『男の闘い』
「あはは〜、また私の勝ち。西片はほんと分かりやすいね〜」
「ぐ、ぐぬぬ〜……っ………………」
…また、負けた……。
入念に準備して…、恥もプライドも無くイカサマまで仕込んで…、泥水すする覚悟で勝つつもりだったのに………。
高木さんにまたゲームで敗れてしまった……。
……しかも負けた上にからかわれるというダブルパンチ………。なんて屈辱だ……っ!!
よくマンガで「負けたけど、清々しい気分だぜっ!」って、ライバルキャラが負けを認めて笑うシーンあるけど………見習いたい……。
…っていうより、オレも欲しいよ〜その心の余裕が〜〜!!!
「じゃ、そういうわけだからね。罰ゲームの覚悟、オーケー?」
「…え。え゙っ?! ほ、本当にやる気なの?! 高木さんっ?!!」
「ん? もしかしてそんなに怖かったの? デコピン」
「…いっ…!! …い、いや………。あ、あんまりに子供っぽい罰ゲームだからさぁ〜。『え? その程度でいいの?!』って思っちゃったんだよね〜オレ〜〜………」
「お〜流石は西片。じゃさっそくいくよ!」
「え?!! いやちょ、ちょっと!! タイムタイム!!!」
くそぉ……。
……高木さんめぇええええ……。
…いつの日か……きっと……。
──いや、オレは、いったいいつになったら……。
「タイムもなし、二言も認めません。『男に二言はねぇぜ…』って、西片の好きな西部映画でも言ってたでしょ?」
「なっ!!? なんで知ってるのそのセリフ?! 見たのっ!?」
「うん。クリント・イーストウッド、渋かったなぁ〜。昔の映画だけど面白かったよ」
「い、いやどうして興味惹かれたのっ?!」
「んーー。西片をからかう為ならなんでも履修の私だからかな〜」
「結局それに行き着いちゃうのかよ〜っ?!!」
……はぁ……。
オレは……。
オレはァ〜〜〜〜〜……………。
「じゃ、いくよ」
「…た、高木さーん…………」
「えいっ!──」
……高木さんにからかい、勝つことができるんだろう………。はあ〜あ〜ぁ……………。
「──…と、見せかけて脇腹にパンチ!! おりゃっ!」
────ズッッッバアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァンンンンッッッッッッ!!!!!!!
──バキバキバキバキバキバキゴキゴキゴキゴキッッッッッ──ミシミシミシミシギギギチギチギチィィィィィィイイイイイッッッッ
「ぐッがばぁああああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!!!!!???」
…ご…ぁあ…ァァ……ッ………。
い、痛い゙っぃ………………ッ!!
脇腹を抉るように…めり込んでくる拳………ッ…。
腹肉とあばら骨が、ぐちゃぐちゃのミンチになって、…全身に震える波動が………走る……ッ。
い、息が……できない……ッ………!!
痛みのあまり……呼吸の仕方を思い出せ…ないぃ…ッ……………。
「ゲホッ、ゴホッ……、た、タイム──…、」
「どうした、もう終わりか? 西片ッ」
「…あ、……うわぁッ!!!?!」
────ブンッッ
…わっ…!!
……そして間髪入れず飛んでくる……蹴り………ッ………!!!
…そうだ……。
そうだった………。
頭の上を星とヒヨコがグ〜ルグル………。──そんな混乱状態で忘れていたけど……、
オレ…………、今………。
「フンッ!!!」
「ぁっ──────!!!」
──…『ガイルさん』と……、ガチンコ死闘《Street Fight》をさせられてるんだった…………────。
◆
〜🅸🅽🆂🅴🆁🆃 🅲🅾🅸🅽〜
◆
………
……
…
◆
い…いや………。
いや。いや……。
…ど、どうして………?
「はぁっ、はぁっ……っ。ひへぇ……、はぁ…っ…はぁ……っ。──」
「──ガ、ガイルさん……っ。ちょ、ちょっとだけ……話を──」
──ROUND【5】────
「──いっ?! も、もう始まるのっ?!!」
「…ッ!!!──」
────FIGHT!!
「──ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!!」
──【ソニックブーム】(←ため→+P)
──[腕を交差させて放つ、真空の刃──音を置き去りにするような超速飛び道具。]
「う、うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!──」
なんで………?
どうして…?
「──はぁ…はぁ……。ひぃいいいいいいっっっ!!!」
「逃げるな西片ッ!! ファネッフー!! …──フンッッ!!!」
「うわっ!!!?」
──BUUUNッ!! BANッ!!
──【しゃがみ蹴り】(↓+K)
──[太い脚から繰り出される強烈なローキック。ガイルの圧倒的な体格から生まれる長いリーチが特徴]
「うわぁああああぁぁぁああああああああああ!!!!!」
も、もう……っ。
わけが……、わからない……っ……。
「何度でも言うぞッ…!! …避けるなッ! そして逃げるなッ!! …逃げるな卑怯者ォッッ!!!」
──BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!!
──【ソニックブーム】
「ひ、ひぃいぃぃいいいいいッッ!!! うわあああああああッッッ!!!!」
「…クッ。…西片よ……勝負においてだ」
「え?!」
「逃げて、何が得られる……ッ!? 攻撃を受けずして、何を学ぶというのだ……ッ!! …仮にこれが俺が狼で、貴様が野ウサギだったなら。…逃げることも戦術と呼べたであろう……」
「ひぃ、ひっ……! はぁ、はぁ……」
「だが、俺は貴様を、そんな純粋無垢な小動物だとは思っていないッ!! これは……貴様と俺……餓狼同士の対等な闘いだッ!!!」
「ひい?! ぃいぃいいいいいいいいいわぁああああああああ!!!!!」
「ゆえに、無抵抗を装った逃げなど、断じて許さぬッ!!!! ──フゥンッッ!!!」
「えっ!!? ぁぁあ!!…──」
──…GASHIッ!!
