『いいの、いいの(爻ノ篇)』
「……やれやれ。これだから興味深い物だ、人間という生き物は…」
「え? デデルなんか言った〜??」
「……いや、気にするな。たかが独り言だ、うまる」
三階/冷蔵ルーム。薄暗い室内にて。
山積みのブラジル産鶏肉の段ボール箱に寄りかかる魔人・デデル。
今の彼の身体は、箱に刻まれた『消費期限 七月九日』の文字が霞みがちに映る程度には、透明から色を取り戻していた。
右手に持つランプを揺らせば、中でチャポンチャポンと魔力が波打つ。
ほんのショットグラス一杯ほどの、かすかな量ではあるが、彼の『タイムリミット』はか細くも延ばされた形となっていた。
「……フっ…」
らしくもない──と。自分の掌を見て自嘲する魔人。
自らの肉体的苦痛と引き換えに、成功へと終わったうまる流ウンディーネ作戦であるが、考えてみれば参加する理由はデデルに無いのである。
願い事を叶える魔人──とはいえ、この作戦は主の願いから来たものではない。
身を削り、焼ける痛みに耐えても、その対価となる報酬は何一つ存在しない。ゆえに、進んで臨む道理など、本来あろうはずもなかった。
“それだというのに、何故自分は、ランプの魔人らしからぬ行動をしたのか”────。
朧げながらジンジンと未だ熱さを覚える右掌へ、デデルは静かに笑みを浮かべる。
「…あれ? もしかしてまだ痛む感じなの? 魔力戻ったからしたはずじゃんか、回復魔法で…、」
「いや。貴様も何千年間生きれば悟ってくるものだ、うまる。…大人というものはな、理由もなく何かを眺め、ただ物思いに耽る瞬間がある」
「ふ〜〜ん。とりあえず次の願い事は『うまるとお兄ちゃんの寿命五千年にして』で決定だね〜〜。一生ダラダラしたいよぉ〜〜~~」
「…まったく貴様は……。フッ……。──」
うまるは敢えて触れずにはいたが、作戦終了を機にいつの間にやら、呼称が「土間→うまる」へと変わっていた。
この呼称グレードアップの裏腹には、辞書で引くところの『ある二文字』が込められているのだろうが、
魔人は果たしていつ、その意味に気付くことになるのだろうか。
『信頼』という、単純な二文字が──。
「──……さて、そろそろ面倒事を片付けるとするか…。貴様にも働いてもらうぞ、うまる」
「……はいは〜い。はあ〜〜…めんどくさい〜………。──」
ばん、ばん、ばんっ
「──おーい!! マミちゃ〜ん!! そろそろ出ておいでってば〜〜!! ほらほら、そんなとこ寒いでしょ?」
「…うっ、うぅ……。やめて!! は、話しかけないで…!!」
「はぁ……。マスター、もう分かりましたからそろそろ開けますよ。誰も貴方を責めてなどいませんから」
「だ、だから話しかけないでってばぁ!!! …ひぐ、うぅっ………。お願い…だから…。──」
「──ひとりにしてよ…………。うっ、う………」
「……はぁ…………」 「……駄目だこりゃ…」
──ただ一方で、その『信頼』が深まるほどに、心を抉られていく者もいる。
うまるとデデル──二人の間に芽生えた信頼関係。
────自分一人を除いた、その信頼。
場所視点を移そう。
うまるらが今身を置く冷蔵ルーム、そこを区切る分厚いドアの向こう側にて。
体育座りで冷え切る身体を縮こませながら、涙ぐむ少女が一人。
氷点下の冷気と比例するように、心までどんどん冷えきっていく彼女は、
- 『IHクッキングを点けてしまった際、うまる&デデルの苛立ちが傷ついた』──が、一割。
- 『作戦の最中、自分だけ何もできず、無力感に苛まれた』──が、一割。
そして、
- 『自分が一番偉い【マスター】な筈なのに……三人の中で足手まといなのが……辛い』──が、八割の内訳で。
「ぐすん……ぐすんっ………。う、うぇっ……ぇ………え…っ………………」
「「……」」
マミは、先程から冷凍庫ルームに引きこもっていた。
「…まぁ引きこもると言ってもこちら側から開けられるものだがな、冷蔵庫同様」
「…ねえマミちゃん分かるかなぁ……。そのドア、マミちゃんの側だと絶対出ることできないんだよ……? ほっといたら凍死しちゃうじゃん…」
「……え? ……うぅ〜…だ、だからぁ!! わたしのことなんか構わないでって!! ……もう〜っ………」
「…やはり人間はコリゴリな気がしてならない」
「まぁまぁデデル〜…。じゃ、お望み通り放置プレイでいこ〜よ。ね」
