未知のメモリとその可能性 ◆OmtW54r7Tc



「確か光っていたのはこのあたりだったはずだが…」


彼、井坂深紅郎が現在いるのはF-4。
黄金の魔戒騎士の光を目指してここまでやってきたのだが…


「どうやら既に移動してしまったようですね」


しばらく歩き、辺りを見回した井坂はそう結論付けた
まあ、移動したといってもそこまで遠くまで行ったとも思えないが、光の主が向かった方向が分からなければ追いかけようがない


「まあ、生きていればそのうち会えるでしょう。それよりも…」


捜索を打ち切った井坂は、後ろを振り向く。
そして、目の前の茂みをじっと見つめる。


「いい加減出てきたらどうです?」


茂みに向かってそう言い放つ井坂だったが、返事は返ってこない。


「出てきませんか…それなら無理やりにでも出てきてもらいましょうか!」


―――ウェザー!―――


井坂は自らが持つ気象の記憶を内包するガイアメモリ、ウェザーメモリをコネクタに差し込む。
すると井坂の身体は姿を変え、ウェザー・ドーパントとなった


バチバチバチバチバチバチバチバチ!!


変身した井坂は茂みとその周辺に向かって落雷を落とす。
すると、茂みから一人の少女が飛び出してきた。
少女…ティアナ・ランスターは殺気のこもった表情でウェザーを睨み付けていた。


―――トリガー!―――


茂みから飛び出してすぐ、ティアナはトリガーのメモリを取り出し、トリガー・ドーパントへと変身する。


「ほう、戦うつもりですか。穏便に行きたかったとこですが仕方ありません」
「いきなり攻撃してきといてよく言うわ」


井坂の白々しい言葉に、ティアナは呆れたように言い返す。


『マスター!戦うのですか!?』
「しかたがないでしょ、見つかっちゃったんだから」

それに、逃げているだけでは優勝などできない。
いつかは戦わなければいけないのだ。
幸いにも光の主はどこかに移動したようで、相手は一人だ。


バン!バン!バン!


3発の銃弾が井坂めがけて放たれる。
対する井坂は竜巻を発生させた。
竜巻は3発のエネルギー弾を押し返し、ティアナに向かっていく。

「ちっ!」

舌打ちしつつ向かってくる竜巻を回避するティアナ。
そして再び銃弾を放つ。

「無駄ですよ」

今度は冷気のような煙が銃弾を打ち消し、ティアナを襲う。

「正面から攻撃しても防がれるだけ…それなら!」

次の瞬間、ティアナの姿が複数に増えた。
フェイク・シルエット。
ティアナの得意とする幻惑魔法による分身だ。

「ほう、面白いことをしてきますねえ」

感心の声を上げる井坂だが、すぐに気を取り直して行動に移る。
彼は腰に巻かれたチェーン武器、ウェザーマインを手に取ると、数体のティアナ達に向かって攻撃した。
ティアナ達は鞭で攻撃を受けるとあっさり姿を消し、一人残らずいなくなった。

「全て偽物…本物はどこに?」


バン!バン!バン!バン!バン!


「ぐうっ…!そこですか」

井坂がその方向を向くと誰もいなかったが、しばらくしてティアナの姿がゆっくりと現れた。
彼女は、井坂が分身に気を取られている隙にオプティック・ハイドで不可視化し、彼の側面に回り込んでいたのだ。


「分身に透明化…良い手ではありますが、次は通用すると思わないことだ」
「くっ!」


井坂の言うとおり、彼の実力ならこのような奇策は2度も通用しないだろう。
また新しい手を練る必要がある。
しかし対峙する男は、作戦を練る暇もなく、すでに行動に移っていた。


「メモリの能力とあなたの実力は大体わかりました、そろそろ終わりにしましょう」

そういって井坂が繰り出してきたのは…雨。
酸性だったり毒性があったりするわけでもない無害な雨が、ティアナの周囲半径数メートルに降り注いでいた。

「こんな雨、大したことないわ!」

トリガー・ドーパントは顔面に有するスコープにより正確無比な射撃を可能とする。
この程度の雨では目くらましにもならない。
ゆえにティアナは気にしないことにしようとしたが、