──投げ技【ジュードースルー】…(→+中P)
[背負い投げに近い技。“柔よく剛を制す”の一手。]
[威力は高くないが、間合いを整えるにはうってつけだ。]
──BANNNッッッ………
はぁ、はぁ……っ。
……はぁ…………。
──……ど、どうして…………………?
オレとガイルさんは……。
────闘わなきゃならないんだっ…………………?!
しょ、初対面だったとはいえ………。
さっきまで、なんとなく仲良さげな…空気だったのに…………。
肩がぶつかったとか、誤解とか、そういう喧嘩のきっかけもなかった……。
ほんとに、なにも……なかったはずなんだ……。
つまり……
オレたちの間には、恨みも怒りも──0。
ついさっきまではそうだった…。
…少なくとも、オレがお腹壊して…トイレ行くまでは…そうだったはずだ…………。
それまでは優しくて、そして頼もしかった…ガイルさん…。
正直オレはバトル・ロワイアルが怖かったし…心もちょっぴり屈していたけども……、
美馬先輩と、…そしてガイルさんとなら……。希望の道を開けるんじゃないか…って……。
……そう思っていたのに………………。
「──ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!!」
──BUUUNッ!! BUUUNッ!!
──【ソニックブーム】
「う、うわぁっ!!!!」
────…トイレに行くとき……どんな逆鱗が踏まさったというんだ……っ????
「はぁはぁ……………」
「………………ッ……」
……まずい……。
いや本当にまずすぎるっ………!!
『残りカウント』は…たぶん五十秒くらい……。
…長いようで短いとはこのことだっ……!!体は今すぐ終わってほしいと悲鳴をあげてるけど、頭のほうは、もうちょっとだけ考える時間がほしいと訴えている……。
とにかくまずいから……──次の『インターバルタイム』までに…ガイルさんの説得方法を考えつかないと………!!
はぁはぁ………。
考えろ、オレ……!
…なにを考えるって、そりゃもちろん、……何故『今闘わされているのか』について………!
キッカケとなった、トイレ中の『空白の五分間』に何があったかについて考えるんだ………!!
「サマーソルトキッィィクッッ!!!!」
──BUNNNッッッ………
「うわ!? あ、あぶな〜!!!」
「……クッ!! 逃げ足だけは野ウサギ並みか……。まったく、男の風上にも置けんッ…!!」
……もちろん、逃げながら……──考えるんだ、オレぇぇっ!!!
…たったの五分程度……。
トイレから戻った瞬間、鬼みたいな形相で待ち構えていて、気付いた時にはヘッドロックされて…バトルを挑まれるという………。
兄貴分のような存在だったガイルさんが…なんで豹変したのか………オレにはさっぱり分からないよっ!!?
……いや待てよ…?!
も、もしや……。オレの…その……『トイレの音』があまりにも爆音で、不愉快だったから……とか…。そういう理由…なのかっ………?
……そんな、理由で……?
ここまでの殺意MAXに…っ!?
「ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!!」
──BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!!
──【ソニックブーム】
「わ、わぁああああああああああああああっっ!!!!!」
──って、違う!! そんなくだらない理由なわけがあるかっ!!!
お、オレだって、美馬先輩の前だからめちゃくちゃ気を使って用は済ませたし……。
ていうか音が漏れるはずなんてないしっ……!! そんな理由は絶対にあり得ない…。
……いやいや、そもそも理由がどうこうじゃなくてっ……!! そうだ、仮に音がちょっとでも聞こえてたとしても……!!
──あんなにナイスガイだったガイルさんが…そんなちっちゃいことでキレるわけがないだろっ……。
…そりゃたしかに、ガイルさんとはこの場が初対面……。
この人について、分からないことや得体の知れない部分なんてまだまだ山程あるさ………。
なんで、アメリカ人なのに日本語そんなに上手いの?!──とか。
あの筋肉と格闘術、どういう人生送ったらそうなるんだ!?──とか。
「──ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!!」
──BUUUNッ!! BUUUNッ!!
──【ソニックブーム】
……その『ふぉねっふー』ってのはなに?!! ──
手からグルグルと火みたいなの出てるけど、アレなに!? 武器!? 魔法!!?──
無限に繰り出してきてるけどなんの武器を使ってるの?! ガイルさん、あなたは本当に人間なんですか!?? ──とか……。
…あぁ、そうだ……。
信じられない技といったらこの……、
「…クソッ……。──このッッ!!!」
──GUIッッ
「え。──お、おわっ!??」
「──フンッッッ!!!!」
──BAANッッッ!!!!
──【真空投げ】…←タメ→+強K→中K0同時押し。
[『無』を掴んで投げると、掴まれてもない相手がなぜか吹っ飛ぶ。]
[距離なんか関係なし。……もはや、バグとしか言いようがない『ガイル専用チート技』]
──バンッッ
「ぐっはぁああっ……!!!!!」
…どれだけ離れていようが、触れられてもないのに宙へ投げ飛ばされていく……、
「合気道か?!」とか「超能力か!?」って突っ込みたくなるくらいの、意味不明な投げ技も……──。
──質問したくてしたくて仕方ない……。
とにかくただ者じゃないことは確かな格闘家、それがガイルさんだ……。
…だけど……、
それでも、…ガイルさんだってオレや美馬先輩のことは詳しく分かっていない……そんな中でもっ………!!!
オレたちはさっきまでのコメダで……和気あいあいと食事を楽しんで…………、
お互いの確かな『心』を分かりあえたはず………!! オレとガイルさんは信頼関係にあったはずっ…………!!
