『どんびき334,000,000,000,000,000,000,000%』
◇【1日目/G1/】
◇【歌舞伎町→ミニバン車内・走行中/朝五時】
◇【──後部座席にて。】
「へこー……へこー……へこー…………」
「へこっ……ごほっ!! ……へこー、へこー…………」
──ピリリリリリリリリッ────♪
【♪『Danza Kuduro』 Don Omar】
「「「うおっ!!?((へこっ!?))」」」
──【BGM~♪】──
──タン、タン、タン、タン♪ タン、タン、タン、タン♪
\エイエンエ~ックス……/
──【BGM~♪】──
──タン、タン、タン、タン♪ タン、タン、タン、タン♪
\エルオルファナート……/
──【BGM~♪】──
──タン、タン、タン、タン♪ タン、タン、タン、タン♪
\\DANッ//
\\DANッ//
\\クルゥ~~ロォオオオオオオオオオオオ!!!!!//
「な、なんだ……!? ──着信音っ?! ……おいメガネの方、お前のスマホか……?」
「へこっ?!」
「…………出ろよ」
「……へここーへここー!?」
「“何にですか!?”じゃないだろ。さっさとスマホに出るんだ」
「へ、へここー…………、」
「“し、しかし……”じゃねェエよッ!! どうせあの二つ結いバッテンからだろッ!? さっさとうるせェのを止めろォオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」
「へっ!!! へここへこへこっ~~~~!!!!」
──【BGM~♪】──
\\プロッ!!//
\\プロッ!! プロッ!!//
\\プ……、//
────ピッ
calling…
calling…
calling…
calling…
………………
…………
……
あの日。一年生の時。
体育祭で出会って以来、私はコトに対してドン引き疲労の毎日だった。
コトは好きな男子生徒に挨拶されたら、ガクガクガクガク──ッとヘブン状態になるし、
その人にちょっと話しかけられたぐらいで「私……急に生理始まっちゃったんだけど」と、どう反応すればいいのかわからない爆弾を投げてくるし、
その男子が不良っぽい女子に近寄られただけで、「なに私の智樹くんと絡んでんだァアアア?! ぁああッ!!?」と、瞬間湯沸かし器になる。
…………枚挙に暇がなかった。
私はそんなコトを、いつでも『見』に回って眺めていた。
もう誰にも止められないほどクレイジーマックスになるまで、自由に暴走を走らせ続ける。
ドン引きしつつも、目が離せない──そんな時間が何よりも楽しかった。
……井の中の蛙、なのかもしれない。
けれど、私の世界には、小宮山琴美以上に人をドン引きさせる存在などいないって──。
────そう、信じて疑わなかった。
──────【𝔸𝕌𝕏】──────────────────
🅲🅰🅻🅻
ᴘᴜꜱʜ ꜱᴇʟᴇᴄᴛ
─────────────────────────────────
□
□
◆
バンッバンッ──、バンッバンッバンッ──、バンッ────
ガンッガンッ──、ガンッガンッガンッ──、ガンッ────
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ま、またかジロ殿っ……?! また巨人の星のマネだというのかっ!!?」
「俺はなんてことを……俺はなんてことをッ……! 俺はッ!!! なんてことを──うおわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
コトを誘拐した田宮丸って人は、車を降るや否や歌舞伎門へ駆け寄り、自分の頭を何度も叩きつけ始めた。
──私は正直、とんでもないくらいにドン引きした。
「俺はなんてことをッ!!! 俺はなんてこ……、」
ブーン……──ピタッ
「──……あ。…………………カブトムシ……」
「……またか、オロカモノ」
その人は、門の一点に小さな虫が止まった瞬間、ぴたりと自傷をやめた。