「いいんですか?早くそこから逃げないと大変なことになりますよ」
「え?」
『マスター!早くこの場から離れてください!』

クロスミラージュが警告するが、遅かった
井坂の降らせた雨がさらに強くなり、やがてそれは水の渦となってティアナの身体を拘束しようとしていたのだ。

「な…に……これ!うご…けない……」

水渦に閉じ込められ、身動きの取れないティアナ。
何とかもがいて脱出を果たそうとするが、無駄であった。

「いき…が……でき、ない」
「苦しいですか?すぐに楽にしてあげますよ」

ニタニタと笑いながら井坂は…ティアナを閉じ込めた水渦に向かって雷を流し込んだ。


「ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」


水の中での電撃攻撃は、絶大な効果を上げた。
ティアナは悲痛な絶叫を上げた。

「が……ぐ……」

水渦から解放されても、ティアナは動けなかった。
雷によるダメージと痺れで、立ち上がることができないでいた。

「雨に打たれて寒かったでしょう?今暖めてあげますよ」

その言葉にびくっとしてティアナが顔を上げると、井坂は彼女の首を掴み、身体を持ち上げると…
高熱を彼女に浴びせかけた。

「…………………………」

もはやティアナには言葉を吐くことさえできなかった。
井坂の攻撃から解放されるのと同時に、彼女の身体は崩れ落ち、変身が解除された。



「これで終わりですか。もう少し手ごたえのある相手かと思いましたが、見込み違いでしたね」

変身を解いた井坂は、戦闘不能となり同じく変身の解けた少女を見下ろしながらつぶやいた。
虫の息とはいえ、まだ死んではいないようだ。

「おや?」

そのとき、ティアナの身体を…正確には彼女がメモリを刺した右手を見て彼はあることに気付いた。

「これは……!」



「(ここまで…か)」

ティアナはすでに自らの生を諦めていた。
身体を動かそうにも動かせない。
自分はあの男に殺されてしまうだろう。
彼女は顔を上げると、井坂を睨み付ける。
こんなやつのために、自分の夢は壊されてしまうのか。
やっぱり自分のような凡人には、こんな場所は不釣り合いだったのだ。

「殺すなら…さっさと殺しなさいよ」

生気のない目で、ティアナはそう言い放つ。
対する井坂は、こちらを笑顔で見ている。
勝者の余裕のつもりだろうか。見ていて腹が立ってきた。
井坂が口を開いた。


「私と手を組みませんか?」


ティアナは驚きで目を見開いた。




「とりあえず、戦いでの消耗が激しいだろう。放送までじっくりと休むとしよう、ティアナ君」
「ええそうね、井坂先生」

ここはF-4。
井坂深紅郎とティアナ・ランスターは休息を取っていた。

『マスター、本当にあの男と手を組むつもりですか?』
「あそこであの申し出を断ったとしても、殺されるだけだったはずよ」
『それはそうかも…しれませんが』
「それに、あの男…井坂先生についていくのは、決して悪いことばかりでもないわ」

ティアナは手を組むことを提案してきた際に言ってきた井坂の言葉を思い出す。

『こう見えても私はガイアメモリ専門の医者でね。私についていけば君をさらに強くさせることができるはずだ』

強さ。
それは今のティアナが求めずにはいられないものだった。
それが手に入るなら、この明らかに井坂に手綱を握られている不平等な同盟も、悪くない。

「私は強くなる。なのはにも、スバルにも、誰にも負けない強さを手に入れて見せる…!」



あの時、井坂がティアナの右手を見て驚いたこと…それはメモリを刺した箇所にコネクタがなかったことだ。


「(ティアナ君に見せてもらった説明書にも書いてあったが、本当にコネクタ無しで変身が可能なのか…)」

正確に言えば、コネクタ無しでも変身は出来る。
しかしその場合、身体にかかる副作用が尋常でないのだ。
メモリは直挿しに限るが持論の井坂でさえ、コネクタ無しでの変身などしたことがない。

