平原に、ドカドカと走る音のみが聞こえる。
背中と頭と手足、それに口の中まで尖っていて、走るスピードも相まって破壊兵器のようだ。

「ウーム、さっきから走っているのに、誰にも会わないぞ!」
足音の主、クッパは探せど探せど参加者に会えず、嫌気が刺してくる。
もう一度、あのオンボロの塔に戻って、あのネズミを引き入れるべきか、と考える。
だが、すぐに考えをやめた。
自分から何もしてないのに逃げ出しただけでも失礼千万だが、毒針まで刺してきた。
相手の方から非を詫びるならともかく、自分が戻ってまでネズミを自分の部下にするのは、プライドが許さんと思い始めた。

それに、自分がジャンプしただけで崩れる塔など、もう行きたくない。


走っていると、遠くに不思議なものを見つけた。
空飛ぶ絨毯だ。
浮遊できる乗り物を持っている彼でも、それには魅入られた。
最近何かと故障気味なクッパクラウンに代わる新たな乗り物を、土産代わりに持って帰るのも悪くないと思った。

「オーイ!!そこの絨毯、止まれ!」
タクシーを止めるかのように片手を上げ、自分も乗せて欲しいと頼む。
しかし、3人の男女を乗せた絨毯は、遠すぎたからか、無視して飛んでいく。


「ワガハイを無視するな!!」
ボン、と炎の球を飛ばす。
当たったのか否かは分からないが、そのまま見えなくなっていった。


「クソ!この会場、ワガハイに不愉快なことばかりではないか!!」
勝手につれて来られるわ、得体のしれない首輪を付けられるわ、ネズミには逃げられるわ、塔は崩落するわ、乗車(乗絨毯?)拒否されるわ、ハラは減ったわで、苛立ちは限度に達していた。


ふと前を見ると、女性が歩いていた。
どこか高貴さを彷彿させる姿をしている。
流石にピーチには劣るが、かなりの美女の部類に入るだろう。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


「そこのオマエ!!名前は何という!!」
「あの……私、ローザと言います。」


厄介な奴に出会った。
美女の姿をした怪物、ボトクが感じたのはそれだった。

「ローザか。いい名前だな!!ワガハイはクッパ大王だ!!
こんな所で心細かっただろう。もう大丈夫だ!!ワガハイは全世界の美女の味方だからな!!」

いきなり自分のことを大王と呼び、全世界の美女の味方と自称する。
きっと自分の正体など、知る由もないだろうとボトクはほくそ笑む。
だが、コイツを扇動するのは難しいだろうなと顔をしかめた。

「ん?どうした!?顔が浮かないようだが。」
「い、いえ。セシルはどうしているのかなと思いまして。」

溢れるほど感じるエネルギー。
思考は単純だが観察眼も変な所で長けている。
迂闊に殺し合いをさせれば、自分の意図を気付いてしまいそうだ。
だからまずは、自分が何をしたいかでっち上げでも教える。
こんな時に誰かの殺害を頼むなど、二流のやることだ。

「そいつは、ローザの仲間か!」
「ええ。まず彼を探そうと思っています。」
「ワガハイに任せろ!誰だろうと見つけてやる!!」
明らかに根拠のない自信で、腕組みをするクッパ。
なおも自分に対する不信感などない様子で傲岸不遜に構えている。


「ところで、クッパさんは知り合いがいないのですか?」
彼は配布された名簿に、自分を殺した者がいるのは良く知っていたので、恐らくどの参加者にも知り合いがいると踏んでいた。
ボトクが『いたのですか』ではなく『いなかったのですか』と聞いたのは、話の展開のためだ。
前者ならば『いた』と返されて終わり。
そこから『誰だ』と聞いても、根掘り葉掘り詮索しているようで質が悪く見える。
だが後者ならば、『そんなことはない』と否定される。
そこから『じゃあ誰がいるのか』と聞いても、否定に対する興味と取られる。


「いるに決まっておろう!!どうしてそんなことを聞くのだ!」

質問を質問で返すと0点だが、質問直後にすぐ質問で返すのも20点くらいで、あまりいい物じゃないと言いたい衝動に駆られる。

「いいえ。クッパさん、私の知り合いを探してくれるって言ってくださったので、知り合いがいないものだと思ってました。すいません。」
「そういうことか!!ワガハイの大事なピーチ姫と合わせて、見つければいいだけの話だ!!」

