『ゲーム生還の糸口♂♀』
マンションの屋上でリコナがギャータラ騒ぎ立てて………、
それが原因でキリエとカナの二人に出くわして…………、
んで、屋上から適当な部屋へと下り、今の俺に至る………………。
…まあ、聞け。
家族、チーム、冒険パーティ、職場仲間………、なんだっていい。
世の中、『団体』にいる以上必ず何かしらの『役割』というものが全員に与えられる。
例えば俺の普段のパーティだと、センシは調理兼戦闘担当、マルシルは魔法・治癒全般担当、ライオスは戦闘。
──そして俺はトラップ等解除担当と。
それぞれの得意分野から振り当てられたアイデンティティ──役割が必ずあった。
足手まとい、何もしない役立たずはいちゃあいけない。つか、そいつにも何かしら役割を与えるのが団体に属するということ。
全員が各々の役目を理解し、ピンチのときは行動して皆を助けるからこそ、団体【パーティ】はより固く強硬になっていくわけだ。
………。
……然るにだ…、
『本場切絵』ッ!!!──────役割→ただのガキンチョA!!!!
「じゃ、じゃあ夏菜師匠なにか飲み物持ってきますね〜〜!!」
「はーーい」
『折口夏菜』ッ!!!──────役割→ただのガキンチョB!!!!
「………。ねえ璃瑚奈おねいちゃん〜。切絵おねいちゃんが描いたこの絵本、読みきかせてよ!」
「…あーー??」
そして『和田璃瑚奈』…ッ!!!!──────役割→ただのガキC!!!(コイツが断トツに役立たず!!!)
「は? やだよ。んな面倒臭いことするかよー……。大体、お前もう小学生だろーが。一人で字くらい読めんだろ。読み聞かせとか幼稚園で卒業モンだぜ普通〜」
「なにそれ!? ねえお願いだからさあ」
「あーあーうるせーなぁ…。だったらその絵本が読んでられないくらい血塗れにグロテスクで、聞いてられないくらいレイプ描写満載で、暗いくらいダークな胸糞露悪趣味本でも最後まで聞けよな? 聞きたくなくても聞く耳は立てて聞いて聴いて効きまくれよなっ?!」
「…? れいぷ……? …そんなタッチの絵本じゃないじゃん。てゆうか、どんな本であっても璃瑚奈おねいちゃん読み聞かせる気ないでしょ!」
「おっ理解力いいな。こりゃ神童だぜ。…というわけで私はやる気が出ない。じゃ、」
「…〜〜〜〜っ」
で、俺─────役割→罠解除担当……。
…俺が言いたいこと。
もう、分かるよな?
……悪いが声を大にして言わせてもらうぜ。
「って何だこのお荷物だらけのパーティッ──────?!!!! どいつもこいつも…俺含めて戦闘で全く役に立たないひ弱な役立たずばかり───────────!!!!!!」
「わっ!!! び、びっくりした〜…!!」 「なんだよチルチャックうるせーぞ!!」
「こんなので……──」
「──こんな役立たず大集合パーティでバトル・ロワイヤルが生き残れるかぁあああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼AAAAAAAA!!!!!!!!!!!!」
嗚呼あぁ……。
ah〜ӒӔ〜〜〜ぁぁぁぁ…………あぁ…………………。
ぁぁぁ………………。
「…………………ハァ、ハァ…………」
「あっ、チルチャックくん絶叫もう終わり?」
「……へッ。ガキは元気だな。その元気ハツラツぶりじゃあオロナミンC要らずで良いもんだぜ、風の子チルチャック!!」
「だーから俺はガキじゃねーつうの!!! ハーフフット!!! 何回言えやあ分かるんだよ!」
「…………またでた」 「ハーフフット…(笑)」
「……ちっ!!」
はぁ……………。
はぁーああーぁぁぁぁぁあっ、ぁぁぁああ……………………。
んだよこれ……。マジなんなの、これ…………。
俺は神が大嫌いだ…。故に無神論者だよ……。
神ってヤツはいつまで俺をボロ雑巾のように扱って、臭い牛乳を浴びせ続けるんだ…。
いつもいつも俺は不安しか無い運命ばかりだよ…………。
………言っとくがっ!! 本当にっ俺は子供じゃないからなっ……!
