捲られたカード、占うように笑う(前編) ◆udCC9cHvps



木々が密集する森林地帯。
本郷猛とまどかは、先ほど爆音が響いた地点に駆けつけようとした。
急行する途中で本郷は戦いに備えるべく、すでに仮面ライダーに変身をしている。
まどかは、肉体を大幅に強化されている改造人間であるライダーの歩幅についてこれないであろうため、本郷は彼女を背負って移動していた。
ディバックの中はザッと確認したが移動に使える物はなかったので(時間を食うため、その際に名簿や道具の説明書きは確認できなかった)、このような形になっている。
元々、まどかは小柄で体重が軽いため、改造人間には全くというほど負担が無いのが幸いだった。

「本郷さん、あれを!」
「ああ・・・・・・見えている」

二人の眼に数10mほど先で女性らしき影と巨大な蝙蝠らしき物体との争いが映っていた。
それを見てからの本郷の対応は早い。
まずは、まどかを離れた位置に隠れさせておく、それは本郷なりの配慮だった。
相手が殺し合いに乗っていない保証はどこにも無いため、万が一に備えて戦えないまどかを隠れさせる必要があると考えたのだ。

もし戦闘になった場合、彼女がやられたり人質に捕られたりしたら眼も当てられない。
素人に武器を持たせて戦わせるなど言語道断だ。
まどか自身もそれを理解していたため、そして本郷の足枷にはなりたくなかったので、素直に従った。

「さっきも言ったとおり、俺が良いと言うまで隠れてるんだ。
万が一、俺の身に何かあったら逃げるんだ。
くれぐれも加勢しようと考えるんじゃないぞ、いいな?」
「・・・・・・はい、でも必ず生きて帰ってきてくださいね。
マミさんや、さやかちゃんみたいにもう会えなくなるのは嫌ですから・・・・・・」
「ああ、約束しよう」

その巴マミ、美樹さやかに当たる少女たちがこの殺し合いの場にいるかもしれないーーその言葉を本郷はクラッシャーの奥にある口の中に留めておく。
それを彼女に話すのは、今止めなければいけない戦いを止めてからでも遅くない、と思いながら。