ガイルさんが…この地獄みたいなゲームに巻き込まれた中でも、誰よりも立派で、優しい『男』だってことを──少なくとも、オレは分かってたはずなんだっ………!!!
それだというのに……。
一体、なにが…。
なにがきっかけで…こんな……ことに…………。
オレはガイルさんと闘いたくないのにっ………!!
「──フンッッッ!!!!」
──BAANッッッ!!!!
──【真空投げ】
「ぐえっ!!! …ま、……また…………?」
…まぁ闘うって言っても、実際はただの一方的なボコボコタイムだけどさ…………。
う、ぐぅぅ……! あたま、痛い……っ!!
「……はぁっ、はぁっ、……っはぁ……」
……あれ?
……いや、待てよ……!?
投げられて、頭をゴンッてぶつけたその瞬間──ふと、ひとつの疑念が……脳裏によぎった……。
──“…だけど……。”
──“ガイルさんだってオレや美馬先輩のことは詳しく分かっていない……。”
──“オレや『美馬先輩』のことは……”
「──っ……!!」
……あの時、店内にいたのはオレを含めて三人…。
ガイルさんと、美馬先輩とで三人だった………。
もちろん、これからする考察には……なんの証拠もない。言ってしまえば、ただの憶測。……いや、悪意ある邪推とすら言えるよ……。
──だけども、……可能性はそこに賭けても良いくらいだ……………。
…オレもバカじゃない。
前々からずっと、『彼女』はオレに、なーんだかイヤな視線を注いでいたことは…気付いていたけど………──もしかして。
「…『また』、か。真空投げが気に食わんと言うなら仕方ない。俺の肉体で味合わすのみだッ!!! ──フンッ!!!!」
──BANッ!!
──【しゃがみ蹴り】
「わ、わわわ、わっ!!!?」
これは…これは──全部……美馬先輩の仕組んだこと…………!?
オレを亡き者にする為、…彼女が…ガイルさんにウソを吹き込んだんじゃないのかっ…………?
…………………………。
……い、いやいやっ!? なに考えてんだオレっ!?
それって、あんまりにも……最低な妄想じゃないか……っ!! 美馬先輩からしたら「は?」ってレベルの冤罪だぞっ!?
初めて出会った時、美馬先輩は言ってくれたんだろ!
オレに、「私を助けて。信頼して」……って……!!
……くっ、それだというのに……。せっかく出会えた信頼する先輩へ……なんて酷いことを考えていたんだ…オレは。
…疲れているのか?! オレは……っ!!
「ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!!」
──BUUUNッ!! BUUUNッ!!
──【ソニックブーム】
「うわ!! ──ひぃっ!! ──ぐっああっ!? いっ……たあぁ……っ!!」
──…いや、そりゃ、疲れてるよな。……オレ………。
雨のように絶え間なく降ってくる攻撃に、避けようのない未知の技《真空投げ》……。
ここまで長時間避け続けてきたけど…あいにくオレは全てをかわすほどの超人なんかじゃない……。それができるんなら高木さんにここまでからかわれてないよ…………っ。
顔も体も……もう何発喰らったか分かんないくらい、ボコボコ……。
打撲って言葉の辞書が身体中に刻まれてるレベルだ……。
身体は歩くだけで軋むように痛むし、顔の違和感なんかスゴイ…。多分、目とかお手本のように腫れ上がっていると思う……。
おまけに今は真夏……。よりにもよって全く空調がない炎天下、外での闘い……。
ミンミンゼミの声援なんか励みにならない……どころか、イライラブーストにしかならなくっ……!
オレは…もう膝をつくほど………、
限界だった………………。
『──K.O.』
「あ…」 「くッ…!!──」
『────Time Over』
「──ここまで…かッ」
……これで、五回目のKO。
毎回聞こえてくる、どこかからの野太い声が……まるでゲームのアナウンスみたいに休憩時間を告げてくる……。
…ガイルさんは戦闘態勢を立てた時、必ず、『Round 1,──FIGHT』との声が遠くから響いて、…そして九十九秒が経ったと同時に、この『K.O.(以下略)』が響くんだ……。
…インターバルタイムは、およそ二分ほど……。
そのあいだ、ガイルさんはほとんど動かない……。
唯一することといえば、乱れた髪をクシで整えるぐらいで……まるで銅像みたいに直立不動だ……。
「はぁはぁ…はぁはぁっ………! はぁ、はぁ……」
「………ぐうッ…」
あの声の主は誰で……どこにいるのか……。
そもそも、なんでガイルさんはその声に従ってるのか………。
…オレには全くさっぱりだけども……。(そのサッパリさをこの重苦しい身体中に分け与えてほしいくらいだっ……!!)
ともかく、オレはこの時を…。
インターバルタイム──休憩時間だけをずっと待って……。とにかく逃げ続けてきた………!!
戦闘中は全く聞く耳を持ってくれないガイルさんも、この時間だけは拳を止めてくれる…。
会話ができる…チャンスの時間なんだ……っ!
一回目は「あの……」で終わって、
二回目は「ガイルさ……」って途切れて、
三回目は「が、ガイ……」止まりで、
四回目なんて「……しつ、質問……」が精一杯。
疲れと痛みがひどすぎたせいで、まったく有効活用できなかったインターバルタイムだけども……っ。
分からないことは山積みな今………。オレは言葉の続きを………!!
オレは…ッ、疲弊する体にムチを打ってでも……──ガイルさんと話し合わなきゃならないんだッ────。
「……はぁ、はぁ…………。ぐッ、…美馬先輩…ですよね……ガイルさんっ………」
「………なんだ、西片」
これから話すことは……自分でもヒドいって分かってる。……最低の勘違いかもしれない。
でも……もうそれしか、思いつかないんだ……。
今は……とにかく、ぶつけるしかない……っ!!