当たり前だが、この絶望最弱チルドレンの中じゃ俺が一番年上!! 一番オヤジなんだよっ!!
…
……
………
──え〜? でも切絵おねいちゃん達みんな同じような身長だから…みんな小学生にしか見えないよー!!
──ち、違いますよ師匠〜〜!! 私は十六!! 高校生です!!!
──えっマジ? じゃあ私とタメかよ切絵………。…んじゃ、お前は?
────あ? 俺? …こ、今年で二十九………。
──………。
──……。
──は、あはは〜〜……。う、うん! チルチャック君は大人びいてて、かっカッコイイですねー……!!
──はいはいチルチャックの面白いギャグ(笑)が聞けたことだし出ようぜー。
………
……
…
…………っ! ………。
と、ともかくっ………。
俺ァこいつらと違って成人な訳だが、それ故にこの軍団のお守り役──リーダーとして……。
率先して最前線に立たなきゃならない。
──バトるなんて専門外なこの俺がだよっ…!!
……クソぉ……………。
常日頃のライオスが実質リーダー係で、俺は戦闘を陰から見守るあの美しい構図が………。
今じゃあ涙ぐむほど恋しいよ……。
ほんとに………。クソがっ……………。
「…ハァ………。叫んだら喉乾いちまった…………。…行くか……」
「え? 台所に? 今切絵おねいちゃんがジュースもってくるってよ」
「んなガキの飲み物俺には合わねーよ……。酒だ、酒。どうせあんだろ………」
「…………ふふっ!」「ぷっ!!」
「チルチャックくんはおさけの味知っててオトナだねえ〜〜〜〜!!」
「苦かったら砂糖とミルクたっぷり入れてもいいからな〜〜〜〜〜!!!」
「うっせぇストレートだわいっ!!!!」
あーもうっ………!!
本当に…『クソだっ!!!』──だわ!!! (特にリコナの奴の減らず口!!)
成り行きで組むことになった雑魚パーティーとはいえ…………。
この中で唯一いつでも頼りになれるのは……。
お前だけだよ…………。
俺の愛しい酒ちゃんよぉー……………………。
◆
んぐっ、
ぐびぐび…………。
「……ぷはー……。おっ! 中々イケるじゃねえか、この『やまざき』って酒。…支給品のエールときたらありゃ不味いったらありゃしない。酒つったらやっぱこれよ、これ」
──ガチャッ
「………あっ。…え、ええ、え?? ち、ちちチル……くんっ………?」
「お。……なんだよその顔……、キリエ」
「そ、そそそれ………。お酒…ですよっ………?! ま、まずいですって………」
「あー平気平気。全然不味くないし、俺もこの程度の度数じゃ酔わねえからよ。コイツの旨さが分かるようになって一端の大人ってもんだ」
「そ、そそ……そういう事じゃなくてぇ〜〜〜〜〜…」
……はいはい。
どうせこいつも「子供が飲酒は〜〜…!!」とかふざけたことヌカすんだろ。
…もういいから。そういうのっゴリゴリじゃい!!
薄暗い台所で、冷蔵庫に寄りかかりながら呑む俺と、コップを持つツントゲガール・キリエの二人並び。
こいつは何が哀しいんだか、看護師の格好でさっきからうろついてる変な奴だ。
コスプレ娼婦みたいなギリギリゾーンのスカート履いて、そのクセ常に自信なさげでオドオドしてんだから掴み所のない女だぜ……。
んぐ、んぐ、ごく………。
「……ぷはぁあぁぁーー……。はぁーあ…………」
「あ、あわわ……。あっ、〜〜〜〜!!!」
「…………………。──はァー……………」
……やっぱり…。
酒に頼ってみたもんだが、コイツの力をしてもどうしようもねぇもんだな…………。
はぁ……。
(あ、あとここに住んでた元の住民。勝手に私物飲んで悪ぃ〜なーー)
…いや、そりゃ俺だってよ?