やりとりを済ませるとライダーは戦いの現場へと向かい、少女は樹の影から遠くなっていくその背中を見つめていた。


~~~~~


怪しく笑い不気味な言葉を喋る蝙蝠型の怪人ーーズ・ゴオマ・グ。
それに立ち向かうは覇王流を受け継ぐ女魔導士ーーアインハルト・ストラトス。
遭遇戦から始まったその戦いは第二ラウンドに差し掛かっている。
数十分に及ぶ戦いの末に、軍配が上がり始めているのはーーゴオマ。
アインハルトは苦戦を強いられていた。

空中からゴオマが奇怪な言葉を吐く。
笑いながら語りかけたそれは、グロンギ語がわからないものでも、相手を見下す言葉だと態度でなんとなくわかる。

「ゾグギザ、ジョパギゾ?(どうした、よわいぞ?)」
「くッ!」

身体のあちこちに擦り傷が溜め込まれ、疲労のためか息の上がっているアインハルトは歯噛みするしかなかった。

苦戦の理由はいくつかある。
ゴオマは最大時速120kmで空を飛ぶことができる、空はゴオマのフィールドであり、無闇に飛ぼう物なら確実に餌食になる。
さらに見た目通りに蝙蝠の特性を引き継いだグロンギであるゴオマには、常人ならば気をつけて歩かなければならない夜の暗闇もなんら障害になりえない。

対してアインハルトは、技術的にも魔力的にも普通の魔導士より優れてるとしても、森の木々や夜の闇は確実に障害となっていた。
具体的には、こちらの攻撃は高い飛行能力や森林の障害物などを利用されて避けられたりする。
当てるだけでもかなりの集中力が必要であり、タメと隙の短い小技は当たってもかなりのタフネスを持つグロンギには決定打にならず、タメと隙の大きい大技はまず当たらないのだ。
周辺の暗さの関係でこちらの防御も難しく、中々思うように戦えないでいる。

・・・・・・だが、それだけで覇王の技を使うアインハルトが遅れを取ることはない。
彼女が不利なのは、もっと別の要因がある。

(この蝙蝠男・・・・・・さっきよりも強くなっている!)

蝙蝠男は最初に遭遇した時よりも、見た目も毛深くなっており、それだけでなくパワーやスピードも段違いに増していた。
戦う内にアインハルトは体力も魔力も消耗、結果的に不利に追い込まれ、一方で蝙蝠男はまだまだ余裕な様子であり、むしろ時間が増す度にどんどん元気になっているようだ。

彼女は知るよしもないが、ゴオマはアインハルトと再戦する前にダグバのベルトの破片を体内に吸収している。
すなわち、破片の中に内包された膨大な闇の力をゴオマは身に宿しており、その力は通常よりも遥か強化されている。
ちなみに、蝙蝠らしく元のゴオマは日光が苦手だったが、今の彼は太陽すら克服できる。

ーーズ・ゴオマ・グ 強化体ーー

今のゴオマにはその名に相応しい力を持っていた。
アインハルトがそんな相手にいくつかの擦り傷程度で済んでいるのは彼女自身の実力の賜物であり、並の戦士ならとうの昔に殺されている。

しかし、このまま戦い続けても消耗によっていつかはこちらは倒れる。
アインハルトはそれを理解していても、逃げる選択はしなかった。
戦いを放棄する事でヴィヴィオを始めとする仲間に被害が及ぶことは、なんとしても避けたかった。
己の命欲しさだけに逃げることは、覇王の名折れであり、ヴィヴィオたちへの裏切りだ。
そう考えたからである。

(私は・・・・・・逃げません!)

アインハルトは宙に浮いているゴオマを睨み、己の士気を奮い立たせる。
だが、その最中で自身の相棒であるデバイス"アスティオン"が主人に警告の意味を込めた鳴き声を放つ。

『にゃあ!』
「ティオ・・・・・・? なに?新手!?」

デバイスからの警告を聞き、アインハルトは即座に周囲を確認。
すると離れた位置から、バッタのような奇怪な仮面をつけた異形が、こっちに向かってきている。
また怪人か!?ーーそう思った彼女は身構え、三つ巴か、最悪の場合である1対2の不利な戦いを覚悟する。
アインハルトと敵対しているゴオマも交戦を一時中断し、空中から仮面の異形を睨む。

「クウガ!?
リゾシギソン “クウガ”?!
(クウガ!?
緑色の“クウガ”?!)」

どうやら、現れた謎の異形に驚いているようだ。
それも何かを知っているように男を見ては「クウガ、クウガ」と口々に漏らしている。

そして、仮面の異形は一人と一匹に捕捉されたとわかると、いきなり攻撃したり逃げたりはせず、蝙蝠男に視線を向けてその場に立ち止まって呟く。

「怪人コウモリ男? まさかBADANの手先か?」
「BADAN・・・・・・?」

聞きなれない言葉に首を傾げるアインハルト。
本郷は続けて声高々に呼びかける。

「まあいい、俺の名前は先ほど加藤が言っていたが改めて名乗ろう。
俺は仮面ライダー1号、本郷猛!」
「本郷・・・・・・あの時の!」

アインハルトはゲーム開始前に加藤と向き合って話す男の一人に本郷がいた事を思い出す。
つまり、この仮面の男はあの時の本郷猛ということか。

「加藤の思惑には乗らず、この殺し合いの脱出もしくは破壊を目指している者の一人だ!
そして、殺し合いにならない者の味方でもあるーー」
「ゴラゲゾ ボソゲパ ゴセビザブグヅブ クウガ!!
(クウガ、おまえを殺せば俺に箔がつく!!)」

ゴオマは仮面ライダー・本郷と名乗る男の話を強引に立ちきるかのように、アインハルトを無視して本郷へと空中から滑空し襲いかかる。
その腕には相手を八つ裂きにせんと、爪がギラリと輝いていた。

「危ない! 避けてください!!」

滑空によってスピードを上げているゴオマに追い付けないアインハルトは、本郷へ注意を訴えるのが関の山であった。
彼女の言葉を聞こえたか聞こえずか、本郷は急接近ゴオマを見据えながら冷静につぶやく。

「・・・・・・なるほど、話も聞かずに見境なく襲いかかってくるとは。
俺の知るBADANの怪人と何か違う気がするが、殺し合いに乗っていることだけは間違いないようだな!」

怪人の鋭き爪が仮面ライダーを真っ二つにしようする直前、本郷はこれを高く跳ぶ事で回避する。
しかしーー

「いけない!
あれだけ高く跳んでしまうと自由落下で隙が生まれる!」

ーーアインハルトの指摘通り、本郷は空を飛ぶ能力を持たないライダーであり、飛べるゴオマとは違って跳んだ後の軌道修正ができない。
降下中の隙を狙うぐらいの機動力と俊敏性をゴオマは持っている。
ゴオマは飛び上がり、空中を落下中の本郷に再度の爪攻撃を仕掛ける。
クウガも空までは飛べない、優位なのは制空権を握っている自分だーーと相手を笑いながら。
そして、本郷に回避不可能な凶刃が迫る。

「そのような爪で仮面ライダーを落とせると思うな!」

ゴオマの爪が本郷に届こうとした寸前、本郷は落下コースの途中にある長く伸びた”木の枝”を手にかけ、鉄棒体操の要領で枝を軸とした回転により攻撃を回避する。
間髪入れずに、回転によって生じた遠心力を上乗せしたカウンターキックをゴオマに放った。

「ギャッ!!」

まさか飛べない身でありながら、そのような反撃方法を繰り出して来るとは思わなかったために防御が間に合わず、蹴りはゴオマの後頭部にクリーンヒットする。
ゴオマはそのまま落下し、土埃を立てて地面に墜落した。

「飛べない者は空中では自力での軌道修正できないが、ならば周辺の物を利用するまでさ」

本郷はシュタッと難なく地面に着地し、次の攻撃する。
それからアインハルトはその戦いぶりの率直な感想を述べた。

「自分の力だけじゃなくて、自分の今いる場所の特徴を利用するなんて・・・・・・
この人は強い、とても戦い慣れている」

仮面ライダー1号は単純なスペックでは後発の2号・V3に劣り、ストロンガーのような電撃は使えず、アマゾンほどの生命力は持ち合わせず、X・スーパー1・スカイライダーのように深海・宇宙・空での戦闘はできず、ゼクロスのような多彩な武装もない。
だが、その誰よりも勝る物を1号は持っていた。
仮面ライダーとしてもっとも長い“戦闘経験”である。
これまでに本郷は幾多もの場所で戦い、幾多もの怪人を相手にしている。
その中には森で戦った事もあり、コウモリ型の怪人を相手にした事もあるため、どのようにして戦うかのビジョンが本郷の中にはあるのだ。
古代の怪人であるゴオマも殺した人数なら負けてないかもしれないが、その大半がグロンギほど力を持たぬリント(人間)であり、強敵と言えるのはクウガぐらいだろう。
ただ速く飛んで切り裂き噛みつくだけでは並の戦士には通じても、技量面では本郷に及ばない。
技の1号は伊達ではないのだ。