「も、もしかして……っ……。はぁ、はぁっ……ゴホッ! ゴホッ……っ。──」
「──……『西片を殺せ』って……そう……言われたんじゃ、ないですか……ガイル、さん……っ」
「…聞こえていたか」
「……っ!! …く、くそっ………………。はぁっ……はぁ……っ……──」
『聞こえていたか』って……それ、本当だったのか……!?
美馬先輩が……っ……!!
そんなっ……!? ……ぐうぅっ……!!!
「──美馬先輩に……なに…言われたか…分かりません…けど……………、オレを…信じてくださいっ!!!! …あの人の話は、全てウソなんです…!!!」
「…なに」
「そ、そりゃ…あの人が何企んでるかとか…嘘ついてる証拠とか……オレ…頭悪いんで分からないし…説明できませんよ………っ。──」
「──で、でもッ…ここまで、5Rも闘ってきて…分からないですかッ!?! オレが……そんなに殺されるほどの人間じゃないって……!! 誰かに恨まれるような奴じゃないってことを……ッ!!──」
「──…ってそんなの自分で言うのも、色んな意味でナンセンスですが……。…でも…と、とにかくッ!!!──」
「──オレを……信じてくださいッ!!! 本当に……お願いしますっ……!!」
「……」
「ガイルさんッ………!!!!」
…息があがって、肺が潰れそうになってるのを思い出したのは言い終えたこのときだった……。
『過労死』って死因、授業でつい最近習ったけど……。次の6R目の頃には……多分オレはそれで死ぬ感じだと思う……っ。
インターバルは、たった二分しかない……。
もうあと残り何分残ってるかなんて分からないけど…………それでも、今だけは……!!
ガイルさんが拳を止めてくれてる、この一瞬に……。
オレはこの今に人生の全てを賭けたんだッ………!!
「……………。──」
…何を考えてるか分からない表情で対面し続けるガイルさん…………。
お願いだ……!
聞いてくれ……! 分かってくれ……!! 頼むからッ……!!!
オレの心が通じてくれ………ッ!!!
オレの声が……この心が……届いてくれ……ッ……!!!
オレは……オレは、あなたのことを……。
──強くて、カッコよくて……どこまでも真っすぐな、あなたのことを……。
「──…………。──」
もっと知りたいんだッ…………──────!!
「──…恥を知らんのなら…教えてやるッ!!!」
「…え………」
「…あれだけ彼女を苦しめ、辱め……ッ。それでいていざ自分がピンチとなれば…サチに全部の罪をなすりつけるとは………」
「えっ…」
「…なにが『ここまで5Rも闘ってきて分からないですか』…だ? 俺はもう十分分かったつもりだ。散々逃げ回り、休憩時間を悪用して御託を並べる……。──」
「──そんなお前の本性がッ……!!──」
…え。
「──恥を知れッ!!! 残り十五秒…このラウンドで終わらせるッ、西片ッッ!!!!!」
…………………ッ…。
…失敗…………?
う、嘘だろ………!?
…オレの心からの思いが……全く伝わっていない……!
それどころか、余計火に油を注いだ結果……。
レギュラーもハイオクも軽も全て注ぎ入れたような………ガイルさんの……──鋭い殺意しか生まれていないっ………!?
こ、これって………『闘いにおいては話しても無駄』…という教訓の現れなのか………?!
いや……他の人だったら……説得できてたのか?
オレが口下手だから……ダメだっただけなのか……!?
残り休憩時間は九秒…、八秒…、七秒…………。
一秒ごとが異常なくらいに速すぎるっ…………!!
この短い時間で…オ、オレは………。
オレは一体どうすればいいんだ…っ!!?
か、考えろっ……。考えるんだ!! オレの脳みそ、さぼるんじゃない!! 働けぇぇぇっっ!!
そ、そうだ…!!
高木さんなら……。
あの人なら…同じシチュエーションの場合、どうしたかを考えてみよう!!
…いつもオレより一回りも先を行く……彼女なら、この緊迫した状況でどうしたか……………っ。
え、えーと……!! くそ、思い出せ……!
今までの高木さんとのやり取りを……全部……思い出すんだ……!!
高木さんなら、………高木さんならきっと………ッ。
きっと……………………ッ。
──五秒、四秒……、
「覚悟をするんだな、外道ッ………」
「いっ!!!」
………………………………ダメだ…っ。
なにも……、
…全くなにも思いつかない………………。
…くっ。
……ふふ……あはは……。
考えてみれば……当然か……。
彼女の思いを読み取れるなら……、
オレはここまで負け続けていないのだから、さ……………────。
……残り三秒が経過したとき────。
「…………」
────……すべてを諦めたオレは、不意に思い出した。
…そういえば、学ランの懐に『支給武器』──拳銃があったっけ、って。
……残り二秒が経過したとき────。
「…………高木……さん…」
「むっ…。──」
────気づいたら、もう手は懐に伸びてた。
弾は……入れてある。……撃てるかどうかは分からないけど、西部劇を何本も観てきたオレの勘がなぜかこう言ってた。
「──いける」って一言のみ。
「──なッ!!?! き、貴様ッ──…、」
「………」
……そして、残り一秒が経過しよう、そのとき────。
────もう、何もかもがどうでもよくなって。
………オレは、銃をガイルさんへ向けた。
「……………。オレだって……ッ」
「っ……に、西片……ッ……」
……さっき、『高木さんならどうしたんだろう』とか頭一杯に考えていたけど……、…オレはそのことを後悔したよ………。
オレだって、…ガイルさんからした美馬先輩のように…守りたい人がいるんだよッ。
オレだって…ただ殴られて蹴られて掴まれて…そして殺されるわけにはいかないんだッ。
「……………っぅ!!!」
………卑怯極まりないし、…本当は撃ちたくない相手だけど、…もう仕方ない……。
「…西片アァァッ──…、」
────この闘いに勝つには、これしかないんだッ…………!!!
