『ひだまりデイズ/血だまりデイズ』
朝日が染める、橙の海──。
仄暗い海中で、沈む意識は何を追っているのだろう。
もがいても、もがいても。
光はカメラの外にあるようで、この手には届かない。
ただフィルムの奥で、身体だけが沈んでいく。
最初はきっとパニックだ。
息が詰まり、世界が水音に歪む。
呼吸を求めて開いた口から、冷たい海水が入り込み、喉奥を焼く。
それでも濁る視界の先で、光だけを見つめ続ける。
ドラマでは、苦しみの果て、静かに安らかに沈んでいくイメージだが、実際の溺死は想像の外側にある。
仄暗い海中で、沈む意識は何を追っているのだろう。
ザァ……──
ザァ……──
「……っ、う……うぅ……!! ひっ……く、う……うぅっ……!」
「…………」
潮のざわめき。
油絵のような雲を抜けて、草原を揺らし、やがて白浜にて静かに沈む。
波音とはリラクゼーション効果があると言われがちだが、沈んだ心にはむしろ潮風が冷たく刺さった。
浜辺に散らばる貝殻も、ヒトデも波の冷たさも、慰めにはならない。
海を眺めるデデルもまた、干物妹の背に一切言葉を落とさなかった。
肩がひくりと震え、嗚咽が潮風に溶けていく。
小さく背を丸め、海に向かって涙を流す、うまる。
──彼女に語りかける声があるとすれば、
──それは、回想の中の、もうこの世にいない少女の声だけだった。
……
…………
………………
『ま、マミちゃんっ!! し、しっかりしてよ!!』
──“へ、へへ……。大丈、夫だよ…………。思ったよりそんな……痛くない、し……”
『何言ってんのさっ!? それが一番ヤバい状況だっていうのにっ!! マミちゃん、ねぇマミちゃんっ、しっかりしてよっ!!──』
『──そ、そうだ……!! 魔人っ!!!』
─『……なんですか、うまる……っ』
『早くマミちゃんの傷口直してよっ!!!! ほら願い事でさっ!!! ほらっ!!!』
─『………………っ』
『ほらっ!!! なにやってんの!!!」
──“はは…………。はぁ、は……ぁ…………”
─『…………』
『ほらッ!!!! 早くやってって言ってるでしょッ!!!!!! だから早くッ……、』
─『……もう既に実行済みなんですよ』
『……えっ?』
─『考えてみれば、私──このランプは主催者が用意した支給品。願いを叶える力とはいえ、なんでもかんでもは許すはずがない。……能力制限がされたのでしょう』
『……な、なに言って……、』
─『繰り返し申します。回復魔法は、もう既に実行済みなんですよ。──』
─『──……もう』
──“……は、ぁ……はは……っ、……ひゅ……っ……”
『そ、それって……それじゃあ、マミちゃんは……。マミちゃんは……、』
──“ははは~……。うまるちゃんは、バカ……だなぁ……!!”
『え……?』
──“私が……こんなとこで死ぬわけ、ないじゃん……! 仮に死んだとしたら…………それはビルダーバーグ会議による……陰謀……だよぉ”
『……何言ってるの…………っ』
──“それに……ピンチの時はいつだって………火星人が…助けてくれるんだから。私……ほんとに見たもん、……UFOを……。”
──“ほら、証拠に…………。うまるちゃん、『これ』あげるね…………”
『……え。マミちゃんっ!』
──『……マスター。もう喋らない方が……、』
──“いやいや……! 皆で…………火星人を……呼ぼうよぉ……。ハイ……一緒に…………!!”