~~~~~~~~

それからあまり間をおかず、地面に墜落したゴオマへの警戒は解かぬように、正面に捉えながらアインハルトが本郷に近寄る。
彼女は感情表現が苦手なために笑顔こそないが、特に敵意を向けずに友好的な態度で本郷に接触する。

「本郷さんでしたね?」
「君は?」
「私の名はアインハルト・ストラトス。
安心してください、私もこの殺し合いに乗る気はありません」
「そうか、それは良かった。
怪我をしてるようだが大丈夫か?」
「ほとんど掠り傷です、まだまだ戦えます。
それより・・・・・・」

「ボ、ボソグ(殺す)! リント、クウガ!!」

二人は会話をしていると同時に、数m先で墜落したゴオマが起き上がるのを見ていた。
喚くような口調から後頭部を蹴りつけられて癇癪を起こしているのは明白だが、すぐに起き上がれた所からしてダメージはほとんど無さそうだ。

「手応えが薄いと思っていたが、やはり浅かったか」
「あれはかなりタフな怪人のようです」
「そのようだ。
あの狂暴性からしても、ここで確実に倒さないと厄介なことになりそうだしな。
手を貸すぞ」

共通の敵に対して、仮面ライダーと覇王は肩を並べる。
一人なら勝てるかどうかわからない相手にも、二人ならば勝てるかもしれない。
アインハルトは思わぬ所で味方を得たことにより、不利だった形勢が変わろうとしていた・・・・・・


・・・・・・それは唐突に、遠くから高速で回る車輪の音を三者は聞いた。
本郷に次ぐ新しい乱入者がここに馳せ参じようとしていた。

「なんだこの音は・・・・・・ローラーの音? こちらからか?」

本郷、アインハルト、ゴオマも音が聞こえてきた方向へ振り向いた。
そこにはまだ遠い上に暗いため見えづらいが、ローラーブーツと鉢巻きらしき物を身につけた人影が見えた。
そこで表面上にこそ現れてないが、アインハルトは心の中で安堵する。
人影の特徴と、自分の知り合いとの特徴が一致したからだ。

「スバルさん!」
「君の知り合いか?」
「ええ、信頼できる人です。
性格からしても、殺し合いに乗る人ではありませんし、きっと私たちと一緒に戦ってくれます」

アインハルトの知るスバル・ナカジマという人物像は、とても正義感の強い人物であり、頼りになる人物であった。
戦闘力こそ高いが、優しい性格であるため殺し合いに乗る事は絶対しない。
この場においては進んで殺し合いに乗っていない者を助け、殺し合いの破壊を強く望む女性であるーーアインハルトはそう信じていた。

『にゃ!? にゃーーー!!』
「え? どうしたのティオ?!」
『にゃーッ! にゃーッ!』

突然騒ぎだしたデバイスにアインハルトは目を向ける。
それは『強く警戒しろ』と訴えているようだった。
アインハルトがデバイスからスバルへ視線を向け直すと、彼女はもう10m近くまで接近していた。

・・・・・・だが、そこにいたのはアインハルトの知るスバルではなかった。
蒼い髪、高町なのはの物を模した白いバリアジャケット、額の鉢巻き、手甲とローラーブーツ状のデバイス、それらは記憶と同じだ。
しかし、身体の各所に植物の根っこが各所に生えており、何より瞳の色は金色、表情に生気も無く完全に機械と化していたーーこんなスバルをアインハルトは知らない。
さらにスバルがこちらに高速で向かいながら、拳を溜めていた。