言われるまでもなく、こんな女子集団さっさと切り捨ててよ。別の強そうな奴につるめばいいってのは承知しているし。
戦闘力皆無な種族である俺もそれが最適解っつうのは重々理解してるさ。
金の払い具合と勝算の高さで人を見てる俺だ。その点は抜かりねぇーよ。
「──けどもだっ…!!」
「え、ええぇ、え?? け、毛玉??」
例えによっちゃ、飢え死にしそうな我が子を前に、お供え物があってソレを取らない親がいるか? って話よ。
そんなことするやつ、極楽浄土に行けることを信じてるヤツだけだ。
──さっき言った通り俺は神だの仏だのは全く信じちゃいない。
そろばんづくの俺だが、コイツらガキを見捨てるほど人情は薄くねぇ…。
カナやツントゲガール、憎たらしいリコナでさえ、死亡者放送だかでその名前を呼ばれたら……俺、絶対引きずるだろうし。
……何よりそんな真似をお天道様よりも俺ァまず許さねえよ。
「だからこそっ!! だからこそ………っ。悩ましいんだよなぁ〜……………」
「な、悩んでるからってお酒は、ま、NGですよっ!! NG!!」
ガキ共を捨てちまうのは俺の心情に反する……。
だが、コイツらと行動したら自分の命を捨てることになる……。
…俺は今どちらにも踏み出せない、帰路のど真ん中にいるわけだ。
くっそ…、どっちつかずってのが一番嫌いだぜ…………。おい………。
…そりゃよお。
出来るもんならコイツらを引き連れつつ、新しく強そうなメンバーを迎え入れる──とかな。
そんな絵空事カンタンにできるんならまた話は別だ。よろこんでその策に飛び込んで頂くよ俺は。
けども、それはまさに絵に描いた餅だ。…絵の中の餅を食えるのはライオスくらいなもんだぜ。
参加者七十人近く──大半が疑心暗鬼で今にも行動に移しそうな中、こんなシマウマの群れを目にした獣共はどう思うよ?
よっぽどのお人好し野郎か、陰で何考えてるか分からない異常者以外俺らを引き受けたりはしないのさ。
……引き受ける奴としたら、これもまた数多くの参加者の中でライオスくらいだわなっ…。
だから、もう現状手も足も出ないよ………。
俺はもう…。
何を、
どうして、
どういう風にすりゃ………いいってんだ。
俺は、これから……………。
「嗚呼………。あ〜、やまざきぃぃー……………。どうすればいんだよぉ、やまざき〜〜〜〜っ!!!!」
「も、本場ですっ!! 私は本場!! や、ややっ山崎って………誰、ですか…………」
「って、おのれはさっきからうるさいわ──────っ!!! お前ぇには何も言ってないわい!!」
「ひ、ひぃっ!!! そ、そ、…そんなこと…いっ言ったって…………」
あとツントゲガール!!
お前は初対面の頃からずっと睨んでて……、…怖いわっ!!!
恐ろし過ぎんだろ!? 何考えてんだ?!
…陰気なやつかと思えば、うまるさん? だのカナの話は早口になるし……。
ぶっちゃけ三人娘の中で一番接しづらい奴だよこいつっ!!
「と、ともかく!!! お酒は辞めてください!!」
「いらねー心配だな! だから俺はイんだよ酒に強いんだし」
「えっ、…せ、せせ、せ、成長期なんですから。チルくん、しっ身長…止まりますよ………」
「チッ!!! また出た!!! 好きだよなぁお前ら俺を子供扱いネタ!!! 看板ギャグにするつもりだろうがそうはいかねーぞ!!!」
ほんとに雁首揃えて〜っ……お前らはセンシかっ!!!
…なに? なんなわけ………。
トールマンとドワーフは種族について全く習わないのか???
あんまりしつこいと…俺だって堪忍の尾ってのがあるぜ?!!
「ゆ、ゆゆ……。はぁ……。こ、こまる師匠……、私に勇気をください………」
「はあ?」
「…ゆ、言っときます…けどっ!! わ、私がこの中では一番お姉さん…なんですから…………!! ゎ、私の言うことをチルくんは…聞くべき…でしょうっ………」
「ざけんな!! 二十九!! 十六!!! どっちに『>』が傾く?!」
「な、七歳の子供が……ワガママ言わないでくださいっ!」
「なっ?!!! な、なななななななななななナナナナナナナナナナナナなな…七っ────────!????????」
七はねぇーだろ!!? 七歳はっ?!!
