『Houkago ♡ Destruction』



[登場人物]  日高小春長名なじみ





 古典シューティングゲーム『ゼビウス』にはバキュラという敵キャラがいるらしい。
そのバキュラは所謂無敵キャラ。
公式設定上では撃破することは不可能で、ゆらゆらふわふわといつまでも空中を浮ついてるとのこと。

ただし一つ、そんなバキュラにも都市伝説があって、何処かのゲーム雑誌によると山程弾を撃てば倒すことができるらしかった。
その弾丸の数はなんと256発。

256発……。
256発も……。
そんな途方もない数だけ撃ってやっと倒せるらしく。


────だったら、矢口くんもそれだけアタックすれば振り向いてくれる、かな。


って。
私は毎晩ベッドに入るたび、胸が苦しくて…重たくなる…。





 GAME START────!!
私の中にワン“コイ”ンが投じられたのは、中学二年のふと突然にだった。

それまでの私の青春といえば、…なんだか味っ気のない面白み0の学校生活。
趣味なんてものはこれといってなく、やることと言えば勉強とか…友達との付き合いで流行りの遊びをすることだけだった。
流行りの遊び──ファッションとかアクセサリーとか、洒落た店に行くだとか。色々手を出した。
その付き合いの中で、表面上は愉しそうにキャッキャと振りまいたけど……──心の奥底ではなんだか冷えわたる…みたいな。
なんだろ…。心臓がはち切れるくらいのドキドキ、光悦を欲していた…っていうか。
上手く表現しきれないんだけど、とにかく退屈な日常って感じだった。


ちょうど、あの時もこんな具合で。
天気は連日続く曇り空だった。


……
 ──ふっふふふ…っ!!


 ──無人の教室、見回りも皆無、それに帰りの電車の影響で俺は四十分近く暇な状況と来た………!!


 ──よしっ。教室での『ストⅡDash』…携帯ゲーム機のプレイ実現させてもらうぜ!! はははーっ!!





 『……………………』


……


ゲームボーイの画面ってくらいに白黒のみのグレイテイストな私の青春。
────そんな生活に、彩りを与えてくれたのが…………、



……

 ──勉学の場で勉学を愚弄するが如き我が行為……‥!

 ──あぁ~…なんて快感なんだ…!! 教室でソニックブームを繰り出す開放感は!!


 『…ねえ~…──矢口くん~……』

 ──ひぎっ??!! び、びっくりじだぁ!!!



  ファネッフー……
   ファネッフー………ファネッフー……………



 ──って…な~んだ──日高かよ……。
……




矢口ハルオくんの存在…だった。




……
 『ばかみたい。教室にゲームボーイ持ってくる人なんて初めて見たけど』

 ──ゲームボーイ~?! 違ぇよ! こいつはPCエンジンGTだ!! PCエンジンのゲームをいつでもどこでもやれる優れものだ!!
……


 …うん。
私のクラスメイトの矢口くん。
彼とは、下校途中。──以前からゲームセンターから逃げ出るのを度々目撃してたけども、初めて会話したのはあのとき。
委員長として矢口くんの反省文を取りに行ったあの時が最初だった。




……
 『…そんなのどうでもいいし。私的には早く居残り終わらせてほしいんだけどォ』


 ──…ういうい……。悪ぃ。
……


「恋は突然に…」とか、「目を合わせたその日から…」とか色々初恋の謳い文句はあるけれども、私は別に最初から矢口くんに想いを馳せていたわけじゃなかった。
……正直、ファーストコンタクトでの印象は『問題児』って思っちゃったし。
だって、ゲームセンターなんて不良の溜まり場に行き来しててさ。
それで授業中もいつもボヤ~~ってやる気なさげで、先生から怒られるのがお馴染みの男子だったんだから。
本来なら好きになる対象じゃなかったかもしれない。

だけど、『例え遊びでも極めれば人を感動させられる』…ってことなのかな。
ゲームに夢中で、周囲からばかにされようとも我が道を往く矢口くんをずっと見ていくうちに。
なんだか……、興味が湧くようになってきて。


……
 ──修学旅行…。行き先は京都……。目的地に着くまでの車内は実に退屈この上ねぇーーぜー………。

 ────おいハルオ…。とか言ってどうせ携帯ゲーム機持ってきてんだろ? あの、PCナンダカって。

 ──…あー?? バカいうんじゃねーよ。せっかくの修学旅行だぞ?