「こんな小さい命すら必死に生きてるのに、俺はなんで自殺なんか……」とか思ったのか、カブトムシを手のひらにのせ、なぜかシンミリと歌い始める。
『生涯、忘れることはないでしょう……』
『生涯、忘れることはないでしょう……』
声の震え方まで本当にシンミリしていた。
──私は、人生史上最高記録のドン引きを更新した。
◆
………………
…………
……
◇【1日目/G1/】
◇【歌舞伎町/朝五時】
◇【神田川の河川敷】
「……ねぇ伊藤さん。毛●小五郎がさ、寝言を言い始めたとするじゃん……どう思う?」
『え? さあ……』
「ただの寝言ならまだいいよ。日頃隠してきた本性むき出しに『コナン死ねッ目暮死ねッ阿笠キモッ』とか吐いたら……コナンくん、色んな意味で頭抱えるだろうね…………」
『………………』
頭抱えるというか、この場に居づらいというか。
……今最大に居心地の悪さを抱えているのはコト自身だろうに。
この場の空気感に合わない雑談なのは確かだけども、それでも私は、このときコトに対してほとんど引かなかった。
むしろ、気持ちは痛いほど分かる。
こうもわけのわからない現状に立たされているのであれば、現実逃避じゃないけども仕方がない。
せめて別のことを考えて心を離したくなるものだった。
…………まぁ、現状に立たされているといっても、私たち三人は正座させられてるんだけども。
「雁首そろえて殺し合いに乗るとは……。何を勘違いしている。キサマらは選ばれた戦士でも何でもない。ただのバカだ。──」
「──このドアホウ共が」
「…………」 『……』 「………………」
今、田宮丸って人、そしてコトは、クロエという女性から延々と説教を浴びせられていた。
よく通る声で繰り返される叱責、そのたびに飛び散る唾。
富士山のように逆三角形の口が開閉するたび、葛飾北斎の波を思わせる形が目に入る。
……けれど、そんな連想は本当にどうだってよかった。
──何故だか、私まで説教される側になってることに、半端なくドン引きさせられた。
「自分の命の重さも測れず、他人の命を秤にかける資格もない。……そんな者が戦場に立つなど、笑止千万。──」
「──まずはオヌシからだ。問題児……ジロ殿がっ…………!」
「…………はい」
──そもそも、この場を支配している説教もろとも、何もかも全てが異常すぎて、私はドン引きせざるを得なかった。
──……そのドン引きの全容は、この後の流れのまま理解してもらおうと思う。
「私の尊敬する木枯し紋次郎に、『負けてもいい。逃げても泣いてもいい。ただし言い訳をする男になるな』という名言があるのだが、……ジロ殿、その言葉を聞いて何を思う」
「…………はい。……すべてに敗北した大事マンブ●ザーズみたいですね」
「いいや負け犬はオヌシだ。……私は懐メロ歌う気がないぞッ……オロカモノッ……!」
話を聞く限り、田宮丸って人は『自分と違う食べ方の人間』を見ると、我を忘れて大激怒しちゃうらしかった。
何もかもを投げ捨て、頭を真っ白に大暴れ。
つまりは、コトとクロエさんを誘拐したのも、その延長線上にあるらしかった。
──なら、例えば私がスープスパゲッティを啜ったら、「フォークで食うだろバカかお前?!」とか怒ってくるんだろうか。
──良い言い方をすればキャラが個性的すぎる田宮丸さんに、私は強烈にドン引きした。
「オヌシは飯の食べ方が絡めば自分を見失うなどと言ったな。……笑わせるな。それはただの言い訳だ。──」
「──心の病? そんなものは迷信にすぎん。──」 「──結局は、本人の怠惰と弱さを取り繕うための飾りだ。くだらぬアクセサリーにすぎん。──」
「──私は常々、心がどうこうと喚く輩に言ってやりたいのだ。カウンセラーに払う金があるならその分、自分を着飾れ。──」
「──病気に甘ったれたまま生きたいのなら、私の前に立つな。どけ……とな。ドアホウ」
「…………すいません」
……ただ、田宮丸って人を庇うつもりはないけど、クロエさんは尋常じゃないほど酷いことを言っている気がした。
──大炎上なんて知ったことなしとの姿勢も、ドン引きにはいい加点になった。