どういう勘定してんだ!!? チクショー!!!
ほんとに、ほんとにっ……!!
どいつもこいつもアホでバカで大間抜けだ………!!!
うんざりだ!!!
もうっ、喰らえっ!!!
──ジュッ、ボワ………
──スパァーー。モクモクモク…………
「わっ!!?? チルくん何吸ってるんですか?!! さ、さそっ…さすがに冗談じゃないですよ!!!」
ゲホッゲホゴホ!!!
あ、やべー…。久々すぎてむせちまった。格好付かね〜……。
「……ハァーーーー〜〜………。それは俺の台詞だ、ガキ扱いの冗談はもうやめろ。飽きたし執拗過ぎんだろ。スゥーー〜ー……」
「煙草は辞めてください!!! 本当に!!! ち、ちびっ子ギャングですか!!!」
あっ!!! ムカついたわ!
マルシルですらそこまでしつこく擦らないってのに…………。
限度の知らなさエルフ以下かよっ!?
このっ!!!
「ぷはぁーーー〜〜〜〜〜〜ーー〜〜〜」
「げ、ゲホッ!! ゴホゴホ…!! や、やめてください〜!! 人の顔に向かって……ふっ吹き掛けて……………」
「あー? 自業自得だろ。どうだ恐れ入ったか? 子供がこんな大量にケムリ肺に入れて、大量に吹き掛けれるわけねーだろ」
「じゅ、じゅ受動喫煙!!! 言っておきますが……、吸う人より吸わない人のほうが肺癌率た、た高いんですからねっ!!!」
「おーおーそりゃそうかい。ひでェ喫煙者迫害思想だな。こりゃタバコーストだよ。ま、かく言う俺も娘出来て以降長らく禁煙中だったがよ…──」
「──今は別だっ!! ほれ思い知ったか! スパァーー〜〜〜〜〜〜、…はぁあぁぁぁぁぁ〜〜ーーー〜〜〜ー!!!!」
「や、やめてくだ──ゲホンッゲホ!!!」
へへへーー。ざまーみろ。
…って、なにエルフ共でもせん外道な事してんだ俺…………、とはなるが…。
まあ、仕方ないってもんだろ…。
俺も人間さ。腹が立つこともあるし、憂さ晴らしの欲が抑えきれん時もある。
こうもしつこく半ばコンプレックスをいじられりゃ、やる時はやんだよ。
ざまぁーみろ。ざまぁだぜ。
ガキ共よぉーー…────……、
『ピギィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイ─────────ッッッ』
「え?!」 「ゲホ……えっ!!??」
…だなんてスカッと気分に愉悦浸っていた中。
台所中を、唐突に『奇獣』のような悲鳴が木霊した。
「………」
「………………え?」
……俺は最初、限度が来たツントゲガールが発狂したもんかと思ったんだが。
──キリエの奴もその『奇声』に反応した様子から、どうやら第三者の声らしかった。
俺と、キリエしかいないこの間での。
第三者の声が。
「………………」
首をひねられる直前の怪鳥みたいな奇声は、思いの外一瞬で止んだ。
声の出どころは、……間違いなくキリエから。
だが小娘の悲鳴なんかではない。
奇声の張本人は、キリエの首。
──ギンギラに光るその首輪型爆弾からニョロニョロニョロ………って。
その赤黒くてグロテスクで、口しかない。昆虫の様なソイツが、息苦しそうに這い出てくると…………。
「うわ気持ち悪っ!???」
「え、え、え????」
────ビチャンッと、冷たい床に落ちて。
パチン。
ボト…………。
「「え?」」
そのキモい生き物が恐らく息絶えたその瞬間。
キリエの『首輪』が静かに外れて落ちていった…………。
え?