──“アーメン、ソーメン、ヒヤソーメン……”
──“アー……メン……、ソー…………メン……、ヒヤ…………ソーメ………………”
──“アー…………………メ……、ソー………………、……ヤ…………ソー………………”
──“……アー……、メ………………”
………………
…………
……
──Amen ( 魂が安らかでありますように )
「ぅぅぅうううううっ……!!!! うぅ……ひっ……く……うぅうっ……!! うぅ……!」
ギュッと拳を握るうまる。
掌にあるのは、マミから託された『UFOの破片』。
──それが痛々しく肉に食い込み、血が滲む。
UFOも、火星人も、今もなお現れる様子はない。
形として明確に現れるものは、手中からこぼれる淡い血と、涙。
形にならないものとすればそれは、深い悲しみと、底の見えない不安だけ。
現実とは、うまるの好きなアニメや漫画と似ても似つかない。
伏線もなく、理由もなく、出来事は唐突にやってくるものなのだ。
それが、幸であれ。
そして不幸であれ。
──なぜ、あのときウンディーネが現れたのか。──
──二十五体すべてを回収したはずなのに、なぜ一体だけ逃れたのか。──
──なぜ、神はあの一匹だけを、自分の目からすり抜けさせたのだろう。──
うまるの脳内で交互に響く、後悔とマミの声。
それはまるで波のように、途切れては寄せ、また返していく。
ザァ……──
ザァ……──
「……さて、次のあてを探すか」
白浜に一歩、また一歩と、足音が刻まれる。
波打ち際を踏み歩く、中世の影の黒い靴。そして、潮風に漂う魔人のオーラ。
片やデデルといえば、悲しみに沈むうまると違い、どこか吹っ切れたような面持ちであった。
うまるの頼みに応じて海辺まで来たものの、冷静に考えれば、この場所にとどまる理由など一切ない。
ただ、何となく海を眺めてみたが、そこに特別な思い入れは皆無。
それは亡きマミにも、泣き続けるうまるに対してもまた同様。
彼の中に情は、とうに消えていた。
これが悪魔と人間の違いというわけか。
彼の行動をドライと言われれば、返す言葉もない。
だが、魔人。
──すなわち使い魔とは、主に仕える契約の存在にすぎず。
その主が失った今、彼を縛るものはとうに途絶えている。
言い換えれば、彼は解き放たれた存在であり、そしてもはや、うまるに心を向ける理由も薄れていた。
「…………………」
そして何よりも、今のデデルには『記憶』が欠けていた。
主催者に奪われたのか、それとも別の要因か──判断はつかない。
ただ原因はいずれにせよ、パズルを裏返したように、記憶の大半が空白だ。
故に、一つでも確かなものを求めて歩く彼の行いは、理にかなっていた。
真っ白に塗りつぶされた意識の奥で、ただ一つだけ残る輪郭。
──二頭身の、小さな悪魔。
羽は短く、声は甲高い。
幼稚園児かのようなその悪魔は、いつも癪に障ることばかりを口にしていた──そんな記憶の名残が、かすかに残っている。
ただ一方で、不思議なことに、その小さな存在だけが心を安らげる存在な気がするのだ。
帰る場所──。
──そう呼びたくなる感覚を、あいつが残していった気がしてならない。
名も、顔も、もう思い出せない。
だが、渋谷のどこかに『そいつ』がいるような予感がある。
微かに揺らぐ魔力の波が、自分を探しているような錯覚さえ覚えたのだ。
その確かめようのない衝動に導かれるように、デデルはゆっくりと足を踏み出す。
────『二頭身』で、『涙をこぼす』──
その面影を追うように。
「うっ………………うぅ………………………、うぅうっ……!!!」
「…………っ。──」
「──土間…………。──」
「──……まぁ、いい。……行くか」
脳の奥底で、妙な痛みを覚えるデデル。
波のように延々と広がる、その頭痛。
それは、潮風が沁みたせいか、それとも背後で嗚咽する小さな背中のせいか。
どちらにせよ、デデルは言葉として痛みの理由を吐くことはなかった。
デデルはこめかみを片手で押さえ、うまると背を向ける。
そして、とりあえずは湾岸を目指して歩き出す。
静かな早朝の海。
デデルのランプ内にて満たされた、魔力の液体。