「まったく……どれだけ私に怒られれば気が済むのやら……。──さて次、琴美殿。オヌシの番だドアホウ」
「…………はい」
哀愁が滲み出るほど落ち込んだ田宮丸さんの横で、実にスムーズにコトへの説教と始まった。
コトとクロエさんは互いに誘拐被害者同士。
普通なら怒られる筋合いなど一ミリもないんだけども、──さすがはコト。
さっき田宮丸さんが頭を打ちつけてた最中、ちゃっかり隙を見つけて、クロエさんに角材で奇襲を仕掛けていたのだった。
「お前らなんて知るか。私にあるのは優勝と黒木くんへの思いだけだ」という信念、画面越しにもビシビシ伝わってくる。
──何を言い出すか分からない、ただ少なくともドン引き必至であることは確かなこの説教で。
──コトは一体、どう奇行を見せてくれるのか。
──落ち込んでいる(フリをしている)コトにドン引きしつつも、私は胸のざわめきを抑えられなかった。
「よいか。角材は建てるための道具だ。壊すために振るう者は、道具の用途も自分の理性も見失っている」
「……」
「道具も人も、使い道を間違えればただの危険物。オヌシがどんな思いでゲームに乗ったか知らぬが、……いやはや呆れたものだ」
「……」
「それとも、オヌシは本当に角材を人を襲うための玩具だと思っているのか?──」
「──……そうだとしたら脳味噌を工事し直すべきだな。このドアホウ」
「…………すみません」
……一理ある。
コトの脳みそを工事すべきという意見には、私も同意してしまうほどだ。
とはいえ、説教そのものの内容なんて、私にとっては正直どうでもいい。
──あのコトがここまで屈していることに、私は驚かされてしまった。
──そして、せっかく燃えていたドン引き準備の焔がしぼんでしまい、正直かなり残念だった。
──ドン引きの権化みたいなコトを、ここまで静かにさせた『存在』。
──『クロエさん』。
「……よもやよもやだ。殺し合いに乗るオロカモノに二人も出くわすとは……、私の身にもなってみろ」
トントントン……
かちっ……ボッ🔥
ふはぁ~~~~🚬
「…………」 「……タ、タバコ…………」
「む。なんだ、オロカモノメガネ」
「……さ、さすがにご法度では…………? クロエ……さん」
「……クッ。まったく……」
──クロエさんという『宇宙人』に、私もコトも宇宙規模のドン引きをせざるを得なかった。
「やれやれだオヌシはッ……」
頬には分かりやすいイライラマーク、視線は猛獣のように無言で鋭い。
クロエさんは一切の言葉を発さず、ただ静かに睨み続けていた。
その背中からは、驚くべきことに、タコのような太い触手が八本、ニョロニョロと伸びていたのだった。
──私はもうドン引きという概念が天元突破していた。
──ドン引きのロケットで成層圏を抜け、地球が青く見えはじめていた。
──それはコトも同じ気持ちだったと思う。奇襲が失敗したのも、角材をその触手が器用に受け止めたからだ。
──あの時の「Уэээっ??!!」という、何とも形容が難しいコトの悲鳴が、未だに脳内でこだましている。
──多くは語らずとも、彼女は明らかに地球外生命体。
──クロエさんを前に、誰もかれもがドン引きに似た圧に沈められる他なかった。
「……さて、──ヒカリ殿よッ」
『え、私?』 「さっきから気になってたけど……なんで下の名前呼び…………?」
そうこうしているうちに、説教の矛はとうとう私へと向けられた。
……何がなんなのか、さっぱり分からない。
……いや、本当に意味が分からない。
私はいつ、どのタイミングで火星人の逆鱗に触れたのだろう。
そして、どうしてクロエさんは見たこともない激昂の表情を、
……よりによって、私に向けているのだろうか。
「琴美殿よりもジロ殿よりも……私はオヌシのような人間が一番、虫唾が湧いて仕方ないッ…………」
『え、どうして?』
「覚悟はよろしいだろうな、ヒカリ殿ッ…………!!」
『え?』
………………。
コトの友達の黒木さんがいたら、「逆鱗って……そもそも火星人に鱗あんのか?」と的確なツッコミを入れてくれただろうに。