「そうだな。…ではマスター。一時間後、生存確認しに参りますのでその時までお休みください」
そりゃマミも寒いだろうが、うまるたちも冷蔵ルームの空調はなかなか堪える。
ドア奥から響いた「えっ?!」という声を無視して、うまるらは冷蔵ルームを後にしていった。
二人の共通認識を直球で示すとするなら、──アホに構ってる暇はまだ無いのである。
三階/調理室。
干物妹モードで調理台に寝転がるうまると、掌を再度眺めるデデル。
火傷一つ残らず治癒しきった──半透明な掌を眺め、デデルは憂いのため息を漏らしていた。
「…ちなみにだが、うまる。貴様の性格上、少し褒めてやればすぐ図に乗るだろうから、先に落としておくぞ」
「………うわぁ~…今脳裏に走ったよ〜…。『テロリン♪』──って名探偵メガネくんみたいに…嫌な予感がさぁ〜………」
「良いか、十八点。貴様のウンディーネ捕獲プランは十八点だ」
「…えー、一応聞こっかな。何点中…っ??」
「五京二千三百八十六兆七千五百十億三千二百五十一万…、」
「あぁもうストップストップ!!! わかったから〜!!! …てか絶対適当数字でしょっ!!──」
「──つまりはこう言いたいんだね? ────『二度目は通用せんぞ』……的な~?」
「…今度は百点満点の回答だ。ただ一つ減点ポイントを考えるとするのならな?──」
「──『一度目で終わらせる策』も添えて、答えてもらいたかったものだ」
「………うん、う〜ん…」
大勢が敵なら、まず一人ずつから────それがモットーのうまる作戦。
一応は成功に終わったものの、欠点の多さゆえに一概に『成功』と括るのは難儀な話であった。
それは、簡単にまとめるなら、『一回きりなら成功と言える作戦だった』──という故である。
ねずみ算ならぬ『ウンディーネ算』で考えた所、現在ホテルには総勢二十六体。それぞれ一階から四階に分散されているとデデルは語った。
一方で、デデルの魔力残量はパーセンテージにして現在18%ほど。
ウンディーネ一体のみで二桁台に魔力度合を乗せたため、単純計算すれば十数体分の魔力がランプには必要となる。
従って、必要分以外のウンディーネは構わずとも良いのだが、今後の身の危険を考え(──というより山井恋への嫌がらせも兼ねて)、うまるらは全員捕獲との結論に至った。
そう。二十六体分。
四階分を往復しながら、チマチマと二十六体を熱しなければ事態の解決には至らないのである。
──今のプランのままでは。
「…たしかにうまるも体力的にムリだし~……。…デデルの手も…ね。一回ごとに回復タイム設けるとはいえ、そんな回数火傷させられるとなりゃ〜………もう懲役三十日みたいなもんじゃん」
「…懲役三十日……。世にも奇妙のか」
「えぇ…知ってんだ…。魔界にもフ●テレビ映るわけ~??」
「………朧げな記憶の残滓だ。そうそう、奇妙といえば我が愚主《マスター》も、二十六回必ずキッチンコンロを点けられる保証はない。──」
「──すべては奴らの弱点である【熱】を突こうとした、この私が浅慮であったのだ………」
「…今気付いたけど、マミちゃん相当マスター特権()で忖度されてる作戦だよね〜……これ~~…」
『熱』という弱点を度外視した、新たなプラン。
果たして『新たな作戦立案』という光明は見えるのだろうか。
ちなみにだがデデル曰く、残りの魔力で叶えられる願いはあと一つ。
先程、うまるは「だったら全部のウンディーネここまでワープさせればよくない?」と言いかけたが、──すぐさま口を閉ざした。
分かっている。喋ろうとした瞬間、頭をよぎったのだ。
「その量のウンディーネを一体誰が熱するというのだ?」や、「その量を収められる鉄鍋をどこから用意する」や、
────「…魔力が少し回復した瞬間、真っ先に『ポテイトとコーラ出して〜』と願った貴様が言うかッ…?」等と、恐ろしいロジハラの嵐を。
──バリバリッ…
「どうした、食え。中々に美味いぞ、このポテイトとやらは」
「い、いや………。違う意味でお腹いっぱいです…。…我がデデル様…………」
──ゴクゴクッ…
「あぁ、コーラとやらも実に美味い。…これだけの味なら、貴様が癖になるのも無理はないなァ?」
「………は、ハハ…(こわっ?! 思い出したかのように怒ってヒートアップしてるよぉ〜〜!!!)」
なんだか干物妹モードだと、やたら機嫌が悪くなる我が魔人であるが──それはともかく。