…
……
………
“…あははー。顔赤いよー。”
“…じゃ、また明日ね。交換日記忘れないでね?”
“じゃあね、────西片!”
………
……
…
「………高木さん……」
残り0秒が経過。
『ROUND 6』の声が響いた、その瞬間……オレは────。
カラン──……カラ……カラカラ……
……コン……。
「……なッ。………に、西片…………?」
「…………」
────銃を……遠くへ。思いきり放り投げた。
「…な、…。──」
「──なんの真似だッ……西片………」
「………当たり前だろっ…」
「なに…!?」
…顔ギリギリのところで、ピタリと止まるガイルさんの拳。
視界を覆うその拳の向こうでも分かる、…その面を食らった表情。
「これをやっちゃ…おしまいなんだよッ…」
「……西片、何が………」
「オレはこのバトル……殺し『抜き』の、ぶつかり合いでやりたいって言いたいんだッ!!!!」
「…っ!!!」
…一瞬ではあったけども、その驚きの表情のガイルさん。
──さっきまで見せていた怒り一色の顔とは対象的な、…憤怒のない顔に。
オレはガイルさんの顔に憧れ、仲間意識を持っていた。
…穏やかな顔つきのガイルさんが『好き』でいたんだ。
「大人はみんな『争いは話し合いで』とか言うけどさ……そんなのは違うッ!!! 男なら…男なら己の力を見せ合い、ぶつかり合いッ、そして互いを鼓舞してこそ、初めて分かり合えるんだッ!!!──」
「──そうだろ!! そうだよなガイルさん!!!」
「…………」
「…だったら分からせるまでだ…!! オレの思いを、本当の気持ちを全て……、分かり切るまでバトル…闘ってやる…!!! 拳で、届けるんだッ!!!」
…そして、オレは…。
────もしかしたら、高木さんの…。彼女のこと『も』…、また…………。
……いや、これ以上は言わないでおくか。…小っ恥ずかしいし。
まぁ、いいや……。
とにかくオレは、あの二つの笑顔を……オレが好きなその笑顔たちを……取り戻し………、
守るため……………っ!!!
「…西片、急に敬語をやめたな。その意思は何が理由だ?」
オレは遠く転がる銃を一目して、ガイルさんへを真っすぐ見据えた───。
「……これで、立場は『対等』だよな………ッ」
「……フっ。……面白い、ならば見せてもらおうじゃないか……。貴様の…『思い』やらを…ッ!!──」
「──確かみさせてみろッッッ!!!! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!!!!!!!」
「ッ!!!!!!」
◇
──【FIGHT】────ッッ!!!!
◇
「──フンッ!!!!!!」
──POWッ!!!
至近距離…ともあって想定はしていたけど、ガイルさんが我先に繰り出したのは『しゃがみ蹴り』…!!
分かっていても打てない変化球みたいに、スッと伸びてくるその脚をかわすことできずッ…、
「ぐうッ!!」
オレはもろに食らって滑るように後退りさせられた……ッ。
…ぐ…痛いッ…これ絶対、ヒビ入ってるやつ………ッ!!
正直痛みでもう叫びたいくらい…本気の一撃だっ……。
だが……痛みなんかに……。
そうさ…!! たかが痛みなんかに、オレの両足は屈してたまるものかッ!!!
地面をつかむようにして踏ん張って──必死で、立ち上がってみせた……ッ!!
「ぐううッッッ!!!」
「むっ!! …く、西片………。…行くぞッ!!──」
…ガイルさんの次なる攻撃ッ………。
『行くぞ』の声を込められた、その乱発攻撃も……オレは想像できた…!!
「ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!!」
──BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!!
「…来たッッ!!!」
巣箱を開けた途端のハトの群れみたいに……ッ、一斉に飛び出してくる『ふぁねっふーファイアー』……!!
かわせるものならかわしてみろ、と言いたいみたいに……上下左右から隙間なく飛んでくる回転軸は、脳内による避けルートの構成を阻止してくる……ッ!!
…考える暇もなかった…ッ。
一発、また一発ッ……!! 遠慮も容赦もゼロのファイアーが、顔に、胸に、腹に突っ込んできて…ッ!!
歯が飛んで、血がにじんで、唾液まで巻き散らかして…オレの体が、空中でバラけそうになる………ッ!
「…がアッ!!! ぐうッ!!! イッ!!!!」
欠けた歯の違和感が、神経を直接殴ってくる…ッ。
パンパンに腫れ上がった右目から溢れる、嫌な液体が染みて苦しかった…ッ。
だけど、考えろッ! 思い出せオレッ!!
──……このくらいの痛みッ……あのガイルさんの『拳』に比べりゃ、まだ軽い部類だッ!!!
…ギリギリ耐えられるとなればッ…!!!
「この…このッ!!!!」
────PANッ!!!!!
「な、なんだとッ!!?」
────オレは両腕をクロスさせて…、胴体や顔の前に重ねる…ッ。
ファイアーの直撃は上腕筋に任せ、胴体や顔への直撃を防ぐ…──いわば『ガード』ッッ!!!
…勿論、腕の悲鳴は甲高かったけど、…肉体全身へのダメージは防げるから、まだ戦闘への残り体力は温存できる………ッ!!
正直、型なんてなってないし、我流そのものだ。
けど、オレは今──“ガイルさんのガード”を……自分の中に、確かに覚えたッ!!
ファネッフーを受け止める技術を……今、手に入れたんだッ!!!
