『sora tob horse』



[登場人物]  センシ長名なじみ日高小春






 わしの名はイズガンダの…センシ。
小さな坑夫団の一員だった。

鉱夫と言っても鉱石が目当てだった訳では無い。
戦争前の遺跡を探し、一攫千金を夢見ていた。

とはいえ、主な収穫は鉱石で、稀に歯車やレンズなどの遺物が見つかれば上々だったが、あの日────。
我々は随分と大きな物を掘り当てた。
黄金に輝く古代の城………


 そう、『迷宮』じゃった。



……

「………なじみく…ちゃん、スマホでずっと何見てるの? …一時間もスマホと睨めっ子してるけどさぁ」

「……『ボクは今渋谷肉横丁にいるよ!! 会えたら大歓迎ー!! 笑』…っと!!(ポチポチ) ──ん? 日高っち何か喋ったかい?」

「…いや、別に何だって良いんだけども………」


「あ〜メンゴメンゴ!! ほらっ、ボクってさぁ幼馴染ワールドレコーダーな訳だろう? だから、こうして『この渋谷にもいる幼馴染』達にもLINEしてるわけなんだよ!!──」

「──この多さたるや〜…もう長丁場っ!! 重労働この上なしだよ〜日高っちぃ〜〜〜」

「…(出た。なじみくん十八番の虚言癖……。)渋谷にいる幼馴染=参加者、ね〜………。…バカみたい…」

「おいおい〜ちょっと日高っち〜〜。ざっと数えただけでもボクの友達が五十人もここにいるんだよ〜? ホントだってさぁ〜!!」

「………………」

……


 闇の中で両目を爛々と輝かせ、吸い寄せられるように奥へ…奥へ…と進んでいく仲間たち。
野心家が多かったわしの仲間たちとはいえ、あの時の様子はかなり異常じゃった。
だが、そんな彼等の顔も…。──例え、おぞましく異様な目つきだったとはいえ、今ではもう見ることはない。
深い迷宮内に取り込まれたわしら坑夫団は、気が付けば食糧が底をつき。
…そして、食糧の後を追うように、一人…そしてまた一人。
胴体に『深い裂傷』を負って、故郷へと永遠に去っていった……。

 今、成長したわしならば、きっと仲間の死に嘆き果て、
きっと闘争本能と生存術を兼ねて、殺した相手に復讐を挑み、
そしてきっと、仲間を意味もなく殺戮した──忌々しき魔物『グリフィン』に斧を向けたことじゃろう。

じゃが、あの時のわしはまだ若かった。
鉱夫の中でも最年少。
成長していたとはいえ、仲間内からも子供扱いのわしだった。
それ故に、どれだけ仲間たちが息絶えようとも、何か不可解なことがあろうとも、心を支配した感情は常に──『恐怖』一色。
とにかく死への恐怖、自分の事だけしか考えれんかった。


そして、若かったが故に、『グリフィン』という魔物に関して、わしの心に今も巣食うほどのトラウマを植え付けられた────。



……

「──……じゃあ、この、『矢口春雄』……って男子も知ってるわけ?」

「おっ!! 数ある参加者名簿の中から彼を挙げるとは…日高っち渋いチョイスだね〜ーっ!!」

「…………何それ。………別に、だけど…」

「矢口ハルオ君。彼とは幼稚園からの幼馴染さ! 矢口君はアーケードゲームのマニアでね〜〜。マニア過ぎてスト2じゃ全く敵わなかったよボク〜〜! …彼、ハメ技ばっか使うからねぇ………」