一体どうすれば。
ウンディーネを捕まえる手段は、他にはあるのか。
どうすればこの危機から、──この居心地の悪い空間からおさらばできるというのか。
かつて、アイザック・ニュートンは空から落ちたリンゴをきっかけに万有引力を見出したものだが。
──ならば今この瞬間、うまるの頭にも『リンゴ』という名のヒントがぽとりと落ちてこないものか。
「…う〜〜〜ん………」
「…まったく………」
うまるはノーベル化学賞に匹敵する頭脳を、心の底からレンタルしたい気分であった。
────ただ、いくら頭を捻ろうとも、難題《壁》は容易く崩れず、越えることもできない。
────人は思索を深めれば深めるほど、かえって袋小路に迷い込む性質を持つ。
────しかし、それでも私は『考える』という営みを無益だとは断じない。
────成功する者とそうでない者の差は、努力や才覚ではなく、『考え方』だ。『考え方』さえ変えれば、閉ざされた扉も驚くほど容易く開くのだ。
────私が何事かを案ずるとき、必ず考えておく事項がある。
────“それは、もう既に『忘れてしまった物事』について、考えるのだ”。
(哲学者 アイザック・ニュートンの遺稿より)
バタンッ──
「話は聞かせてもらったよっ!!! うまるちゃんに魔人さん!!!」
「くっ?!」 「わ、ビックリしたぁ?!!」
冷蔵ルームのドアが突拍子もなく開かれた。
「M●Rのキバヤシかっ!! …また古いネタをあんさんは…」──この時うまるが冷静だったのなら、そうツッコんだ事だろう。
驚嘆を隠しきれないデデル、うまるの両視線の先。
そこに立っていたのは──────【“魔人に忘れ去られていた冷却少女”】。
「いい!! UMAるちゃんの作戦なんかよりも、わたしの方が50,238,675,103,251万倍すごいってことを…このわたしが……──」
「………マスター…?」 「ま、マミちゃん………?!」
──新庄マミは、全身至る所に霧氷をつけ、誇張してるぐらいにガクガク震えながら、──颯爽と現れた。
顔色も悪い。手に持つ月刊マーなんか完全に凍りきっている。
イメージとしては『SAW3』の氷漬けにされた女性に近い姿で、我らがマスターは現れたのだが。
──だが、その表情だけは、いつもの倍以上の熱量を放っていた。
「──マルっとズバっと見せつけてあげるんだから!!! だから聞いて!!!──」
「──わたしなりの…【ウンディーネ一括捕獲作戦】を!!!」
「…………え?」
────事実、デデルらはこの後、二十五体全てのウンディーネを手にすることとなる…………。
◆
用意された習字用の筆と、何枚にも重なる紙──。
うまる、デデル両名の視線が集中する中、マミは第一投を紙へとぶつける──。
閃きのきっかけは、ドアだった──。
一通り泣きはらし、切り替えの意を込めて超能力()の練習をした際──、
内部からは絶対に開けられないはずのドアが、突然、後方へと倒れてきたのだ──。
「はァア──────っ!!!!」
「和田アキ子かっ~~!!」
スラスラスラ──。
マミは、先程から冷凍庫ルームに引きこもっていた。
「…まぁ引きこもると言ってもこちら側から開けられるものだがな、冷蔵庫同様」
「…ねえマミちゃん分かるかなぁ……。その【ドア】、マミちゃんの側だと絶対出ることできないんだよ……? ほっといたら凍死しちゃうじゃん…」
一枚目ッ────【ドア】。
無論、これは念動力が実を結んだ結果ではない──。
老朽化により自然と壊れたまでであるのだが──。
『ドア』が床に倒れ伏せたその時。マミの脳裏に【閃き】が走った──。
スラスラスラ──。
『単刀直入に申しますと、皆様には『最後の一人になるまで【殺し合い】』──をしていただきたく集まってもらいました……!』
そう言い終わると、利根川は持っていた頭を適当な方向に投げ捨てる。
二枚目ッ────【バトル・ロワイヤル】。
「マスター…これは一体……」
「へぇ〜……フジは映るのに、TBSまでは入らないんだ〜デデル。魔界のテレビ事情ってさ!」
「は?」
「…ま、見てなってば~!!」
スラスラスラ──。
「…………弱点か」
A『ねえ、何か…ない? 参考までに水タイプは草と電気に弱いよ〜? …ポケ●ンの話だけどさ……』
「………………。──」
「──…【熱】に弱い。…との伝来は残っているな」