「(園咲琉兵衛…こんなメモリをひそかに開発していたとはやってくれますねぇ)」

実際にはこのT2メモリを開発したのはミュージアムではなく、加頭の所属する財団Xなのだがそんなことを彼が知るわけもなかった。


「(しかし、コネクタ無しでの変身……いいですねえ♪)」


コネクタを介さない変身。
それはつまり、コネクタを使うよりもさらに純粋な意味での直挿しということだ。
きっとかなりの力を引きだすことができるだろう。


「(ティアナ君…君には存分にそのメモリで戦ってもらいますよ)」


彼女、ティアナ・ランスターと手を組んだ理由もこのメモリだ。
彼女はこのトリガーメモリの実験台としてはこれ以上ない逸材だ。

その理由としてまず第一に、メモリとの相性がいい。
戦いで井坂は彼女を軽くあしらっていたが、実際その射撃センスはかなりのものであることは井坂も気づいていた。
おまけに彼女の話によれば、初めてこのメモリを使ったとき、まるで吸い寄せられるようにメモリの方から彼女の身体に入って行ったというのだ。
これは非常に興味深い話だ。
もしかしたら彼女は異常適合者なのかもしれない。

第二に、彼女が未成年であるということだ。
かつて園咲琉兵衛が園咲霧彦に語ったように、大人になりきれていない年頃の子供は、ガイアメモリの成長の可能性を持っているのだ。
霧彦はその話を聞いて激怒したが、この男にそんな情などあるわけもなかった。

惜しむべくは、彼女が心に闇を抱えており、メモリが成長する前に毒素にやられて精神が保たなそうなところだろうか。
まあ、人の精神というものは時にガイアメモリに突然変異をもたらすこともある。
これはこれで一興ということにしておこう。

ともかくそういうわけで、井坂は協力という名目で彼女と行動を共にすることになった。
メモリを使用させるために参加者を襲うことになるが、まあ仕方ない。
もっとも、殺し合いの打破という目的も放棄するつもりはない。
実際、井坂が首輪解除のための情報を集めていることを話すと、ティアナも協力するといってくれた。
おそらく彼女もこの首輪が戦闘能力を抑えている可能性に気づいているのだろう。


「(ティアナ・ランスター君…君には協力してもらいますよ。私の…欲望のために!)」


木陰で休息を取っている彼女を見据えながら、井坂はシュルリと舌なめずりした。


【一日目・早朝/F-4 森】


【井坂深紅朗@仮面ライダーW】
[状態]:ダメージ(微小)、疲労(小)、腹三分
[装備]:ウェザーメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式(食料残2/3)、ランダム支給品1~3(本人確認済)
[思考]
基本:殺し合いを打破して、主催者を打倒する。
0:ティアナと行動し、トリガー・ドーパントを観察する
1、他の参加者に出会ったらティアナと共に戦う、ただしリスクの高い戦闘は避ける
2:首輪の解除方法を探す
3:手駒を見付ける
4:空腹に備えて、できるだけ多くの食料を確保したい。
[備考]
※仮面ライダーW第34話終了後からの参戦です。
※首輪により能力が制限されているのではないかと考えています



【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:ガイアメモリによる精神汚染(小)、疲労(大)、魔力消費(大)、ダメージ(大)、断髪(スバルより短い)、下着未着用 、全身火傷
[装備]:ガイアメモリ(T2トリガー)、クロスミラージュ(左4/4、右4/4)@魔法少女リリカルなのは、小太刀のレオタード@らんま1/2
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~1(確認済)、機動六課制服@魔法少女リリカルなのは、下着
[思考]
基本:優勝する事で兄の魔法の強さを証明する。
1:井坂と行動を共にし、他の参加者を倒す
2:引き際は見極める。
3:スバル達が説得してきても応じるつもりはない。
[備考]
※参戦時期はSTS第8話終了直後(模擬戦で撃墜後)です。その為、ヴィヴィオ、アインハルトの事を知りません。
※首輪により能力が制限されているのではないかと考えています


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最終更新:2014年06月14日 18:11