「おのれオルゴ・デミーラ……許してはおけん!!」
神の老兵メルビンは、三度蘇った魔王に対して憤りを覚えた。
この殺し合いという、閉鎖空間でのゲーム。
まさしくあの魔王が考えそうなことだ。
とある城の玉座の間に飛ばされた彼は、誰が参加させられているか知るや否やすぐにでもアルス達を見つけようと、ザックから一本の剣を取り出し、歩き出した。
玉座の入り口の扉を開けた時、鼻に絆創膏を付け、亀の甲羅を背負った少年と目が合った。
「うぬ!奇妙ないで立ち!!この戦いに乗った者でござるか?」
メルビンはアイアンタートルか何かのような姿をした少年を怪訝な目で見つめた。
「ち、ちがいますよ!!」
少年は慌てて、甲羅に引きこもる。
その動きは、まさしく亀だった。
そして、誰かを襲おうという姿勢ではなかった。
「驚かせてすまぬ。ワシはメルビンという者。魔王の討伐を目指した神の兵でござる。」
「ボ、ボクはハナハナ村の、ノコタロウって言います。あの……この人を見かけませんでした?」
魔王の討伐、神の兵。
一般人が聞けば腰を抜かしそうな言葉だが、出自も個性も様々な仲間と冒険してきたノコタロウには、特に驚くようなことでもなかった。
そんなノコタロウは甲羅から、一枚のトランプを出す。
そこにはマリオの絵が描いてあった。
「ふむ。ワシはこの人は見ておらぬ。どうやら探しに行くしかないようだ。」
「メルビンさんも、手伝ってくれるのですか?」
「勿論でござる。ノコタロウ殿の仲間を見つける過程で、ワシの仲間も見つかるかもしれぬ。」
その後、メルビンとノコタロウは互いに情報を交換した。
クッパ、バツガルフ、ボトクが危険人物で、マリオ、ピーチ、クリスチーヌ、ビビアン、アルス、ガボ、マリベル、アイラ、シャーク・アイの9名が安全な仲間であるということになった。
「メルビンさんがいい人で良かったです。」
「うむ。見たところそなたも悪いアイアンタートルでは無いようだからな。」
「え?アイアンタートルって何ですか?ボクはノコノコですよ!」
城の階段を下りながら談話する二人。
平和な会話だった。
それこそ、この殺し合いも意外と簡単に終わらせることが出来るかもしれないと錯覚するくらいには。
1階に降り、城門から出ようとした二人を、邪悪な気が襲った。
「メルビンさん……!」
怯えた表情を見せるノコタロウ。
「うむ。この嫌な気、相当な手練れに違いない!!」
その瞬間、二人の前に会った城門が、轟音と共に吹き飛ばされた。
「よくも我を裏切ったな……!!ザント!!!」
城門を破壊し、入ってきたのは、黒い肌で赤髪で堀の深い顔の巨漢だった。
何があったのか知らないが、その表情にすべてを破壊するほどの怒りが浮いてていたことは確かに分かった。
さらに恐ろしいのは、メルビンも知っている、大地そのもののような重厚な鎧を身にまとっていたことだった。
「我が名はガノンドロフ。丁度いい、貴様らを最初の贄にしよう。」
「させぬ!!バギクロス!!」
猛烈な竜巻が、魔王に襲い掛かる。
元々得意技だったバギマを、アルス達と修行を重ねることで、さらにグレードアップした魔法だ。
ガノンドロフが身にまとっているのは、熱の魔法に強いガイアーラの鎧だ。
だが、風魔法ならば通じるはず。
「ヌウウン!!」
「!!」
魔王は戦いなれた英雄でさえも驚きの方法で攻撃を防いだ。
石材の城の床を、拳で強引にめくりあげたことで、竜巻からの盾替わりにしたのだ。
「この程度か!!ならばこっちから行くぞ!!」
巨体に似合った剛力を発揮したと思いきや、今度は巨体に似合わぬ機敏な動きでタックルをしかけた。
「負けません!!コウラのまもり!!」
メルビンがタックルの餌食になる直前、巨大なコウラが落ちてきてメルビンを守った。
しかし、それはたった一撃で破壊され、一時しのぎにしかならない。
「そんな……。」
「いや!助かったぞ!!ノコタロウ殿!!」
破壊された甲羅から出てきたメルビンは、大きくジャンプし、空中で剣を振り、十字を作る。
「受けるがよい!!神の十字架、グランドクロス!!」
聖なる光で作られた十字が、ガノンドロフに直撃した。
「うおおおお!!!」
「やった!!」
