(意味が分からないな。この殺し合い、何がしたい?)

 小野寺キョウヤは不老不死の能力を持った能力者である。
 文字通り、何をしても彼の身体は元の身体に戻ってしまう。
 火達磨にされても毒を飲んでも、絶対に死ぬことがなく。
 だから殺し合いなんてやったところで、何の意味もない。
 最終的に自分が勝者になるのが目に見えた出来レース。
 何がしたいのか分からず、草原の上で困惑する。

(いや、早計だな。)

 自分が不老不死の能力者と言うことぐらい相手はリサーチ済みの筈。
 態々自分を参加させる理由を考えるのであれば、大雑把だが二つに絞れる。

 一つは自分を優勝させると言う、先程のとおり出来レース。
 しかしこの線は薄い。主催者たる二人の人物は初対面。
 初対面である自分を優勝させてどんな得があるのか。
 と言うより、殺し合いと言う舞台を用意する意図も不明だ。
 何よりこの殺し合いの為にリサーチ済みであるのなら、
 自分がこんな催しに従うかと言われればまずノーと答える。

(と言うことは、俺を殺せるのか?)

 不死身を無力化できる手段の確立。
 此方の方がどちらかと言えば可能性が高い。
 キョウヤは話を聞きながら辺りを見渡していた。
 見知った顔や会社員もいたが、鎧を装備した連中や、
 そもそも亀と言った人ですらない奴まで居合わせている。
 能力者が存在するとしても、明らかに雰囲気が違いすぎていた。
 例えるならば『世界そのものが違う』と言うべきか。
 不老不死を無力化……中島ナナオのようなものは特殊だ。
 早々同じ能力が二つ三つと出てくるはずがない。
 しかし世界が違えばあり得ることなのではないだろうか。
 他の世界の技術など全く知らないのだから、
 あり得ないと断言することはまず不可能になる。

(何にせよ、過信はしない方がよさそうだな。)

 普段は躊躇せず毒を飲んだりする行為に及ぶが、
 此処ではそれはかなりリスクのある行為になる。
 もし死んで復活できなければ笑い話にしかならない。
 他の参加者と情報を照らし合わせてみるのが一番だ。
 殺し合いの理由、能力者を選ぶ理由等考えることは多数。
 慎重に行動するべく自分のザックを漁る。

「トランプ?」

 トランプにはマークがあるが、
 同時に見覚えのある姿が映っている。
 ダイヤの2は柊ナナ、クローバーの4は犬飼ミチル、
 自分はスペードの5……最初は何なのか疑問に思ったが、

(まさか、これが名簿か。)

 他のカードも調べてみれば、
 見渡した時にみかけた参加者が多くいる。
 何の説明もないので疑問には思ったが、
 名前も併せて参加者五十二名を表す為のもののようだ。
 オルゴ・デミーラは参加者の名前があると言った。
 他にそれと思しき物はないので、恐らくそれなのだと。
 犬飼ミチルがいると言うことも予想外な存在ではあったが、
 他の二人の存在によってそのインパクトは薄れる。

「佐々木ユウカもいるだと?」

 柊の話によれば、彼女は身投げした筈。
 なぜかこの場にトランプの中に紛れている。
 態々嘘の名簿として用意するメリットの薄さ。
 そこを考えると、恐らくはこの名簿は本物になるだろう。

(どうやら奴らは本当に死者を、『死体操作』と違って確実に復活できるとみてよさそうだな。)

 最初の死亡した女子とのやり取り。
 あれは自分たちに願いの力があるのだと、
 信じ込ませるための舞台装置だと思っていた。
 つまり、名簿上でイリアと記されてる少女もグルだと。
 だがユウカの存在を考えるに、本当に死者の蘇生は可能らしい。
 願いを叶えるかどうかまではともかく、完全な嘘でもなさそうだ。
 一方で微妙に困る。彼女はシンジを死体操作で操る程好きだった。
 となれば、死者の蘇生が可能なこの殺し合い……どうなるか分からない。
 最後は罪悪感を感じたそうだが、この状況でもそのままかは不明だ。
 同じく死亡したはずの鶴見川レンタロウもいる。
 あの状況下においても殺人をやってのけた人物だ。
 となればこの場では確実に乗ってる側とみていいだろう。