 『…………』



 ──…携帯ゲームは持ってきてないがPCエンジン本体は持参したぜ?

 ジャラッ


 ────ハァ…?! うおっ、マジ!!?

 ──桃太郎電鉄にボンバーマン……! パーティーゲームを泊まり先、みんなでやるのが夢だったんだ!! ひっひひい!!

 ────…お前なぁ~………。


 『…やば……。修学旅行くらいゲームから離れればいいのに』

 ────そうだ…! 日高もっと言ってやれ!!
……


ひょんなことから、初めて矢口くんとゲームをした時。
なんだか心のビートが弾けるくらいに高まって……。



……
 ──…おい、日高。


 『…なに。矢口くん』


 ──電車…行っちまったなぁ~………。


 『…うん。修学旅行初日で途中下車して……。みんなと離れ離れだね…』


 ──…ふわぁ~あ~~~ぁ……



 『──矢口くんのせいでねッ!! 呑気にあくびしないでよ!!! 私まで巻き添えじゃん?! どうすればいいの!!!』

 ──まぁまぁ日高。落ち着け。

 『落ち着けるわけないでしょ!? …もうっ、最悪~~~~~………っ』


 ──だーから落ち着けっつ~の。



 ──まっ、過ぎたことは仕方ない。ダラダラそこの駄菓子屋でゲームしながら落ち着こうぜ。な?


 『…~~~……っ』

……



……

 『何これぇ~……。気持ち悪いゲーム……』

 ──おい名作『R-TYTE』をキモがるんじゃないぞ?! やれば分かるがあの圧倒的ヌルヌルっぷりはたまらないんだからな!?


 『…ヌルヌル……』

 ──あっ!! も、もちろんヌルヌル動くって意味だぞ!? 勘違いすんなよ!!

 ──…まぁー、普段ゲームなんてしないお前にはちと早い難易度よ。R-TYPEは一旦置いとけ。

 『…別に気になってないんだけど』


 ──とりあえずこいつで対戦すっかぁ。

 『……なにこれ』

 ──あ~? 大丈夫だ。俺が操作方法教えてやっから心配すんなよー。

 『いや私やるとは一言も言ってないんだけど~…』

 ──まぁ、まあまあまあ! いいからやろうぜ! な?




 ──『サムライスピリッツ』を…よっ!!


……

→→→[1 Coin ♡]

そして、だんだん…と。
ゲームも、矢口くんも好きになってきてて……。




……

 ガチャガチャ…

 ──な?! 面白いだろ!? ネオジオはすげーだろ!!?


  ガチャガチャ……

 『…………まぁー。うん……』

……


……気がついたら、ドはまりにのめり込んでて。




……

 ←→↑↓←←→→↘↓+AB

 (六連つばめ返し────ッ!!!)

 ドドドドドドドッ

  「ぐわぁぁぁぁ……ぐわぁぁぁぁぁ……………」


 ──…がっ。ひ、日高…………。お前………

 『…へっ、へへへ~……』



 ──なに知らん間にコマンド入力上手くなってんだァァァアアアア!!!!!???


……

 中学三年生を迎える頃には自他ともに認めるくらい、ゲームが上手くなっちゃってた。
矢口くんをコテンパンなくらい打ち負かせた時のあの顔…。あの引きつりきった顔……。
今でも忘れられないくらいだ。


ほんとに……。
矢口くんのおかげで毎日が充実していた。
矢口くんは夢中になれる楽しさというのを私に教えてくれた。
真剣になれる興奮を教えてくれた。ゲームの世界の奥底深さを知らせてくれた。

彼とゲームを体感するあの1vs1の空間は、なによりもずっと心地よかった。

私の大好きな人────矢口くん。
時間が止まるボタンがあれば鬼連打するくらいに、ずっとずっとそばにいたかった。


だけど、
だけども………、

……


 ──ちくしょ~~っ…!! コンチクショー!!! 何故俺は勝てないんだぁあ……!!!

