覇王と決意と蝙蝠男 ◆Z9iNYeY9a2
アインハルト・ストラトス。
シュトゥラ王国の国王「覇王イングヴァルト」の末裔。
覇王流の強さを証明するために戦い続けた少女。
「ここで覇王流の力を証明しろと、そう言うのですか?」
彼女が求めたのは本当の強さ。
先代の望んだ、守るべきものを守ることができる強さ。
それを持っていることを証明すること。
名簿を開くと、そこには親友、ヴィヴィオが、その二人の母が、そしてヴィヴィオを通して知り合った人達がいた。
コロナとリオは巻き込まれていないようだった。
ある程度想像はしていたもののやはりショックはある。
「いいでしょう。この場で、私は大切な人たちを守ります」
そう、それでこそクラウス・G・S・イングヴァルトの力の証明ができるだろう。
ヴィヴィオを、皆を守るために戦おう。
だが不安なこともあった。
これは殺し合い。命を賭けた戦いをしなければいけないのだ。
今までの野試合においても非殺傷設定を外すことはしなかった。
この力は守るためのものであり、奪うためのものではないのだから。
もしこの場で、相手の命を奪ってでも倒さなければならない者がいたとき、自分に戦うことはできるのか。
『にゃー』
「…大丈夫です、ティオ」
そんな不安を読み取ったのか、デバイス、アスティオンは心配そうな鳴き声をあげる。
そう、迷っていては駄目なのだ。その時にはちゃんと決意できるようにしなければ。
「ん?」
ふと、何か笑い声のような物が聞こえた。
何か歓喜の声でもあげているようだ。
この環境でそんな声をあげるなど、無用心なのか、それともよほど己に自信があるのか。
好奇心というものもあり、近くまでなら大丈夫と寄ってみることにした。
だが辺りは暗く何かを見ることができるような場所ではない。
とりあえずとバッグから懐中電灯を取り出したとき――
バサッ
反射神経が反応し、それを避けた。
「…ッ!?」
飛んできた何かはそのまま地面に降り立ち、こちらを向く。
そこには蝙蝠の怪人としか言いようのない何かがいた。
「ゴラエガ ガギギョン エモンザ」
「…?何を言っているのですか?」
蝙蝠男(仮)はよく分からない言語をこちらに投げかけてくる。
何と言っているのかは分からないが、殺意はひしひしと伝わってきた。
「――武装形態」
殺意まで向けられて黙っているわけにはいかない。
ただの子供としか見ていないだろう蝙蝠男の前で、戦闘態勢をとる。
「ン!?ゴラエザタザ ンリントデザバギンバ?!」
相変わらず何と言っているのかは分からないがとにかく驚いているようだ。
驚きのままにこちらへ腕を振り下ろしてくる蝙蝠男。
武術の鍛錬を欠かさず行ってきたアインハルトにはそれを受け止めることは容易かった。
しかし、
(――パワーはかなりのものですね…)
流石怪人とでも言うべきか、人並み外れた腕力を持ってはいる。
だが戦いそのものに慣れた技量を持っているわけではないようだ。
無造作に振るわれる腕も捌ききれないものではない。
左からの攻撃は受け止め、右からの攻撃を回避、そのまま拳を正面に撃ち込む。
「ギャッ!」
叫び声をあげて後ろに下がる蝙蝠男。
だがすぐに飛び掛ってきた。一応力は入れたはずなのだが。
噛み付こうとする口を押さえ、足で蹴り飛ばす。
普通であれば昏倒させられるはずの一撃。
しかし蝙蝠男は立ち上がる。やはり普通の人間とは違うのだろう。
三度飛び掛ってきた蝙蝠男。
今度はそれを受け止めるのではなく、勢いを利用して投げ飛ばす。
「……?」
蝙蝠男は落ちてこなかった。
とそこで気付く。相手は蝙蝠なのだ。
つまりこの暗闇の中で空からの奇襲をかけることもできる。
辺りを見回すが姿は見えない。夜はやつの独壇場なのだろう。
意識を集中させて相手の居場所を探る。
それと同時にある一つの手を実行に移す。
真夜中の静寂。
風の音、虫の鳴き声すら聞こえないその空間。
羽音が響き、アインハルトの体に鋭い牙が近付き―
「覇王流――覇王断空拳」
その腹に蓄えられた力のこもった拳が直撃。
蝙蝠男は吹き飛ばされた。
「ガアァァァ!!」
腹部を押さえ蹲る蝙蝠男。今までの攻撃では決して見られなかった反応だ。
それもそのはず。今の攻撃からは非殺傷設定を外し、物理ダメージを加えるようにしたものだ。
あれはおそらく魔力ダメージのみでは怯むことはないのだろう。
そう思い、迷いもあったが物理攻撃として拳を振るった。
効果はあったようだが、迷いが威力を下げてしまったように感じる。
起き上がった蝙蝠男はこちらを向き、腹を押さえたまま翼膜を広げる。
