『毎日がひなまつり』



[登場人物]  根元陽菜ヒナ





 アニメが好き。


 学校でみんなとワイワイお弁当囲んで、屋上で昼寝してたらミステリアスな先輩が顔覗いてきて。
文化祭では、バンド演奏を披露したり。
そのとき、裏幕で緊張しているメンバーに「大丈夫だよ! 自分のやりたいようにやって愉しめばいいんだから!」って勇気づけさせる展開とかしてさ。
いじめや嫌がらせがない、そんな平和な青春のアニメが私は好き。

だから、クロが好んでるような戦い物や、人が死ぬアニメはあんまり…って感じだった。


だったんだけども…………。







「えーと。まず、男の参加者に会った場合はーー………。んー、なんて言うのが正解かな…」


 私、根元陽菜。
来年の春から声優学校に通う十八歳の高校生。
だけど、ひょんなことから私は今、知らない大勢の人と殺し合うことになってしまったのだ。

 …本当に直球の殺し合い。グロテスクで鬱過ぎるそれだ。

 知らない間にバスの中に拉致されて、何をするのかな、と思っていたら…、すごい展開に。
退屈な日常生活がある日突然一変する~、みたいな展開はアニメみたいで待ち望んでたけど、……流石にこんなのは要求していない。
恥ずかしいけど、隣席の人なんか気にせず泣いちゃった車内だった。
 私のスタート地点は、外の大階段。
普段は色んな人が段差に座るこの階段も、今は私以外誰もいなくて。なんだか世界で一人取り残された気持ちになる。
…あーちゃん、私がいなくなったら悲しむだろなー…。


「うんっ。男の人の場合は『撃ってもいいよ…。でも、安心してほしいし、なにより私を信じてほしいんだ。私は貴方を救いたい、から────』とか言おっかなー」


 そしよ。
変に命乞いとかしてもカッコ悪いし、強キャラ風味出すのも悪くないかも。
それ言おっと。

 あ、ちなみに今私は、参加者別の会話シミュレーションを脳内会議中。
…別に、会話苦手部とか、そういうわけではないよ?
ただ、なーんていうか。
当たり前だけどこういうイベントって初めてだから、生き残る為にどう接するか考えておきたい、みたいな。
慎重に、このあとの展開を読んで、先手を打つことが、殺し合いを乗り切る最善策だと思ってるしね。


「…いや、でもさすがに臭すぎるセリフかな……。クロが聞いたらすごいバカにしてきそうな痛さはある……。…いや、別にいいもん。…いいよね」


「…じゃあ、次は武器を持った女の子と対面したケース…と」

 女の参加者の場合はーー……。
うーん。
やはりこれも、命乞い系はしないとの前提でコミュニケーションを取るとして。
同性だし、初対面から結構フレンドリーな態度で接しようかな。
「あっ、ちょっとタイム!」「話し合い一回しようよ、ね? 無理、かな?」みたいな。
話し合いをすれば、この危機的状況も脱せれることを軸に色々会話してく、って感じで。
ポイントとしては、こっちが丸腰なのアピールすることか。
自分の武器を遠くに放り投げて、手はパーの状態を見せつければ、相手も警戒心は解いてくれるだろうし。
よし、そうしよう。
イメトレ完了…!


「あははっ、なんだかギャルゲーの選択肢慎重に選んでるみたいだ」

 思わず吹き出しちゃう私。
というのも、つい最近にクロからR18のえっち…なゲームを渡されたから、なんか思い出しちゃったのだ。


「……クロは、もし殺し合いに参加されたならどんなことするんだろ。クロの場合…」


「あの子は正真正銘会話苦手部だから、なーんかずっと隠れるイメージしかないなあー」


逃●中なら、自首行為の次に、何も共感できない逃走者のパターンだ。
でも、『生き残り』だけを大前提にした場合は隠れ続けるのが正しいんだろけどなー。


 クロがするであろう行動と、
 私が心がけた参加者と話して分かり合うという行動。


どっちが正しいのかは、分からない。
分からない、けど…──、


「少なくとも、私はこのバトロワで主人公に成り切りたいから、積極会話試みてるだけだけどね…」


 ──…私は絶対に殺しなんかしたくないし、追い込まれた主催者へ「バーカ!!」って勝利宣言で終わりたい。
対主催を胸に抱き、私はこの階段をとりあえず降りてみることにした。