なぜ彼女がそんな事をしているのか?
距離はもはや3m足らず。
一瞬の安心と油断が枷になったため、アインハルトの頭の中で状況処理をするには時間が足りない。
防御にまわせる魔力を練る時間がない。
そして、感情が一切籠らぬ声に合わせて、

「ディバインバスター」

スバルの拳から強烈な閃光が放たれた。
閃光は轟音と共にスバルの正面に合ったものを蒸発させ、余波だけで土や落葉を宙に浮かせ、木々をへし折った。

閃光が止んだ後には、スバルの前に倒れている本郷とアインハルトの姿があった。
ただし、本郷はほとんど無傷であり、すぐに首を起こす。
だが・・・・・・

「アインハルト!?」

本郷の胸に重なるようにアインハルトがぐったりとしていた。
彼女は背中のバリアジャケットの大部分を砕かれ、痛々しい傷を負っている。

実はディバインバスターが炸裂する寸前に、直感で危険を感じとったアインハルトが、反射的にきびすを返して本郷を押し倒し、両者の直撃を回避したのだ。

ところが、ディバインバスターの直撃は回避したものの余波はアインハルトの背中に強烈なダメージを与えた。
本郷が無事だったのは、上から重なったアインハルトが余波のダメージをほとんど引き受けてしまったからである。
さらに背中から伝わる焼けるような“異様な痛み”が、アインハルトにある事実を知らせた。

「この・・・痛みは・・・非殺傷設定が外されている・・・・・・?
スバルさん、どうして・・・・・・?」
「アインハルト!!」

アインハルトは嘆きの言葉を吐き出しながら気を失う、すると持ち主の気絶に合わせてバリアジャケットは解除され、アインハルトの姿も大人から本来の子どもの姿に戻ってしまった。
それには本郷もギョッと驚くが、今は疑問を後回しにする必要があった。
獲物を仕留め切れなかったと見て、スバルが追い討ちをかけてきたからだ。
まだ倒れてたままの二人の横に立ち、何の感情も見せず、スバルは蹴り潰そうとした。
本郷はその前に気絶した小さなアインハルトを小脇に抱えて、空いているもう一方の腕でスバルの蹴りを防いだ。
改造人間の腕と戦闘機人の脚がギリギリと音をたてて押し合う。

「くッ・・・・・・君はアインハルトの仲間じゃなかったのか!?」
「・・・・・・」

本郷の問いかけに、スバルは答えない。

(俺は彼女ーースバルの事を知ってるわけではないが、アインハルトの話では殺しあいに乗るような人間じゃなかったハズだ)

本郷はスバルの表情を観察する。
心優しい人間が死の恐怖から逃れるために、もしくは誰かを守るために殺しあいに乗ってしまう事は十分に考えられる。
だが、今の彼女からは恐怖や怒気・悲しみ、殺意すら感じ取れないマシーンのようだった。
己の意思という物を、今のスバルからは感じ取れないのだ。

(となると、洗脳か!?)

ショッカーからBADANまで悪の組織と戦い続けている仮面ライダーたちは、その過程で組織に洗脳された者はゴマンと見てきた。
スバルも洗脳させられているのではないかと、推測する。
まず本郷は、スバルから生えているあからさまに怪しい植物根に眼を向ける。

(彼女の身体から生えている根・・・・・・最初から生えていたものとは考えにくい。
あれこそが洗脳装置か?)

本郷はスバルが、自分の意思ではなく身体から生えている植物に洗脳されていると推察する。

(だとすると厄介だ。
根はどう見ても彼女の身体と同化してしまっている。
無理やり引き剥がせば死ぬかもしれん。
彼女自身は善人である以上、殺したくはない。
どうすれば・・・・・・)
「クウガ!! リント!!」
「ッ!?」

次に彼女の洗脳を解く方法を考えようとするが、かち合う本郷とスバルへ割り込むようにゴオマが襲いかかってきたので中断した。

(今はこの難局を乗り切るのが先か)

本郷とスバルは互いに後方へステップをし、ゴオマの爪攻撃をかわす。
直後にゴオマは標的をスバルに変えて爪と牙を輝かせて叫ぶ。

「リント!!
ゴセン ジャラゾグスバ!!
(リント!! 俺の邪魔をするな!!)」

散々同族に馬鹿にされ続けてきた自分に、強敵クウガ(本郷を自分の知るクウガと同じだと思っている)を殺して、自分の強さを証明する機会が巡ってきた。
その機会に横槍を入れてきたスバルにゴオマは腹を立てているのだ。
獲物をハイエナの如く横取りされる事を恐れたゴオマは、本郷たちより先に乱入者であるスバルを先に始末しようとする。
あからさまに殺意を向けられたスバルも、拳に魔力を収束し、先手を打たんとする。

「リボルバーシュート」

魔力で構成された弾丸が発射される。
威力はディバインバスターほどは無いが、非殺傷設定の場合なら人を殺すには十分だ。
ゴオマはこれを身をそらしてかわし、命中しなかった閃光が流れ弾となってゴオマの後方の森林の中へと消えーー

「きゃあああ!!」

ーー閃光が何かにぶつかった直後に、絹を裂くような少女の叫び声が森の中を木霊した。

(しまった! あの方角には!)