一歩足を出すごとに、波音と共鳴するランプ内が、妙に煩わしく思えた──。
「……待ってッ!!!!!」
「…………」
潮のざわめきを切り裂くように、背後から響く声。
その呼び止めに、デデルが応じる理由はなかった。
足を止めるほどの威圧もない。ましてや、彼を縛る主の命令でもない。
スルーして立ち去ってよいものを、彼が立ち止まった理由は。──もしかすると内心、その声を『待っていた』からなのかもしれない。
デデルは振り向きもせず、ただ静かに背後へと耳を傾けた。
「……そうですね。願いを叶えて、それを惜別代わりとしましょう。どうしますか、土間の小娘。──ひとつだけ、願いを……、」
「なにそれ。一つだけ? ……ランプ内、あれだけ魔力が溜まってるのに一つだけなの? 使ったら即ゼロとか雑仕様すぎでしょ」
「ふっ……何をおっしゃっているのやら。とにかく願いがあるなら早急にお願いします」
「……なんで早急にする必要があるの」
「私も暇ではないからです。貴方の性格は手に取るように読める。どうせ“ポテイトをくれ”などと願うつもりでしょう」
「…………」
「ですがこれで最後。ゆえに、私は拒否はしません。──」
「──さあ、土間の小娘。……最後の願いを……、」
「じゃあ願うよッ!!!! 令呪を以て命じるッ!!!──」
「──今この瞬間から、うまるをマスターと認めて……そしてデデルッ!!!──」
「────うまるの使い魔になってッ!!!!!」
「……………ん? ──……なっ」
デデルから漏れた、らしくもない声。
思わず振り返った彼の視界に映った光景が、その言葉を奪った。
霞む地平線、寄せて返す波の列。
白浜に立つ二頭身の少女は、涙をこらえ、震える拳を突き出していた。
デデルへ見せつけるように突き出された、手の甲──。
──そこには、『サーヴァントへの絶対命令権を意味するシンボル』。
────赤く濡れた印章が、刻まれていた。
「なんで勝手に行っちゃうのッ! なんで一人で行動しようとするのッ!!! サーヴァントがマスターを見捨てるわけっ……?!」
「契約はマスターの死をもって終了したはずですが。……それより何です? その紋章は……。マジックペンで描いたとでも……、──」
「──……あっ」
デデルの釘付けになった視線の先──。
──うまるの手の甲からは血が滴り落ちていく。
足元には、先端が赤く染まったプラスチック片。
──見覚えがある。
それは、今際のマミから託された『UFOの破片』。
その切片で手の甲を傷つけたのだと、理解するのに時間はいらなかった。
「マミちゃん死んだから終了だって……? ふざけないでよッ!!! じゃあ次のマスターはうまるだからっ!!!」
「…………小娘……」
「世襲だよ世襲っ!!! 二代目マスターはうまるだよっ!!!! だからお願い!! ちゃんと……聞いてよッ!!!!」
「……。──」
剣を中心に、両翼のような紋様が刻まれた印章。
うまるの性格から推察するに、それは何かアニメのパロディで模したデザインなのだろう。
が、手の甲から覗く生々しい赤を見れば、それがどれほど痛むかは明らかだった。
もっとも、パロディ元とは違い、その印章に本来の令呪のような力はない。
苦痛に耐えて刻んだところで、魔力が生じるわけでも、命を縛るわけでもない。
結局のところ、それはただの自傷行為。
リストカットのように、痛みにすがれば不安を誤魔化せる事柄もある。
だが、うまるの胸に安らぎは訪れてはいない。
残ったのは痛みと虚しさだけ。
客観的に見れば、願いにも祈りにもならない、ただの傷跡だった。
そう、意味はないのだ。
意味のなかった傷なのだ。
「──……何を、ですか」
──だが、その“無意味”という『虚』が、魔人の胸を的確に突いた────。
「なにをもへったくれもないよっ!!!! うまるがさっきまで泣いていたのは……マミちゃんのこともあるけど、それだけじゃないッ……!!!!──」
「──お兄ちゃんや海老名ちゃんッ、切絵ちゃんッ……!! みんながあんな目にあったらと考えたら……怖くて、たまらなかったんだよッ……!!!」
「………」
手の甲に走る赤い線。