 よし、と。
ミニスカートをパンパンと払って、準備完了した私は重い腰をあげる。
そばに置いたクソデカカバンを肩に掲げて、いざ出陣…と。



そんな矢先に、階段の下でとうとう参加者の一人にエンカウントしてしまった。


「あっ」
「…あっ!」


 とりあえず、ファーストエンカウントが女の子で安心した私…。
ちっちゃくて小学校高学年みたいな童顔の彼女は、よく見たら茶色い制服を着ていて、「じゃあ中学生なの?」と考え悩む。
特徴的なのは青く染められた髪で、ちょうど風が吹いて、スカートと一緒に髪がなびいていたからなんだかアニメ的なエモさがあった。


「…………」


 それにしても、その子。
口を半開きにしてボーーっと。
なーんも言わずに私をすごい見てくるんだけど…。
うーん、何を考えてんだろって顔つき。
とりあえず立場的に私がお姉さんなんだから、会話のリード権を握っておくとするか。


「あー、大丈夫だよ! 怖がらないでいいから。ねえ、私と一緒に行動し──、」

「あ~~っち、向いて~~~~~」

「──え?」

 そのブルーヘアーの子は、私の発言に被せてでも、唐突に口を開く。
セリフ通り、彼女は人差し指を私の顔に向けていて、ピーンと見上げている。
…うーん、なんだろ。
遊びたい感じなのかな。…初対面相手に随分フランクな子だなぁ…と。


「えーーと…。…とりあえず。私は根元陽菜。『ヒナ』って呼んでい──、」


「~~ほいっ」



 彼女は指を右にスッと方向転換した。



クイッ→





ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッッッッ



「??! …痛っいだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだっ!!!!!?????」

「いだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!!!!!!」


 その指の向きに合わせて、私の首もギュギイイイイイイイィィァっと力強く拗られる……っ!
具体的に言えば、私と女の子は十三段分ほど距離が離れており、彼女が武器か何か使って直接、首を曲げてるわけではない…。
ただ、『見えない力』というか…。
何もないというのに、急に私の首が反対方向にねじられようとしてるのだ…!!
女の子の指さす通り、ギュイイって!!

私も必死で力を込めてるけど、やばいヤバイヤバイヤバイヤバイ!!
捻じ曲げられそうだ!!


「いだだだだだだだだだだだだだだ!!!! ちょっとタイム!! タイム!!!」
「こ、これキミがやってるのっ?! ね…いだだだだだだ…!!!」

「あ~~、お腹空いたからやっぱ力が出にくいな~~…」

「いだだだだだだだだだだだ!!!! 痛い痛い痛いい!!! は、話し合おう!! ねっ…いだぁ!!! む、むむ無理か…いだぁああああ!!!!!!」

「新田に電話してごはん持ってこさせよう」

「ちょっ…いだだだ!!! む、無視しないで!!! は、話を…」


  ギチギチギチギチッ…

いだぁあああああああああああああ!!!!!!!

 すっごい踏ん張ってるのに、首を捻る見えない力が強い…強すぎるうっ………!!!
首の繊維?骨?とかがすごいギチギチブチブチいってるし、もう耐えられないくらいやばすぎるんだけど!!
訳解んないし…、とにかく嫌嫌、嫌、イヤッ!!

死にたくない!!!


「あれ。わたしのスマホないし。バスの中に落としたっぽい。ま~いいや」

「ぎぃいいいやあああああぁががががががががががごがががががぎがががご!!!!!!!!」


こんな、こんな…っ!!
今私がしてるだろう、すごい風圧を浴びたみたいな形相のまま、死にたくなんかないっ……!!


「もっ、もう……!!」

「それにしても渋谷には築地があるのかな。これがおわったらイクラ丼食べよ」


「もうっ!!!!」



ほんとはしたくなかったけど。
死にたくないから──。


捻じ曲げられる一歩手間の私は、ポケットから『支給武器』を手にとり、眼下のアイツに向かって思いっきり投げた。


支給武器は自身のプラスチック製の羽をなびかせながら、垂直に対象目掛けて飛んでいく。




 …そうだ。
 田村さんも…、殺し合いに巻き込まれちゃってるんだよね……。参加者の一員…。



 ちょっと前の体育祭の時のこと。
その時の田村さんとの思い出を乗せて、投擲された武器はまっすぐまっすぐ飛んでいった──…。



 ──根元さんってダーツやったことある?