◆
………
……
…
「…ところで璃瑚奈おねいちゃん。れいぷ、ってなに?」
「……っ?! ……あのなぁー………………。夏菜…、忘れろ。つか察しろ。おかあさんといっしょでその言葉が発せられるの見たことあるか? ないよな? つまりはお前にはまだ早いんだわ」
「カナおかいつ卒業したんだけどっ! いいじゃん教えてくれてもさー!」
「おかいつ……………。おい忘れたか? 私は何事にもやる気が出ない人間なんだぞ。一々説明してられっかよ面倒臭い…………」
「また、そうごまかして!! カナ諦めないからねっ!! ねえねえれいぷってなにー? ねえ〜〜!!」
「…あーーもう〜っ──…、」
ガチャッッッ──────
バタンッッッ──────
「おいカナ!! リコナ!!! ははっ!! よく聞け、今から外に出るぞっ!!!」
「ハハ…!! あははは!!! そうですよ皆さん!! 行きますよ!!!!」
「うわびっくりしたぁー!!!」 「は? んだよいきなり…………」
ドアを開けりゃ対面する二人のガキンチョ面。
…フッ、…ハハハハ!!!
リコナの癪に障るやる気0フェイスも、この興奮と歓喜を前じゃあどうにも気にならねぇ!!!
……いや本気でマジかよこれっ?!
ハハハハハハハ!!!! 笑いが止まらねぇよ!!! こりゃ発作だわ!!! ハハハハーーッ!!!!
「…え? お前ら二人してテンション高すぎねぇーか。キャラ変わりすぎだろ。何が琴線に触れてそうポジティバーになったんだよおいー」
「い、いやだって!!! ねえー! チルさん!!!」
「おうキリエ!!! 『これ』を目にして興奮しねぇ奴なんかねーよ!! ハハハハ、ハッハ────────!!!」
「…引くぜ」
「てゆうか切絵おねいちゃんジュースはぁ〜?? 持ってくるんじゃなかったの??」
「まぁまぁ夏菜師匠〜!! あ、そうだ。チルさん、師匠にも『やって』あげてください!!!」
「おっ! それもそうだな!! おいカナ、こっち来い!!!」
「………?? ヘンなの。…なに〜?」
「バカ、行くなっ!! あいつらクスリしてるぞ!!!」──とか何とか。
あたふた萌え袖をブラブラしてるリコナの野郎は無視して、近づいてきたカナの肩に俺はそっと手を置いた。
おうおう〜!
リコナの奴、「何をする気だ!!」とか言いたげに汗撒き散らしやがって!!
何をすんだ、つわれたらよぉー?
そりゃ勿論…………、
「な!!」 「はいっチルさん!!!」
──スパァーーー〜〜〜〜〜〜〜…………。
「!?? げほげほ!!! く、くさっ!!!? な、何を──…、」
『ピギィイイイイイッッッ』
パチン。→ボト…………。
「………え?」 「…あっ?!」
煙草の吹き掛け。
ただ一つに決まってんだろ?
「え?? あー?! 夏菜?! お、おま……。首輪が…外れて…………………」
「え、あれぇ〜〜〜〜〜?!! てかなにこの虫っ?!! ゾワッてするんだけどぉ!!?」
「…………ふっふふふ……!!」
「お、お前…チルチャック!!! なんだよこれ?! おい!!!」
「す、スゴイですよねっ!! 璃瑚奈さん!! ささ、さっきチルさんが見つけたんですよ!!──」
「────『首輪の解除方法』が、ですっ!!!!」
「………………え」 「………………──」
「──いや切絵お前には聞いてねー」
「あ、あぅ…ぁ……。す、すみません……………」
「なに六歳児が煙草吸ってんだとか……、なにこの遊星からの物体Xはとか…、ガキの顔に煙草吹き掛けるとかイキりすぎだろとか……。山程産まれた突っ込み卵はこいつの前じゃあどうでも良しだぜ……。おいチルチャック!」
「あ〜? ふっふ〜〜ん!!」
「何なんだよこれ?!! 説明しろよっ!!?? こいつら一体全体何が起きてやがんだ!!!??」
…ったく! リコナめ、凄まじい勢いで詰め寄ってきやがってな!!