覚えのある少女の叫び声に、本郷の表情は仮面の下で青ざめる。

(あの辺りに、まどかちゃんを隠れれさせたハズだ。
まさか、今の流れ弾でーー)

強迫観念に駈られるように、本郷はアインハルトを小脇に抱えたまま、件の方向へ駆け出した。
まどかの安否を確認するために。

だが、叫び声を聞き付けたのはゴオマやスバルも同じ。
なんとしても自分の手でクウガを討ちたいゴオマは、スバルとの戦いを一旦やめて飛び上がり、後を追う。

「ビゲスバ!!(逃げるな!!)」

あっという間にスバルとの距離は離れていった。

「全てはノーザ様のために」
『ウィングロード』

最後にスバルは宙に光る道を形成し、その道に乗るとローラーを最大加速にして追撃を始めた。

~~~~~~~

時間は少し前に遡る。
まどかは離れた位置にある木の影からずっと、本郷たちの戦いを見ていた。
暗闇であまりよくは見えなかったが、本郷が味方らしい女性と共に蝙蝠っぽい怪人と戦い、突然に乱入者によって本郷が苦境に立たされている所まで見ていた。
本郷のピンチにまどかは焦る。

「このままじゃ、本郷さんが!」

だが、本郷からは戦おうとするなと言われていた。
むしろ、自分に何かあったら逃げろとすら言われている。
それでもまどかは、マミの時のように、さやかの時のように、杏子の時のように、誰かを半ば見殺しにするのはやはり嫌であった。
しかし、魔法少女でもない自分が出ていったところで何もできないのはわかっている。

だが、本郷たちを助けたい。 されど、自分にそんな力は無い。
本郷との約束を破るのか?
自分の安全を可能な限り確保してくれた本郷の気持ちを裏切るのか?
今、飛び出す方が後悔せずに済むのではないか? 後悔より自分の命が大切なのか?

ーージレンマが彼女の焦りを加速させる。

「・・・・・・私は、どうするべきなの?」

今ならば、仮にあの白い悪魔がこの場に現れて誘惑してきてたら、最後には魔女になる運命だと知りつつも契約してしまいそうな焦燥感が彼女の心を包む。
しかし、状況は彼女があれこれ考えている内に動いており、今まで傍観者に過ぎなかった彼女自身もとうとう飲み込んでしまった。

「はッ!?」

スバルの放ったリボルバーシュートが、偶然彼女の隠れていた場所の足元近くに着弾する。

「きゃあああ!!」

まどかは発生した衝撃波に吹き飛ばされて、地面に転がった。
その際にショックで口が空いたディパックの中身の一部をぶちまける。

「う、ううん・・・・・・」

幸いにも怪我らしい怪我はしなかったまどかが、ゆっくりと上体を起こすとまだ遠い場所から自分の悲鳴を聞き付けてこちらに向かってくる本郷と、その後ろから着いてくるゴオマとスバルの姿が見える。
また、近くの地面にはディパックからこぼれた見覚えのあるUSBメモリそっくりな形状の物体が地面に突き刺さっており、参加者の名前が記された名簿がページ開いていた・・・・・・

~~~~~~
改造人間としての脚力をフルに発揮し、走る本郷。
ある程度、距離を詰めた所でようやくまどかの姿が見えてきた。
動いている所からすると死んではいないようだが・・・・・・、なぜかそれ以上動こうとしない。
怪我でもしているのか?
ともかく急ぐ必要があると、本郷は駆け続ける。

「クウガ!!」
「邪魔をするなコウモリ男!!」

飛行するゴオマが本郷に追いついた。
ダグバのベルトを取り込む前でも120kmで飛べたのだ、地べたを走る仮面ライダーに追い付けない道理はない。
そして、仲間の元へいち早く辿り着きたいという本郷の願いなど知る気もなく、側面から冷酷なる爪の応酬を加える。
本郷は走りを止めず、アインハルトを抱えてない、もう一方の手で応戦しようとする。
それでも防ぎ切れずに、捌ききれなかった爪が本郷の腹部に一筋の傷を作った。

「ぐおおッ、おのれぇ!」

気絶しているアインハルトを小脇に抱えている分、本郷の戦闘力は低下していた。
少女の重さ自体はどうという事はないが、どうしても腕が片方塞がってしまう。

腕二本・足二本の徒手空拳を武器とする仮面ライダー1号にとって、これは戦闘力の低下に繋がる。
少女の安全を考慮するなら、戦闘力は更に悪化、防戦するしかなくなってしまう。
形勢は不利を越えて劣勢だった。
ならば戦闘力の確保のためにアインハルトを手放す? 論外だ。
自分は満足に戦えるが、無防備な彼女が危険に晒されてしまう。
しかし、今の悪戦苦闘に加えてスバルまで襲ってきたら、本郷はいよいよ窮地に陥るだろう。
そして、ゴオマと揉み合っている場所より上空からスバルが光る道に乗ってやってきた。
宙にできた星のように輝く道をローラーブーツで駆け抜ける彼女の姿は、本郷の複眼には死神にしか映らなかった。