「……身内だけでも面倒な人選だ。」

 トランプをしまいながらごちるキョウヤ。
 犬飼も能力と性格のせいで非常に危なっかしいし、
 柊もまだ完全に疑いが晴れてるわけでもない。
 完全に振り回される立場である。

 一通り情報の整理は出来た。
 後は主催者が言っていた珍しい物。
 それが何かと手を付けようとするも、

「!」


 視界の隅に捉えた青い炎が迫ってることに気付き、咄嗟に避ける。
 とは言え不老不死を普段から躊躇なく行動に出てたせいか、
 避ける動作に遅れて軽く左手の皮膚が焼けただれる。
 不老不死と言えども痛みは伴うので、表情は苦痛に歪む。
 草原には炎が通り過ぎたのを示すように、焼け焦げたラインが一直線に続く。

「ほう……あの男ならまだしも、
 誰とも知らない奴が私の魔法を避けるとはな。」

 炎のラインを追えば黒と紫のマントを羽織った、
 バツ印が目立つ機械をのような頭を持つ人物が杖を持って立つ。
 誰かは先程のトランプで理解している。

「確か……名簿にはバツガルフと記されていたか。」

「いかにも。そしてこの殺し合いの勝者の名前だ。」

 まだ序盤、どれだけ強い奴がいるかも分からないと言うのに勝利宣言。
 自信のある様子だが、先程の炎はモグオ程ではないにしても強力だ。
 多少遅れたと言っても避けたはずなのにこの腕の火傷具合。
 少なくとも相応の力を以って優勝を目指していることは間違いない。

「どうだろうな。主催者の一人が言っていただろう。
 弱者が強者に勝てる可能性を与えていると。それに、
 さっき『あの男』と言っていたな。対抗できる奴がいるはずだ。」

 自分が出来レースにならないように、
 彼にも出来レースにならないよう何かされてるはず。
 力の制限や、或いは彼を打ち倒すことができる存在が。
 自分の見知った間柄は四人。一割近くを占めている。
 となればバツガルフの見知った間柄も少なからずいるはず。

「いたところで何になる? 今お前を助けに来るとでもいうのか。」

 再び杖を振りかざす。
 先ほどの炎の攻撃とそれなりに開いた距離。
 タイミングを見計らえば無理ではない速度だ。
 不意打ちでも避けることができた以上見切るのは難しくない。

「何!?」

 だが炎ではなく雷。
 空から降る雷に打たれ、全身を黒ずんだ姿へと変える。
 雷と言う見た目の割に即死するレベルの威力ではないようだが、
 この場合は寧ろ激痛が続くせいで人によっては運が悪くて重傷だ。
 文字通り死ぬ痛みを何度も味わっている一方で慣れすぎたことによる、
 痛みの感覚がないと言うわけでもないので、彼の場合は半分当たりか。
 全身から焦げ臭い煙が出るも、嗅覚がない彼には特に感じない。

「発火どころか、雷まで使えるのか……ッ。」

 見た目よりは軽傷で、膝をつく程度に済まされている。
 とは言え此処から逃げるにはかなり無理のある状態だ。

「私は多彩な魔法が使える。まだお前にも明かしてないものがある程にな。
 この杖に使い慣れてないがゆえに、先程から本来の威力よりも落ちているが。」

 他にもできるとは何でもありか。
 とは思うが、能力者も似たようなものだ。
 特にまず死ぬことがない自分の能力はそれになる。
 ある意味ではお互い様と言うべきか。

「だったら俺も同じことではある。
 お前に明かしてない能力があるってことだ。」

「では死ぬ前に早めに使うのだな。」

(開始早々実験することになるか……生き返ればいいんだがな。)

 珍しい感覚だ。
 少なくとも見た目以上にいろんなことを経験したが、
 『死なないように』願ったことなんて早々にない。
 不老不死の能力が分かってからは、縁遠い『死』の感覚。
 そんな感覚に少しだけ笑いを浮かべながら、バツガルフの魔法を見届けるだけ。

 何の本で読んだかは忘れたが、
 スペードとは死を意味する不幸のマークの意味を持つ。
 自分とバツガルフは、トランプ上ではスペードのマーク。
 マークの意味に惹かれた結果とでもいうべき結末だろうか。