ま、仕方ないから説明してやんよ。
ここで脳裏に浮かんだのは、ファリンが食われてまだ幾ばくも月日が経たぬ頃。
地下深くでの、ライオスの会話だ。
以下、迴想〜。
…
……
………
──ははは。『動く鎧』…か…。
────…まーた始まるよ、ライオスの早口で独りよがりな魔物説明。
──よしなよチルチャック…。
──産卵…。孵化…。体長わずか5mmほどの貝類『動く鎧』は、成長と共に外郭を形成し、ある程度成長すると群れ始め、徐々に鎧の形に成体。動けるようになると他の群個体を探し移動する。…というのは俺の仮説だ。
──ほう。
──実は、コイツを見て俺、そういう類似生物がいたな…って思い出したんだ。…名前は分からない。ただ、動く鎧同様、色んな物体に似た殻を作る魔物がいるんだって、迷宮ガイドに書いてたのさ!!!
────あの信憑性乏しい同人本ねぇ。
──ライオスほんと好きだねそれ……。
──例えば、銅像!! 例えば、────『爆弾』!! …ただ、彼ら貝類は少し弱点があってね………。
──…いや銅像型や爆弾型のからは話広げないんかい!! ライオス…。
──まぁ聞こうではないか。…ふむ。その弱点とはなんなのじゃ。
──それがなんだが………。
………
……
…
「────奴らはニコチン、タールを0.5mg以上含んだ『煙』に弱いっ!!! つまりコイツをかなりの至近距離で喰らわばよ…」
スパァーーー〜〜〜〜〜〜〜…………。
『ピギィイッッッ』
パチン。→ボト…………。
「イチコロ、って訳だぜ。リコナちゃんよお!!!」
「…………………………マジかよ」
「主さい者ってばかなの?」
かハッ〜!! おいおいカナちゃん〜!
バカに決まってんだろ?!
あのオープニングセレモニーだぜ?
バカが陣取ってるゲームなんだから、こんなもん楽勝すぎるわ!!!
「と、まぁ首輪解除法はあっけなく見つかったわけだが。それを踏まえて、俺らはこれからあることをしなきゃなんねぇんだわ」
「ある、こと…………?」
「はい師匠!! 私たち四人組は悲しいですが最弱もいいところ…。敵に出会ったら瞬殺即ENDが約束されてる……よわよわな集まりじゃないですか」
「うん…」
「例えばリコナ。お前、バス内でレイプ魔のヤバイ奴が隣つっただろ? そいつに会った日にゃ俺らは色々な意味で終わり、完封だよな」
「お、おう。つか思い出させんなよお前…………」 「………っ!(また出た…れいぷ)」
────だがっ!!!
「もし、ソイツが『仲間』に付けるとしたら?」
「え?」
「…いや別にレイプ魔に限った話じゃないぞ? 殺し合いに乗った野郎にさ、首輪解除をエサに無理矢理ボディガードにしてな! 『ゲーム終盤に外してやるから俺達を守れ』とか言ったらよお!!」
「……………っ!!」
「────この戦……。生還を諦めるのもまだ早いんじゃねぇのか? なぁ、リコナ」
「……………」 「………」
「…スカウトってわけか。それもかなり勝算の高い………。面白ぇ。面倒事は嫌いな私だが乗らせてもらうぜ………──」
「──だがあのレイプ魔だけはやめろよなっ??! アイツ絶対話なんか通じねーから!! 弁が立つ私でさえアイツを丸め込むのは無理だよ!! 難題だよしんどいよ死罪だよっ!!!」
「ま、まあまあ璃瑚奈さん! 一つの例え話じゃないですか!! そっそ、その点はチルさんも理解してますよ〜!!」
「ったりめェーだろ。勿論最低限人は選ぶぜ。ゲームに乗ってるか乗ってないかは問わず。とにかく外出て参加者をスカウトだ!!」
「そうしろ!! マジでレイプ魔だけは勘弁だ!!! レイプなんかされたくなーい!!!」
「レイプレイプうっせーよ!! てかお前その言葉言いたいだけ説あるだろ」
「んな説あるかっ!!! いいか、レイプ魔だけはやめろ!!! 釘何十本でも刺して言うからな!!! レイプ魔だけはヤ・メ・ロー!!!!!」
「ちょっと皆さん……。子供の前なんですからぁ〜…」
「…………〜〜〜〜っ?」
レープレープと、お年頃なお嬢ちゃんはともかく。
偶然ながら、これにて俺らは『ゲーム生還の糸口』に針を通すことができたわけだ………。
勿論、まだまだ課題はある。
圧倒的武器不足だとか、バリアー問題だとか、ライオス達の安否確認だとか…、マルシルはまだ生きてるのかだとか。
無駄に奥深さあるこの殺し合いではあるが、…幸運にも主催者は浅いところで舐めていやがってのさ!!
