『大好きが瞳はタダノくんの』
────朝、起きたら、
「もうなにやってんのお兄ちゃん………。鬼電も鬼LINEも一切無視………。ロンリーウルフ気取りかっ!!」
────私のお兄ちゃんが、
ドンドンドンッ!!
「お兄ちゃん!! 絶対起きてるでしょ! ねえLINE見たよねー? 早く私と一緒にコンビニ行こうよー」
シーン………
「…このっロンリーウルフめ!! 分からず屋っ!! ねえってば、こんな早朝に女子一人でコンビニ行かせるなぁっ! 正しく野に放たれた羊だよ私は!! ウルフ達に襲われちゃうってば!!」
シーン………
「もう!! 入るよ!!! お兄ちゃ──…、」
ガチャッ
「……………へ?」
────死んでいました。
「……いないし」
──…多分。
◆
…おかしい。
何かがおかしかった。
時刻は現段階、四時前……。──…午前のっ…。
いくらふつつかな我が兄──只野仁人とはいえ、奴は本当に普通すぎる人間。
友達との遊び付き合いという推理もできるけど、こんな夜遅くに家にいないとは、お兄ちゃんの性格上考えられない…。
自室、リビング中、お風呂にトイレ。鞄の中も机の中も探してみたけど見つからないこの現状は、如何に…。
……あっ。
言うまでもないけど、私は逆シスコンとかじゃない。
あんな頭のトサカ以外これといって特徴がなく、成績も性格も頭脳も頭身も、スマホの壁紙でさえチョ〜普通な兄には、愛着なんてなかった…。
…そう。────ない筈だったのに…。
何なんだろう、この妙な胸騒ぎは……。
縁起でもないことを言うと、まるでお兄ちゃんはもう二度と帰ってこないんじゃ………? というような。
…なまじ同じ親から産まれた血が繋がる者同士なだけ、私はそんな嫌な予感がビシビシ脈走るのでした…………。
私のお兄ちゃんはこんな時間に──一体何処へ?──────………。
「……ま、お兄ちゃんも羽目外したい時くらいあるか。どうせ昼間には帰ってくるでしょ──」
「──コンビニは〜〜…。…もういいやっ。寝直そっと」
心の何処かで蠢く予感…。
それを奥底にしまい、私は自室へと戻っていった。
「───────っというのは第一の仮説っ!!!!!!!──」
「──もう一つの仮説はぁ〜……、そうっ!!!! 只野仁人は不運にもっ──」
テレビ、ピッ!!
『引き続き速報です。渋谷区に発生した未確認巨大型ドーム。警察は住民の安否確認を急いでいます』
「──その渋谷の中でっ!!!」
7chチャンネル、ピッ!!
『今日から皆さんにはちょっと殺し合いをしてもらいます』
「────【バトル・ロワイヤル】をさせられているっ……というのが仮説2にして最有力説だぁぁぁぁいっ!!!!!!!!!!!」
テーテーテ、テレレテー♪
テー↑、テー〜〜〜っ…↓
申し遅れました!! メンゴ★
私の名前は『只野 瞳』!!!
名字は『ただの』だけど、只者じゃないってのが私のアピールポイントだよ!! ハイ、ヨロシクゥ!!!
勉強も運動もちょ〜〜〜っと…苦手な私だけどその分アグレッシブでハイ元気!!
持ち前のスーパーテンションを活かしてもう友達の数は山の如し!!! 今は、隣の席の古見笑介くんと大親友になることを目標としてまーーす!!!!
…あっ、ねえ聞いてよね〜? その笑介くんときたらさぁ、あの子コミュ症らしくて……。自己表現が苦手みたいなんだよ〜〜。だから私が彼をクラスに馴染めるよう悪戦苦闘してるんだけど、笑介くんったら私の努力なんて一切気付いてない様子で〜〜〜………、
「──あ、はいカット──」
「──話が逸れちゃった。まずいまずい。…私…、集中────っ!!!!──」
「──というわけでテイク2!!! (…あ、ココだけの話、FI●ST TAKEってあれ普通に撮り直しあるよね??)ゴニョゴニョ」
【テイク2】
テーテーテ、テレレテー♪
テー↑、テー〜〜〜っ…↓
…フッフフ。名乗るのを遅れてごめん!!
私の名前は────『只野 瞳』!!! (タタンッ!!)
名字は『ただの』だけど、只者じゃないってのが私のアピールポイントだよ!!
ハイ、ヨロシクゥ!!! 以下略!!