「まずい、これはまずいな」

本郷はもっと厳しい戦いを覚悟する。
ところが、スバルは本郷とゴオマをスルー。
そのまま空を行き、ただ本郷たちよりも前へ向かうのみだった。
頭の回転が早い本郷は、スバルの行動の意味がすぐにわかった。

「まどかちゃんから先に殺すつもりか!」

本郷の予想は的中していた。
スバルはゴオマに足止めされている本郷よりも、戦闘力の無いまどかから先に狙うことにしたのだ。
ゴオマはなぜか執拗に本郷を狙っている、無理に介入するとまた三つ巴の泥試合になる可能性がある。
無駄な争いをするだけ時間も体力も浪費し、主であるノーザの野望もその分だけ遠退く。
ならば本郷はゴオマに回して、どこかへと逃げられる前にまどかを殺害する。
そして本郷及びアインハルトとゴオマを戦わせて、生き残って消耗した所を叩きのめす。
その方が効率的だとスバルは判断したのだ。
本郷がゴオマの阻害によって機動力を下げさせられている内に、死神はグングンと前へ進んでいく。

「それだけは、それだけはさせんぞ!」

本郷はそういい放つが、その思いとは裏腹にゴオマはしつこく攻撃を続けてくる。
ゴオマの視点からして、スバルがクウガを狙わなくなったのは好都合、欲しい獲物を再び横取りされそうになる前に仕留めるつもりだ。
相手は今、小脇に小娘を抱えていて自由に戦えない。
クウガを打ち取れる、またとないチャンスであるとゴオマは爪に渾身の力を込めて振り続ける。

ここまで悪い状況だと、他者を守ることはおろか、勝てる見込みが限りなく薄い。
本郷自身もそれをわかっている。
だが、わかっているからと言って諦める本郷猛でもない。

「まだだ! 仮面ライダーはまだ死なんぞ!
誰も守れないまま死ぬ気はないぞ!!」

闘志を一寸足りとも衰えさせず、仮面ライダー1号は戦い続ける。
身体のあちこちに傷ができよいとも、パワーと集中力がある分だけゴオマの攻撃を捌き続けた。

ーーその本郷の諦めなかった心に呼応するかのように奇跡は起こった。
これまで守り続けた少女が気絶から醒め、本郷の腕の中から飛び出し、

「武装形態」

少女の姿から大人の姿へ、バリアジャケットを再形成し、その勢いのままゴオマにアッパーカットを食らわせた。
一時的に怯ませるぐらいの効果はあり、ゴオマはたたらを踏んで後退する。
アインハルトはそのまま本郷を守るように、ゴオマの前に出た。

「・・・・・・本郷さん、私を守ってくれてありがとうございます。
お礼は戦うことで返させていただきます」
「大丈夫なのか? 君は怪我を負っているんだぞ!」

気絶から復帰したとはいえ、彼女の顔は青ざめており、戦えそうな状態には見えない。
それでも彼女は構わずに本郷に告げる。

「例え手負いでも数分ぐらいの足止めはできるハズ。
それに私も誰も守れないまま、覇王の強さを証明できないまま、こんなところで死ぬ気はありません」

確かに不安は残るが、無防備ではなくなったアインハルトより戦闘力の無いまどかを助けにいくべきだろう。
ついでに言えば、顔を見ずとも背中でわかるアインハルトの熱い闘気と意思。
同じ戦士である本郷も、彼女の気持ちを無下にしたくない気持ちがあった。
ゆえに、怪人は彼女に任せることにする。