「…………!!!──」


「──え、…じゃあ…さ。…その矢口くん…って、…す、好きなモノとかあったりするのかな?」

「え? 好きなもの………? 普通に超絶倫人ベラボーマンとかディグダグとかだっけな」

「…あ、いや!! そうじゃなくてぇ〜〜!!」

「?」


「……矢口くんの…………、好きな…、…女の子のタイプとか……。どんな子に惚れてるのかな〜とか……。そういう感じを聞きたいんだけど………………──」

「──…なに聞いてんだろ、私……。はははっ……。分かるわけ無いよね…………。バカみたい……」

「……………。フッフフ………!! おい〜日高っち……。このボクの…wikipediaにも勝る情報網の広さを、あまり舐め取ったらいかんぜよぉ〜〜〜?」

「………え!!」


「人には興味なさげな矢口くんとはいえ……ズバリッ!! ──…彼はショートカットの娘が好みで………、」

「…………えっ?」

「髪色は黒髪か……、いや、どちらかと言えばブロンドカラーの娘がタイプって言ってたかな………、」

「…………………!」

「あっ、あと大人しめな性格の娘がタイプでね。例えば、学校で委員会とかを卒無く熟してく真面目系な子がさ………、」

「…………………え、え………──」


「(────そ、それって…………………──…、)」




「あとは胸も比較的大きくて〜!! フルネームは『ひ』から始まって『る』で終わる六文字のぉ〜〜、『春』って漢字が入ってる子が好きって言ってたよ〜〜〜〜〜ん」


「………やっぱり。……呆れた──」


「──ちょっとなじみちゃんふざけないでよっ!! 本気で!!!」

「あれ? …ボクなりのサプライズなつもりだったのに〜……。心外だったかい〜?? メンゴって日高っち〜〜」

「………ぃっ!! …と、ともかく………!! 今私が質問したこと絶対口外しないでよねっ?!! 特に矢口って男子には!!!」

「ラジャー!! 理解・了解・妖怪道中記〜〜!!! あ、ちなみにだけど〜。この『白銀御行』君は目に隈がある努力家、野咲ちゃんは優しい綺麗な子。根元ちゃんはアニオタで、小日向君は楽天ファン、只野くんは普通すぎる男子だよ〜〜。フフフ…、恐れ入ったかい? ボクの情報網は〜!!」

「……私が知らないの良いことに絶対嘘言ってるでしょ?」

「おっ!! ピンポーン! 大当たり〜〜!! さーて、↑の中で一人、大嘘があります! …視聴者の皆さん、果たして分かるかな〜〜〜??」

「…誰に喋ってるのっ?!」

……


──食糧が完全に尽き、餓えで眠ることさえままならなくなった頃。

──生き残っていたのはわしを含め、ギリンとブリガンの三人のみ。

──特にブリガンは、遭難後一番役に立っていなかったわしを邪見に見ており、わしの些細な行動が原因で、あの時の彼は烈火の如く怒り出した。

──極限状態と言うこともあったろう。わしに対し面倒見の良かったギリンと、ブリガンとで激しい口論が発生し、二人はわしを置いて外へ。


──怒鳴り合う声が徐々に激しくなり、大きく争う物音と、悲鳴。

──彼らが何を口論していたか、その内容は分からない。

──ただ、……外から響く…血飛沫が飛び散る音に、わしは耳を塞いでただ縮こまって、涙と共に震えていた。



──暫くして、その喧騒は恐ろしいほどに静かになった。

──唐突なことじゃった。




 ガチャッ……


 『ギ、ギリンッ!? 一体何が……──…、』

 “じっとしてろッ!!”

 『っ!!!?』


 “…外は見ないほうがいい。…今しがた、グリフィンに襲われたんだ。──”

 “──グリフィンは俺が殺したが、ブリガンも即死した。──”

 “──………それより。グリフィンを食っちまおうか。…【アイツ】を捌いて煮込んでもすりゃ、何日かは生きられるだろう”


 “さ、食事としよう”

 『……………』


──その時のギリンの目は、今までの冗談好きだが冷静で、そして穏やかな目つきでは全く無く。

──彼の兜をよく見ると、【何か】鈍器で殴られたような凹みがあった。



 “ほれ、スープだ。──…いただきます”