「……に、西片………。お前は……ッ!! ─栄泉ファネッフーッ!!! ファネッフーッ!!!」
──BUUUNッ!! BUUUNッ!! BUUUNッ!!
「はぁっ……はぁっ……!! っ、はああッ……はぁっ……!!」
…喋りながらもにじり寄ってくるガイルさん……っ。
そして間髪入れず生成されるフォネッフー……ッ。
…余裕なんかオレにはない…ッ!!!
考えろ、このコンマ一瞬でも頭に導き出すんだッ…!! 思い出すんだ!!
次なるガイルさんの攻撃手段……、今までのラウンドで見てきた…彼の戦法を……!!!
この戦いは……そう、ボクシングと将棋を同時にやってるようなもの…ッ!!!
体も頭も、止まってたら即アウトなんだよッ!!!
「…クッ…西片…ッ!!!」
「……っ!!」
…!!
そうだ、そうだ……!!
これまでの闘いの軌跡──それはつまり、高木さんとの勝負にて…、オレは負けるたびに彼女からこう言われてきた……ッ!
“西片はクセがバレバレなんだよ”
────オレの敗因はいつも『クセ』…ッ。
単純なオレはいつもそのクセに気づかず高木さんに看過され玉砕していく……。
…本当になかなか曲者だよ、高木さんはッ………。
…つまり、
……どんな一流プロ野球選手…どんな首位打者でも打席前は己の『ルーティン』を成すもの……ッ。
…オレは見切ったぞ。
ガイルさんの次の技は……ッ、
「……ハァァァァァッッ!!!!!!!!」
───(←タメ→+強K→中K0同時押し)
──来るッ……!! あの『真空投げ』だッ!!
触れずに投げる……武道の極致…ッ!!
わずか一瞬……でも、出す前には必ず前後に一歩だけ踏む────『クセ』が…ッ!!
ガイルさんにはあるッ……!
「フンッッ!! ──…、」
──それはお見通しだッッ!!!
「喰らええええええええええええッッッッッッ!!!!」
「──なッ……!?」
投げ飛ばされたらもう手も足も出ないッ。
ならオレは、投げる前に──『投げ返す』までだッ!!!!
「オラァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!」
飛来してきたファネッフーを右手、左手でギッチリ挟み込み…掴むッ!!!
……ズルリと滑る、熱をもった刃…。
指の皮が裂け、掌の肉がえぐれ、血と火花が散る……!!
──でもそんなの、もう関係ないッッッッ!!!!
────痛みを雄叫びで発散して、オレはガイルさんへぶん投げたッ!!!
「ぐぁッ!!!」
──BAGYAAAANッ!!!
「…あっ!!」
…あ、当たった……。
…初めて……ガイルさんにダメージを与えた…………!
顔がフラついている……。めまいに堪えるように、その巨体が……揺れている……ッ!!
あの絶対的な存在に……オレの攻撃が、通じたんだ……ッ!!!
「…いや、違うッ……!! これはあくまでガイルさんの技………。オレが生み出した攻撃なんかじゃない……!!! オレの拳で、心で、ぶつけたわけじゃないッッ!!!」
「ぐうッ…。──」
「──はッ!!!?」
…ああ、そうだッ……!!
もう6ラウンドも闘って……まだ、オレは“この人”に一歩も近づけていないッ!!!
オレ自身の拳を──この両手でつかんだ想いを……ッ、
まだ、ガイルさんに届けられてないんだッ!!!
だったら……行けるのは、今しかないッ!!!
……その巨人が、わずかに揺らいだ……今しかないんだッ!!!!!
「今しかないだろォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!」
「──来るかッッッ!!!」
…来るか、と言われてもオレには必殺技とか持ち合わせていないさっ…!! ガイルさんと違って…!
修行もなけりゃ、格闘術もない…。喧嘩ひとつしたことない、あいにく普通の中学生だからなッ……!!
そんなオレにできるのは、たった一つ。
“シンプルな、まっすぐな拳”だけだッ!!!!
──太陽に誓うように、拳を高く掲げるッ!
空さえも砕く覚悟で、振り下ろすッ!!!
ガイルさんに飛び掛かり…渾身の拳を重力のまま──叩き込むッッッ!!!!
「……クゥッ…!!! ──『サマーソルトキック』ッ!!!!!」
「ぃぎッ!!!」
…対して、ガイルさんはバク宙したかと思えばあの特徴的な長い脚で、オレを蹴りかかってくる…!!
サマーソルトキック…。……多分、ここまできて初めて投じられた隠し必殺技なんだろうッ………!!
無駄の動き一つないその回転蹴りはオレの胴目掛けて襲いかかってくる……ッ!! 避ける間なんて当然の如くなかった………ッ。
…だけど礼を言うよ、ガイルさんッ…!!
『先読み』……ッ!!
オレが拳の打点に向けるのは、アンタ自身に対してじゃないッ……。
──アンタが何かしら繰り出してくる攻撃──『拳か脚』狙いでオレは拳を突き出したんだッ!!
──GAKIIIIIIIIIIIIIIIINッッッ!!!!!
「ぐうッ!??」 「うッ…!!」
…分かるだろうッ?
打点を打点で受け止めることは…相殺ッ……!!
すなわち『ガード』になるのさッ…!!!
…身体はもうガードによる痛みに慣れてきた……ッ!!
この痛みを受け止めきれるほどの余裕がオレにはあるッ……!!
…アンタもその通りなはずだガイルさんッ!!
オレと違って百戦錬磨と語っていただろう? だから今更この打撃のぶつかり合いはどうってことないはず…ッ。
──だが、…『サマーソルトキック』を防いだオレの攻撃が……、──どうやらガイルさんには『想定外』のアクションだったらしく…ッ。
「な…俺の………サマーソルトキックが…まさかッ………」
彼にはハッキリと『隙』が出来ていたッ…──!!!