「はぁっ!!!!」
三枚目ッ────【弱点:熱】。
〜【備考】〜
──※少しでも早く煮沸できるよう火力は【強火】が望ましい。
「…って、IHで鉄鍋に火が通るかァッ!!! この小娘がッ!!!!!」
「え…?! え、えぇー……?!! 魔人さんの…マジギレ………」
「はぁっ!!! …はぁ……ぁ………」
「あ、多分嫌なこと思い出して萎えたっぽい」 「…………マスター…」
スラスラスラ──。
四枚目ッ────【弱点:強火!!!】。
そう。二十六体分。
四階分を往復しながら、【チマチマ】と二十六体を熱しなければ事態の解決には至らないのである。
──今のプランのままでは。
スラスラスラ──。
五枚目ッ────【チマチマ】。
「…やはり人間は【コリゴリ】な気がしてならない」
「まぁまぁデデル〜…。じゃ、お望み通り放置プレイでいこ〜よ。ね」
「そうだな。ではマスター。一時間後、生存確認しに参りますのでその時までお休みください」
スラスラスラ──。
六枚目ッ────【コオリゴオリ】。
「……ふぅ…!!」
ここまで書き表し、マミは一旦筆を置く。
弘法筆を誤る──という諺に失礼なくらい、汚い字の習字たちを並べていくが。
極めつけに、最後の一書き──。
「はぁっ!!!!!!!!」
「織田●道か!! G●NTZの仏像に殺されたやつ!!!」 「……うまる、貴様も何故一々ツッコむ必要がある?」
スラスラスラ──。
七枚目ッ────【土間 うまる】。
「……なんだマスター。そのチョイスは…」
「いや分かったよ?! うまる、その意図もうバッチリ読めちゃったからね?! だってこの後マミちゃんが何をしだすか…、ドラマ見てるから履修済みだもん!!!」
「なんだそれは。おいうまる、詳しく説明しろ」
「そ、そりゃ……。『うまるのこと憎んでるから』──でしょ?! ねえっマミちゃん!!!」
「…へへっ…!!」
文字が書かれた紙を全て一纏めにしたマミは、したり顔に似たバカらしい笑みでニヤリと。
うまるを一瞥した後、紙を両手でビリッ。
破いては再度まとめ、ビリッビリッ、さらにビリッ。両手で破けないとなれば足で踏み、ビリビリビリビリッ。
七枚すべてを破き切ったその後──。
「………」
「はぁ!!!」
──習字の紙吹雪を、両手で勢いよく撒き散らした。
「……いただきました…!! …題して──【ウンディーネ捕獲作戦 in マミ】…!!」
「………はい…?」
「──主から魔人へ。令呪を持って命じます…!!──」
「──作戦に伴い、わたしの願い事を一つだけ………叶えてほしいんベェへックシュンッ!!!!」
………
……
…
◆
ウンディーネとは、水の『塊』。
四階廊下。
館内案内図曰く豪華なプールサイドが併設されているとのことだが、そんな案内図を読む暇もなくウンディーネが漂う。
その数実に二十体。二十体もの殺戮水生物が漂っているのだから、もはやプールサイドというより人食サメの水族館の併設だ。
20/25。
──人が絶対踏み込んではいけない縄張り地帯にて。
一匹。
そして、また一匹と。一匹と。
──ゴトンッ
──ボトンッ
なんの前触れもなくして、ウンディーネは次々に生命活動を停止。
文字通りの『塊』が床へと落ちていった。
「う、ゔぶう…~~うぅぅぅぅ…!!!! 寒いよぉお!! 夏なのにぃ〜夏なはずなのにぃ〜〜〜!!!」
「…作戦立案者がそんな情けない姿みせなさんなってマミちゃん~!!」
「うぅうう~……。分かってるから!! んじゃあ…ごほんっ!──」
「──うまるちゃんっ!! そして魔人さんっ!! 本時刻を以て作戦始動────開始!! 行くよっ!!!!」
「らじゃぁアアアアー!!!」
「……やれやれだな。………これだから人間とは…、──」
「──実に興味深い生き物だっ……!」
【ウンディーネ捕獲作戦】
【マミ作戦】
────始動。
〜【行動その③】〜
──三人協力して、ウンディーネを回収。後、粉砕。
──ヒョイッ
「おもっ!!? …いや予想はしてたけどさぁ〜〜……。とにかく重っ!!!」
「うぅう〜ガクガクガク〜〜!!! 寒いよ冷たいよ重いよぉ〜〜〜〜!!!!」
「…だから申し上げたはずです、私一人で運ぶと。…にも関わらずあなた方は聞く耳すら持たなかった…。…せいぜい頑張ってください」
「……うぅう〜〜〜………。『鬼めっ…』とは言えない立場なのが悔しいぃ……。──」