 しかし、だ。
 バツガルフのポジションであるスペードのジャックには別の意味がある。
 それは───

「ドラァ!!」

 『死』のマークから目をそらした兵士、即ち『死に対する否定』を意味する。
 影の女王に破壊されつくしても生きた彼に相応しいともいえるポジションだが、
 彼ではなくバツガルフの頭部の機械を殴りつける拳の方が、まさに否定の象徴だった。
 頭に軽くヒビが入ると同時にその身体は草原を派手に転がっていく。


「こんな夜中に雷落とせばよぉ~~~……すぐに見つかるって気づかなかったみてーだな。」

 いかにも不良ですと言わんばかりの改造学ランと、
 今時チンピラでもそうは見ないような長いリーゼントヘアー。
 凡そ学生らしからぬ威圧感と、背後霊のように傍に立つ何かと共にこの男は現れた。
 この場において、ある意味ではキョウヤ以上に死から縁遠くなるとも言える、
 そんな能力を持つ男───東方仗助が。

(あれは確か東方仗助。どうやら俺にとっては味方らしいが……)

 漸く体の傷が戻りだした。
 少なくとも普段よりも遥かに回復速度が遅い。
 不死性どころか、再生力も落ちているのは間違いなかった。
 この程度、全身焼けただれても数十秒で元に戻るのが、
 手の火傷ですらこれぐらいの時間がかかるとは思わない。
 腕が戻りつつあるのを見届けながら、仗助を見やる。

「おまえさん……その隣のはなんだ?」

 頚部に数本のパイプと至る所のハートマークが目立つ、
 さながら鎧を着こんだ戦士のようなものは一体何なのか。
 名簿には一切なかったものであり、新しい情報に疑問を持つ。

「な……おめえ、スタンドが見えるのか!?」

「スタンドと言うのか……中々に恐ろしい威力だ。
 生身で受けていればただでは済まなかっただろうな。
 勿論、生身ではない私にはそこそこで済んでいるが。」

「……どうやら、スタンド使いでなくても見えるみてーだな。」

 考えたらそれもそうだと納得させられた。
 参加者にスタンド使いですらない人物がいた場合、
 圧倒的優位になるのは目に見えていることだ。
 特にスタンド使いでない川尻早人がいることから、
 公平さを考えれば妥当な話である。

「気を付けろ東方。炎に雷と多彩な魔法を使うらしい。」

「おいおいマジかよ。」

 つまり相手は厄介なものだと言うことはすぐに理解した。
 彼のスタンド、クレイジー・ダイヤモンドの治す能力は拳で触れる必要がある。
 触れることそのものが危険な存在に対してはそれが発揮できない。
 それにスタンドが見えるだけではなく、干渉してくるのもあり得る。
 スタンド使い同士の戦いで気にしたことはないが、そこにも警戒をしておく。
 つまり避けるしかないと言うわけだ。

「流石にあの一撃を何度も喰らうわけにはいかないな───バツバリアン展開!」

 バツガルフの四方に展開される、黄緑のバツ印に目玉が付いた物体。
 四方に散らばると同時に、緑色の障壁にバツガルフが覆われる。
 目に見えてわかる、バリアーの類だと。

「私に触れられるものなら触れてみるがいい。」

「そんなに触られてえなら
 ワニワニパニックみてーに存分にぶっ叩いてやるっすよぉ!!」

 魔法を唱えてる間に仗助が肉薄。
 クレイジー・ダイヤモンドの射程距離に入るや否や、

「ドララララララララララララァ!!」

 残像が見えるほどの拳のラッシュを叩きこむ。
 拳は障壁に阻まれてダメージを通ることはない。
 しかし、その拳の弾幕がバツガルフだけには留まるはずもなし。
 一体、二体、三体、四体。すべてのバツバリアンを一掃していく。
 バツバリアンが吹き飛ぶ中、バリアが消えてそのままラッシュを叩きこむ。

「そんな薄板のバリアで大丈夫だと───ッ!?」

 だがラッシュは叩き込むことはできなかった。
 パンチ一発を当てた瞬間、突き刺さる痛みにラッシュには至らない。
 何が起きたか分からず、咄嗟に地面をスタンドで蹴って距離を取る。

「だから言っただろう。私に触れるものなら触れてみろと。」

 バツガルフは魔法を既に行使していた。
 攻撃ではなく、反射と言う補助の魔法を。
 スタンドは殴る以外の行動をしてこない。
 ならば、触れること自体を妨害してしまえばいいだけのこと。
 ダメージは確かに受けるが、無傷と言うわけにはいかない。
 そして分かった今、警戒して殴るのに抵抗が出てくる。

(まずいな。このままだと東方がどんどん不利になる。
 バツガルフにはまだ隠してる魔法もあるはず……ン?)

