てかどうせキャベジン食べたいならもっと食前にでしょっ。
「…やきとり、メンチカツ、すじこおにぎり………あと~~~~~~~~~…、」
「はらが、減った………………」
「……………」
ポン
ポン
ポーーン………………
って孤●のグルメかっ!!
──…クロと付き合うせいで変な作品の知識増えてくなぁ…私。
「…はぁ、じゃあご飯にしよっか…。…一応私普通にお金持ってるからね?? 普通にっ!」
「まじ? やったぁ~やったぁ~~~~」
◆
ロッテリアでいいでしょ。
テキトーに。
…それにしても、券売機押すだけでほんとにハンバーガー出現したからちょっとビックリ。
「うまいな。うまいうまい。エビバーガーうまいな。ポテトもうまい」
店内のテーブル席にて、私はヒナちゃんの食べっぷりをただ眺めていた。
…一応言っとくけど、お金ないから自分の分は買わなかったわけじゃないからねっ??
ほんとにエロサイトにお金注ぎ込んだりとかしてないから…!
「ズズーーッ。…うん、やっぱりハンバーガーにはスプライトだな。うまいうまい」
「…ヒナちゃん『旨い』以外に感想思いつくー?」
「……………………………? うまい、うまい」
ヒナちゃん、深刻なボキャブラリー地獄の様子だ。
まぁ何でもおいしいおいしいって食べれる人って心から幸せそうだし、いいんだけどね…。
…。
ストローにふと口づけ。
手元のアイスティーを飲みながら、私はちょっと思い吹けていた。
──……実は今結構メンタル的に重い感じでいたりする。
「…はぁ…………。──小宮山さんに吉田さん、内さんと…田村さん……」
同じく手元の、『参加者名簿』を読んで、無意識のため息が漏れ出た。
ついさっきまで知らなかった…私の知り合い達が殺し合いに巻き込まれている、事実……。
ランダム無作為なバトロワ放り込みと考えてたから、この確信犯的な名簿は何よりしんどかった。
…これ括りとしては、私含めみんなクロの友達……なわけで。
──どうしてクロをスタンスにバトロワを行ったの?
とか。
──じゃあなんで肝心のクロは不参加なの?
とか。
色々疑問が頭を駆け抜けていく。
…その中で脳内に一番留まり続けた疑問が。
──この四人と、もう永遠に会えなくなるってことなの………?
「…………うまい、うまい、うまいうまい」
一年生の頃はここまで深い関係になると思ってなかった──田村さんたち。
…ハハ。そうだった。
思えば、たった一年とちょいくらいからしか友達になって経過してないというのにさ。
ほんとに、初めて会って、あんまり月日経ってない女子たちだというのに。
こんなにも悲しくて。
辛い気持ちになるなんて。
…びっくりだよ。
……ほんとに、さ。
「…え。陽菜……、………………ハンカチいる?」
……。
「えーなんで? いらないよー…ヒナちゃん……」
「だって」
「…んー…?」
「かお伏せてるけど、ばればれだよ………?」
……………。
「………なにがー………?」
「……わたしもさ、同じだから。新田に瞳にアンズ、あとマミ……………」
「………………」
「だから、ハンカチ…いる……? 陽菜……………」
……………気遣いしてきたヒナちゃん………。
顔を突っ伏して、目を腕枕で隠す私は、「いらないよ」と手振りでアクションを見せた。
視界は真っ暗瞼の内。
ふわぁあ……、と欠伸が聞こえた。
…そっか。
今超深夜だから…、ヒナちゃんにとってはそりゃ眠いよね…………。
…だから……、安心して一眠りしていいんだよヒナちゃん……。
縁もゆかりも無い私たちだけど……、護ってあげるんだから……………………。
私がお姉さんとして、ヒナちゃん…………………を……………………………………。
守りたいんだ……。
私が…………………………………。
田村さん…たち……………………………………。
…バラバラになった四つのピースを………………………。
………全部…………………………………──────。
……
…
◆
映写機のガガガガガガ…という音。
そしてそれが放つ光だけが目立つ。
暗い映画館にて、わずかばかりの人気を感じた。
見下ろしたら確認。並んで座る二人の女の子。
奇遇にも、彼女らは揃って黒髪のおさげヘアーだった。
…多分年はちょっとだけ離れているんだろうけど。
右に座る年上の女子。
……私の友達の、まるでアニメキャラってくらいに顔整ってて、そしてミステリアスな子──田村ゆりは、隣の知らない子の話を真顔で聞き流していた。
──絶対いると思うんだよっ!! みんながみんな、大人もクラスメイトもばかにするけど………、絶対存在してるから!!
────…ふーん。
──宇宙人は絶対いるよ!! そう思うよね? ゆりちゃん!!
