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「リアルさ」

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「リアル」な世界

世界を構築していく中で陥りがちなのが、「リアル」な世界を創ろうという考え方です。しかし、創造物が現実に即している、もしくは現実味を帯びていることは、必ずしも良いワールドビルディングには繋がりません。

ファンタジー等のフィクションにおいて、「この世界が現実であった時に、これはリアリスティックかどうか」という考え方に基づいてワールドビルディングを行なってしまうと、多かれ少なかれ現実世界を基準として考えてしまいます。しかし、例え空想世界が現実世界をベースにしていたとしても、必ずしも現実世界の道理に従う必要はありません。「ありえそうな世界」にも「ありえない世界」にも、それぞれの良さとポテンシャルがあるはずです。

良いワールドビルディングは、結果として「リアル」なものになっているだけであり、最初から「リアル」なものを創ろうとすると、多くの可能性を排除してしまうということです。

ちなみにですが「真実かどうかわからないが、真実でありそうであること」を"Verisimilitude"と言います。

ワールドビルディングの鉄則 - 「一貫性」

さて、そこでフォーカスすべきなのが「一貫性」です。

ここで言う一貫性は、「創造した世界のルールや法則に、その世界のすべての事象が従うこと」を指します。つまり、「現実世界においてありえないことが創造世界において起こっても良いが、創造世界においてその世界のルールに反するようなことが起こってはならない」ということです。

例えば、魔法を使って傷を治すことが非現実的であっても、その創造世界内においては「魔法を使って傷を治すことができる」という法則があると読者側が理解し、その創造世界内において魔法を使えば必ず傷を治すことができているのであれば、読者側も違和感を感じることなく話についていくことができます。しかし、ドラマチックな展開を演出するために、傷を負ったキャラクターをわざと死なせた場合、読者としては「どうして魔法を使って傷を治さなかったのか」と疑問を抱くことになるでしょう。

ハリー・ポッターにおいて魔法使いがマグルの世界で魔法を使わずにいるのは何故でしょうか。現実的に考えた時、強力な魔法使いがマグルの世界で暴れて金を奪ったり支配しようとしたりしない理由は何でしょうか。

トイ・ストーリーにおいて世界中のオモチャが生きていることが子供に全くバレていないのは何故でしょう。現実的に考えた時、何億とあるオモチャ全てが上手いこと子供にバレないように動けるでしょうか。

現実的に考えたならば、こういった点は道理に合っていないのでしょう。

しかし、このような作品としての大前提を棚にあげる形で創造世界のルールとして設定して、作品中そのルールに則って話を進めることで、読者は現実ではありえないような世界を違和感なく没入体験することができるのです。

このように、読者がフィクションに対する「これは現実ではない」という違和感や不信感を一旦棚に上げ、創造された世界に没入することを「不信の停止(Suspension of Disbelief)」と言います。

創造世界がありえないような大前提のもとに成り立っていたとしても、そこに一貫性を持たせることにより読者が没入しやすい、そして没入し続けやすい世界を構築することができるということです。

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