磁石を頼りに北へ向かうアルス。
最初に向かう先は、「山奥の塔」だった。
名前がはっきりしていない地名だが、あの場所は恐らく、ハーメリアの奥にあった、塔で間違いない確信があった。
なぜこんな所にあの塔があるのか分からないが、広瀬康一の地元の杜王駅があったから、おかしくはないと考える。
かつてデミーラの部下の海魔神グラコスが起こした洪水から非難する場所だったのが、山奥の塔だ。
その時にはいなかったメルビンやアイラは聞いたことしかないとはいえ、集会場所のような所もあるため、合流するにはこの上ない。
それからはしばらく歩いたところ、火の付いた絨毯が行く先を横切った。
(あれは……メザレの?)
どこかデザインは違うし、自分たちが乗っていた絨毯は炎を出したりしなかったが、英雄の子孫ニコラから承った魔法の絨毯に似ていた。
仲間の誰かが操縦している可能性も追いかけようと考えるが、絨毯が見えなくなった先にいたのは、康一から聞いた人物だった。
だが、何かの理由でボトクが化けている危険性も鑑みて、マジャスティスの詠唱準備をしておく。
「ちょっとアンタ……「マジャスティス!!」
康一の知り合いの一人だという、山岸由花子に、魔法を放った。
姿が変わらなかったということは、彼女は誰かが変身しているという訳ではなかったというわけなので、アルスは安堵する。
しかし、誤算は、彼女の内面であった。
「何よ今の変な光は!!さてはあたしの敵ね!!」
少女の目が、普通の女子高生とは思えないほど殺意を帯びる。
由花子の髪が、急にウゾウゾと蠢いたと思ったら、グイインと延びる。
その姿は、怒りの漲る表情や、強烈な眼光と相まって、人というより人を模した怪物のように見えた。
伸びた髪の毛の束は、幸せを呼ぶクローバーのように途中で4つに分かれ、それぞれが別方向からアルスに襲い掛かる。
「うわ!!何だこれ!!」
どこかヘルバオムを彷彿とさせる伸縮自在な髪の毛を、一束一束躱していく。
「待って!!話せばわかる!!」
鞭のようにしなる髪束や、ハンマーのように振り下ろされる髪束を、姿勢を低くしたりジャンプで躱したりして、必死で凌いでいく。
空を切り、地面にぶつかった髪の毛は、小型のクレーターや裂け目を残した。
見ただけで、食らってはいけないものだと分かる。
あの能力が康一君と同じ、「スタンド」ならマジャスティスをもう一度打てば、無力化出来るかもしれない。
だが、詠唱時間がかかる以上は、簡単に使わせてもらえ無さそうだ。
康一と別れてから一度支給品を確認したが、支給武器はバクダンだ。
致命傷を与えずに攻撃するのは難しい。
「あたしを騙そうとしても無駄よ!!」
アルスの話も聞かずに、髪の毛をさらに伸ばし、覇気を一層強める。
まだ康一からは気性が激しい所があると聞いていたけど、せいぜいがマリベルと同程度だと甘く見積もっていた。
(これは……ちょっとどころじゃないぞ……よくこんな人の彼氏になれたな……。)
でも康一君の彼女ではあるので、迂闊に傷つけるわけにもいかない。
「違うんだ!!僕はコーイチくんと一緒に……。」
そう聞くと、怪物のように伸びた髪の毛はシュルリと戻った。
「あなた、康一君を知っているの?康一君はどこにいるの?ねえ!!」
(どうやらコーイチ君と仲良いのは本当みたいだ……。)
「康一君なら杜王駅にいるよ。待っている、一緒に行こうよ。」
これで説得出来たと安堵するが、そうは問屋が卸さないのがこの少女だった。
「なら、あなたは康一君を危険な場所に一人にしたってことなの!?このクソッタレの、タマナシヘナチンがあああ!!」
再び髪の毛が伸び、アルスに迫りくる。
(やむを得ない……でも髪の毛だけなら……。)
力で説得するしかないと考えたアルスは、どうにか髪の毛だけでも払おうとする。
構えを取り、髪の毛が体に触れる寸前で打ち出したのは、無数の真空の刃。
「真空波!!」
夏の肝試し中のろくろ首のように伸びても、春に土から出るミミズのように蠢いても、髪の毛は髪の毛。
炎で燃えるし、刃で容易く切断される。
ブツ、ブツと音を立て、次々と髪の毛が地面に落ちていく。
夜の闇とは別の黒が、緑の大地を染めていく。
「うあああああああああああ!!!」
髪を切られるや否や、由花子は歯茎をむき出しにして突然叫びだした。
「よくもッ、よくも、あたしの髪をおおおおおおおオオッ!!」
再度髪が伸び始める。今度は一塊になって、破壊の鉄球のような形になった
「長さなら、その能力で揃えられるじゃないか!」
「毛先は痛んだら直せないのよ!?康一君に見た目が悪くて嫌われたらどうするのおおお!!ションベンタレのくせに!!」
無理矢理高く飛び上がり、地面を薙ぐ髪鉄球を避ける。
「いくら避けても無駄よ!!大人しく掴まれえええ!!」
今度襲い掛かるのは、鉄球ではなく、地面に散らばっていた伏兵。
「!?」
床屋で髪を切ってもらった後のようになっていた髪の毛が、一斉にアルスの四肢に絡みついた。
「うわああ……何これ……!!」
慌てて解こうとするも、生き物のような髪の毛を取り払うのは難しく、手錠のように両手両足を縛ってしまった。