(元々存在感は湯気同然だったけど)突如として、湯気の如く消えてしまった私の兄──只野仁人…………。
本当にっっっ──ごく平凡な男子高校生、只野仁人は今、何処で何をしているのか…。
その事について頭を搾り取るように、ギュ〜〜〜ッと熟考…推理した時。
私はとうとう、とんでもない仮説にたどり着いてしまったのでした……。
「そう!!! バトル・ロワイヤル!!!──」
「──バトル・ロワイヤルと言ってもまだ主催側なら箔が付いたというのに……。私の兄は不幸にも参加者として招かれたのでした!!!!」
…勿論、根拠は0! ナッシング!!
イッツオーライ?!
Hey!!
そんな不幸ケッコーコケコッコーな兄だけども、時刻はもうすぐ朝焼けが昇りニワトリが鳴く頃合い。
渋谷にバリアーみたいなのが発生したのは昨日の夜十一時頃らしいから、バトロワ開始もその頃と仮定しよう……。
つまり、デスゲーム開始から五時間くらい経過している現在……。
不肖の兄・只野仁人は生き永らえているのかと考察すると………────。
「………………ま、おじゃんだよね〜………──」
「──…そりゃ私だって死んでほしくないって気持ちはあるけども……。こういうデスゲーム物は何も特徴ない人から片付けられるイメージだし? お兄ちゃんって変な人に絡まれて災難に遭うってイメージもあるしー?………──」
「──というわけでッッ!!! 『只野くんの、人生です。』、これにて完ッ────!!! うわ~~ん何してんのさー!! お兄ちゃぁ~~-ん!!!」
はいはい!! さてさて!!
こうしてお兄ちゃんの安否確認は無事(?)済ませれたものだけども、
──ここで気になるところは、…只野仁人。彼は一体どういった死に様を見せたのか……、というトコだねっ…………。
例えば、殺人者に襲われている女子参加者を助けて身代わり死…とか?
更に具体的に挙げれば、女子目掛けて放たれた銃弾を、我が身削って被弾した…とか……?
そういう感じで、ドラマティックかつ熱い最期だったとしたなら遺族代表の私として、この上ないくらい涙物なんだけどねっ………!
英雄に敬礼っ!! 勲章贈呈っ!! って感じで…。
誇り高い死だと思うよっ………。うぅっ…、ぐすん…。
「…でも、悲しきかなっ!! 神様はお兄ちゃんを常にごく普通平凡な人生しか歩ませてくれないっ─────…………」
…というわけで、お兄ちゃんの生き様は『なんとなく歩く→殺人者に遭遇→逃げるも追いつかれ普通にYOU DIE……』で決定!!!
ついでだし、死因も鋭利なもので背中を突かれYOU ARE SHOCKに決定!!
我兄ながら正しく凡すぎる死っ…! ゆーあしょっ!!!
勿論一ミリも一ミクロンも根拠は0。
…ふっ、ただ推理において必ずしも証拠は必要だとは言えない…ってわけかな?
名探偵と化した私の脳内には、一連の考察がまるで確定事項のようにフツフツと沸き立ってるのだよ……。ふふふっ…。
「…あ、でもさすがに普通すぎて気の毒だから死に方も大ハードなモノにしとこうかな。…じゃっ、チェーンソーで斬られて死亡に決定で!!!──」
「──もちろん根拠はナッシング!!」
…いや待てよー。
…チェーンソーでバラバラ死って……流石にさぁグロすぎない…? エグすぎないっ……? ドン引きだよね……。
勝手な推理とはいえ、そんな発想に至っちゃう自分に恐怖を覚えたんだよね…………。えっ?? 私ってもしかして隠れサイコパシー…っ?!!
「……【バラバラにならない程度に脚を斬られた後、胸をギュイィィンって一突き】、で妥協しますか…。さすがにお兄ちゃん可哀想だしね…!! ぐすんっ…!!」
…私だってギタギタのミートにされたお兄ちゃんを見るのは嫌だしねぇ…………。
葬式? か、警察の人が「身元確認お願いします…」って、差し出してきたのがブロック肉とかだったら大勘弁だし………?
…………はいっ!!
さてさて、…こうして亡き者となってしまったお兄ちゃんではありますが……。
彼のバトロワ活動はこれにて終了……………。
(まったく無事じゃないけど)無事THE END………………………。
────かと思ったらさにあらずっ!!
去る者あれば、残る者ありとはこの世の常…………。
凄惨なお兄ちゃんの遺体を見つける者が一人!!!
それは不幸か、それとも幸か……。たまたま通りかかった先で、『参加者』の一人は只野仁人だった物と出逢うのでした………。
「…と、私は勝手に考える……!!!」
その参加者の名前はズバリ………。
チャンネル、ピッ!
『佐野文吾を許さないぃっ……………』
────【佐野】さんっ!!!
そして、佐野さんの性別はズバリ………。
チャンネル、ピッ!
『男の人っていつもそうですねっ…!!』
────男っ!!!