「だがてめえも無傷ってわけにはいかねえようだな!」

「確かにな。だが魔法と反射の二段構えと御前の拳一発。
 此方の方が分があるとは理解してないわけではあるまい。」


 指摘に対して返す言葉はない。
 こっちの手数を封じられたも同然だが、
 相手は普段通りの手数で攻撃してくる。
 肉を切らせて骨を断つのは完全に自分が骨を絶たれる側。
 支給品はこの短時間で確認できたのは一つ。しかも攻撃には向いていない。
 このままだとじわじわ削られて先に倒れるのは目に見えている。

「東方! 此処は一度退くぞ!」

 このまま戦えば負けることは必至。
 キョウヤから逃げることを提案されるが、

「退くって、そっちがそんな身体でどう逃げんだよ!」

 彼の負傷をまだ何も治せてないのに、
 相手から逃げきれる状況に持ち込むのは不可能。
 治しに行く間に攻撃の隙を与えてしまうのは確実。
 下手をすれば道連れになってしまうのにどうするのか。


 答えはすぐに分かった。
 夜道を照らす眩い明かり。
 赤と黒で構成された、洒落た車両がこのエリアへとやってくる。

「列車が走ってるのか!」

 そう、列車。
 地図を見てる余裕はなく、
 レールがあったことも知らなかったので、
 この舞台にはそれがあると言うことを此処で初めて知った。

「これがある、乗れ!」

 先にザックを背負って、目についた梯子にしがみつく。
 速度は普段目にする高速ではないので、負傷気味の彼でも掴まるのは容易だ。
 治りかけの手で身体が悲鳴を上げるも、今はそれどころではない。

「分かった、だがその前に───ドラァ!!」

 会話してる隙にさらりと魔法を唱えようとしていたバツガルフに、
 一発だけ拳を叩きこんで大きく距離を引き離して時間を稼ぐ。
 手ごたえはある。しかし同時に鋭い痛みが腕に伝わる。

「ッ……!!」

「そんな痛みも消してやろうではないか!」

 怯んだところに続けて襲うバツガルフの魔法。
 今度は氷の魔法で、周囲の冷たさから何か来るかは察していた。

「やべ!!」

 列車を追いながらの回避。
 だが完全には避けれず、左腕が凍り付いていく。
 そのまま振るえば鈍器にもなるような氷塊が装備させられる。

「早く乗れ東方! この列車は普通のより遅いが、追いつけなくなるぞ!」

 キョウヤに言われながら仗助は全力で列車を追う。
 この列車は多く見積もっても最高速度は四十キロ程度。
 飛び乗ったりは難しいことではないものの、問題は仗助本人。
 左腕は氷塊で自由に使えず、ザックも背負ってダメージも受けている。
 乗るタイミングが何度も失い、次第に距離が開き始めていた。

(東方が氷を砕く暇はない。砕いてる隙に奴が仕掛ける。見捨てるしかないのか?)

 初対面だが、少なくとも見ず知らずの奴を助ける行動力。
 この殺し合いに置いて頼もしい人物であることは間違いない。
 此処で降りて逃がすための囮を務めてもどの道仗助は列車に乗ることは不可能。
 どうするべきか考えてると、

「なるほどね。こういう時に使えってことだな!
 じじいのように叫ばせてもらうぜ───ハーミット・パープル!!」

 唯一調べた支給品を懐から取り出し、それを飛ばす。
 クローショット。ハイラルの勇者が険しい道を超える際に頼った道具の一つ。
 距離が開き始めた手すりを鉤爪が掴み、重量を物ともせず仗助を引っ張っていく。
 すかさず仗助がいた場所に降り注ぐ雷だが、クローショットで逃げられて当たることはない。

「フッ、私から逃れたところでお前たちの命はない!
 私の腹心である男、マリオもこの場にいるのだからな!」

「「ヘッ! 負け惜しみ言ってんじゃあねえぜ!
 つっても俺達が勝ったわけでもねえけどよぉ~~~!」

 遠のいていく列車と二人。
 追い続けるのは困難だと判断し、バツガルフは線路から離れる。
 列車がどのようなシステムかもわからない。次の列車が来る可能性もあるのだから当然だ。
 こんな殺し合いに轢殺されて退場しましたなんてことになってたまるか。