そこで、クッパの腹が鳴った。
「あの……もしかしたら、お腹すいているのですか?」
「そういえばそうだな。腹が減っては戦は出来ぬ。」


クッパはザックを開け、パンを取り出そうとする。

「もう一ついい物がありますよ。」
ボトクはザックから、タマゴを取り出した。
それはタマゴとは名ばかりの、毒の塊なのだが。
食べればクッパであろうと、腹痛の一つくらいは起こすはずだと踏んだ。
正直、コイツと共に行動するのは気が進まない。
彼としてはいざとなれば殺害出来て、なおかつ御しやすい相手と行動したかった。

「気が利くな!タマゴヤキは大好きだぞ!!」
クッパは喜んで、カヤノスヅクリの偽卵を受け取る。


「ウガーーーーッ!!」
しかし、炎を、偽卵に向けて吐き出した。

「え?え?」
自分が渡したのが毒だとバレたのかと思い焦る。
案の定、それは黒焦げになってしまった。
食べれば中から尖った枝が出る、カヤノスヅクリが巧妙に作った罠も、これでは形無しだ。


「タマゴヤキにしようとしたのに、コゲたではないか!!」
消し炭になったそれを、下らないものとして握り潰す。
開いた口が塞がらなかった。

「あ、あの……やっぱりパンでも食べましょうか。」
「そうするしかないようだな。アイツら、ハラペコになるワガハイたちにあんな食べ物の出来損ないを渡すなんて、性格悪いぞ!!」


主の心の歪みは認めるが、だからといってそれは違うだろ、と心の中で思うボトクであった。
ひとまず、ボトクは頭の中で計画を変え、クッパと共に行動することにした。
この男は御しにくい暴れ馬の上、この戦いを快く受け入れている者では無い。
だが、いざとなれば自分が犯した罪をクッパに擦り付ければいいと考える。
気にくわない相手はクッパが倒してくれるし、その裏でクッパが倒そうとしない相手を殺す。
殺し合いに乗ろうとしていない者さえも絶望させる、良いプランだ。

それにクッパが言っていた、ピーチという人物も気になる。
ローザが死んだ後の、新たな依代として使えるかもしれない。

期待を胸に抱いて、白魔導士の姿を持った怪物は歩き出した。



【E-1/草原/黎明】

【ボトク@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
[状態]:健康 ローザの姿
[装備]:なし
[道具]:基本支給品 ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:ローザの姿で参加者に近づき、参加者を翻弄する。自分を倒したアルス、ガボ、メルビン、アイラ優先
1.クッパと共に行動する
2.最終的には優勝
※参戦時期は本編死亡後です
※原作で神父と入れ替わった魔法の発動条件・内容は、以下の通りです。
•相手に触れれば、魔法は発動する。
•相手を自分の姿に変えている間は、自分はそれ以外の相手に変身することも、別の相手を自分の姿に変えることも出来ない。
•姿が入れ替わっても、ボトク自身は自分の姿に戻ることが出来る。
•どの魔法・能力・道具で治るかは不明。少なくともローザ自身のエスナでは戻らない。
•ボトクか魔法をかけた相手が死ねば、互いに元の姿に戻る。


【クッパ@ペーパーマリオRPG】
[状態]:ダメージ(小) 腹に刺し傷
[装備]:チェーンハンマー @ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス
[道具]:基本支給品(名簿焼失)、ランダム支給品(0~2)
[思考・状況]
基本行動方針:主催をボッコボコにする
1.ローザ(ボトク)と共に行動する
2.クッパ軍団を結成する
3.魔法の絨毯に興味あり
4.あのネズミ(スクィーラ)は、今度会ったら殴った後、クッパ軍団に引き込む。

※ステージ7クリア後、ピカリー神殿を訪れてからの参戦です



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024:紅色の願い 時系列順 026:とある王家の話
投下順
017:無能なネズミ クッパ 045:最高の恋人
005:怪物 ボトク
最終更新:2021年07月13日 22:47