──この時の私は、これから始まる説教が悟りを開いちゃうレベルで長いことを、まだ知らずにいた────。
◆
クロエさんの説教は、もはや拷問の域を超えていた。
気づけば私の魂は現実から逃走し、どこか遠い世界へ旅立っていて──、
──そして、とても奇妙な夢を見た。
………………
…………
……
日曜日の昼下がり。
自分の部屋で、シルバニアの飾りつけをするっていう、そんな夢。
一番手前にはショコラウサギファミリーの家。
その奥にくるみリス、そのさらに向こう側にマシュマロネズミ。
ウサギ一家の配置が少し気になって、小さなドアにそっと手をかけようとしたとき、
────彼女は唐突に現れた。
「伊藤さん! 今日から私たちはこの家に住むことになりました」
「え?」
「だから四十円、四十円ちょうだい!」
「……え???」
私の机上、真っ黒なミニカーから颯爽と降りてきたのは、あの、小宮山琴美。
シルバニアサイズのコト。借りぐらしのコトエッティ。
コトは、どう見てもブカブカなウェディングドレスを着ていた。……多分、私のシルバニア人形の服を勝手に盗んだのだと思う。
サイズが合ってないせいで見えちゃまずい露出がダダ漏れだったけど、本人はまったく気にしている様子がない。
同じく新郎服を着た……──いや、着させられた男の人を引き連れて、コトは支離滅裂な発言を放ってきた。
「……日本の国旗ってさ、ナプ●ンみたいだよね……」
「…………え」
「伊藤さん、私はさ……血が噴き出すくらいに幸せなんだっ!!! だって見てよ!! あの……あの……!!──」
「──あの智貴くんとケコーンすることになったんだからぁ!!! ねっ、智貴きゅんっ♡♡♡」
「……へっ!」
「え、智貴さん……?」
私のシルバニアのウェディングドレスを無断で着ていたコト。
気がつけばドレスの(特に下半身部分が)ルビーレッドに染まっていた。
──ドン引きとかじゃなくて、普通に最悪だと思った。
よく分からないけど、どうやらコトは結婚することになったらしい。
お相手の男性に、舐め回す勢いでスリスリベロベロ……──いや、実際にコトは舐め回していた。
コトは何度も何度も、彼に求愛のアピールをぶつける。
「智貴くん、私の事好きでしょ?」「やっぱ好きだよねぇ!!!」「好き好き大好き!!」「まさに天地一変だよね!!?」「大松も唐揚げにレモンハイボール注文しちゃうほどの一変ぶりだよ!!!」って。
それに対して、割りとまんざらでもないのか、男の人は笑って返す。
「……へっ!」「……へっ!」「……へっ!」「……へっ!」「……へっ!」「……へっ!」「……へっ!」「……へっ!」「……へっ!」「……へっ!」
「…………」
……智貴さんは、表情筋を一ミリも動かさないまま笑い続けていた。
今この時を迎えるまで、二人に一体どんな過程があったのか。
……想像することすらも、猟奇的地獄だと思った。
ただ、それでもコトは、人生最大級のボルテージってくらい満面の笑みだった。
教科書通りの幸せそのものだった。
「そうだ、成瀬さんに見せようよ。あの子、物知りだからさ~~」
「え? 何を見せるの?」
「…………ばーか。言わせないでよ!──」
晴れて結婚に至ったコトに、どこか名残惜しさを覚えたのか、私はなんとなくコトを指でつまんで、そっと持ち上げてみる。
その途端、机の上にて、
ショコラウサギファミリーが、
くるみリスファミリーが、マシュマロネズミファミリーが、
──そして縦じまのユニフォームを着た野球選手たちが、祝福を始めた。
皆が皆、指笛をピュイピュイ飛ばしてくれる。
「ららら~ららら~~♪」と妙に歌声が統一された賛歌を送ってくれる。
コトと、死体みたいな目をした智貴さんに向かい、祝福の声と歌声が止むことはなかった。
風が、吹いていた。
「──ヒミツに決まってるじゃん……! そんなの────。」
「…………? ……????」
「……へっ!」
──私は、この世の終わりかというぐらいドン引きしていた。
現実は、バトル・ロワイヤル。
夢は、趣味のシルバニアをいじるだけの平穏そのもの。