耳をつんざくような雄たけびとともに、手ごたえがあったと確信する。
「ノコタロウ殿!!まだ終わってないでござる!!」
前線に出ていたメルビンが、慌てて後ろにいたノコタロウに声をかける。
「その通りだ。無傷ではなかったがな。」
ぺっと赤い色の混じった唾を吐いて、仁王立ちするガノンドロフ。
頭から血を流して、髪の毛はもともとの赤さなのかそうでないのか分からなくなっている。
だが、致命傷では無さそうだ。
「どうやら貴様らを倒すには、素手では手間がかかりそうだ。」
ザックから長剣を出し、メルビンに突きつける。
長剣とは言っても、居丈高の持ち主により、短剣に見えてしまうが。
「うおおお!!」
メルビンも剣を構え、斬りかかっていく。
老兵と魔王が斬り結んだ時、メルビンは岩にでも切り付けたような感覚を覚えた。
「ぬぐっ!!」
「中々の手練れだが、我には及ばぬようだ。」
隙を見つけ、メルビンの脇腹に回し蹴りを叩き込む。
「メルビンさん!!」
今度はノコタロウが甲羅に入って、ガノンドロフに体当たりした。
コウラアタック。だがノコノコ族なら誰もが出来る程度の技で、到底この男を倒すことはできない。
肘鉄がノコタロウの顔面に炸裂。
そのまま城の壁へと叩きつけられるノコタロウ。
何とか甲羅に入ったため、事なきを得る。
「ノコタロウ殿は下がっているでござる!!貴殿まで守るのは難しい!!」
「はい……。」
まるで歯が立たないノコタロウは、状況を見極め、階段の上へと逃げる。
「それでよかったのか?あんな未熟者でも、盾くらいには役に立つかもしれぬぞ!?」
「ワシならまだしも、若い者まで……生かしておけん!!」
復帰したメルビンは、ガノンドロフの首を落とそうと剣を一振り。
敵に届く距離ではないが、剣を振ったことにより生じた鎌鼬が首に襲い掛かる。
「ふん。味な真似を……。」
一瞬避けるのが遅れ、首に数ミリほどの傷が走るも、大したダメージにはならない。
「この程度で、勝てるとは思っていないでござるよ。」
だが、あくまで鎌鼬はブラフ。
躱した方向目掛けて、袈裟斬りをかける。
それさえも躱されてしまうが、隼斬りは二連撃。
追撃の逆袈裟が、魔王に命中するも、鎧にはじかれてしまった。
(ワシらが持っていた鎧が、敵の物になるとここまで厄介とは……。)
「中々面白い連撃だ。だが、この手の攻撃は我にも得意でな。」
ガノンドロフは体をコマのように回転させ、回転切りを放つ。
「見切った!!」
メルビンも負けじと、ガノンの剣の軌跡と自分の剣の角度が垂直になるように持ち替え、攻撃を防いだ。
「甘いな。」
今度は剣を逆回転に振り回す。
一撃目を防いだ際に、姿勢を崩されたメルビンに、その一撃は叩き込まれた。
「なっ……!!」
腹から鮮血が迸り、追加の蹴りを腹に浴び、抵抗できずに壁へと命中する。
城内に衝撃が走った。
甲羅もない彼は、勢いよく頭を壁にぶつけ、意識を手放す。
「ふん。中々強かったが、甘いな。」
「メルビンさん!?」
ガノンドロフが勝利を確信した所で、声が聞こえた。
ノコタロウがメルビンの身を案じ、下りてきたのだ。
「ふん。自ら首を出す潔さだけは、認めてやろう。」
剣を構え、その首を落とさんとする魔王。
その凄まじい眼光に見つめられ、ノコタロウは身がすくんでしまった。
「でも……ボクだってマリオさんの仲間なんだ!!コイツを倒して、みんなを助けに行くんだ!!」
甲羅に閉じこもり、体当たりする。
「またその技か、避けるまでもない。」
自分の直前に来たところを、剣で両断してやろうと意気込む。
しかし、その意思に反して、ノコタロウは自分の所に来なかった。
大きく反れた甲羅は、城の壁に命中。
「つまらぬ。恐怖でコントロールさえ失ったか。」
カベの反動で飛び続けるも、全く当たらない。
(もういい、引導を渡してやるか。)
どうでも良くなった魔王は、角度を読んで、飛ぶ先目掛けて斬りかかる。
「ボクはこの時を、待っていたんだ!!!」
とどめを刺しに来る瞬間、甲羅が加速する。
「何!?」
ノコタロウは外していたわけではない。
何度も反動をつけることで、勢いを増していたのだ。
マリオとの冒険の果てに身に着けた、ノコノコ族でもごく一部しか使うことの出来ない技。
