「殺し合い……許しておけないわ……。」
セクシーなドレスを身に纏った白魔導士は、殺し合いを止めようと決意した。
ザックを探ると、出てきたのは弓と矢。
何でもゴロン族の秘宝らしい。
ゴロン族というのは何なのかさっぱりだが、自分に向いた武器というのは不幸中の幸いだった。


続いて名簿代わりのトランプをめくってみる。
かつて月でゼムスを倒した仲間たち(なぜかリディアのみいなかった)に、一時的に共に冒険したモンクであるヤン、ゼムスに操られていたゴルベーザ。
そして、もう一人気がかりになる名前があった。

火のルビカンテ。
彼はバブイルの塔と、巨人の体内で繰り返し倒されたはずだ。
かつてゼムスがあの炎使いを生き返らせたように、オルゴ・デミーラやザントも、何らかの力を持っていることで間違いないだろう。


この際だから、かつての仲間のみならず、ルビカンテやゴルベーザ、およびこの世界に呼ばれた見知らぬ者とも協力したい。
洗脳が解けた後、ゼムス討伐に協力してくれたように、ゴルベーザはセシルの兄であることも踏まえて、きっと協力してくれる。
武人気質なルビカンテも、敵として戦った相手とは言え、このような殺し合いを嫌っているはずだ。(両親の死の原因になったエッジと相いれるかどうかは別として。)


とはいえ、この場でぼんやり考えていても、実際に会わなければどうしようもない。
まずはファイアもホーリーもなしで灯りがついているこの不思議な建物から出ることにした。

どこかバブイルの塔にでもありそうな、エレベーターで1階に降りた所で、巨大な人影に出くわした。
いや、「人影」というのは間違えた表現である。
なぜなら柱の裏側にいたのは、魔物だったから。

「!!」
「あなたはこの戦いの参加者ですか?」

死人のようなカーキ色をしたローブと、血のような赤い帽子を付け、ワニを彷彿とさせる緑の顔をした魔物は、丁寧な口調で話しかけてきた。


「あなたは誰!?」
この魔物から発せられる気を、ほんの1時間前味わったことがある。
圧力こそは幾分か劣るが、この背筋を羽で擽られたような悪寒や、アンデッドの臭いを嗅いだ時のような胸のむかつきは、あのオルゴ・デミーラから発せられるものだ。

「私はボトク。オルゴ・デミーラの僕でした。ですが、勘違いしないでください。」
「そんな気を出しておいて、勘違いするなという方が難しいわ。」

ローザは弓の弦を引こうとする。

「ですが、それは昔の話です。今はこの戦いを通じて、デミーラの奴を倒そうと思っています。」
「一応、話を聞くわ、何があったの?」
ほんの僅かだけ、警戒心を解く。
だが、まだこの怪物を信用するわけにはいかない。

「ことの発端は、デミーラがこの殺し合いを計画した時です。
こんな残酷な行為を許しておけず、反対したらいつの間にか、この戦いに飛ばされていたのです。だから是非あなたにも、デミーラを止めるために協力して欲しい。」

「いいわ。何をして欲しいの?」
元々こんな悪趣味な催しは許しておけない。
ボトクに頼まれずとも、するつもりだった。


「この戦いの反対勢力を集めて欲しいです。この建物から私は東へ、あなたは北へ行き、手分けして人を探しましょう。」
「ちょっと待って欲しいわ。」

そこでローザは意見を唱える。
「ボトクと言ったわね、あなたが北へ行ってくれない?東には私の故郷の、バロン城があるの。きっと私の仲間も向かっているはずだわ。」
「少し待ってください。先ほどこの建物に入る前に見たのですが、知らない者が城の方へ向かっていました。
恐ろしい闘気を発していて、私は止めることが出来なかったのですが……。」

ボトクは危険人物が向かっていたという、バロン城に行くなと忠告する。
「だからこそよ。私のセシルは、そいつが殺し合いに乗っていれば、絶対止めるはず。」
「ならばこれをどうぞ。」
ボトクが渡したのは、目玉がたくさん描かれた、奇妙なとんがり帽子だった。
「ふしぎなぼうしと言うそうです。何でも消費する魔力を減らすことが出来るとか。私が被せてあげますね。」
怪物の手が僅かながら耳に触れた気持ち悪さはあったが、帽子からは禍々しさは感じられなかった。