涙で前が滲んでも、歯を食いしばり皮膚を裂いたその傷は──、
──“うまるの『覚悟』の現れ。”
「うまるは早くお兄ちゃんたちに会いたいっ……!!! 目の前にお兄ちゃんたちがいないともう嫌っ!!! 絶対に嫌っ!!!! 不安なんだよっ!!!!!!」
「……左様ですか。──しかし、それは私の領分ではありません。……身も蓋もない話をするようですが、他人の情など、魔人にとっては砂粒のようなもの」
「……っ!!」
「土間の小娘、いいですか。貴方は……、」
「関係なくないってばっ!! ……特にお兄ちゃんは……!! デデルの『記憶』を取り戻すのに、ぜったい必要なんだからッ!!!!!」
「…………なっ。……なに?」
そして、うまるの血に染まる、UFOの破片。
剥がれかけたメッキの下からは、ハッピーセットのような安っぽい質感が覗く。
明らかに宇宙の遺物などではなく、ただの量産玩具にすぎなかったが──、
──“それこそが、マミの『残留思念』の現れ。”
『覚悟』。
『残留思念』。
────たったひとつの、小さな手の甲に宿った、
──二人の人間の証。
「分かってたよっ!!! デデルがうまるを置いてどっか行こうとした理由くらいっ!!! ……“記憶のこと、記憶のこと”って、ずっと言ってたんだから……そうに決まってるじゃんっ!!!!」
「……貴方の察しの良さは、外見との乖離も含めてつくづく困惑します」
「ほんとデデルはドライすぎるってッ!! ……仲間が死んじゃったあとだっていうのにッ!!!!! ひどすぎるでしょッ!!!!──」
「──……って、ほんとはこれくらい情で押したいけどさ……。でもデデルは悪魔だもんね……。心なんて、通じるわけないか……っ」
「……。……どうぞ、続きを」
「だから……うまるは、もう感情じゃなくて……──双方WIN-WINな話で進めるからねッ……!!!」
「……!」
「──うまるのお兄ちゃんは特進クラス……! いつも学年トップの……鬼のタイヘイだったんだから!!! 絶対にッ、絶対にデデルの記憶に役立つんだよっ!!!──」
「──それは海老名ちゃんや切絵ちゃんだって同じっ……!!! ねえ考えてよデデルッ……!!! これから先、一人で彷徨って、それで記憶が戻ると思うのっ!!?──」
「──……あぁ、そっか。どうせまた、誰か別の参加者を頼って動くつもりなんでしょ。マミちゃんの時みたいに……知らない人と契約してさ!──」
「──でもそれでいいわけっ!!!? それで通用すると思うわけっ!!!?──」
「──“はい僕は魔人です”なんて名乗って、誰かが信用してくれると思うのっ!!!? それとも、一人で……また歩くつもりなの……?!──」
「──……そんなので、デデルの悩みが……解決するわけないでしょッ!!!!」
「…………」
蜃気楼か、それとも地震か。
──そう錯覚するほど、うまるの手は震えていた。
マミと自分、二つの魂を刻んだその掌が、叫びを伴って命を訴える。
それは小さく、今にもひねり潰せそうなほどか弱い手。
だが、無抵抗に踏みにじられる虫ケラとは違い、そこには確かな『意志』が宿っていた。
「だからお願い。……というか拒否権はなしっ。ぐーたらなうまるの世話を放置とか、言峰綺礼並みの鬼畜かってーの!!」
「……貴様……」
「…………ふう。うまるの令呪は無制限制。したがってもう一つ、命じますっ……!!──」
「────……お兄ちゃんを。土間タイヘイを……今この場にワープさせて…………っ!!!」
「…………っ!!」
ただ、説明過剰というか。
うまるの熱弁は、恐らく必要でなかったのかもしれない。
もう十分だったのだ。
やり取りの最中、口では冷たい態度を取っていたデデルではあるが、心中はまた違う。
「(…………そうだった。)──」
令呪が物語っていたバックグラウンドの思い。
それが、視界に入った時。
「(……我が主の名は……、)──」
──感情の揺れが、閉ざされていた『記憶領域の一部』を呼び起こした──。
「(──────『メムメム』…………)」
──クチンッ……
………………
…………
……
【願い事発動】
──パン、パン
────ポンッ!