──わたし、子供の頃見た映画で…。あれ以来UFOにとりこになったんだよ! …なんだっけな…。あっ、そうそう『プラン9 フロムアウタースペース』で!!!
────……………………!
──司令を受けた宇宙人が両腕をバシッバシッて自分の肩付近でやってさー! あれが「了解」ってアピールなんだよねー!
────それ私も知ってる。
──えっ?! ほんと!!
────チャリチョコのウンパ・ルンパの動きの元ネタがそれ。…私もプラン9好き。くだらなくても、内容が陳腐でも、作り手が熱意込めて作る洋画はなんでも好きだよ。
──…おおおっ!!! さすがゆりちゃん!! ね?? 宇宙人はいるよね!! ねえ!!
────…いるかどうかは何も言えないけど。…いると仮定して作った映画なら、これが一番面白いよ。
…そう言って指をさした先──スクリーンには『MARS ATTACK!!』のタイトルロールが。
UFOが飛び交い、キャストの名前を運んでいく。
──うわぁー!! UFOだ!! 火星人だ!! わーいわーい!!
────私的にチャリチョコ監督の最高傑作だと思ってる。B級だけど観て損はないから。うん、観よ。
──うんっ!!!
内弁慶な田村さんには珍しく、結構和気あいあいと話してる様子だった。
二つ結びが微風で揺れながら、楽しげに会話する二人。
私はそれをただ黙って。
黙って眺めていた。
なんでだろう。
何かを忘れている気がする。
ほんとは、一目散に階段を降りて。
そして田村さんに会って、無理矢理にでも一緒に動かなきゃいけない。
田村さんを…、なんだろ。
護らなきゃいけない…。
…だなんて、そんな気がする。
なんで? どうして?
そんな急がなくても明日学校で会えるのにさ。
どうして、今すぐにでも会わなきゃいけないって。
思うんだろ………………?
ガガ────────ッ
ガガ────────ッ………
………
……
…
◆
…
……
「た、田村さっ────!!!」
……あれ?
…って、なんだ夢…か。
なんで夢の中に田村さんが……。
変な夢…。
「ってなんで私呑気に寝ちゃったの??!」
いや超やばいんだけど!!
殺し合い中だっていうのに、いつの間にやら寝ちゃってたし!!!
…目をゴシゴシ拭った私は、周りを慌てて見渡し始めた……!
「っ…………………」
「…………………あー、よかった……。誰もいないや…」
夢に落ちる前と変わらず、無人のロッテリア店内…。
幸いにも、私のバーディー──ヒナちゃんも全く怪我なく、ぐーすかぴーでヨダレを垂らして寝ていた。
…はぁー、よかった………。
多分疲れてたんだろな、私…。ほんとに奇跡モノじゃん、これ。
「って、ヒナちゃんそろそろ起きて!! …いや意識朦朧になってる時「寝ていいよ」とか言っちゃったかもだけど………。とにかく起きて!!」
「…むにゃむにゃ……。──んあーー?? おはよ~……、陽菜」
「あっ、うん! おはよー。…とにかく、そろそろ出よっか!! …あーやば…。今何時くらいかな…………」
寝ぼけ眼のヒナちゃんを揺さぶりながら、私は時計の場所を目で探る…。
…あっ、今……『am.3:02』………??
やばっ、一時間くらい寝てたってわけじゃん!!
何してんだ…!! 私…っ!!!
「う~~~~~~~ん…。やっぱ深夜のどか食いは眠気にくるな」
「…その節は私も悪かったよ…。とにかく店から出るよ! ヒナちゃん!!」
「…おっけ~~。らじゃー。──…ところで陽菜~。私さっき面白い夢見たよ~」
…このタイミングでしょーもない話 してこないでよっ!!
私はヒナちゃんに一応顔を向けつつも、デイバッグを肩にかけ席を立ち始めた。
「…なに? 後ででいいでしょ。その話──…、」
「不気味な映画館でさぁ、私のクラスメ~トのマミが知らない女と話してて~~~。その知らない女ってのがマミと同じおさげなんだよ。なんか変な話してて地味におもしろかった。そんだけ~」
……え?
【1日目/F3/渋谷センター街・ロッテリア店内/AM.03:03】
【根元陽菜@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】
【状態】健康
【装備】ダーツ
【道具】???
【思考】基本:【対主催】
1:ロッテリアを出る。
2:ヒナちゃんを守る。他の参加者は基本話し合いで解決。
3:田村さんたちが心配。
【ヒナ@ヒナまつり】
【状態】額に傷(軽)
【装備】???
【道具】???
【思考】基本:【静観】
1:新田たちどうしてるかな~。
2:陽菜はわたしの起こし係!
最終更新:2025年08月05日 22:48