…勝てる……自信はなかった。
……何もかも、これまでどんな勝負事も負け続けたオレが、ガイルさんを相手に成す術もないと思っていた…。
だから…オレはこの一瞬…。
ガイルさんに想いを打ち付ける可能性のある…勝機を見えたこの瞬間が………、…正直楽しくはあったッ!!
希望の光を掴みかけた…掴みかけではあるけど……その瞬間に歓びを感じたんだッ!!
ならば、…もう決着さッ!!
オレの…──ッ。
オレだけの…──ッ。
オレによる────勝利ッ!! このバトルに勝ってみせるんだッ…!!!
隙だらけの身体へ、オレは叩き込むッ──。
お返しとばかりに…蹴りを大きく振り切って…叩き込むッ──!!!
怨みも、妬みも、マイナスな感情は一つもない魂の蹴りッ!!!
オレは、…生きてる実感を味わいつつ………、
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!!!!!」
「なっ!!!!」
──BAKIIIIIIIIIIIIIIッッッ──…、
初めてガイルさんへ、一撃を投じていったッ──────。
──パシッ
「…え?」
「まだまだだな。モーションが大き過ぎる。格闘とは常に60fpsのハイスピードで生きる世界だ。西片。──」
……え。
…あっさりと………。
…いとも簡単に……、片手一本で受け止められた…オレの………蹴り……………。
「──しかし案ずるな西片。お前の格闘発想は秀逸。特に感心した点は、ソニックブームを投げ返した点だな。…今まで闘った中で、その術を講じた者はいなかった」
「…え………っ」
「…そうだな……。このバトル・ロワイヤルが終わった暁に、リュウやザンギエフの奴にも教えるとしよう。──」
「──いや、『CAPCOM』に…か────。」
…ガイルさんの右手にて、
『青い瓶』が持たれていることに────この時気付いた。
その瓶をガイルさんは容赦することなく……、呆気にとられるオレの頭へスイング……………。
──バリンッ────
内容液の冷たさを感じるのを待たずして、オレは意識が闇へ落ちていった………………。
「…いっだ────…、」
………
……
…
「…くはない…………。え? ──『痛くない』………?」
◆
………
……
…
──…『青ポーション』…ですか?
────ああ。打撲、裂傷、軽度の骨折…。こいつを一瓶分かぶるだけで、どんな怪我でも癒える。…ただ蓋がなくてな、こうして割るしかなかったのだ。…『ゴールデンアックス』とは末恐ろしいゲームだ。…すまない。
──…ごーるでん…あっくす?
────…なんだ知らないのか? …ハルオなら目を輝かして飲み干すアイテムなのだがな……。
──えっ、の、飲むヤツなんですか!? それとも塗るタイプなんですか!?
────……塗り薬だ。言うまでもないだろう、ハルオはそういう男だ。
────俺の、心の友…………ハルオならな…………。
──…………はい。
────…西片、『ゲーム』は好きか?
──ゲ、ゲームですか……。いや、そりゃ……好きって言われりゃ、好きなんですけど……、
──………あ、いや。うーん……好きじゃない、かもです。いろんな意味で……。
────フッ。そうか……。
────俺はこれまで、世界中。中国、ブラジル、日本と、飛行機をまたにかけて戦い続けてきた。1991年、稼働以来何度も。何十度も。
──1991年……。
────相手は力士だったり、タイの格闘家だったり……中には人間ですらない存在もいた。
────そんな相手と、何度も何度も闘い続けて……そのたびに、思っていたことがある。
────「なぜ自分は、闘っているのか」ってな。
──……理由もなく…闘ってきたんですか…?
────いや。理由はある。
────俺たちが闘うことで……喜び、熱狂する者たちがいるからだ。
────画面越しに、レバーを握りしめる老若男女たちのために……な。
──………。
────…すまない、西片。
──い、いや! もういいんですってガイルさん!! こうして分かり合えたんだし、オレも、もうどこも痛くないんですから~!!
────…違う。お前の怪我のことを詫びているんじゃない。
──え?
────お前の戦いぶりは、見事だった。
────心のこもった拳は、どんな必殺技よりも強い。
────あの魂のこもった一撃……興奮と、熱気……。
────まがい物じゃない、本物の“力”だったよ。
────そんなお前の真価を……6ラウンド目になるまで見抜けなかった。
────それどころか、卑怯だのなんだのと……お前にあらぬ暴言を吐いてしまったことを、悔いている。
────……すまない。……本当にすまない。
──………………。
──…ふざけないでくださいよ……。謝って済む問題じゃありませんって……。
────…………。
──…そうですよねっ!! ガイルさん!!!!
────…………。
──…いくら謝ろうが……あの…『女』はっ…!!
────…っ!!
──仮に土下座されようが陳謝されようが……、許す気なんてありませんからっ……!
────………!!
──…少し用事…いいですか? 『ヘリコプター』に乗る前に、ちょっとだけ。
────西片…!