 『…ちょっと~、負けたくらいで大袈裟すぎでしょっ』

 ──いぃや大袈裟なんかじゃねぇ~……!! 女のお前には分からんだろなっ! この屈辱を……。

 『なにそれ~…』


 ──日高に苦戦するようじゃあ……俺は………、俺は………………、








 ──『大野』には一生勝てやしねえ………。




……

だけども、矢口くんの頭にはいつも──大野さんがいた。



……

 『大野…………………さん……?』

……


 転向してきたばかりの、誰もが目を奪われる完璧な女子。──それが大野さん。
小さい頃から習い事詰めという彼女は成績も良くて運動神経も抜群。天才このうえなく、まさに龍躍雲津、叡智うんぬんかんぬん……。
私なんか逆立ちしようが敵わなかった。
何よりもサラサラとした柑橘類の香り纏う長髪に、整いきった完璧な容姿。きれいな肌。
同性の私でも気を抜いたら取り込まれちゃうんじゃないか、ってくらいに、大野さんは美麗だった。

矢口くんはそんな大野さんのことを口癖のように毎回呟く。

「嗚呼、大野がぁ…………。」
「俺は大野を超えられねぇ……………。」…とか。


…矢口くんの性格上、彼は人間にほぼほぼ興味がないので、大野さんに恋愛感情とかそうゆうのは皆無なことは分かっている。そうと信じたい。
だから、二人が結ばれて幸せ…だなんてあり得ないとは分かりきっていた。
分かっていたんだけども。


………矢口くんはそれでも私のことなんか全然振り返ってくれなかった。
愛しの彼の眼には、大野さんしか映っていなかった。


ゲームが強くて太刀打ちできない──アーケードゲームの天才…大野さん…………しか。




……

 『うわぁ~……。なにこれまたゲームオーバー……。難しすぎ…』

 ──うへぇー! 日高お前下手すぎ。ははは~。

 『…ちょっと頭くるんだけど…!』

 ──この程度のゲームに苦戦するようじゃまだまだお前はぺーぺーだぜ。いいか? こんなのよりも難しいゲームは山程あんだからな!! やれ『原始島』だの、やれ『最後の忍道』だの、『アーガス』だの…………、

……


…それと、ドルアーガの塔とかグラディウスⅲとか妖怪道中記とかランボーとかパロディウス…とか。
かつて矢口くんはほんと山のように高難易度ゲームを列挙してくれた。
あっ。あと、『カイザーナックル』の…特に『ジェネナル』ってボスとか。


~…

 [KAISER KNUCKLE]


 [ROUND ONE……]


 [vs GENERAL──FIGHT!!]


 「クックック。遂にここまで昇ってきたか」

 「女性の身で戦いとは、感心しませんな。近頃の女性はやんちゃで困る」

~…


そんな、凶悪ゲーマー殺しの名作たち…。
矢口くんの口から呼名されるアーケードゲームたち……。
────後々プレイしてみて分かったけど、そんなのよりも矢口くんの取り扱いのほうが何倍も難しかった……っ!


~…


 「もっと頑張らないとこの私を倒すことは出来な──…、」


 『そんなの…知るかぁ────ッ!!!!』

 BOW!!!
 (→+強攻撃────『つかみ投げ』!!)


 「ぎっ!!? ぐわぁぁぁあああぁぁぁぁぁ………」


~…


…ほんとに、矢口くんはいつも気ままで…掴みどころなんかまるでなくて……。
どうやったら私に夢中にさせることができるのか攻略法が分からない…。
最強の『壁』だ。
あいつは……、『バキュラ』そのものだった。


だから、私は。




何度も、何度も、

格ゲーを練習して………。



……

 ガチャ、ガチャガチャガチャ…

 「【登りつばめ返し】…ッ」「【ツバメ六連】…ッ」


 『………………っ』


……


何度も、何度も、

強くなって……………。



……


 ガチャガチャガチャガチャ、バンバン

 「【チェーンコンボ】…!!」「【エスペシャルジェノサイドバルカン】……!!!」


 『………………っっ』


……


ゲームしか頭にない矢口くんが、眼焼き付けるような圧倒的なプレイヤーになりたくて……………。

大野さんを超えるような強さになれば、やっと彼も振り向いてくれると考えて………っ。



……

 ZUBAAAAAAANNNN……


 ──KO



 『………………………』



……


────矢口くんの為だけに。絶対。
私はこの青春を熱く、熱く、費やしてきた……。
ずっと鏡の前、人知れず磨き上げてきた……。
絶対、大野さんを倒す為に────。


そんな矢口くんと、大野さんと…私は今、『バトル・ロワイアル』というNEW GAMEに身を投じられている。
ゲームスタートの合図はバス内にて首輪の一斉爆発から。
視界を覆い隠す暗転の幕……。
…高鳴る心臓。…刻まれるBPM。
そして、心のゲージが限界にまで達してくるこの感じ……。

