アットウィキロゴ

月夜の剣士 ◆aWSXUOcrjU




 ザルバ。
 「友」という意味を持つ、旧魔界語の単語である。
 かつての黄金騎士・冴島大河は、自らの魔導具に対して、この名を付けて契約を交わした。
 不遜で口の悪い性格だが、今はその息子・鋼牙のパートナーとして、信頼し合っているという。


「――言っちゃ悪いが、『翼』って名前の奴は、みんなカタブツ揃いなのか?」
 かちかちかち、と歯を慣らし、銀色の髑髏が語りかける。
 摩道具・ザルバの形状は、頭骸骨を象った指輪の形だ。
 それを左手に嵌めているのは、今は本来のパートナー・冴島鋼牙ではなかった。
「……私は戦うこと以外、何も知らずに育ってきたんだ」
「なんてこった。鋼牙と同じ手合いの奴か」
 うんざりしたようなザルバの声を、少女は無言で聞き流した。
 青い髪をたなびかせ、鋭い瞳を細める少女――防人の娘、風鳴翼
 彼女が佇むその場所は、山のふもとのなだらかな傾斜だ。
 まっさらな入院着を纏った彼女は、遠目に見える町を見つめながら、1人思案にふけっていた。
「この身が十全であるならば、問題は天羽々斬か……」
「そういやその格好、どこか具合でも悪いのか?」
「先ほどまではな。もっとも、この身に受けたはずの傷は、残らず完治していたが」
 自らの右手を見つめ、ザルバに答える。
 だいぶマシにはなっていたが、本来この身体は、絶唱の傷が、未だ癒えていないはずだった。
 それがあのホールで目覚めた時には、跡形もなく消えていたのだ。
 少なくとも、ものの数時間で消えるものではない。
 あの黄金の男の戦いもそうだが、この殺し合いの主催者に対して、もっとも不気味に思えたのは、そこだった。
「ザルバ……と言ったか。お前はどう思う?」
「一瞬で治しちまうっていうのは、確かにクサいな。そこまで高度な治癒の術は、魔戒法師にだって使えない」
 魔導具の返答に、ふむ、と翼は呟いた。
 この怪しげなアクセサリーは、こと魑魅魍魎に関しては、翼よりも遥かに詳しいらしい。
 それならば、傷を癒す術にも、何か心当たりがあるのではと踏んだのだが、どうやら当てが外れたようだ。
「まぁ、今はいい。それよりも、問題は私の剣だ。あれの所在が気にかかる」
「取られた武器が、他の参加者に支給されてるってのか? それはさすがに出来すぎだ」
「ないとは言い切れん。現に私の鞄には、これが支給されていたのだからな」
 言いながら、翼の手がデイパックへと伸びる。
 ごそごそと中をまさぐって、取り出したのはネックレスだ。
 薄桃色の光を放つ、長細い形状の宝石が、紐の中心で輝いていた。
「何だこいつは?」
「第2号聖遺物・イチイバル……私の天羽々斬と、同じ性質を有した武器だ」
 これは私には使えそうにないが、と翼が言う。
「これが武器? 俺にはまるでそう見えないがな」
「聖遺物――シンフォギアは、適合者の歌によって形を変える。神話の力を解き放ち、剣や鎧の姿となって、現代に顕現するものだ」
「なるほどな。神様を起こす呪文の歌ってわけだ」
「これは私の物ではないが、イチイバルがあるのなら、私の物も、誰かに支給されているのだろう」
 元々イチイバルとは、特異災害対策機動部二課が管理していたところを、何者かに強奪されたものだった。
 それが何故ここにあるのかは定かではない。
 あるいは、この殺し合いを仕組んだ者が、その強奪に関与していたのかもしれない。
 いずれにせよ、シンフォギアほどのオーパーツすらも、支給品としてばらまかれるゲームだ。
 同じシンフォギアである天羽々斬も、同様に扱われていると見る方が自然だった。
『――どうか、僕の話を聞いていただきたい』
「ん?」
 そこまで考えていた、その時だ。
 不意に西の方角から、ハウリング混じりの声が聞こえてきたのは。
『僕の名前は龍崎駈音。心理カウンセラーの仕事をしている。
 自慢するようで恐縮だが、テレビや雑誌などで、僕の名を聞いたことがある方もいるだろう』
「何だ、こいつは? 誰かがマイクでも使ってるのか?」
「黙っていろ、ザルバ」
 訝しがる銀色の髑髏を、ささやき声で翼が諌めた。
 彼方から聞こえるその声は、殺し合いのゲームに乗らず、脱出するための同志を募っていた。
 心理カウンセラーという肩書きに似合った、穏やかに諭すような声音だ。
 何も分からず、ゲームに巻き込まれ、慌てふためいている者にとっては、まさしく希望の一声だろう。
『1人でも多くの人が、僕の考えに、賛同してくれることを願う』
「……だそうだ。どうする、翼?」
 龍崎なる男の演説が終わり、ザルバが翼へと問い掛ける。
「……ここは、急いだ方がよさそうだな。今の声は、殺し合いに乗った者達にも聞こえているはずだ。
 もしそういった輩がいた場合、彼の居場所が狙われる可能性がある」
「なるほど。あのおっさんも、リスキーな賭けをしてくれたわけだ」
「何事もなければそれでよし。何事かがあれば、これを以って制するまでだ」
 言いながら、翼が視線を向けたのは、腰に括った一振りの刀だ。
 朱色の鞘に納まっているのは、まさしく玉鋼の和刀である。
「おい……本当にこれを使うのか?」
 しかし、そんな何の変哲もない刀に、ザルバは何故か疑問を呈した。
「? どういうことだ?」
「こいつには、何かの気配を感じる。悪霊ってわけじゃなさそうだが、霊能を持たない翼には、手に余る刀かもしれないぞ」
 つまるところ、妖刀の類というわけか。
 伝承やおとぎ話にのみ聞いたそれを、現実に携えることになるとは。
 ザルバの警告を耳にしながら、翼は奇妙な感慨を覚えていた。
「邪でないのなら、問題ない。手持ちがこれしかない以上、使いこなすしかないのだからな」
 何にせよ、今は怖気づく時ではない。
 いくら妖刀であるといえ、その魔性を怖れていては、全くの素手になってしまう。
「行くぞ」
 早々に思考を打ち切ると、翼は早足で斜面を下りた。
 行くべき先は、北西だ。
 地図と方角から察するに、この場所はB-4あたりに相当する。西側に見える川を越えるには、橋を渡る必要があるのだ。
 一枚しかない衣服を濡らしては、体温や体力を奪われてしまう。
 遠回りではあるものの、翼はひとまず長期戦を見越し、橋を目指すことにした。
(……町の方に行ったら、着替えも探してみるべきかしらね)
 今更になって気付いたが、この入院着は、少し寒い。
 長い丈は足を動かしにくいし、おまけに少々はしたない。
 状況がひと段落したら、服屋でも漁ってみるとしよう。この時はまだ、そんなことを考えていた。


