草原地帯。
地面の色に見紛うかのような服装の青年が、当て所なく歩いていた。
彼の耳に響くのは、ザントの声。

―――困るな。いくら殺したいからと言って、いきなり武器を出すなど。


殺した。
自分が、殺した。
戦って、守り抜いた相手を殺した。
記憶を失って、それをようやく取り戻した相手を殺した。


ここで誰かがいれば、「殺したのは君ではなく、ザントだ。」と言うだろう。
だが、そんな言葉は耳に入らないくらい、彼の心は弱っていた。
武具も持たず、ここがどこかも確かめず、誰が参加させられているのかも分からないままフラフラと歩いた。



罪人の俺を、裁いてくれ。
いや、そんな面倒なことをしなくていい。
殺すだけで充分だ。


綺麗な月光がさす中、なおも歩いていると、何かが月をバックにして飛んできた。

(!?)
飛んできたそれは、槍を振りかざし、地面に目掛けて突き刺した。
明らかに自分を狙った勢いだった。
続けざまに、地面に刺した槍を天目掛けて一振り。
死にたいとは思っていても、敵と戦い続け、培った経験は脊髄に刷り込まれているなと、感心してしまう。


「フッ、避けたか。中々やるじゃないか。」
「何で、あんたは殺し合いに乗っているんだ。」
リンクは率直な疑問を、槍の男に投げかけた。
それは、自分の強い力をなぜ正義に使わないのか、という意味合いではない。
あれほどの跳躍力があれば、あの勢いでザント達の所へ飛んでいくことも可能かもしれないのに、という意味合いだったが。


「シンプルな話だ。殺しあえと言われたからこうしているだけだ。分からないのか?」
男は槍をリンクの心臓目掛けて突き刺そうとする。
それをまたも反射的に横に飛びのいて躱すリンク。


「その力、人を守るのに使えないのか!?」
「笑わせてくれる。人を守ることも、殺すことも出来ない奴に言われたくはないな。」

今度は、槍を袈裟懸けに一閃。
直撃こそしなかったが、緑の服に斜線が走る。

「死んだような顔をしていた癖に、死ぬのが怖いか。」
逆袈裟に一閃。
当たらない。だが、次も無事な保証もない。


「そうだ、貴様を殺した後、貴様の仲間も殺してやるか。」
死んだはずのリンクの心が、敵への憎しみを募らせた。
相手がなぜ自分さえ知らない仲間を知っているか。そんなことはどうでも良かった。


男が再び、天を突くかのように跳躍する。
今度は直撃すれば、良くて大ダメージ。悪くて即死。


「!!」
草原に派手な金属音が響いた。

渾身の一撃が、弾かれた。
リンクが取り出したのは、台風を模したかのような盾。
返ってきた衝撃に押され、男は後退する。
盾は一目で業物と分かるが、乾坤一擲の攻撃をノーダメージで受け止めたのは、彼の技術があったからだ。


「どうやら、戦わなきゃいけないようだな。」
「フッ、なかなかやるじゃないか。」
銀の兜から見える口元が笑い、ザックに手を突っ込む。
何をするかと思いきや、剣を取り出し、リンクに渡す形で地面に刺した。


「オレが攻撃して、貴様が守るだけじゃ退屈だ。そいつはくれてやろう。」
「ありがたく受け取っておく。」

夜の闇を照らすかのような光を放つその剣を手に取り、すぐにカインに斬りかかる。
一文字に振るったその剣は、槍を縦に回転させた斬り上げによって、天を仰ぐ形になる。
続けざまに振るわれる男の突きは、リンクの盾によってまたも止められた。


「このような使い手、バロンでも殆ど見ない。名を教えてくれないか?」
「トアル村の剣士、リンク。」
「いい名だ。俺は竜騎士カイン、この戦いを征する者だ。」

互いの自己紹介が終わるや否や、三度カインは天へと駆ける。
だが、既に2度空からの攻撃を経験したため、攻撃へのタイミングは覚えていた。
そして、一たび空へと舞い上がると、そこからしばらくは攻撃をかわす手段が限られる。
一度目は自分の身を守ることに夢中だったリンクは、腰を落とし、今度は一歩も動かない。
ならば二度目のように盾を構えて、躱すのではなく受けることに専念するかと言うと、それもまた否。
カインの跳躍が頂点を通り越して、下降に至る頃、リンクは盾を捨て、剣を下段に降ろした。


右手が迫りくる。
だが、タイミングは見切った。
串刺しにされる瞬間、カウンター代わりに斬り上げを入れてやろうと、両手で剣を握りしめて身構える。

(!?)
しかし、同じ攻撃ばかりするほど、カインは無能ではなかった。
刺されたものではなく、何かがぶつかった様な痛みをリンクは肌で感じる。


小手だ。
端からカウンターを狙っていると見抜いた相手は、先に左手から小手を投げつけたのだ。
だが、文字通り小手先の技で討たれるほど、リンクも愚かではない。
カウンターの構えをキャンセルし、どっしりと地面に踏み込んだ足を、攻撃の為ではなく回避の後転のためにシフトさせる。