「──で、でも…。でもだよ!! …デデルっ!!」
「……なんだうまる」
「…そりゃ出会って何時間も経たない…お互い信頼しあってるかと聞かれたら即答はできない関係性だよ…。うまるらは……。──」
「──でも!!! それでも…一人だけに重労働任せるなんて…!! そんなのできないから!!!」
「……」
「…薄っぺらくたっていいさ!! 信頼関係乏しくても構わない……!! それでも…うまるらは…三人は『仲間』なんだから!!!──」
「──さっきの作戦の時、『何故キサマが囮役を志願したのだ?』ってデデル訊いたでしょ…?──」
「────これがその答えだよっ!!」
「…………。………ほう。──」
〜【行動その②】〜
──ウンディーネが『凍りつく』のをただひたすら待つ。
【備考】
──全てが氷塊と化す、その時まで。実行者A、B、Cは忍耐するのみ。
「──陳腐ではあるが心には響く回答ではあったぞ、うまる。──」
「──…ただ一つ。願わくば、その発言がワ●ピースからの受け売りでないことを祈るまでだがなっ…!!──」
「──…お任せください、マスターにうまる。……魔人とて、ただ傍観するだけでは飽き足らぬ時があるのですから……っ!」
ふわっ…
「おお!! ウンディーネの塊が浮き上がったよ〜!!! しかも全部! 全部!!! さすがわたしの魔人さん!!!」
「しかも魔界は間違いなくフジテ●ビが映るご様子だ〜い!!!」
〜【行動その①】〜
──B(※デデルが該当)に、
────『一階から四階まで。つまりウンディーネがいる全ての階の温度を【氷点下零度】にして』と願い事を頼む。
【備考】
──※ウンディーネは【熱】に弱い魔物。
──※熱とはすなわち【温度】と意味合いではイコール付けられる。
────※水の融点は『零度』である。
………
……
…
「じゃあ行くよ…!! うまるちゃんに魔人さん!! せーの!!」
「…いや、何が『せーの』ですか? 貴方一人でやる作業でしょうに」
「あ~~もういいからさっさとやっちゃって!! 我がマスター・マミ様!!!」
「はいはい!! 【アルティメット〜〜…──」
「──かき氷作戦】!!! おりゃああぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!」
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリッッッ────
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリッッッ────
〜【行動その④】〜
──全回収後、調理室に戻り、『かき氷機』で氷のウンディーネを粉砕。
【備考】
──※氷の刃がきゅるきゅると唸り、透きとおる粒がほろほろと崩れてゆく。
──※砕かれたばかりの雪のような氷片は、ふわりと舞い、涼やかな音を立てながら器へ降り積もる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリッッッ────
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリッッッ────
「…雄叫びを上げるほどの仕事でないでしょう」
「まぁまぁ!! マミちゃんにやっと訪れた見せ場なんだから!! 念願の舞台に水差さないであげてよ~~!!」
「う…うるさいんだって!! …二人して、わたしをイジれば場が和むっていう……その共通認識がぁ!!!──」
「──ムカつくんだってもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ────
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ────
────ガガッ──────。
「あ!!」
【以上】
──全てのウンディーネを粉砕しきり、そしてランプへと氷の粒を入れきった際、
──『マミ作戦』は成功を意味し、
────【きょうの料理】は完成となる。
◆
【ウンディーネx25@ダンジョン飯 死亡確認】
【mission complate!!】
…
……
【ウンディーネのかき氷】
ウンディーネ────適量
1:ウンディーネを凍らせる。
2:お好みでシロップをかける。