「かかったわね……大人しく、死ねええええ!!」
巨大な黒の槌が、アルスを潰そうとする。
上と下からの髪の毛攻撃。
動きが制限されている以上、右や左に逃げることも出来ない。
ドムギ、と髪の毛の玉と地面がぶつかる音が響く。
食らえば、一たまりもない、はずだった。
「危ない所だったなあ……。」
しかし、アルスは圧死することはなかった。
「な、なんで?」
人間とは思えない頑丈さに、由花子も驚く。
「スカラをかけておいて助かったよ。それでもタダじゃなかったけどね。」
アルスが使える技は、風の刃を飛ばす技だけではない。
仲間との冒険は言わずもがな、ダーマ神殿での転職の果てに、様々な技を使える。
防御と、さらに身の守りを固める魔法で、由花子の一撃を耐えきったのだ。
「クソッタレえええ!!だったら何度でもやってやるわよ!!」
「悪いけど、もうさせないよ。バギマ!!」
アルスの手から竜巻が現れる。
魔力の消費はあるが、真空波と異なり、魔法なら最小限の動作で出来る。
そして、魔法の標的にしたのは、由花子ではなく自分自身。
「自分に!?」
風を起こしたことで、自分を動きが限られた状況でも、長距離を動くことが出来る。
最も、飛ばされる形となったため、さほど自由には動けないが。
さらに由花子の槌を躱すだけじゃなく、絡みついていた髪の毛を斬り裂き、吹き飛ばした。
「どうして、上手く行かないのよ!!くそ、クソ、糞おおおおぉぉぉぉ!!」
怒る由花子、とある漫画家に言わせれば、プッツン由花子の攻撃はなおも続く。
髪の毛の塊を解き、再び幾つかの束にして襲い掛かる。
「させないよ!!」
しかし、アルスは先程までとは比べ物にならないほど、早く駆け出す。
バラバラに迫りくる髪のロープも、捕らえることはできない。
その動き、まさに疾風のごとし。
「疾風突き……もとい、疾風の当身。」
トン、と由花子のうなじを叩き、これまでのことが嘘のように由花子は静かに動かなくなった。
速さを意識するあまり、攻撃力を発揮できないこの技は、今回はうってつけだった。
「さーて……コーイチ君にどう言い訳しようかな……」
気を失った由花子を、とりあえず康一のもとに運ぼうとするアルス。
命の危機は去ったが、問題は新たに出てきた。
(だからといって目を覚ましたらまた暴れそうだし、置いていくわけにもいかないしなあ。)
自分より背の高い由花子をどうにか背負って運ぶ。
ゴッドハンドの職に就いたアルスにとって、これぐらいどうということはないが、康一の反応が気がかりだった。
彼の苦悩は、続く。
【D-2北部/草原/一日目 黎明】
【アルス@ドラゴンクエスト7】
[状態]HP3/5、MP3/4 疲労(中)
[装備]なし
[道具]基本支給品、水中バクダン×10@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス ランダム支給品0~2
(確認済み、武器ではない)
[思考・状況]
基本行動方針:オルゴ・デミーラやザントを倒す
1.ボトクの変身に警戒しながら仲間を探す
2.杜王駅に戻り、由花子を康一の所へ連れていく
※参戦時期は本編終了後
※広瀬康一からヌ・ミキタカゾ・ンシ以外のジョジョ勢について聞きました。
※広瀬康一からスタンドについて聞き、ヌ・ミキタカゾ・ンシと重ちー以外のスタンド能力も把握しました
※少なくとも武闘家・僧侶・戦士・バトルマスター・パラディン・ゴッドハンドをマスターしています
【山岸由花子@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:気絶 吉良への憎悪(極大)、ユウカに対するいら立ち(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~3(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:康一君の敵の排除。彼が死亡した場合……
0.………。
1.杜王駅へ向かう。
2.康一君に酷い目に遭わせた吉良は絶対に許さない。
3.シンジと言う名前の遺体を探しておく。範囲はE~F。昼になったらDの何処かで合流
4.最初に殺された子の知り合い(リンク)にも少し警戒
5.余裕があればキョウヤ達との合流。ナナは……状況次第。
※参戦時期は少なくとも吉良が顔を変えて逃亡してるよりも後です。
※ラブ・デラックスの髪の毛を植え付けての操作の制限は、後続の方にお任せします
※無能なナナの参加者の能力と人柄、世界観を理解しました。
ただし一部嘘が吹き込まれており「死体が自分の意思で喋ってる」などがあります。
他にもどのような嘘があったかは後続の書き手にお任せします
また、レンタロウについての情報は乏しいです。
[支給品紹介]
水中爆弾@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス
アルスに支給された爆弾。
火をつけてから数秒後に爆発する。
また、水中でも火が消えることなく、力を発揮する
最終更新:2021年04月26日 09:13