 『…………──ごくりっ…』

──水で煮ただけのグリフィンスープは、獣臭と肉の硬さでそれは酷い味だったが、

──…わしは手が止まらなかった。

──夢中で咀嚼し、ゆっくりと長い時間をかけて飲み込んだ。

──…そんなわしとは対象的に、箸が止まったままボーッと放心していたのはギリン。

──小便をする、と言ってふらり出ていった彼は、



──二度と戻らなかった。




 …その後、残りの肉を食いつなぎながら、迷宮の規則性に気付いたわしは、放浪を続け。
オークに捕まりしばらくは捕虜として檻に閉じ込められた。
しかし、話してみると案外気のいい連中で、古代ドワーフ語や迷宮について講義をする代わりに、茸の見分け方や魔物のあしらい方を学んだ。
…こうしてわしは、地上へ出ることができたのだ。


────…ただ、


……

「にしても、いいなぁ〜日高っちは!! 大当たりじゃないか〜!」

「え、何が?」

「もう〜〜!! 武器の話さ〜支給武器! 方や日本刀で、方やただの黒い中華鍋って……。格差社会ぱないと思わないかい!」

「…そんなこと言われたって〜。私だって、この刀重すぎて使えないし…、というか使う機会訪れてほしくないし………──」

「──それになじみちゃんの鍋もさ。ほら、取説あるでしょ? 『材料を入れれば【召喚獣】を出せます』〜って。すごい武器じゃん?」

「ちょ〜〜〜っと〜〜! 冗談がキツイよ日高っち〜〜!! だってさ…召喚獣だよ?(笑) 全く馬鹿にして……。そんな非現実的なもの出せるわけ無いじゃないかぁ〜──」

「────とか言いつつ試しちゃうのがこのボクなんだけどなっ…………!! どれどれ……、髪の毛と適当な肉類を入れたら蓋をし、魔法陣を書いて、呪文〜〜と…」

「………………」

「…(ガチャガチャ)……よし! これで準備OK〜!! 残すとこはあと呪文のみ!! ──アブラカタブラ〜ヤサイマシマシ〜メンヌキデ〜〜〜〜………っ──」


「──ほいっ!!!」


 ──ポンッ…


「…わっ! え、嘘…。ほんとに成功したの?!」


 シュウゥゥゥ……


「…どうやらその様だね…!! タネも仕掛もない非現実…ここにありさっ!! さて、中を覗こうじゃないか日高っち!!」

「………う、うん…」

「どれどれ〜。────さぁ、闇の炎と共に、主の前へ出でよっ!!! ボクの召喚獣よっ!!!」

「………………っ」


「…………」


 パカッ………



『キョェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ──────ッッッ』



「「……………へっ?」」


……

ただ、気がかりだったのは、あの時飲んだ肉スープ。
本当にあれは『グリフィン』の肉だったのか………? ということだ。

なにか物を食べる度にスープの、あの味を思い出す。

どんな魔物の肉も、記憶の味からは程遠かった。



……


『キョェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ──────ッッッッッッ』


「ハァ、ハァハァ………!! ちょっ…、なじみちゃん!? 何…?! 何この『鳥の化物』はっ??!! 何で私達に襲いかかってくるの?!! ハァハァ…」

「ボ、ボクだって理解不能だよっ??!! ハァハァ…、うげぇっ……。しかも何かこの鳥と視界が重なって、具合悪いし…………」

「??? ど、どどどういう意味…?? ハァハァ……、ハァハァ…、と、とにかく早く逃げなきゃ!!!」



『キョェエエエエエエエエエエエエエエエ──────ッッッッ』



……


………わしはあの魔物がトラウマだ。


……



『キョエエエエエエエエエエエエエエエ──────ッッッッッッ』


 ──ッッッ、ズガンッッ


「…きゃっ?! ぃっ、ああぁぁあああああああああ!!!!!」

「ひ、日高っち!!! ハァハァ…、大丈夫かい!??」

「…………がぁ……………。うっ、うぅ…………………」



……


わしは真実を知るのがこれまで恐ろしかった。


……