なあ、神様よ……。
あんたが存在するんだとしたら、トネガワをバカに作ってくれて感謝するぜっ。
そして、『動く鎧の亜種』という生物を生み出してくれたことも、心からお礼言いたいぜっ……!!
首輪を四人一斉にゴミ箱へ放り投げ、この一室を後にする……。
俺達ガキ帝国の創設が、今歴史の始まりを刻むのだった────────。
「……で、れいぷって何!! チルチャックくん、切絵おねいちゃん!!」
「…は?」 「ひ?」 「…ふ? ──とは言わねーぞ私はよぉ〜…」
「皆ばっかり知ってて…。カナだけ知らなくて、仲間はずれでっ!!! カナかなしいんだけど!!! もうおしえてよ!!!」
「…………し、師匠……。ま、まだ早いですよ〜………?」
「なぁ、さっきからこればっかなんだぜ? この放送禁止用語乱射口を誰か黙らせてくれよー。おい〜〜」
「…………」
「おしえてくれない限りカナ動かないから!! ねっ!!!!」
「…」 「……」 「………」
…いやいや、もう……………。
まぁ……、仕方ねぇかもう…………。
かなりなくらい早いけど、コイツにも正しい知識を教えてやんないと……ダメか…な………。
あー面倒臭え………。
「…はぁ、分かったよカナ」
「え?! ち、チルさん!!??」 「バカ!! 黙れよチルチャック!!!」
「花、あんだろ?」
「うん」
「…それには雌しべと雄しべがあってだな………………」
【1日目/G5/マンション/6F/AM.03:27】
【平成少年団】
【チルチャック・ティムズ@ダンジョン飯】
【状態】健康、首輪解除
【装備】???
【道具】メビウス@煙草
【思考】基本:【対主催】
1:誰か強そうな参加者を誘う。首輪解除をエサに仲間に引き入れる。
2:リコナ、キリエ、カナを守る。
3:リコナはうぜー、キリエは常人ぶった変人、カナは問題児!!
【璃瑚奈@空が灰色だから】
【状態】健康、首輪解除
【装備】???
【道具】???
【思考】基本:【静観】
1:ガキンチョ一行と行動する。
2:レイプ魔(肉蝮)には会いたくない…。
【本場切絵@干物妹!うまるちゃん】
【状態】健康、ナース服@うまるちゃん、首輪解除
【装備】???
【道具】???
【思考】基本:【対主催】
1:チルさんたちについていく。
2:夏菜師匠をお守り。
3:うまるさんと海老名さんが心配…。
【折口夏菜@弟の夫】
【状態】健康、首輪解除
【装備】???
【道具】???(一式ランドセルに梱包)
【思考】基本:【静観】
1:チルチャックたちくんについていく。
2:『死』だけは絶対…ダメ!!
3:めしべとおしべ…?
※ナゾ1【首輪型爆弾の謎】…続報。
「参加者全員に嵌められた首輪型爆弾。この物体は一体何なのか?」
→正体は生物。『自爆型の魔物』。(※1)
動く鎧@ダンジョン飯の亜種で、赤黒く口のみの生物。(※2)
市販されているタバコの煙が弱点で、至近距離から吸い込むと即死してしまう。
(※1)ライオス・トーデンが#020『
少女と異常な冒険者』にて解明。
(※2)チルチャック・ティムズ、本場切絵が#053『ゲーム生還の糸口♂♀』にて解明。
最終更新:2025年03月18日 14:43