「わかった。
足止めは頼むが、あまり無茶はするな!
まどかちゃんを助けたら必ず君は助けにいく!」
「了解しました」

少女のおかげで自由に動けるようになった本郷は駆け出し、アインハルトは襲いくるゴオマへ拳による足止めを開始する。

だがしかし、遅すぎた。
本郷がいささか距離があるのに対し、スバルは既にまどかの目前にまできているという事に・・・・・・

~~~~~~

「どういうことなの・・・・・・?」

まどかは立ち上がって逃げだすことも忘れ、視線が名簿の開いたページに釘付けとなっていた。
それもそのはず、そのページはまどかに状況を忘れさせるには十分すぎるインパクトがあったのだから。
ーーそれは名簿に刻まれた4つの名前。
暁美ほむら・・・・・・言動に謎が多かったが、それはキュウべぇとの契約の危険を知ってるからであると最近になって知らされた。
まどかにとっては魔法少女としては最後に残った友達と言えるのだろうか?
彼女がここにいるということに、頼りになる人がいるという安心感と、殺しあいという場所に連れてこられてしまったという悲壮感で、まどかは複雑な気持ちを抱く。
しかし、それくらいならまどかの感情は“複雑”止まりだったが、問題は他の三人の名前である。
ーー巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子・・・・・・いずれも、まどかの目の前で命を落とした魔法少女であった。
なぜ、亡くなった彼女らの名前が名簿に載っているのか?
まどかは目を疑いざるをえなかった。
目をこすって確信を得ようとするが、その前に何者かによって名簿をグシャリと踏み潰されてしまった。
その何者かとは、スバルである。

「はっ・・・・・・!?」

全身から不気味な根っこを生やし、黄金の目を輝かせれど一切の感情を感じさせない殺人マシーンと化したスバルは、まどかに魔女を目の当たりにした時と同じかそれ以上の恐怖感を与えるには十分だった。

「逃げろ、逃げるんだまどかちゃん!!」

本郷が自分を助けに駆けつけようとしているが、まだ距離がある。
まどかを戦いに巻き込ませないために離れた場所に隠したの仇となってしまったらしい。
せめて逃げるように促すも、別段足の早くない少女が戦闘機人の機動力からは逃れられるハズはない。

まどかは後退るが、すぐにスバルに首根っこを掴まれて、拘束されてしまう。
まどかは必死にスバルの腕を引き剥がそうとするが、全く外れそうもない。
スバルはまどかを掴んだまま、手始めに背面から思い切り地面に叩きつけた。

「がはっ・・・・・・」

鈍い痛みがまどかを襲う。
ショックで瞳孔が開き、気を失ってしまいそうなぐらいの痛み。
苦痛に歪む少女の顔にスバルは何も感じる事はなく、先にシャンプーの頭を潰した時と同じ無慈悲で容赦のない一撃を与えようとする。

「まどかーーーッ!!」

おそらく、スバルの拳がまどかを貫ききるまで、本郷は一桁秒間に合わない。
叫ぶのが精一杯だった。



戦闘機人の拳という、理不尽な処刑鎌が降ろされる直前にまどかは願った。

(嫌だ、まだ死にたくない・・・・・・生きていたい!)

まどかの中にも死への恐怖は当然ある。
だが、死への恐怖以上に、ある願いを達成できなくなる恐怖があった。

自分たちを助けてくれた、先輩。
昔から付き合いのあった、友達。
友達になれるかもしれなかった、人。
皆、運命に弄ばれ、まどかの手をすり抜けていった。
どんなに悔いを残そうとも、普通は喪失した以上、もう二度と会う事の叶わない人たち。
だがもしも、名簿に載っていた名前が、自分の知ってる魔法少女たちであるならばーー

(ーー会いたい・・・・・・もう一度生きているみんなに会いたい)

どういう思惑で本郷がこの事を自分に知らせなかったのか、加藤ないしはキュウべぇがどうやって彼女らを生き返したかは、今は考えていない。
ただ“会いたい”、それがまどかの切実で純粋な願いだった。

その願いを叶えるのに必要な儀式はキュウべぇとの契約ではない、生きることである。
逆に言えば、ここで死ねば願いは叶わない。
幸いにもスバルの魔の手から生き延びるために必要な切り札を、まどかは既に握っている。
“C”の文字が刻まれたガイアメモリ、だ。

スバルの拳が届く寸前に、まどかは急いでUSBのようなそれを額に差し込み、叫んだ。


「へ、変身!!」


変身、その言霊を吐くことで強くなれるような気がしたーーまるで本郷のように。

『CYCLONE』

ガイアメモリから発せられた電子音声と共に、姿を変えていくまどかから嵐のような豪風が発せられた。
あまりに強すぎる風はスバルの拳や首を掴んでいた腕を弾き飛ばし、ノックバックさせる。
風はアインハルトとゴオマが対峙する場所にまで届いており、ゴオマは本郷が向かっていた場所を振り向き、言葉を漏らした。

「ボンゾパ バダレンクウガ!?
(今度は片目のクウガ!?)」

まどか自身は、自分が加藤と同じく何らかの怪物に変身した事以外は、何がどうなっているのかわからない。

スバルの襲来でガイアメモリの説明書を読む暇がなかった事も起因する。
スバルが強風によって近づけでいるようだが、だとすると、この風は自分が巻き起こしているものなのか?

スバルもスバルで、黙って風に押されてばかりではいられない。
風に押し負けないほどの強力な魔力をまどかだった異形に打ち込もうとする。