その攻撃は、いかなる固い鎧をまとっていようと関係なく、ダメージを与えることが出来る。
「させるかあああああぁぁあああ!!」
「これがボクの最後の技!!ツラヌキコウラ!!!!!」
気付くも、時すでに遅し。
弾丸のような一撃が、大地の精霊の力を借りた鎧を貫き、肉体にまでぶつかる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「今のは、さすがと言ったところか。」
気が付けば、ガノンドロフがいたのは城の外だった。
ツラヌキコウラが当たった直後、魔王は剣を亀の弱点、腹に突き刺した。
それでもノコタロウの勢いは止まらず、最終的には城の壁をも破った。
回転の反動で、剣がより深く腹に刺さることになっても。
「どうやらこの戦い、思った以上に手間がかかりそうだな。」
敵の強さを再認識するガノンドロフ。
だが、それでもどうでもいい。
勇気と知恵のトライフォースを奪い、参加者を皆殺しにし、最後に裏切り者のザントと、その仲間のオルゴ・デミーラも殺す。
痛む体も無視して、城から離れていった。
【G-4/バロン城外/一日目深夜】
【ガノンドロフ@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】
[状態]:頭から出血、腹部に打撲
[装備]:ガイアーラの鎧@ドラゴンクエスト7、美夜子の剣@ドラえもん のび太の魔界大冒険
[道具]:基本支給品&ランダム支給品(×0~1 確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者も含め皆殺し、その過程でリンク、ゼルダから勇気と知恵のトライフォースを手に入れる
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「ノ、ノコタロウ殿!!それにガノンドロフの奴は!?」
目を覚ましたメルビンは、慌てて辺りを見渡す。
城には壁に大きな穴が開いており、外には腹から血を流してノコタロウが倒れていた。
自分が無事ということは、死んだと思われていた幸運もあったが、彼が命を懸けて戦っていたということは、誰にでも分かることだった。
「お主のこと。誤解していたでござる。」
本当に勇敢だったのは、自分ではなくノコタロウだったことに気づかされたメルビン。
「すまぬ、勇敢な少年よ。お主の仲間は必ず守る。」
もう動かなくなっていた、仲間に祈りを捧げ、悲しき英雄は歩き出した。
【ノコタロウ@ペーパーマリオRPG 死亡】
【残り 50名】
【G-4/バロン城外/一日目黎明】
【メルビン@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
[状態]:背中に打撲、軽い脳震盪 MP2/3
[装備]:勇気と幸運の剣@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~5(一部ノコタロウの物)
[思考・状況]
基本行動方針:マーダーから身を守る、ガノンドロフは今度会ったら絶対に倒す
1.自分とノコタロウの仲間(アルス、マリベル、ガボ、アイラ、シャーク・アイ、クリスチーヌ、ビビアン、マリオ、ピーチ)を探し、守る
2.ボトク、バツガルフ、クッパには警戒
※職業は少なくとも武闘家、僧侶、パラディンは極めています。
【美夜子の剣@ドラえもん のび太の魔界大冒険】
ガノンドロフに支給された剣。
切れ味もそれなりだが、適性のあるものが使うと火柱を打てる。
【ガイアーラの鎧@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
ガノンドロフに支給された、大地の力を得た鎧。防御力が大きく上がるだけではなく、炎、爆発系のダメージを大きく減らすことが出来る。
【勇気と幸運の剣@ジョジョの奇妙な冒険】
メルビンに支給された剣
かつてはイギリス人なら誰もが知る(大嘘)黒騎士ブラフォードが持っていた剣
刃に『Luck(幸運)とPluck(勇気)の文字が彫られている。
最終更新:2021年05月13日 10:27