どっちがマシかと聞かれれば、……どっちもイヤかなとは思う。
ただ、『現実と夢が入れ替わるボタン』なんてものがあって、
押すか否かの選択肢に迫られたのだとしたら、──私は迷わず投げ捨てるつもりだ。
ポーン、と放物線を描いてボタンは宙へ舞い、
重力に従って地面に落ちる。
そして、偶然その衝撃でボタンがカチッと鳴ったその瞬間。
その瞬間に、
──私はコトへ、祝福を両手いっぱいに。ドン引くつもりでいる────。
◆
………………
…………
……
タ、タ、タ、タ
タ、タ、タ、タ……
「……そうだ伊藤ちゃん。少し気になってたんだが、いいかな?」
『……あ、はい。(田宮丸さんに話しかけられた……)』
「君がクロエに説教されてるとき……というか、俺やこの子がおかしくなる時、君の背後に『ウニフラ』みたいなのが出るだろ?」
『……?』 「ウニフラってなんですか?」
「あぁ、すまない。つまりはこういうやつのことだ……」
『……これはなに?』 「ウニフラが出るってなんだよ、出るって」
「俺の見間違いなら申し訳ない。……ただ、こういう『集中線的なオーラ』が君には飛び出てる気がしててね。まぁつまり……何が言いたいのかというと、──」
「──つまり…………すまない。君の友人に……俺は酷いことをしてしまった。…………本当にすまない」
『……え? あ、はい』 「何もつまってないだろ、オイ」
──田宮丸って人にはもうだいぶドン引きだけど、それよりもなんでコトはツッコむときにはタメ口になるんだろう。
──私にはそれがドンビ気になって仕方がない。
夢の目覚め、朝日の出。
横の道路を救急車がサイレンを鳴らしながら通り過ぎていく。
河川敷を練り歩くコトたち──と、それを鑑賞する私。
クロエさんの説教が長すぎてうっかり寝落ちしちゃったけど、気づけば田宮丸さんとコトは意気投合してる様子だった。
何があったのかは分からない。
強いて考察するなら、クロエさん被害者同盟として妙なシンパシーでも芽生えたのかな、って。
そう思ったけれども、
「ウニか……。オロカモノめっ……!!」
『え?』 「……あぁまたですか…」
「いいか、ヒカリ殿。ウニであっても睡眠時間は四時間ほどであるものを……オヌシは私の説教中、なにをグースカ眠っておるッ!? ウニほど棘があるのはオヌシだッ!! また一から話すぞ……、」
「あーもういいからいいから。ぶっちゃけ誰も説教聞いてないって、クロエさん」
「なにを申す琴美殿っ!!?──」
なぜだかクロエさんも、コトたちの後をニョロニョロついてきて、
それでいてコトも彼女を受け入れている様子だった。
奇怪な人らを平然と受け入れるという、悪夢のメルヘン。
この場にもう一人のコトがいたなら、「おい小宮山!! お前ジョ●ョの広瀬並みに器量デカいな!」とツッコんだのは間違いなかった。
……コトはバカじゃない。
そしてお人好しでもなければ、他人思いな子でもない。
三人の奇妙すぎる関係性には、絶対なにか裏があるはずだった。
勝手に推理を並べるのなら、クロエさんは宇宙人。
つまり、地球外的な権力行使でもって、千葉ロッテに恩恵が転がり込むような取引を持ちかけたとか、
あるいは……、
「──……くっ。琴美殿……大松並みにKYなちくちく言葉を言いよって…………!」
「いやあんたが大松知ってたらおかしいんだよ、キャラ的に」
『……それはそう』
……まあ、今はいいや。
気になるその裏については後々、バトル・ロワイヤルが進むにつれて明らかになるのを期待しよう。
コトとLINEの通話を続けて、今や早朝。
──現状に至るまで、今日、私は古今東西色々な出来事にドン引きしてきた。
──私が睡眠中ということも考えず、夜中突然鳴りだした電話に出てみれば「渋谷でバトル・ロワイヤルに参加させられてる!!」とのドン引きな一言。
──コトはアニメが好きだからヘンなものに影響受けたんだろうと、その時は軽くドン引きで受け流したけど、テレビをつけたら本当に渋谷がやばいことになってて二段目のドン引き。
──『ドン引きな舞台』x『ドン引きの達人であるコト』のクロスオーバー。