「…と見せかけて【女】!!! 騙されたでしょ!! …フフフッ、探偵の推理にはこういう無意味なじらしテクニックも必要なのだよ〜…」
私は勝手に考える。
その佐野さんもまた、デスゲームに踊らされた変質者に襲われ、命からがら逃げてきた者の一人…。
彼女は奇跡的にも逃れることには成功したものの、逃れる者同士は惹かれ合うというわけか………。
既に事切れたお兄ちゃんを見つけてしまい、ショックで言葉が震えるのでした…………。
佐野さんは噛み締めます……。
死体を目に焼き付けて、思うは死への恐怖と、未来への懇願……。そして、自分の不運さの絶望視…………。
もう喋ることのないお兄ちゃんを前にして、彼女はブツブツとこう言うのだった…ってね。
「……ごほん。…『わっ。…脱落者……。…ううん、違う。自分の解放に成功した参加者だね…(裏声)』──」
「──『分かるかな? 彼らにコントロールされ本当にけしかけられかなり高価なプログラムまでけしかけられ買い込みだましたの。やつらが何か霊的な光をどろどろしたから
ね(裏声)』──」
「──『違和感がある内に止めさせてください停止の命令をあなたが聞けないのなら、とか信用できないのなら、それはあなたがコスリ感緩和膜を頭の裏に貼られているからだよ(裏声)』──」
「──とか言ってたり」
…うはっ!! 我ながら何言ってるか意味不明ー!!!
だけどもしかし!! さっき言った通り、お兄ちゃんの知り合いは一癖も二癖も強い人間達ばかり…………!! なじみ君ちゃんとか!!(あっ、硝子さんは除く!!)
だからこうして、佐野さんもまためちゃくちゃヤベー人なのであったわけだ!!
多分、見た目こそは普通の女子なんだろけどね!! 知らないけど!!!
わけのわからない電波な佐野さんを前にして、その場にいたお兄ちゃん(幽霊)も流石にドン引いたことでしょう〜…………。
ただし、かなり異常な佐野さんとはいえ…別に血も涙もない狂人というわけじゃない。
ぶつぶつイミフな一連の台詞達は、いわば彼女なりの追悼の意で……。
ちょびっと空いた心の穴を引きずりつつも、死体に一礼。
お兄ちゃんの魂が救われることを願いながら、彼女は後を去るのでした………。
────その折に、突如として鳴り出す、死体の携帯。
血濡れの胸ポケットから響く着信音に、佐野さんは一体何を考えたのでしょう…。
甲高く光る、スマホの画面に映るは妹・『只野瞳』の名前………。
そう、物語はこの鬼電ラインから急速に加速するのでした──────。
「…………と、まぁーこういった具合で上手く締めちゃったわけだけども」
…ふふふ。
これが深夜テンションってヤツなんだね…。
バカバカしくて厨二全開でおかしな推理(という名の妄想!!!)を、我ながらしちゃったもんだよ………!
言うなれば↑の妄想は全部、──【フィクションです。実在の人間、場所、団体は一切関係ありません】!!!
どうせお兄ちゃんはコンビニかどっかに行ってるし、殺し合いなんてあるわけない。
渋谷のバリアーも多分催し物かなにかだ。
…ほんとに、バカバカしい妄想ったらありゃしない。
……こんなお馬鹿な考え事を三十分近くもしてる私は、もうきっと逆ノーベル賞受賞に値するバカヤローだろう。
ほんと、バカだなぁ。私は……。
「でもそんなバカな私……。──…嫌いじゃないぜっ」
さて、時間もそろそろヤバい頃合い。
お母さんに怒られる前に…二度寝するとしますかー!!
幸いにも明日は土曜日。
おやすみっ!! Good night!!!
──ブーーブーーーッ
──『電話です』
──ブーーブーーーッ
──『電話です』
「うわビックリしたっ!!! タイミング悪っ!!!」
いやほんとタイミング悪すぎ!!
私リビング出て寝ようとしたところなんだけど?!!
ドアを開けようとした私を引き止めたLINEの着信………。
こんな時間に誰だよっ!! こんな夜更けにっ!! バナナかよっ!!! ──と思いつつ、スマホを見てみたら、…そこには不肖の兄・只野仁人の名前が…………。
(…それにしても我が兄。LINEのアイコンは自撮り(微笑にピースサイン)。……超普通である)
「はあーーあ……。今頃…?? なんなのさぁ〜………」
私の鬼電から三十分経って、やっと折り返してきたお兄ちゃん……。
仕方なし…と。私はスワイプして受話器を取るのでした〜〜…。
…あーあもうタイミング考えてよっ!!!
────スッ
「はいもしもしもしもし!!! 何お兄ちゃん今頃になって!! もういいよ私は寝るんだか──…、」
『……もしもし。……瞳さん、ですか?』
「へ?」
…私は虚を突かれた思いだった。
……言い換えたら不意打ちだった。あと予想打にしなかった。あとは寝耳に水だった。
…私の耳に入ってきたその声。
それはお兄ちゃんの声ではなく、水のように透き通った女子の声だったのです………。
…いや、いやいや、ちょっと待てい!!!