[エネルギー]
[タンパク質]
[脂 質]
[炭水化物 ]
[カルシウム]
[鉄 分]
[ビタミンA]
[ビタミンB2]
[ビタミンC]
──[魔 力]★★★★★★★★
◆
………
……
…
──パクっ
「うんみゃぁああ〜〜〜〜〜!!! ヒエッヒエ〜〜〜!!! やっぱ夏って言ったらコレだよねぇ〜〜マミちゃ〜〜〜ん!!! かき氷パワー全開〜〜〜〜〜!!!」
「………」
「…え。何そのドン引いてる感じ………。ま、マミちゃん…食べないの……?」
「土間、貴様サイコパスだろ」
「え゙っ?!!」
「そうだようまるちゃん。もう気付いてって。──」
「──シロップ、つまり人工甘味料は体に悪いんだよ。なんで体に悪いものを販売してるか分かる? 『依存』と『病気』を作り出すための陰謀なんだよ。砂糖の代わりじゃない──新しい鎖なんだよ。…関先生がそう言ってたけどね」
「…この歳にして思想が月刊マーに犯されてるしぃ〜…」
「というか、シロップじゃなきゃ食べるつもりだったのですか……? マスター…」
一階ロビー。噴水の縁にて。
噴水が脅威の欠片も感じさせない、本来の『水』としての和やかさを演出する。
本来の姿──といえば、それはまたデデルも同じく。
ランプ内の充満された『魔力』が、彼の元の身体を物語っていた。
「…あ、そうだうまるちゃん。…一応〜聞きたいんだけどさ………。さっき、四階でたくさんのウンディーネに襲われたとき…あったじゃん?」
「あんむ!! もしゃもしゃ……。それがどした〜?」
「あの時…わたし何か叫んだの……。聞こえてない…よねぇ~…??」
「え? うん。マミちゃんが『ママ〜!!!』って叫んだのはうまるらだけの秘密だよ〜〜〜ん」
「っ??!! ちょ、そ、それ秘密になってないでしょ?!──」
──ぐぅぅ…
「…も、もういい!! わたしだってかき氷食べるんだから!! シロップ代わりにコーラで!!!」
「…いや食べるのですか、マスター」
「あ。ついでにデデル〜。『五万円の水●燈のドールちょうだい』〜〜!! はい、お願い☆」
「……最も普通からかけ離れた種族であるこの私が、唯一の常識人になりつつあるな……。……まったく、土間め……っ」
ピアノのBGMが静かに鳴り響く、早朝のロビー。
壊れかけの窓ガラスからノンビリと日差しが登る。
それは純粋な温かさの日差しではない。夏の予感、とも言えるジリジリ感は拭いきれない朝日だった。
熱さ故に、空調が壊れきったロビー内にいるうまるらは自然と汗が浮かび上がるが、
──その汗には冷や汗が含まれることは、もうない。
「うへっ!!! 頭いた〜いぃ〜!! キンキンするよぉ〜!!!」
「おっ、脳に電波攻撃されてますか〜!!? マミちゃ〜〜〜〜ん!!!」
「う、うるさいって!!! もう!!!」
「…まったく。──」
縁に腰を据え、和気あいあい(?)と喋る女学生二人と。
そして、呆れながらも眼差しを注ぎ続けるデデル。
「──…やれやれなもの…だな………。…ふっ」
平穏な、陽の光。
嵐が過ぎ去った。
安らぎのこの時間。
噴水が陽光を弾き、細やかな水しぶきが宙に舞う。
耳をくすぐるのは、途切れることなく続く涼やかな水音。
そのさざめきの中、ふと、水面がわずかに揺れ、ひそやかに顔をのぞかせるは取り残されたウンディーネ。
──パンッ────
「……………え」
「………な」
新庄マミの心臓を的確に撃ち抜いた後、颯爽と『主人』の元へ帰るウンディーネを眺めながら。
三人は、今はまだ平穏さの余韻を味わい続けるまでであった──。
【新庄マミ@ヒナまつり 死亡確認】
【残り62人】
【1日目/F6/東●ホテル/1F/AM.05:08】
【魔人デデル@悪魔のメムメムちゃん】
【状態】記憶喪失、魔力(残り98%)
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:【奉仕→対象:新庄マミ】
1:…マスター……………?
【うまるちゃん@干物妹!うまるちゃん】
【状態】健康
【装備】うまるがやってるFPSのマシンガン
【道具】ジャンプラやら雑誌色々、ポテイトチップスとコーラ
【思考】基本:【静観】
1:………え。
【ウンディーネ@ダンジョン飯】
【思考】基本:【奉仕→対象:山井恋】
1:主人(山井)の元へ帰る。
最終更新:2025年08月24日 20:00