【1日目・深夜/B-4 山間部・ふもと】

【風鳴翼@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】健康
【装備】獅子王@喰霊-零-、ザルバ@牙狼-GARO-
【道具】支給品一式、イチイバル(待機形態)@戦姫絶唱シンフォギア
【思考】
基本:殺し合いを止め、主催者を捕える
1:龍崎の元へと向かう
2:天羽々斬を探す
3:町に行って着替えを手に入れたい
【備考】
※第6話「兆しの行方は」にて、立花響と別れた直後からの姿です。入院着姿で参戦しています
※ザルバから、魔戒騎士・魔戒法師について、断片的な情報を得ました

【ザルバ思考】
1:とりあえず、翼と行動を共にする
2:獅子王に宿された何物かが気になる
※「白夜の魔獣」終了直後からの参戦です。龍崎駈音(バラゴ)に関する情報は聞かされていません

【獅子王@喰霊-零-】
諫山家当主が代々継承する宝刀。
刀身には、乱紅蓮(ラングレン)と名付けられた霊獣・鵺が宿されており、
戦闘時には呼び出して、共に戦わせることができる。
優れた戦闘能力を持ち、口から発する雄叫びは、「咆哮波」と呼ばれる衝撃波を纏う。

【ザルバ@牙狼-GARO-】
冴島鋼牙と契約を交わした、ホラーの魂が込められた魔導具。
ホラーの気配を察知することができ、魔戒騎士にその所在を伝える役割を持つ。
また、口からは少量だが、魔導火を発することも可能。
このザルバは一度破壊されたものを、新たに再構成したもの。
その際に記憶が失われており、龍崎駈音(バラゴ)を倒すまでの出来事を覚えていない。

【イチイバル@戦姫絶唱シンフォギア】
第2号聖遺物。
本来は特異災害対策機動部二課が管理していたものだが、フィーネによって横領され、雪音クリスの手に渡った。
射撃攻撃に特化した性質を持ち、アームドギアの形状はクロスボウ。
状況に応じて変形し、ガトリング砲やミサイルなど、様々な火器を使い分けることができる。

Back:舐めてんじゃねえよ 時系列順で読む Next:すれ違い、そして
Back:舐めてんじゃねえよ 投下順で読む Next:すれ違い、そして
GAME START 風鳴翼 Next:その手は誰がために


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年03月18日 01:20