 ────ダーツ? ああ、うん。やったことあるけど…。それがどうかしたの?

 ──私も智子とやったことあるよ。楽しかった…!




  ドスッ



「あがっ」




 バタリ



『ダーツの矢』は、女の子のオデコにキレイに突き刺さり、標的をあっさり卒倒させた。








「………う~ん………イクラむにゃむにゃ…………う~ん…」
「……ハッ」

「ここはどこ──、」


「よくも殺そうとしてくれたなぁーー!!!! バカじゃないっ?! 最っ低────!!!!」


 バシィン…!!って。
ベンチで寝起きの女の子に、思いっきりビンタをした私………だったんだけど。
当たりどころがすごい悪くて、小指と薬指が彼女の目に軽く入った上でのビンタになってしまった…。


「あっ…!」

「…いっ!! あいっだぁあああああああぁーーっっっっっ!!!!」


「あっ、いやっ。ご、ごめん!! …そこまではするつもり無かったから……」


 ビチャン…と妙に嫌な音が出ていたけど、いや…、大丈夫であると願いたい。
女の子のゴロンゴロンと片目を瞑って悶える様からして、すごい嫌な予感はするけど……。なんでこんな目に…。


「いやっ、なんで私が罪悪感感じてんだ…。被害者サイドじゃん! 私!」

女の子が暫くジタバタする間、私は特に何もできなかった…。
というわけで、十五分ほど割愛ー…。








……
「…でっ!! そう法律でやっちゃいけないって分かってんのに、なんで私を殺そうとしたわけ??」

「ゲーム感覚だとおもったから。みんな倒せば終わりらしいし。『ゾンビシャーク 感染鮫』みたいに殺しまくろうとおもった」

「…いや影響受けた映画コアすぎない?」


 ベンチで二人、コンビニから買ってきたチキンを食べながら、軽い自己紹介を済ませた。
おでこに絆創膏を貼った青髪少女の名前は『新田ヒナ』ちゃん。
彼女もまた、私と同じように知り合いがここに閉じ込められている…らしい。
と、私はふと夜空を覆いかぶさるバリアーを見上げながら思った。


「…ふーーーー、っと……」


「チキンうまいな。あつい、骨なしはうまい」


 驚くべきことに、このヒナちゃん。
凄まじい『超能力』を使えると自己紹介してくれたのだ。
証拠として、バックやベンチやらを手動かさず軽々宙に浮かせてみせたヒナちゃん。
つまりさっきの私への攻撃は超能力を使ってのことらしい。
…自分で説明しといてなんだけども、いやはやすごく頭が痛くなってくるよ…。

「…首も痛いし……。これムチウチとかいってるでしょ…」

「ねえ、陽菜」

「……んー、なーに?」

「その食べかけチキン。いらないなら、わたしによこせ。もったいない」

「…いや謝るのかと思ったよ!! もうヒナちゃんはー!!」


 …いらないしダイエット中だから普通にあげたけど。


 はぁー。
バトル・ロワイアルに、魔法で死者蘇生に、超能力少女…。
現実的観点で行動したら脳がぐっちゃぐちゃになりそうなんだけど。
私今これ夢の中か、VRの世界か、それともL●Dでも打たれて幻覚を見させられているのか…。
もうわけが分かんないし疲れちゃうよ……。



 サイキック少女がある日現れて、その子とタッグを組むって。
それだけだったら、ギャグアニメ物みたいですごく良いんだけどなあー……。




【1日目/A3/大階段/ベンチ/AM.00:20】
【根元陽菜@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】
【状態】首痛(軽)
【装備】ダーツ
【道具】???
【思考】基本:【対主催】
1:ヒナと行動
2:基本話し合いで解決する。危険にさらされた場合は不可抗力として攻撃

【ヒナ@ヒナまつり】
【状態】額に傷(軽)
【装備】???
【道具】???
【思考】基本:【微静観】
1:とりあえずイクラが食べたい

※ヒナの参戦時期はアニメ最終回直前あたりです。


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最終更新:2025年02月08日 19:03