「……へ、なにこれ?」
「……何これとは。ポテイトチップスですよ。……まさか、あれほど愛していたものすら忘れるほど令呪が痛んだと?」
「い、いや違うわっ!!! ……あ、『これはポテイトじゃないですよ』って意味での“違うわっ”じゃないからね!!?──」
「──……うまる、お兄ちゃんを呼び出してって命令したんだけど~~……ナニコレ? 割とシリアスな雰囲気だったのに……かましてくるねぇ魔人~~~っ……!!」
「あぁなるほど。そういうことでしたか。──── ←これが、今言われたら腹立つセリフ第二位でしょう」
「……言っちゃおうかなぁ~~。パロディ元の通りに、『自害しろ』って……、」
「そして第一位。『制限により、他参加者の呼び出しは不可能』。…………どうやら主催者には都合の悪い願いだったようです」
「……えっ」
「申し訳ありません。……力及ばずでして」
「…………」
さざ波。サマーシーズンの届く風。
ヤドカリが新しい殻を求め、ノゾノゾとデデルの足元を横切る。
昨日の大規模ゴミ拾いオフ会の成果か、浜はヤドカリが目立つ程に清潔だ。
ゴミ一つない白浜で、デデルの手にしたポテイトチップスが、潮風と二重の塩を織りなす。
「しかし貴方の兄の代わりがポテチとは……。これはさしずめ等価交換というわけか」
「お兄ちゃんをポテイトと同レベルで換算すんなっ!!! ……普通にバグでしょ! バグ!!」
「バグですか。ならば除去するのが筋でしょうね。……この綺麗な浜辺をゴミで汚すのは、少々気が引ける」
「いや捨てるなポテイトっ?!!! 『いらない者=即排除』って思考やめてよね?! はい令呪!! 令呪命令~~っ!!!──」
「──……もう、普通にうまるが食べるしっ……!! ちょうだいよ!」
「そうですか。ではご自由に、どうぞ。──」
海とは、神秘そのものだ。
金持ちは海の見える別荘を欲し、疲れた者は秋の無人の浜で、自分に問いかける。
水に触れずとも、潮の気配だけで心を包み込む──それが海という存在。
うまるも、ホテルを出て、わざわざこの場所まで運ばせたのは、ほんのわずかな祈りの名残かもしれない。
救われたいがために。
きっと。
「────ではこのポテチが盃代わりに、契約締結となります。──マスター・うまる」
「…………うんっ」
潮と涙のあいだに、ひときわパリっと澄んだ音が響いた────。
「いやいやいやいや、お~~~~~~~~~~い!!! お~~~~~~~~~~い!!!! オイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!!」
「……ん?」「うぇ!?」
「ちょっとそこの魔人なキミ、キミ、キミィ~~~~~~!!!!!! 俺、みーちゃったもんね!! 見ちゃったも~~~ん!!!! 今、ポテチを出してみせたでしょ!!? 無からポンッて!! なにそれ手品!!? おじさん超ビックリだぞコラ~~~~~~!!!!!!」
「……あ?」 「……へ?」
「おいおいおいおい……こりゃ事件だぜ~~……。君と組めば、俺ぁノーベル賞ゲットだぜゲット!!!!? ……あ~~~~、ちょっといいかなぁ? おじさんちょっと、閃いちまってよぉ~~?──」
「──もしかして『5/8チップス』とかも出せる?? 『ぬ~ぼ~』とか、『エアロ』とかは!!? 『梅ジャム』も絶滅危惧種だから出してほしいんだよぁ~~……。──」
「──………いや待てよっ……。テロリーンッ……!!!──」
「────まさか、あの…………『ファンタゴールデンアップル味・瓶ver』も出せるというのかっ………………!??」
「「………………え」」
※一九七〇年代に存在したとされる幻の飲料。
※──『ファンタゴールデンアップル味』
(Wikipediaより)
主と使い魔のあいだに、ひときわ不審者な男が割って入った────。
【鹿田ヨウ@だがしかし 第一回放送通過】
【うまるちゃん@干物妹!うまるちゃん 第一回放送通過】
【魔人デデル@悪魔のメムメムちゃん 第一回放送通過】
【1日目/E7/渋谷海岸/AM.05:59】
【鹿田ヨウ@だがしかし】
【状態】健康
【装備】空腹のみ
【道具】空腹のみ
【思考】基本:【だから今は空腹しかないんだよォオッ!!!!】
1:ここで参上! 俺が登場! 汚名返上! そして退場!? ……なのかぁ~~っ?!