「あ、あぁあ……………。なんてこったい……。使い魔の制御が効かないよ…っ!!! こ、このままじゃ………お陀仏…じゃあないか…………!! ゲホ、ハァハァ……」

「………………………な、なじみちゃ…………。逃…げ…………」


「……ひ、日高っち………。…クウッ、なんてモン支給すんだい…トネガワ大先生は……──」


「──ハァハァ……、このままじゃ本気でヤバい、ヤバすぎうわっ酔ってきた気持ち悪ぃうげえ…………オロロロ……………」



「………………ガハァッ………………。ハァ………ハァ………………」



……


髭をたくさん蓄え、そして幾多の知識を取り込み、人生経験が豊富になった今でも。

あの硬い肉の弾力が、
あの酷い匂いの油が、
そして、あんまりな出来ではあるが……、これまでの食事で一番『美味かった』あの味が……………、

年老いたわしを雁字搦めにし、いつまでも『恐怖』に抱かれ続けている。

……


『キョエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ──────ッッッ』



「……………ハァハァ…………………。ハァハァ………ど、どうしたら…──…、」


「──どうしたら…………、召喚獣のっ……コントロールを……………………」




……


だから、わしはこれまでグリフィンと出会すのが何よりも恐怖じゃった。


……





 そう。
 何よりも………。








 ───────ガキンッ──


「………………………え?」






 そして、だからこそ──。
──わしはあの忌々しきトネガワとやら主催者に、感謝をしているわけだ。





 ギギギギ、ギギッ………


『…ッ、キィィィィ……キエェエエエエッ………………』


「…相変わらずじゃな、グリフィン。……と言ってもお前はわしを知らんだろう。…いや、そもそもわしとてお前の生身を見るのは初めてだから…………。──……フッ、まぁいい」

「………え?」



 斧から伝わる、かのグリフィンの力強い蹄……………。
ギリンに、ブリガン………。
…五人の仲間たちを引き裂き、頭に大穴を開けたそのパワーたるや、今までのどんな魔物と比べ物にならぬくらい尋常なまでだった。
黒い蹄は斧を殴り潰そうとばかりに揺れ動かし、…斧が、──そしてわしの腕が、震えて震えて仕方なかった。

わしの眼の前には、今まさに『恐怖』が争乱挑んでおるのだ。


──襲われ、慄いている女子二人を守る為に、と。




「……確か、出会いもこんな感じだった筈…。あの時、魔物《スライム》に襲われているお前らを見て、わしは助けた。────………そうじゃよな、ライオスよ……………」

「…………え、……え? お、おじさん…。誰……………?」



 ギギギギギッ


「娘よ、一つ問おう。何故、わし等人間は『恐怖』を感じると思うか?」

「……え?? そ、そんな哲学チックなこと聞かれてもボクは…──…、」

「答えは『食べる為』じゃ」

「ふぇ??」


 ギギッ、ギギギ…………………


「人間は感情を持つ唯一の生命体。今日一日を、そしてこれから将来、平穏に暮らしていきたいが故に、平穏の支障となる『恐怖』を避けて生きてゆく」

「……………………?」

「それは『食』も一緒じゃ。生きる為には食わねばならん。食わねば、…死のみが待つ。」

「……………」

「なんら接点のないと思われる『食』と『恐怖』は、実はイコールで結ばれる関係性だったのだ」

「…………………──」



 ギギッ…ギギイイイイイィイイッ


『キョェェェェェッエエエエエ………………ッッッ』


「──…え、それって違うくない? とボクは思うんだけど……」

「…フッ。なに。考え方の違いじゃ。つまり、わしが言いたいことはだ…………」

「……………つ、つまり…?」



『…キョオオオオオ…………ッ、…ェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ──────ッッッ』


 ──ガキンッ──────





──────『恐怖』は、ただ味わうのみ…ッ。




斧を力一杯振り絞ったわしは────…その勢いのままグリフィンの両脚を斬り断つッ────!!!