「折角完全に復活できたのだ。私は成し遂げるぞ……」

 影の女王にほぼ全身を破壊しつくされたあの屈辱。
 自分を騙していたマジョリンも、計画を邪魔したマリオも許しはしない。
 此処でマリオも倒して、願いと共にマジョリンたちへと復讐を考えている。

 役に立つかどうかは別として、
 逃げた敵にはマリオの悪評でも流して置く。
 自分が乗っている人物である以上は、
 此方の味方と言う風に吹聴するのが一番だ。
 血の気が多い奴が聞けば、戦いに繋がるかもしれない。
 倒せば支給品を得て、逃がせば悪評。一先ずその方針で彼は動く。

 踊らされ続けた男は再び立ち上がる。
 この行動は、もしかしたら主催の手のひらで踊ってるだけかもしれないが。

【B-3/レール付近/一日目深夜】

【バツガルフ@ペーパーマリオRPG】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:えいゆうのつえ@ドラゴンクエスト7
[道具]:基本支給品&ランダム支給品(×0~2 確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し世界征服を叶え、ついでに影の女王へ復讐する。
1.打倒マリオ。その為の支給品集め。
2.マリオを味方と偽る形での悪評も考えておく。

※参戦時期は影の女王に頭だけにされて間もなくです。




 ……一方、逃した二人はと言うと。

「ちょっと凍傷してっけど大丈夫だ……さみぃ~~~。」

 氷を水へと戻して手を動かす。
 多少麻痺してるが致命的なものではない。
 ただ、列車の上で風に晒され続けては寒いものだ。
 そのままクレイジー・ダイヤモンドでキョウヤの傷も治しておく。
 明らかに回復速度が遅いが、キョウヤ自身の再生力で本来の回復速度は速い。
 時期に傷は癒えるだろう。

「早急な加温が凍傷には効く。
 服の中にでも腕を突っ込んだ方がいい。」

「おう、サンキューな。」

 列車の上で、風に煽られながら二人は会話する。
 中に入ればいいのにと思われるが不正乗車だからか、
 正規の手段で乗ってない彼らは車内へ入ることはできなかった。

「支給品を見るに、切符が必要らしいからそれがトリガーか。
 お前さんのスタンドとやらで窓を破壊したりとかはできないのか?」

「悪い、結構頑丈みてーだから時間かかる。
 あんまし硬いもの殴ってるのもやばそーだしよ。」

「流石に都合よくはないか……ところで東方。おまえさんは今後どうするつもりだ?」

「あのサイボーグみてーなあいつはこのままほっとくわけにはいかねえ。
 けど魔法か~~~まだ手のうち隠してそうなのに、どうすっかな~~~。」

 こういう時億泰がいれば触れられない物に触れることができるのに。
 行動そのものを封じる露伴もいなければ、時を止めて殴ればいい承太郎もいない状況だ。
 このまま正面戦闘でバツガルフと戦うのはグレートにヘビーな状況になる。

「いや、それもだが基本的な方針を聞きたい。」

「勿論乗るつもりなし! 吉良とは別方向にあいつらはゲス野郎だ。絶対にぶちのめす!」

「……吉良? 名簿にもあったが、何者なんだそいつは。」

 杜王町に潜む邪悪。
 十五年以上にわたる殺人を犯してきた殺人鬼、吉良吉影。
 他にもこの場に居合わせた杜王町のことを彼へと話す。
 キョウヤ同様に、既に死んだはずの仲間がいることも交えて。

「吉良は俺達の方でいう、人類の敵のようなものか。」

「人類の敵? なんすかそれ?」

 今度は逆にキョウヤの番だ。
 仗助は信頼に足る人物であることが分かり、
 ある程度此方の事情を話すことにする。
 人類の敵と戦うために孤島に隔離された学生達。
 その中で起きる、不審な失踪や死亡した事件を。