来るかと構えたところで蝙蝠男は後ろに下がり、そのまま暗い森の中へ飛び去った。
追うべきか、追わないべきか。
その判断は早かった。
あれはそこまで強くはないようだったが、それでも危険な存在に違いないだろう。
ヴィヴィオや皆が遅れをとる存在ではないはずだが万が一という事も有り得る。
それにあのような存在であるのならばおそらくこの手で止めを刺すこともできるだろう。
己の迷いも含めて。
「行きましょう、ティオ」
『にゃ!!』
少女は走る。
覇王の願った強さを証明するために。
そして、大切な人たちを守るために。
【一日目・未明 C-6/森林】
【
アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:アスティオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考]
基本:皆(ヴィヴィオ、なのは、フェイト、スバル、ティアナ)を守るために戦う
1:蝙蝠男を追う
2:皆に害を及ぼすだろう存在は倒す
3:人の命を奪うことに迷い
◆
アインハルトに蝙蝠男と称された男、
ズ・ゴオマ・グ。
彼のスタート地点は森林の中であった。
ダグバのベルトの一部を回収する命令を受け、止むを得ずに色々と飛び回っていたゴオマ。
そんな彼がその一部を持ち出したところでこの殺し合いに呼ばれた。
リントの取り決めたゲゲル。そんな物に興味などない。
そんなものよりダグバのベルトの欠片を奪われたのではないかと焦ったが、それは配られたバッグの中に入っていた。
だがバッグの中にはそれ以上に、グロンギにとっては重要な、そしてゴオマにとって大きな意味を持つ道具が入っていた。
巨大なそろばんのように見えるその物体、バグンダダ。
グロンギがゲゲルを行う際に殺した人数を数えるためのカウンターである。
それが自分の手にある。つまりこれは、念願の、グロンギのゲゲル参加資格を得たということなのだ。
その事実に歓喜し、思わず大きな笑い声をあげてしまった。アインハルトが聞いたのはこの声である。
本来バグンダダはゴのためのカウンターであり、カウントするのはドルドの役割なのだがそんなことはゴオマには関係なかった。
さらにふと触れた名簿を見たとき、興奮はさらに高まった。
ゴ・ガドル・バ、
ン・ダグバ・ゼバ。
自分を蔑み続けた者、我らグロンギの最終目標。
その二人がこの場にいる。
いてもたってもいられなかった。
そして彼の超音波が近付いてくる者を捕らえた。
リントの子供がこちらに向かってくる。
ゲゲルの参加資格を得られた喜びと興奮が、ダグバのベルトの破片を使うことすら忘れさせていた。
クウガでもないリントなど楽勝とも考えたのだろう。
そして現在、森の木の上で腹を押さえて座り込んでいた。
もし他のグロンギ、メやゴの連中、バルバがいたら嘲り笑っていただろう光景だ。
だがそんな彼にも過ぎた物と言うべきほどの道具があった。
ダグバのベルトの欠片。そう、これを使えばあのようなリントなどどうということはないのだ。
それを取り込むゴオマ。
同時に全身に痛みが走る。
「ガァァァァ…」
思わず呻き声をあげるゴオマ。
しかし痛みと同時に全身に力が湧き上がってくるのを感じる。
そう、これがダグバの力なのだ。
そしてゴオマは再び近付いてくる者の存在を感知する。
あのリントであろう。
「ボソグ、リント、ダグバ」
もう逃げる必要などない。
この力があれば殺すなど容易い。
近付いてくる者に向かって、ゴオマは笑い続けた。
【一日目・未明 C-6/森林】
【ズ・ゴオマ・グ@仮面ライダークウガ】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:ダグバのベルトの破片@仮面ライダークウガ
[道具]:バグンダダ@仮面ライダークウガ、支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考]
基本:自分のゲゲルを行う
1:追ってきたリントを殺す
2:ダグバを殺してザギバスゲゲルを成功させる
3:会うことがあればガドルも殺す
[備考]
※36話、ダグバの力を取り込む前からの参戦です
※ベルトの破片を取り込みました
今は強化態へと変身できますが、時間経過で究極態に変身できるようになります
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最終更新:2014年06月14日 18:06