「ディバイン・・・・・・」
「きゃあッ!」

異形は敵から放たれそうな攻撃に身を屈めてしまう。

「させるか! ライダーパァァァンチッ!!」

そこへ、今度こそ間に合った本郷の鉄拳がスバルを迎撃する。

「!!」
『プロテクション』

鉄拳は防御結界に防がれてしまったが、攻撃と防御は同時にはできない。
つまり、スバルの攻撃を中止させることには成功したのである。
本郷はすぐさま、まどかの側により、彼女をスバルから守るように前にたつ。

「本郷さん・・・・・・」
「怪我はないか、まどかちゃん?」
「は、はい! 私は大丈夫です」
「そうか・・・・・・しかし、その姿は」

本郷は、今のまどかの姿を見た。
人の形に緑の体色、右側だけだが複眼までついているその姿は、

「ーーまるで仮面ライダーじゃないか」
「仮面ライダー・・・・・・えぇッ!! 私が!?」

サイクロンドーパント。
そのシルエットは、どことなく仮面ライダーに近いものがあった。
こうして少女は、魔法少女よりも先に仮面ライダー(厳密に言えば違うが)になったのだった。

「クウガパ ゴセンゲロボザ!!
(クウガは俺の獲物だ!!)」
「あうッ!」

まどかもクウガであると思い込んだゴオマは、自分に狩られるクウガが増えた高揚感と、スバルに横取りされる事への焦りで、いても立ってもいられずに飛び出していった。
今まで足止めをしていたアインハルトも度重なるダメージと疲労で、勢い付いたゴオマの突進を押さえ切れずに弾かれてしまう。

「来るか!」

今まで以上の速度で急接近してくるゴオマに、本郷は構える。
一方、本郷の後ろにいたまどかは、まだ自分が強くなっているという実感を持っていないため、物凄い剣幕で向かってくる怪人に半ば怯えていた。
そして、その怯えがサイクロンドーパントの力を無意識的に引き出した。

「こ、こないでーーーッ!!」
「バビ(なに)!?」

本郷たちとゴオマの間に風の防壁が発生し、突進していたゴオマはそのまま壁に激突してしまう。
石膏や鉄でできた壁ではないのでぶつかってもダメージは無いのだが、基本的に風を使って飛ぶ有翼のグロンギであるゴオマがこの中に入ったのは、致命的なミスであった。

「ギャアアアアアアア!!」

ゴオマは豪風のために翼を煽られ、姿勢の制御ができなくなってしまった。
ここまできて、本郷はまどかの力を理解する。

「風を操る力、どうやら今のまどかちゃんにはそれが備わっているらしい」
「この風・・・・・・私が起こしたものなの?」

まどかもようやく自分の能力を理解したのだった。
風の力が切れた時には、ゴオマは切り揉み状態になってそのまま宙に打ち上げられた。
ーーそれは攻防どちらもできない無防備な状態である。

「はっ! 決めるなら今しかない!!」

今が強敵ゴオマを撃破できる隙ができたと睨んだ本郷は飛び出した。
体勢を建て直させて、まどかが作った絶好の勝機を見す見す無駄にするわけにはいかない。
木々の間を飛蝗のように素早く飛び移りながら高度をあげていく本郷。

そして、高度が風にさらわれたゴオマよりも数段上をとった所で、あらゆる怪人を倒してきた必殺の蹴撃を叩き込む。


「ライダーキィィィック!!」


本郷の飛び蹴りは一直線にゴオマを向かい、その背中にズドンッと重い打撃を与えた。

「ギャアアアアアアアア!
・・・・・・ゴ ゴセゾ ボソグビパ バスギバ、リゾシギソンクウガ!
(お、俺を殺すには軽いな、緑色のクウガ!)」

しかし、多くの怪人が威力に耐えられずに爆散するライダーキックにゴオマは耐えきった。
ダメージは確かに与えたが、闇の力で強化されたゴオマを倒しきるにはいたらなかった。
このまま、キックの威力によって地上に叩きつけても決定打になりそうにない。
本郷の力だけではゴオマは倒せないのだ。
そう、“本郷”だけでは。

「まだ終わりじゃありません!」

地上ではアインハルトが拳に魔力を貯めて、待ち構えていた!
本郷のキックでゴオマを倒せなかった場合の保険として、アインハルトが追い討ちをかけられるように、わざわざ上からライダーキックをかけたのだ。
二人の間で事前に作戦を立てられていたわけではないが、戦士としての経験と勘が、互いがどのように動くかを予想付けしたのだ。
結果、互いが互いの思い通りに動いてくれた。
息のあったこの攻撃をゴオマは避ける手だてはなく、ただ流星のように墜ちて燃え尽きるだけだ。


「覇 王 断 空 拳!!」


流星となったゴオマの腹にアインハルトの奥義が炸裂する。
背中にはまだキックの張りついている本郷。
キックとパンチのサンドイッチは、今度こそゴオマの芯に届いたのだった。

「ギャアアアアア・・・・・・がふっ」

ゴオマは断末魔の叫びを上げ、吐血。
爆発こそしなかったが、ずるりとアインハルトの腕から落ち、地面に落ちてピクリとも動かなくなった。
決め手を放ったアインハルトは一呼吸し、まどかは二人の側へ、本郷は地面に2つの足をつけた。

「手強い相手だったが、なんとか倒したようだな」
「そのようですね」
「やった・・・・・・」

その様子を見て、三人は怪人を倒したと確信を得る。
ーー残る敵はスバルのみだった。



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最終更新:2014年06月14日 17:26