「悪いが俺の能力は今は明かすことはできない。
 もしかしたら、使い物にならないかもしれないからな。
 それを当てにされて俺が死ぬのは困る。」


 自分の方は隠すほどのことでもないので話したが、
 スタンド使いが相手に自分の能力を明かさないのと同じ。
 彼もきっとそういうことなのだと言うことは理解する。

「スタンド使いじゃあないのに能力が使えるんだな。
 いやでも、じじいは波紋ってスタンド以外の力持ってたよな。」

「能力者とスタンド使い。更にバツガルフの存在。
 別々の世界から招かれてる説は、本当と思ってよさそうだな。」

「マジかよ。」

 東方仗助はジョースター家の中でもかなり冒険と縁遠い存在だ。
 遠くの街へ行ったり、国を渡ったりと言ったものではなく、
 杜王町と言う決して大きくない町の中で、町を脅かす存在や色んな住人と出会ってきた。
 言ってしまえば非常にスケールの小さい世界で生きてきたようなものである。
 (どちらかと言えば吸血鬼や柱の男と戦ってきた連中が奇妙な冒険がすぎるが)
 だから別々の世界とか、スケールの大きな話には途方もない存在に感じさせられた。
 経験豊富な承太郎であれば『やれやれだぜ』で済ませそうだが。

「異なる世界から俺達五十二人を呼んでの殺し合いは、
 蟲毒と言うものによく似ているが俺達に毒の概念はない。
 血をや肉を集める生贄であれば、最初から殺せばいいだけだ。
 しかも俺やお前さんのように乗るつもりがない人間までいる。
 奴らの目的が今一つ分からない。殺し合いをさせたいのか阻止したいのか。」

「……弓と矢、か?」

「矢?」

「スタンド使いにできる弓と矢が俺の町にあったんだよ。」

 DIOをスタンド使いにしたとされる弓と矢。
 スタンドとは己の精神の具現化させた像であり、
 穏やかだったり闘争心を持たない人間にはスタンドは害になる。
 自分や、承太郎の母もスタンドが害になったのはそういうのに縁遠かったから。

「あいつらはスタンド使いを探してるっつー可能性。」

 ならば、殺し合いでその闘争心を育ててしまえばいいと。
 キョウヤの言うように殺し合いをさせると言う行為に理由が生まれて、
 最初から殺さないでこの舞台に配置させた理由にもつながる。

「弓と矢のことを余り知らないが、その可能性は一理あるか。」

 こんな手間暇かけてまでどんなスタンドが彼らは欲しいのか。
 そしてそのスタンド使いを従わせられる手段が彼らにはあるのか。
 (単純明快な首輪があるが、スタンド次第では爆破も狙えないのでその線は低い)
 今一つ確定させるには無理のある仮説ではあるものの、
 異なる世界の特殊な力。可能性の一つとしては十分にある。
 或いは他の世界と合わせた何かを企んでいるのかもしれない。

「とにかくバツガルフに対抗できる勢力を作りたい。
 利害が一致しているが、此方と手を組む気はないか?」

「こっちとしても大助かりだぜ。よろしくなキョウヤ!
 それはそうと───なんで俺のリーゼント触ってるんだ?」

 二人の主催の目的について話してる間、
 なぜかキョウヤの手が仗助のリーゼントを撫でている。
 最初は何か埃でもついてるのかと思ったが、全く違う。

「悪い。何か考えてるとき触っていたい性分でな。
 お前さんのリーゼントの出来の良さと弾力が中々良いんだ。」

「……できれば他の探してほしいっす。」

 褒められてるのかよくは分からないが、
 キレるほどのことでもないし特に気にしないことにしておく。
 一先ず触られ続けてるとムズ痒いので素直に当人のシャツの生地で我慢してもらう。

「ところで、先程あいつが言ってたが。」

「ああ……『マリオ』って奴には気を付けろってことだな。」

 バツガルフの腹心。
 それだけ豪語するのであれば相当な実力者の筈。
 トランプで顔は覚えたので用心することは容易い。

「いや、軽い警戒程度にしておきたい。」

「ん? なんでだ?」

「奴がもし『私の腹心がいるのだから』と言えばどうだ。
 東方はその腹心がどんな奴かトランプだけで判断できるか?」

「……あ!」

「気付いたな。奴はマリオと言う名前を名指ししている。おかしいと思わないか?
 腹心の名前を伏せておけば、俺達は誰なのか分からない腹心にずっと惑わされ続ける。
 その有利を捨ててでも、奴はマリオと言う名前を使った。いや、使わざるを得なかった。」