この夜に姿のないお兄ちゃん…。そして、お兄ちゃんの代わりに出た女の人………。
こ、これって……。い、いやお兄ちゃん本気で何してるわけっ??!!
あの比較的ビビリで度胸なしのお兄ちゃんが、よ、よ、夜遊び…??!!
これじゃあ不肖の兄じゃなく不埓な兄じゃん?!! もはや兄ですらなく『乙』っ!!!
お、乙よ……、卒業…しちゃったってわけ!?
この電話はどうやら顔を赤めないと聞いてられないようでござい────…、
『……瞳…………。…三嶋…瞳さん? ですか………?』
「…へ???──」
「──み、三嶋ぁ〜〜〜…??? 私は只野ですけど…? ただのっ、瞳っ!!」
『…ただの瞳………………? …貴方はこの方の…、知り合いですか?』
「…………〜っ?? この方…とは……。兄ですけど〜……。私のお兄ちゃん」
『……あ、はい。…すみません、電話が鳴ってたので…、迷ったのですが折り返して…』
「…は、はあ……………──」
「──………。………あ、あのっ!! わ、私も家族ですし…ちゃんと知っておきたいんですけども!!! いいですか? ズバリっ!!!」
『………え、何をですか………?』
「恥ずかしいかもですけど…ズバリっ!! 貴女とお兄ちゃんはどういった関係ですか?!! てか誰?? なりそめは?? 経緯は??! どこまでしました??!!」
『………。──』
『──…私は、この人を知りません。ただ出会っただけの、そんな関係です………』
「…うぇ??」
『────…あと、私は【佐野】と…いいます』
……。
……うぇ、え???
『瞳さん………。…気を落とさず、聞いてほしいんですが………』
「えっ???」
『…………………いや。すみません、何でもないです』
「…うぇへっ????!」
『ところで瞳さん、今、どこにいらっしゃいますか? ここで繋がったのも縁なので………、…私と落ち合ったりとか…しませんか……』
「え、え、え。…家ですけど。マンションの…」
『…マンション。…ということは、渋谷マンションですか…?』
「えっ???!」
『…今向かうので、…危険が来ない限り待っててください………』
「え、え???? ちょ、ちょっと……。え、どゆこ──…、」
『…それではっ………!』
────デデンッ…
──[通話終了]
「………………………………………」
………………。
……………………え、
………え…、
…えーー…………????
チリン、チリンと揺れる風鈴。
吹き抜ける風が私の素肌を通る…。
…とりあえず、……眠気…。
超消えちゃったんですけど……………っ??!
◆
『──続いて渋谷の天気です。曇りのち晴れ。最低気温は28℃。午後にかけて日差しが強まる予報です────』
気が付いた時、僕は自宅にいた。
朝焼けがカーテンの隙間から伸び、点けっぱなしのテレビ以外は無音の、いつもと変わりないリビング。
こんな朝早くだというのに、ダラダラ汗を掻きながら直立不動の妹には気になったものだけど、…それでも平穏そのものな自宅だった。
…これは、……最後に家族へ別れの言葉を残しておけ、…だなんて、神様の気遣いなんだろうか。
過程はどうあれ、僕はこうして渋谷から出ることに成功できている。
……その過程がとんでもない物だったわけだけども。
僕は妹の頭をそっと撫でて、天からの光が差すベランダへと向かった。
足取りが重い訳では決してない。
だけども、今居るこの世を噛みしめるように、ゆっくりゆっくりと、歩くスピードは遅めでいる。
…すみません。古見さん。
謝りきれなくても謝りたい思いです。
──あなたに会いたかった。
──…会えなかった。
──いや、会わなきゃ駄目だった。
……古見さん。
あなたは、男女問わず皆から無条件に好かれ、…いいや。好かれる以上に、物凄く愛される特性の持ち主です。
…あなたのその魅力で、悲惨なゲームを終わらせてくれることを、遠い空の上から願っています。
………どうか。
どうか古見さんの力で、闇を照らし光が圧勝しますように。
そしてどうか……、みんなに笑顔を届けますように。
…ごめんなさい。古見さん。
いつか友達として、また再会しましょう。
またいつか。
いや、『いつまでも』…────────。
…………
………
……
…
【1日目/D2/住宅街/AM.04:00】
【佐野@空が灰色だから】
【状態】健康(普通の姿)
【装備】???
【道具】???
【思考】基本:【静観】
1:『三嶋瞳』がいる渋谷デイリーマンションに行く。
2:来生さんにもう一度会いたい。
最終更新:2025年08月03日 15:20