「助かるわ。ではそろそろ行くわね。」
「待ってください。その帽子、水に当たると効果を失うようです。くれぐれも水辺に近寄らないように。」
「分かったわ。ボトクも無事で。」
「ええ。分かっていますとも。」


魔物と美女は、デパートの入り口で別れた。





魔物は東のバロンへ。美女は北へ。



【F-3/デパート外/一日目深夜】

【ローザ・ファレル@Final Fantasy IV】
[状態]:健康
[装備]:勇者の弓@ゼルダの伝説+矢30本 トワイライトプリンセス ふしぎなぼうし@ドラゴンクエストVII
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:バロンへ向かい、対主催勢力を集める。かつての仲間だけじゃなく、様々な参加者と協力したい
1.バロン城に向かったらしい強者に警戒
※参戦時期は本編終了後です。



※ボトクの姿になっています


「ふふふ……あははははは!!」
ローザが見えなくなった後、北へ向かった人影は笑い始めた。

(まさか、こんなにも簡単に成功するとは。)

今度は、人の姿をしていたから、「人影」という表現は正しいはずだが。
ローザの姿をしたボトクは、先ほどローザに帽子をかぶせ、耳に触れた際に、姿を入れ替える魔法を唱えたのだ。


彼がローザに対して放ったのは、入れ替わりの呪術。
かつて自分の姿と、村を守ろうとした神父を入れ替え、愚かな村人たちを弄んだことがあった。
あの時こそ失敗してしまったが、この世界でもまた、同じことが出来そうだと確信する。


(この姿のまま、どうするか。あの女が言っていた、セシルという奴に近づくのもいいかもな。)
ローザを鏡があるデパートから離そうとしたのも、鏡で自分の姿を知られまいとするためだ。
バロンへ向かわせまいと、正確には海に近寄らせまいと出鱈目を流したのも同じこと。


怪物になったローザの姿を、自信に見せまいとするためだ。

(オルゴ・デミーラ様、おれ様を復活させてくれたことを、感謝します。是非ともこの催しを、狂わせて見せましょう)
男の誰もが振り返るほどの美貌で、邪悪な笑みを浮かべる。
いつあの愚かな女は自分の姿に気づくかなと、楽しみで仕方がなかった。


(それに、面白い道具も手に入れたしなあ。)
持っていたのは、人畜無害そうな鳥の卵。
玩具でも手に入れたかのように、それを手でコロコロと遊んで、ザックにしまった。

【F-3/デパート外/一日目深夜】

【ボトク@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、カヤノスヅクリの偽卵@新世界より ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:ローザの姿で参加者に近づき、参加者を翻弄する。自分を倒したアルス、ガボ、メルビン、アイラ優先
1.北へ向かう
2.最終的には優勝
※参戦時期は本編死亡後です
※ローザの姿になっています
※原作で神父と入れ替わった魔法の発動条件・内容は、以下の通りです。
  • 相手に触れれば、魔法は発動する。
  • 相手を自分の姿に変えている間は、自分はそれ以外の相手に変身することも、別の相手を自分の姿に変えることも出来ない。
  • 姿が入れ替わっても、ボトク自身は自分の姿に戻ることが出来る。
  • どの魔法・能力・道具で治るかは不明。少なくともローザ自身のエスナでは戻らない。
  • ボトクか魔法をかけた相手が死ねば、互いに元の姿に戻る。



【勇者の弓@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス】
ローザに支給されたゴロン族の秘宝。
かなり遠くにぶら下がっている綱でも切ることが出来る速さで飛ばせる。


【ふしぎなぼうし@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
ボトクに支給された帽子。
防御力こそ低いが、付ければ消費魔力を減らすことが出来る。


【カヤノスヅクリの偽卵@新世界より】
ボトクに支給された道具。
元々鳥類のカヤノスヅクリが自分の卵を捕食者から守るために糞や枝で作った物である。
投げても相手を汚すだけだが、蛇などが呑み込めば飛び出る枝と糞の毒素で大きなダメージを与えられる。
本ロワではどの程度の参加者まで致死性かは不明。




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最終更新:2021年03月16日 22:10