私は『想い』で殺し合いの恐怖感を燃やしつつ、瞼をゆっくり開いていった……。






「…………って意気込んだつもりなのに……──何、ここォ~………?」


 辺りに広がる真っ暗な景色…。
それは今の時刻が深夜だから黒く染まっているというわけじゃない。
要するに、今私がいるこの場所は上空を遥か天元突破した先──宇宙だった。
で、大小さまざまな星が360度巡っていく中、私が地に足をつけている場所は……なんていうか。
モゾモゾと蠢き所々触覚の生えている…赤や緑のグロテスクな地面。…というか生物? よくわかんないけど…。
その地面のフジツボみたいなとこから湧き出てくる虫みたいな生き物たち。
なんとも言えない色合いのムカデとかサソリみたいなその生物たちが体に絡まりついたかと思いきや、どこかへと自由に動き消えていく。き、気持ち悪い……………。


前方からチョロQサイズのちっちゃな戦闘機が飛んでくる……。


「…うわぁ……。…はぁあ~ーー……………」


まぁ、…要するに私は今『夢の中』にいるって感じだ。
それも、なんかの気持ち悪いシューティングゲームの…夢……。
…あはは、よくあるよねー…。目覚めたと思ったらまだ夢だったってやつ。

矢口くんと話すようになってから、何だかこんなゲームの夢ばかり見るこのごろ。
正直こんなヘンテコドリームを見るのは慣れきった感じだけど、それはともかく早く目覚めなきゃと私は頭で一生懸命念じた。
覚めろ~、覚めてぇ~…って。
はまぐりみたいに閉じきった瞼をこじ開けようと、努力する。
…もうなんなのー…………。


だなんて、そんなとき……──。



「ついに登場と来たなボスステージ!! これまで散っていった残機は三つ……、この借り返してもらうぜ!!」



「…えっ?!」



──矢口くんの声が聞こえた。
…えっ、どこから?
えっ、えっ? 現実世界でスリープ中の私に矢口くんが話しかけた感じ??
とか、色々考えながら辺りを見渡した先…。


「喰らえっ!! ドブケラトプスめっ!!!」


 ビジュンッ──────────


「んきゃっ!!!!」


目の前のちっちゃな戦闘機から…レーザーが一直線に放たれてきた!!
あまりに唐突で、そしてあまりに鋭く伸びのあるレーザービーム…。
当然かわせることなんかできず、胸に直撃しちゃって。

…………何故かセーラー服だけ弾け散り、胸が大きく露わになった。



「────……って、はぁあっ!!?」



被弾して散り散りに浮かぶ制服のかけらたち…。
無重力空間の影響からか、無駄にスローで揺れ動く胸が煩わしい……。
慌てて両腕で胸部の防備にかかる私だったんだけども。
──戦闘機の狙いは遥か下だった。



 ビジュンッ──────────


「うわっ!!?? …イ、イヤアア!!!!」




「な、なんな……──って!!!? いや、…いやっ!!♡」



またしても宇宙空間を浮遊し始めた制服の欠片……。
──ていうかスカート…!!
レーザーを下半身にもろに浴び、見事に大破してしまった私の露わなスカート…。
幸いにも全部焼け飛んだわけではないけれども2/3壊滅状態というか。そのせいで太ももがスースー空気を通して、内股にしないと下着が見えそうなくらいに破れ果てて──……、

って、なんなのそれっ!!?
なんでこんな都合よく服だけが破れていくの!?
ていうかそもそも何な訳!? この夢!??
なんて夢見てるの私は?!!