【うまるちゃん@干物妹!うまるちゃん】
【状態】右手の甲に傷(軽)
【装備】FPSのマシンガン@うまるちゃん
【道具】ジャンプラやら雑誌色々、ポテイトチップス@うまるちゃん
【思考】基本:【静観】
1:お兄ちゃん、海老名ちゃん、切絵ちゃんと絶対再会する。
2:デデルの主として責務を果たす。
3:マミちゃんのことを絶対忘れない。
4:↑……で、このおじさん、誰?
【魔人デデル@悪魔のメムメムちゃん】
【状態】記憶喪失、魔力(残り97%)
【装備】なし
【道具】ランプ@メムメムちゃん
【思考】基本:【奉仕→対象:うまるちゃん】
1:うまるの使い魔として忠実に従う。
2:自分の記憶をうまるの協力の元、取り戻す。
3:マスター、マミ……。……貴方の思いは受け継がれました。
4:……というかマミ、貴方の陰謀論欲を駄菓子に置き換えたような新キャラが出てきましたよ。
5:『メムメム』……。私の、主…………。
──────プツンッ
………………
…………
……
◆
……もしもし。
悪い、急に電話して。俺だ、相場晄。
たぶん番号、知らねぇのにかかってきて驚いただろ。
携帯、ちょっとオシャカでさ。
十円玉があと、……三枚くらいしかないから、手短に話すわ。
二つ、要件を言うぞ。
一つ目。
今、俺は茶亭羽當ってカフェにいる。
渋谷駅から歩いて三分くらい、隠れ家的スポットっていうか、とにかく木が目印のとこだな。
…………そこで、待ってる。
お前が来るまで、ずっと。俺は待ってるからな。
頼んだぜ。
んで二つ目。
……──『東急ホテル』には、絶対行くな。
いいか、絶対だ。絶対だぞ。
あそこは……人が入っちゃいけねぇ場所だ。禁足地だよ。
地獄絵図ってのは、ああいうのを言うんだってくらいだ。
俺も、知らずに入っちまったんだがよ。
……マジで、俺のばあちゃんなら心臓止めてたと思う。
エントランスの時点で、もう地獄の歓迎って感じだったんだ。
……死体だよ。死体。
三体な。
噴水の縁に、おさげの女の子が一人、寝かされててな。
多分、俺らと同じくらいの年の子だと思うが。
……そいつはまだマシだった。
そいつの足元に一体。
踏み潰したジャムパンみたいな……えげつない顔面の……幼稚園児みたいな子供がいて。
そいつはザ・悪魔って感じのコスプレをしてたが、……惨状を前に、これ以上の直視はできなかったよ。
だが話はこっからだ。
それよりもなによりも……三体目の死体な。
そいつは、二体から少し離れたところにいたんだが…………。
あの、茶髪の……死体は…………────。
……悪い。
ヤベーことスラスラ語りすぎたな。ごめん。
ただ、一つだけ気になるのは、三体とも死に方が全部違うってとこだ。
使われた凶器も、傷の付き方もバラバラ。そこがどうにも引っかかるんだが……。
……まぁ、これ以上はやめとくわ。名推理は水谷豊にお任せだ。
とにかく、茶亭羽當に来てくれ。
寄り道せず、ダッシュで来てくれよな。そこでずっと待っているから。
…………折り返し頼むぞ。
じゃあな、『野咲』。
──ガチャ……
………………
…………
……
「…………ヤバすぎて、思わずカメラのシャッター連打しちまったが……、出鱈目に撮るのも吉と出たな。今、こいつの存在に気づいたよ。──」
「──噴水の裏…………、ビビりながら……ギョロ目でカメラを見てやがる……、写真内のこいつ…………っ。──」
「────野郎が、犯人かッ……」
【相場晄@ミスミソウ 第一回放送通過】
【1日目/F9/喫茶店『茶亭羽當』/AM.05:53】
【相場晄@ミスミソウ】
【状態】精神衰弱(軽)、顔殴打(右目、右頬腫れ)、右腕開放骨折、左足打撲
【装備】爆殺機能付き一眼レフカメラ、鉄製のハサミ
【道具】写真数枚(小黒妙子、メムメム、新庄マミ他の死体写真多数)
【思考】基本:【奉仕型マーダー→対象:野咲春花】
1:野咲にとにかく会いたい。
2:自分や野咲に危害を加える者は全員『写真』に収める。
3:絶対に死にたくない。
最終更新:2025年10月15日 00:08