「行きますよ、ガイルさん!」
ブロロロロ………
ブロロロロ…………
【支給品解説】
【青ポーション@ゴールデンアックス(ハイスコアガール)】
【概要】
回復ポーション。
瓶を割って内用液に触れることで全治癒できる。
【アシストフィギュア No.02】
【タイガーヘリ@究極Tiger(ハイスコアガール) 召喚確認】
【概要】
ガイルのアシストフィギュア。
アーケードゲーム『究極タイガー(1987)』の自機。
軍用ヘリコプター。自我なし。ショット、ボンバーを撃てる。
◆
………
……
…
アホのガイルの奴……。
あんだけ「即死でやってね?」って念押ししたのに肉弾戦やりやがったし……。
さっさと高木ロボの首やっちゃえよ。骨狙えよ。てゆーか、私が持たせたナイフ使えってーの。
……もう、いちいち注意するのもだるいし、なによりあいつ無駄にワチャワチャうるさいから、ブルートゥースハメちゃったじゃん。ノイキャン全開で。
マジうっざ……。
──というわけで、私は決着(笑)がつくまでの間、『100%片想い』ってLINEマンガで暇をつぶす羽目になった。
「…はぁ………。なーんか…まこっちが勧める漫画って……ウザイのばっかな気がするわ………」
はァ…………。
暇つぶしがてらに読んでみたけど……本気でこの漫画苦痛……。ページを捲るのさえ苦行すぎ。
話は典型的なオタク大好きラブコメって感じで冷めるし。なにより登場人物が痛すぎて全く共感できないんだけど。
なにこれ?
主人公のキュン子ってやつ…、いつも彼氏みたいなやつと弁当食べてるけどさぁ。女子の友達とかいないわけ??
いちいちいちいち語尾が「〜だもん」とか「〜なの♡」とかで鳥肌立つし……、こいつの交友関係が気になってストーリーどころじゃなかったわ。
てゆうわけで、私的には五巻がギブアップ。
これを全巻特に気にせず読める人って、ほんと悩みとか人間関係の不安がない幸せな人なんだろねー。小陽ちゃんがつるんでる二木みたいな。(笑)
マージ、うらやまって感じ?(笑)
ま、そんなマンガとの付き合いは二十分ほどで終了。
アホ達そろそろ殺し終えたかな〜だなんて、イヤホン取って、外の様子を見てきたらさぁ。
「サチ。妖怪腐れ外道にも劣るお前にはもう話すことなど皆無だがな。…二つ、答えてもらおうじゃないかッ…」
「…美馬先輩………ッ」
「…………はァ…」
『【新田】に気をつけろォオオ!!!!』って、どっかのバカがハッキリとその名前を叫び…、
んで、それをBGMにやたら睨みつけてくる筋肉バカとロボ……。
筋肉バカはいやらしく私の胸ぐら掴んできて…、さも「お前の悪事は全部見抜いたぞ」みたいに顔近づけてくる………──。
──この現状……。
…なにこれ。
…………いや最悪でしょ。
「一つ目だ。何故仲間割れを先導した? もっとも理由が理由なら、俺もお前をまだ見捨てたりはせんがな──…、」
「はい、質問。なんで私を悪と決めつけんの?」
はぁ……。
あー、もう…。
なーんかどうでもいいって感じ………。
「…なんだ? …話を遮るな──…、」
「いやだからなんで、私をそう悪者と決めつけてくるの? 今日会ったばかりなのにそう睨んで。なんなの? ねえ私を殺したいわけなの?」
「…おいサチッ…!! そんな話をしていないだろッ!! いいから聞け──…、」
「は? ちょっと待て、聞けって」
「……こいつ…」 「………」
「なんでさあ、そうやって私を一方的に加害者って決めつけるの? ねえなんで? なんでそう西片くんの肩を持つのか一回説明して? ……あ、いや、説明いらないわ。──」
「──まず謝ってよ、じゃないとその質問だかなんだかも聞く気失せるから。──」
「──ほんっと、そういうのムカつくんだって。ねぇ」
「………」 「…話にならん。──」
「──ならもういい。二つ目は『高木さん』という子の話だ。お前は何かその子について行方を──…、」
「あー知らな~い。知らない知らない興味ないし~。てかさ、謝らない癖に自分のしたい話はするわけ? 会話能力陰キャになってるじゃん。ガイルさん…大丈夫?」
「……。……言ったろう、西片。こいつと話すのは無駄な時間だと」
「………で、ですが……。…美馬先輩──…、」
「うわ怖っ。西片くんこわぁ~……。急に話しかけられちゃったし…こっわ……。ねぇ西片くん絶対いじめられっ子でしょ?(笑)オーラからしてそういう感じ出過ぎだしぃ〜?」
「………行くぞ」
「…はい………」
「は?」
…もう。
なにこいつら…。
急に…なに? なんなの???
いや考えてみてよ。
片や陰キャでしょ? で、片やキモい筋トレオタクじゃん?
それだというのになんで? 何がどう繋がってコイツらはそんな「わかり合えました」みたいな展開なってんの?
どこにそんな共通点あったわけ? 意味不すぎてちょっと面白いわコイツら…。
そんなアホ二人は私を用済みと判断したら、不満そうにズカズカ背を向けだしていって……。
そのまま、どっから出したか分からないヘリコプターへと乗り込んで…。
──ブロロロロロロ………
「……………」
……飛んで行った。
────…私がマンガ読んでる間に…………なにがあったわけ…?
【1日目/B5/上空→タイガーヘリ内部/AM.05:26】
【西片@からかい上手の高木さん】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】???
【思考】基本:【対主催】
1:ガイルさんを熱くリスペクト。
2:高木さんを探したい。
【ガイル@HI SCORE GIRL】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】くし、ポーション瓶@ゴールデンアックス(ハイスコアガール)
【思考】基本:【対主催】
1:西片を育て上げ、主催者を倒す。
2:上空から『高木さん』を探す。
3:襲われている参加者・力なき者を助ける。
4:サチは屑……。見捨てる。
5:ハルオ…生きろよ……っ!
【コメ●珈琲店前】
【美馬サチ@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】
【状態】唖然
【装備】なし
【道具】???
【思考】基本:【優勝狙い】
1:つかアイツら置いていきやがったし私の事………。
2:私ボッチじゃん……。……ウけるぅ…。
最終更新:2025年08月10日 13:54