「ちっ……!! ダメージあまり食らわず……かっ」


「はぁ?!」



戦闘機から声がした。



「かくなる上は…──仕方ねぇ!!」


「仕方ない…じゃないでしょっ!! ふざけないでよ!!? ほんとなんなのこれぇ~!!!!!」



…すけべ戦闘機からのその声。
ノイズ混じりではあったけど、搭乗者の顔がはっきりと思い浮かぶ。
────間違いなく矢口くんだった。


戦闘機はゆっくり…ちょっとずつ後退りをして……、


「すべてはミッションクリアーの為だぜっ……!!!」

「は? いや、は?? はぁ??? ちょっとだめだからね!?? なにしてんの矢口くん!!??」


アクセル全開にパワーを溜めだすと………、


「いくぜっ!!!!」

「いやいかないでよ!!! 絶対イかないで!!!! ちょっと矢口く──…、」



「あっ!!!!」



チョロQを離したように全速力で私に特攻。

──私の下着深部へと…。

深く……深くっ……、潜り込んで……ぇ……。




「…んんっ!?!! だ、だめっ!! だめぁあああ~~~~──────────っ!!!!!♡」


 ぱうっ!!!



「やんっ♡♡♡!!!」


 POW!!と爆散して行った……………。






…………っ。

…このアーケードゲームの夢……………。
まさかの……脱衣ゲーム…………………………っ!?


……



「んんっ……! ぁ、ぁあ……────ハッ!!!! な、なんだこの夢!!??」



 ……変な夢で場を汚してゴメン。
今度こそ正真正銘現実世界に戻った、私………。
辺りは閑散としていて、閉店した店ばかりで、そして真っ暗で…。目を覚ました先、私は横町の真ん中で堂々と寝ていたことに気づかされた。
寝ぼけ眼を擦ると、眼前には唯一灯りが照りつける二十四時間営業の薬局が。

あと、あぐら座りをしてこちらを覗き込む一人の参加者の存在も…目の前にいた。


「よっ!! 日高っち久しぶりー!! なーんか誇張したってくらいうなされてたけどダイジョブー???」

「…………え?」

「あっ! ボクはバトロワにはまーったく乗ってないからそこんとこは安心してねー!! 殺し合いとは恐ろしや~だなんて言っちゃったりして!! (あっ、今の韻踏みR-指定さん使っていいよー!! )…それはともかく、ほーーんとそれくらい全く乗り気じゃないからー! ──…唯一乗るとしたら、日高っちの恋愛話とインテグラくらい…かな? あはははーー~~」



アホ毛が二本立ったショートカットの女子生徒が。
私の目の前に…。



「…えっ誰? なんで私の名前知ってるの…??」

「えーー?? ひどいなぁ日高っち~~~! ボクは──長名なじみ! 幼稚園のころ一緒だったじゃんかー!! 忘れちゃったかなぁ~!!」

「……は??? 長名……──…、」



「──あっ!!」

…と。
十年近く前、砂浜で一緒に遊んでいたあの子の記憶を思い出す。

あぁー………。
なじみくん。あのなじみくん…かぁー……。懐かしー………。
確か幼稚園全員と幼馴染だとか色々自称してて、友達もかなり多かったヘンな子。
こんなとこで会うなんてどういう運命なの……、とレベル2くらいの懐かしさで身が染みてきちゃった。
うわぁほんと懐かし…。


「もうー! 日高っちは相変わらずなんだからなぁ~!! まっ、仕方ないか! とりあえずここで会ったのも縁だし一緒に動こうZEーー!!! YO!!!」

「……うん。そうする」




…真夏の夜の夢、破れて幼馴染あり。
熱帯夜ということもあり『火照る』体から滲む汗を拭って、私は重い腰を上げていった。
これが私のGame Start──。

ってなにこのばかみたいな幕の上がり方~~~………。













「……あれ?? なじみ…くん…なんでスカートなんか履いてるの?」

「なーに言ってんだい日高っち~~! ボクは男じゃないんだからそりゃこの格好だろー!! もう、困るなぁ~~」

「…えっ!!?? あれ?? ……そうだっけ…………」



【1日目/F8/渋谷横丁/AM.00:00】
【日高小春@HI SCORE GIRL】
【状態】健康
【装備】???
【道具】???
【思考】基本:【静観】
1:なじみ……ちゃん…? と行動。
2:矢口くん、大野さんと合流したい。

【長名なじみ@古見さんは、コミュ症です。】
【状態】健康
【装備】???
【道具】???
【思考】基本:【静観】
1:日高っちはDear my Friendだよ~~~~~ん^^

※なじみは参加者のほとんどと『幼馴染』の設定になっています。


前回 キャラ 次回
036:『らぁめん再遊記 第一話~ツルツルさん登場!~ 038:『魔神 が 生まれた日!
日高 058:『sora tob horse
なじみ 058:『sora tob horse
最終更新:2025年03月31日 21:28