 スパンッ────

『ギュウッッ…、キアアアアッ─────ッッッ』


「…えっ?!」



怯んだグリフィンに構わずして、続け様高く飛びかかり────…翼を一振りで切り落とすッ────!!!


 シュンッ────
  ─────ドサッ……

『ッッッァアアアアアアアアアアアアア────────』


「ちょ、ちょっと……!! お、おじさんっ!!!」




紙吹雪のように舞い散る奴の羽と、響く雄叫び。
脚、そして翼をも失い、もはや赤子同然の戦闘力と化したグリフィンは、成す術なくままに地面へ強く追堕された。


 ドンッ──────

『ギィ……キョギエェェエ…………………ッッッ』


「あ、あっ………!! しょ、召喚獣が……!!」



 ──…正直なところわし自身、今、呆気には取られておる。
気が遠くなるような長い年月、あれだけわしにトラウマを焼き付け、…そしてあれだけの仲間達を葬り去ったグリフィンを、こうも簡単に捌けるだなんて────とな。


仮説として、もしや今闘っているこやつはグリフィンに酷似した亜種なのかもしれない。

…いいや、宿命ともいえる『恐怖』を前にして、アドレナリンという実力以上のパワーが漲っていたのかもしれない。


────……もしくは、坑夫団の仲間達が、わしに力をくれているから……とか、か。


……………フッ。
何も根拠のない考えは、よすべきか。


「…あぁ、そうじゃった。礼を言う事を忘れておったな、主催者よ」

「…………え??」


四股を捌かれてもなおこちらに向かって、身震いのする睨みと、鋭い嘴を突きつけるグリフィン。
奴の背中上にて、わしは最後の一撃を叩きつけることで、──一つ、ピリオドが打たれる。


「…グリフィン、奴の存在は、わしの人生そのものと言っても過言ではない」


「え、ちょ!! ちょっとおじさん…!!」


「…────その人生と決着を付ける場を、曲がりなりにも設けてくれたのだから。…唯一感謝はしておくぞ、主催者……!」


「…ね、ねえおじさんっ………!!!」




────この礼は、あとでタップリと返させてもらうから、覚悟を決めておくのじゃな。
主催者………。



『キョエ…ァァァ…ァァァアアアア────…、』


 ────ザシュンッ



グリフィンの首に振り下ろした、風を斬ろうとの斧の一撃。


…別に、わしは奴を長年食いたくて食いたくて愛おしく感じておった魔物とは思っていない。




ただ、この狩りを成した『一瞬』は、尋常なまでにスローに感じて、周囲の雑多音も全く聞こえず、




これまでの回想が、まるで走馬灯のようにわしの周りを流れ去っていった。





 ─────ドサリ…………






「………………あぁ…………」







「あぁ…………──」

「──じゃないよぉ〜〜っ!!! お、おじさんこれボクの召喚獣だよっ??! ボクの唯一の武器なんだよ!!?? …助けてくれた点はお礼言わなきゃだけどもぉ〜〜〜…」

「……む??」


「ボクは武器無しでこれからどうすりゃいいのさぁああああああ─────────────────っ!!!!!!!!!!!??????」




ああああ……、


ぁぁぁぁぁ、ぁぁぁぁぁ………………。







「………。……うむ──」


「──そうとなれば、まずは食事だな。自己紹介は後からじゃ。支度をするぞ」


「「なにが『そうとなれば〜』…だっ!!!!(…あ、日高っち生きてたんだっ?!)」」




………
……

 さ〜〜〜て!!
ちょいと、これまでを振り返りタイムだよ!!


ボク達を…うん、まぁ、助けてくれたこのスーパーマンは、イズガンダのセンシ。
小さな坑夫団の一員だったそうだ!!

鉱夫と言っても鉱石が目当てだった訳では無いらしいんだけど……、
戦争前の遺跡を探し、一攫千金を夢見ていたそうなんだよ……!