 このことから出てくる結論は、
 彼にとってマリオの存在は都合が悪い。
 都合が悪いと言うことは即ち味方になりうる可能性があると。


「だが、万が一それを見越したうえでの発言かもしれない。
 奴は自信に満ち溢れていた。ばれたところで問題ない強さの可能性もある。
 どちらかと言えばバツガルフの方が疑わしいだけで、警戒するべき相手だ。
 何より、マリオは注意を惹くダミーで本当の腹心が潜んでいる可能性も否定できない。」

「結構策士だなあいつ……」

「ただでは転ばない辺り、あの男にも相応の理由があるのだろうな。」

「殺して自分の欲求満たそうとするやつにロクな奴はいねえよ。」

「……だろうな。」

 アンジェロに吉良。二人程ではないにしても音石だってそうだ。
 自分の目的のために平然と他人を殺すことができる奴がまともなはずがない。
 (音石の場合は虹村形兆のやった行為もあるので、一概には責められない。
  もっとも、ジョセフの殺害の計画を企てたので擁護する気もないのだが。)

 強風に煽られながら、二人は列車の行き先に身を委ねる。
 このまま何事もなければ、次の駅へたどり着くことになるだろう。

【B-3~B-4/列車上/一日目 深夜】

【東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左腕凍傷、腕にダメージ、寒い
[装備]:クローショット@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス
[道具]:基本支給品&ランダム支給品(×0~2 未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:乗るつもりはない。
1.バツガルフから逃走、及び対策の考案。
2.マリオと言う人物、或いは本当のバツガルフの腹心に警戒。
3.仲間を探す。不安と言う意味で由花子か生き返ってる重ちー、一般人の早人を優先したい。
4.吉良吉影を探す。乗ってるかどうか関係なしにぶちのめす。
5.佐々木ユウカ、鶴見川レンタロウに警戒。
6.クローショットがちょっと楽しい。
※参戦時期は少なくとも最終決戦、億泰復活以降です。
※キョウヤから無能なナナの情報を得ました。
※別の世界の存在があると理解しました。
※この殺し合いが強力なスタンド使いを作るため、と言う仮説を立ててます。





(殺人鬼、吉良吉影か。)

 次々と起きる行方不明者。
 ひっそりと、しかし確実に殺してる奴がいる。
 まるで人類の敵のように姿を見せることはないまま。

(お前はどっちだ? 柊。)

【小野寺キョウヤ@無能なナナ】
[状態]:右手火傷(自己再生+仗助の治癒中)、雷撃による全身火傷(自己再生+仗助の治癒中)、寒い
[装備]:なし
[道具]:基本支給品&ランダム支給品(×1~3 未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者が何を考えてるのか。少なくとも乗る気はない。
1.バツガルフから逃走、及び対策の考案。
2.マリオと言う人物、或いは本当のバツガルフの腹心に警戒。
3.知人の捜索。優先順位は佐々木=鶴見川>犬飼=柊。
4.東方仗助は信用してもよさそうだ。
5.吉良吉影、柊に警戒。
※参戦時期は少なくとも犬飼ミチルの死亡を知った時期より後です。
※不老不死の再生速度が落ちています。少なくともすぐには治りません。
※死亡した場合一度死ぬと暫くは復活できません。
※仗助からダイヤモンドは砕けないの情報を得ました。
※別の世界の存在があると理解しました。
※この殺し合いが強力なスタンド使いを作るため、と言う仮説を立ててます。



※切符を使わず列車に乗る場合中には入れません(窓を破るなどで強引に入ることは可能)
※B-3の草原に草の焦げたのラインがあります。
※B-4でバツガルフの雷が落ちました。遠くからでも見えるかもしれません

【えいゆうの杖@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
バツガルフの支給品。作中におけるステータスが最も高い杖。
一方でバツガルフが使い慣れた杖ではないのでまだ慣れてない。
慣れればもっと強くなるかもしれない。

【クローショット@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】
仗助の支給品。三つの鉤爪を打ち出すアイテム
爪が引っかかると対象を掴み、鎖が自動的に巻き取られ、その引っ張られる動作で移動する。
逆に敵を引き寄せる、物を引き寄せる、敵の持ち物だけ引き寄せることも可能。
リンクは二刀流でこれを用いたので、もう一つが何処かにあるかも。
なお仗助はこれをハーミット・パープルと呼んでいる。


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最終更新:2023年06月14日 20:01