──ここからはドン引きの数珠連鎖だった。
──古見さんという人をドン引きな理由で襲撃して、ドン引きな熱意で彼女を執念で彼女を追い回して、
──そして、堂下さんというドン引きな漢に撃退されて、
──その直後には、朝っぱらから焼き肉をドン引きレベルの食べ方でやけ食いし始めて、
──コト以上にもっと引く田宮丸って人に襲撃されて、レジ袋を被せられて、何故かその人はコトを誘拐して、
──あまりの急展開に理解が追い付けずにいたら、誘拐され仲間のクロエさんがドン引きレベルな人だと判明して、
──何故か説教されて、引いて、疲れて、コトと一緒に現状にドン引いて、
────それでも、結局いちばん私の心を動かしてくれるのは、コトでドン引きすることで──。
「……ヒカリ殿、私たちの関係性になにか裏があると思いだろう」
『……え?!』
「フッ、ヒントを与えるとこうだ。──琴美殿、あんなところに智貴クンが~~」
「えっ?! うそっ、うそっ、うそっ、うそっ、うそぉぉぉ!? や、やだ待ってスッピンなんだけど!? スッピンなんだけど!? え、どこ!? どこどこどこどこどこどこどこどこッ!! どこどこどこどこどこどこどうしてどこなの!!? やだやだやだちょっと待って心の準備できてないんだけど!? ……ちょっと髪! 髪どうなってる!? 前髪死んでない!? 眉毛! 眉毛ある!? 私の眉毛生きてる!? ねぇどこ!? どこどこどこどこどこどこどこどこドコドコドコドコドコドコドコドコ!!!? 智貴くんどこなの!!!? ほんとにどこ!!!? 今どこで私のこと見てるの!!! やだ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいぃぃぃ!!!!!!!!!!」
『……』
「…………うわぁ」
「ヒントは以上だ。……ウニフラの追加発注準備をしておくのだな。ヒカリ殿」
『……うん、わかった』
バトル・ロワイヤルの主催者がどこかで参加者を監視しているのなら、私もまた。
今は『見』に回る。
【小宮山琴美@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 第一回放送通過】
【クロエ@クロエの流儀 第一回放送通過】
【田宮丸二郎@目玉焼きの黄身 いつつぶす? 第一回放送通過】
【1日目/G1/桜田川沿い/AM.06:00】
【伊藤さん@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】
【思考】基本:【対危険人物→小宮山琴美】
1:コト(小宮山琴美)の暴走を止める。ついでに解説担当。
2:……やっぱりコトにはドン引きだ。
3:三人に一体なにがあったんだろう……。
【小宮山琴美@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】スマホ
【思考】基本:【マーダー?】
1:伊藤さんと通話しながら行動。
2:優勝した暁にはロッテを優勝させ、自分を智貴くんが惚れるような理想の女にしてもらう。
3:……とはいえ、今はなんだかんだでこの人たちと行動中。
4:やばい『漢』(堂下)がトラウマ。
【クロエ@クロエの流儀】
【状態】健康
【装備】フランスパン@あいまいみー
【道具】タバコ@クロエの流儀、さけるチーズ
【思考】基本:【対主催】
1:ゲームに乗るオロカモノ共を説教し、矯正してまわりたい。(建前)
2:見境なく説教して気持ちよくなる。(本音)
3:しかし琴美殿とジロ殿には、どうにも目を離せない警戒心があるな……。
【田宮丸二郎@目玉焼きの黄身 いつつぶす?】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】ヘラクレスオオカブト一匹
【思考】基本:【マーダー?】
1:クロエに従いつつ、小宮山さんには最大限の要警戒。
2:……俺は、どうすれば罪を償えるのだろうか。
最終更新:2025年11月18日 19:33