決意のT/少年の使命 ◆XksB4AwhxU


「くそっ……!」


鳴海探偵事務所の私立探偵、左翔太郎は悔しそうな表情で悪態をついていた。
加頭順
奴は自分達の手で倒したはずだ。
なぜ生きているのか。
いや、それだけならまだいい。
奴が何を考えてこんなふざけたゲームを開催したのかは知らないが、また倒せばいいだけだ。
問題は…

フィリップ……!」

フィリップ。
先日1年ぶりの再会を果たした唯一無二の相棒。
その相棒が、奴らによって捕らえられているというのだ。


「待ってろよフィリップ…こんなふざけたゲーム、すぐにぶち壊してお前を助けてやるからな!」


強い決意を胸に、翔太郎は相棒に誓う。
殺し合いに乗るという選択肢は彼にはない。
奴らが素直にフィリップを返してくれるとは思えないし、大体そんなことはフィリップ自身が望まないだろう。


「それに…仮面ライダーは人々を守る正義の味方だからな!」


だから彼は決意する。
殺し合いを打破し、相棒を助け出すことを。


地図を見ながら、翔太郎はここから一番近くにある施設、図書館を目指すことにした。
殺し合いを打破するために必要なのは同じ志を持つ仲間だ。
もちろん真っ先に出会いたいのは仲間である照井竜だが、あてがなくては探しようもない。
殺し合いに乗った参加者と出会う可能性もあるが、その時はその時だ。

「グダグダ考えてても仕方ねえしな。行くとするか!」



一方、そんな図書館には一人の少年…ユーノ・スクライアがいた。
彼はデイバックの中身を一通り確認し終えると、館内をぐるりと見渡す。
図書館の規模はそれなりにあり、無限書庫などと比べると比べ物にならないがそれなりに蔵書数も多いようだった。
後に無限書庫司書長となる彼はざっと本を調べてみた。

「プリキュア……テッカマン……ウルトラマン?」

聞いたことない言葉だ。
ミッドチルダや地球とは違う他の管理世界に存在するものなのだろうか。
そういえば、加頭という男が話していた仮面ライダーという言葉も聞きなれない言葉だ。

「そういえば、あの人が使っていたあれは…」

ユーノはあの会場でのことを思い出す。
あの男は、ガイアメモリというものを用い、異形の姿へと変貌した。


「あれはまさか…ロストロギア?」


確証はないが、もしそうだとしたら黙って看過するわけにはいかない。
仮にロストロギアでなかったとしても、どのみちあのような危険なものを放置はできない。
一刻も早くこの殺し合いの企画者たちを逮捕し、回収しなければならない。
だが、管理局とは連絡ができないし、この会場のどこかにいるだろうなのはやフェイトとも念話ができない。
状況はかなり厳しいようだ。

「とりあえず、まずはここにある本を調べてみようかな」

加頭という男の言っていた仮面ライダーやガイアメモリ、この図書館の文献のいくつかに見られる謎の言葉。
確証はないが、これらについて知ることができればこの殺し合いを止めるための突破口を見つけることができるかもしれない。
もちろんここにあるすべての本が有益な情報源になるとは思えない。
ある程度の取捨選択をしながらでないといつまでたっても調べ終えることができない。
だが、自分には検索魔法がある。
検索魔法を使えば、ある程度効率よく必要な情報を手に入れることができるだろう。

「よし、やるぞ!」


それから30分後。
ユーノは苦悶の表情で検索魔法を行使していた。


(く…どういうことだ!?魔力の消耗が…いつもより激しい!?)


先ほども言ったように、ここは無限書庫などと比べれば蔵書数は圧倒的に少ない。
だから調べるといっても、そんなに時間がかかるとは思っていなかった。
だが現実はそう甘くなかった。
普段検索魔法を使う時より明らかに魔力の消耗が激しいうえに、調べる速度も著しく落ちていた。
むろん消耗が激しいといっても短時間の行使ならそれは微細なものだ。
だが既に30分以上も続けているために、大分疲れがたまってきていた。
なにしろ以前闇の書事件で無限書庫での調査をした時のように、ただ一つの事柄を調べればいいわけではなく、今回は情報の量を手当たり次第に増やしていくのが目的だ。
魔力消費による疲労と次々入ってくる情報の整理で心身ともに負担が大きかった。

ユーノは検索魔法の展開を止める。
このまま消耗し続けながら調査を続けていくのはさすがに無理がある。
時間はかかるが、自力で調べた方が良さそうだ。
検索魔法を止めた瞬間、一気に疲れが出たのかその場に倒れてしまう。


「少し休んだら、また調査を再開しよう…」


こうしている間にも参加者が凶刃に倒れているかもしれないのだ。
あまり休んではいられない。

ユーノは自分と同じくここに呼ばれた高町なのはフェイト・テスタロッサほどの魔法の才能はない。
支援系の魔法ならそこそこに自信があるが、攻撃魔法はてんでだめだ。
だからこそ、彼は決めたのだ。
前線で彼女たちを守るのではなく、後方で裏方に徹し彼女たちのサポートをすることを。
その結果彼は、無限書庫でその調査能力を存分に発揮し、地味ながら闇の書事件解決に貢献したのだ。

なのはやフェイトも、きっと今ごろ殺し合いの打破のために動き出しているだろう。
それなら自分の仕事は、彼女たちがまっすぐ飛ぶためのレール作りをすることだ。


「そうだ…これが僕、ユーノ・スクライアにこの殺し合いの場で与えられた……使命だ!」


ガチャ


その時、突然図書館のドアが開く音がした。
ユーノはすかさず起き上がろうとするが、かなり疲れがたまっていたためか、体が動かなかった。


(まずい!この状態で襲われたりしたら…!)
「おい!大丈夫か!」


ユーノの懸念とは対照的にその声の主は心配そうにしながらこちらに駆け寄ってきた。
良かった。殺し合いに乗ってはいないらしい。


「あ、ありがとうございます…えっと」
「俺は左翔太郎。風都って街で探偵をやってるんだ。立てるか?」
「あ、はい…迷惑をかけてすいません」


翔太郎に手を引かれ、どうにか立ち上がるユーノ。


「気にすんな。俺は人々を守る正義の味方…仮面ライダーだからな!」
「仮面ライダー……あなたが?」


加頭が話していた仮面ライダーという存在。
目の前の男こそが、その仮面ライダーらしい。
彼に話を聞けば、詳しい話が聞けるかもしれない。


「…あー、それより君の名前も教えてくれねえかな?何があったのかも聞きたいしよ」
「あ…はい。僕はユーノ。ユーノ・スクライアです」


探偵は決意する。殺し合いを止め、相棒を助けることを。
少年は止まらない。自らに課された使命を全うするために。
それぞれの想いと出会いが、この殺し合いの場に何をもたらすのか。
それはまだ分からない。



【1日目/未明 I-5 図書館】

【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:健康
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1~3個
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
1:ユーノから話を聞く
2:仲間を集める
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です


【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:体力消費(中)、魔力消費(中)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3個
[思考]
基本:殺し合いを止め、企画者たちを捕らえる
1:翔太郎と話をする
2:図書館の本を調べる
[備考]
※参戦時期は闇の書事件解決後です
※ガイアメモリはロストロギアではないかと考えています
※検索魔法は制限により検索スピードが遅く、魔力消費が高くなっています
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)


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左翔太郎 Next:彼らは知らない
ユーノ・スクライア Next:彼らは知らない


最終更新:2013年03月14日 21:54