とはいえ、主な収穫は鉱石で、稀に歯車やレンズなどの遺物が見つかれば上々だったが、あの日────。
我々は随分と大きな物を掘り当てた。
黄金に輝く古代の城………


 そう、『迷宮』だったのさ……。



「いやなじみちゃん!! それさっき聞いたから………」

「あっ、失礼失礼〜。でもボクもこうやって語りとかやってみたいモンでさぁ〜〜〜。気持ちは分かるだろう〜? 日高っち〜」

「……全然分かんないし………。…ていうかさ……(モグモグ…」

「……うん。ボクが代わりに君の気持ちを語るよ…………(モグモグ」

「…………」



……。


すっごい、…不味くない……………?



…『これ』↓↓………………。




……

【ヒポグリフのスープ】
  • ヒポグリフのもも肉────一塊
  • 水────────────適量
  • 塩────────────適量

1:塩をもも肉に擦り込み、よく揉む。
2:沸騰した鍋に肉を入れ煮込む。
3:灰汁を取りつつ、暫く煮込み、肉に火が通ったら完成。

[エネルギー]
[タンパク質]★★★
[脂   質]
[炭水化物 ]
[カルシウム]
[鉄   分]★★★★★★
[ビタミンA]
[ビタミンB2]★
[ビタミンC]

……

「…………(パクパク……」

「………お世辞にも食べ進めたい料理とはいえないよね……………」

「………う〜ん。……食べ手の技術が試される味ってとこだね〜〜〜〜…。……ボク、正直ギブアップ!!! イチ抜け!!」

「あっ、ズルいっ!! 『そもそもの話、なんで私たちセンシさんと食を共にしてるか〜』、って言おうとしたとこなのに!!!」


豚肉を食べてるのか、鶏肉を食べてるのか分からない……ただ、ケモノ臭さだけは確実に口いっぱい広がって……、ヤバすぎるスープだったよ。
…まぁボクとしては、あの鳥なのか馬なのか分からない召喚獣に蹴られて無事でいる日高っちの方が気になるトコだけども。


 …………まっ。
それはともかく、だね。




「…うっ、うぅ…………。うっ………」



「…………」

「…………センシさん…」

「センシ………。…泣くほど美味いかい」



「……いや違う。違うんだっ……。酷い臭いに硬い肉…。あの時とまんま同じな料理じゃよ…………──」


「──ただ、ずっとずっと……………。この味を飲みたかった……………──」


「──…ありがとう…………。みんな…。………ありがとう………………。うっ…………」




「……センシさん……………!」

「…ははは。涙ってさ、塩っぱいよね。──……このスープに下手な味付けはいらない。その思い出の結晶粒が、…一番味を引き立たせてくれるのさ………」

「……。…………──」



「──…なじみちゃん。その謎ポエムは余計……」

「……某サンデー的名探偵ならこうオシャレに語るってことだよ。……フッ…………」



 …涙ながらに器をかきこむセンシさん。
肉を捌いてる途中、ボクが召喚(=襲った)コイツがグリフィン? ではなく、『ヒポグリフ』…という動物に、彼は気付いたらしく……。
そこから、う〜〜〜〜ん…………。まぁいろいろあって今に至るわけだけども…!

とにかく彼の語る過去を聞けば、もう涙無しには食卓を囲めないよねっ………。


一つの蟠りが溶け消えた、この食事。

ボクら日高タッグは、新たな仲間を受け入れつつ、今はただアツアツの料理を食し続けていったのさ……………………。




「………なじみちゃん残してるけどね…」

「まぁボクらは女の子だから、こんな時間にモリモリ食べるのもまずいだろう!! 二重の意味で!!」

「……まぁ、私もギブだけどさ……………」


「………。…ところで、なじみとやら。…すまぬな」

「え? なんだいセンシ〜!」
「………(なじみちゃん、呼び捨てにした……!? やば〜………)」

「お前の、その召喚獣とやら…………。事情を知らぬとはいえ斬ってしまったものでな……………。わしは償いたい思いではち切れそうだ」

「いやいや、いいんだよ〜!! センシ〜〜!! ボクにはこうしているじゃないか! 君という、頼もしい……武器が!!」
「武器呼ばわりっ?!」

「…いや、よしてくれ。わしの身勝手な判断であることは事情。……そこでお詫びと言ったらなんなのじゃが………」


「え??」



箸を置いて、センシがリュックサックから取り出したのは…なんとビックリ!!
────『レーザー銃』だったのさ!!

…ほうほう、なるほどと〜!!

つまり、センシはボクの武器を肉にしてしまったお詫びとして、自分の支給武器をくれたわけなんだね………!!
貰っておくのもまた義理。
ボクは快く受け取ったよ!


「…あっ。そ、その銃………」

「ん? どしたんだい〜?? 日高っち」

「…え、それスペースガンの…………──」


「──いや、やっぱり何でもないや………。とにかく良かったね、なじみちゃん」

「……? う、うんっ!!」



…な〜んか、日高っちの反応が気になるとこではあるけど………まぁとにかく!!


 かくして、銃使い&ドワーフ&……小春…のパーティが、ルイーダの酒場を経由せずして自然発生した現状であるが……、
パーティには必然的に立ちはだかる相手──『敵NPC』が出現するもの…………。
できることなら、その敵NPCとは出くわさずしてグッドエンドを迎えたいゆるゲーマーなボクだが、あいにく日高っちとセンシは色んな意味でガチガチなゲーマー……。

嗚呼、この運命よ………。

果たして、ボクら三人旅の行く末はどうなるものやら……。
バトル・ロワイヤルという空前絶後のダメRPGにて、「しんでしまうとは なさけない!」のメッセージが浮かばれぬことを、今はただ願うまでだ。




「………満足した?」

「────フフッ、この程度で満足するボクじゃないよ日高っち!!──」


「──そしてセンシ!! さあ行くよ!! Partyの始まりさ!!」


「…うむっ」

「………はぁ〜あ…………」





 バトル・ロワイヤル………。


  嗚呼、よもやよもや…。


   バトル・ロワイヤル………………。




【1日目/C5/渋●肉横丁/AM.03:56】
【センシ@ダンジョン飯】
【状態】健康
【装備】斧、料理セット一式
【道具】鍋、干しスライム@ダンジョン飯
【思考】基本:【対主催】
1:殺し合いから脱出。主催者を倒す。
2:あれはヒポグリフの肉だったのか…………。うぅ、みんな…。
3:日高・なじみとパーティを組む。
4:メガネの若者(丑嶋)が心配。

【長名なじみ@古見さんは、コミュ症です。】
【状態】健康
【装備】レーザー銃@ハイスコアガール(スペースガン)
【道具】???
【思考】基本:【静観】
1:センシ&日高っち&ボク!! 君のためのPartyさ~~♪^^
2:参加者の幼馴染たちと会う!! 僕はみんなの『幼馴染』だからね
3:にしてもあのスープだけは……………無理^^;。

【日高小春@HI SCORE GIRL】
【状態】健康
【装備】橘右京の居合刀@ハイスコアガール(サムライスピリッツ)
【道具】???
【思考】基本:【静観】
1:なじみちゃん、センシさんと行動。
2:矢口くん、大野さんと合流したい。
3:なんか私このパーティでツッコミポジションになってない~?!



前回 キャラ 次回
057:『古見様親衛隊活動報告内容書です。 059:『大好きが瞳はタダノくんの
015:『食うため。 センシ 067:『颯爽と走るトネガワくん
037:『Houkago ♡ Destruction なじみ 067:『颯爽と走るトネガワくん
037:『Houkago ♡ Destruction 日高 067:『颯爽と走るトネガワくん
最終更新:2025年06月25日 20:50