三度目の飛襲もまた、空振りに終わった。
敵方の攻撃が済んだ瞬間、攻めに回るのはリンクの方だった。
今度はカウンター代わりにとカインが槍での突きを放つ。
それを姿勢を低くしたまま、ぐるりと転がるようにして回り込み、そのまま斬り付けた。


背面(そとも)斬り
古の勇者から学んだ第三の奥義だ。
だが、これでカインを倒せたかと言えば、そうではない。
実際には皮一枚届かず、最初にリンクが斬りつけられた時のように、服だけだった。


「地面技(グラウンド)で、空の主である竜騎士に叶うと思うな。」
今度は飛躍を、ダメージを逸らすために使ったのだ。
追撃が来るかと思うと、今度は尾を引いて逃げ出した。


「待て、不利になったら逃走か。」
「初戦で全力を尽くすなんて、馬鹿のすることだ。」
なおも追いかけようとするリンクを、ジャンプを繰り返して振り切ろうとする。


だが、行く先は崖。
追い詰めたか、と思いきや、カインは何のためらいもなく飛び降りた。


―――初戦で全力を尽くすなんて、馬鹿のすることだ。
確かにその通りだと納得する。
この戦いの敵はカインだけじゃないはず。
いつどこで新手が襲い来るかは分からない。
崖下まで追いかけても捕まえられるか分からないし、おそらく彼のことだから投身自殺ではなく何か秘策はあるはずだ。


「いいぜ、カイン、それにザント。俺を殺さなかったことを、後悔させてやる。」
リンクは剣を鞘に納め、確かな足取りで歩き始めた。


【B-2/草原/一日目 深夜】

【リンク@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】
[状態]:健康 服に裂け目 疲労(小)
[装備]:光の剣@FF4 トルナードの盾@ドラゴンクエストVII
[道具]:基本支給品 ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:主催を倒す
1.まずは名簿を確認
2.カインは次会ったら倒す
※参戦時期は少なくともザントを倒した後です。
※地図・名簿の確認はしてません。










「ミキタカ……だったな。助かったぞ。」
崖から飛び降りるも、何にでも変身出来る宇宙人、ヌ・ミキタカゾ・ンシが落下傘に変身してくれたおかげで、無傷で着地したカイン。

「ええ。私に出来るのは、これくらいですから。」
「しかし……スタンド、とはな。おかしな能力だ。」
「おかしな性格なのはあなたですよ。」

変身なんて出来る宇宙人に、逆に変人扱いされるとはな、とカインは笑う。

「自分がよりによって、憎まれ役を引き受けようだなんて。」
「この戦い、誰かがそれをやらなきゃいけない。最悪なのは、全員が争って、本当の力を出せず、誰も幸せになれないことさ。」


この戦いが始まり、名簿を見た瞬間、カインはどうするか決めた。
華をセシルとローザに持たせ、他の参加者は自分一人を敵にさせ、他の奴等同士で争うことを防ぐ。
そうして全員が団結して主催を倒すという算段だった。
しかし、それをいざ実行するのが難しいと考えていたところ、偶然出会ったのがミキタカだった。
同じように殺し合いに反対していたミキタカは、カインの話に乗り、逃走ルートを用意してくれていたのだ。



「私はアナタのような面白い人に出会えて幸せです。これからもどうぞよろしく。」
「フッ、まかせておけ。」
かつて親友に返したものと、同じセリフを吐くカイン。


だが、彼は知らなかった。
彼の無二に友人は、既に死んでいるということを。


【B-1/崖下/一日目 深夜】
【カイン@Final Fantasy IV】
[状態]:健康 服の背面側に裂け目 疲労(小)
[装備]:ホーリーランス@DQ7  ミスリルヘルム@DQ7
[道具]:基本支給品 
[思考・状況]
基本行動方針:憎まれ役を演じ、対主催勢力を繋げる。もしセシルが死ねば?
1.セシル、お前はどうしている?
2.ミキタカ、しっかり頼むぞ。
※参戦時期はクリア後です



【ヌ・ミキタカゾ・ンシ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康 
[装備]:なし
[道具]:基本支給品 ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:カインに協力する
1.カインさんは面白い人ですね。
2.仗助さんが無事か気がかり

※参戦時期は少なくとも鋼田一豊大を倒した後です。



【光の剣@ドラゴンクエスト Ⅶㅤエデンの戦士たち】
カインに支給された剣。現在はリンクが持っている。
ス〇―ウォーズのラ〇トセイバーのように刃先が光っている。

【トルナードの盾@FF4】
リンクに支給された盾。
風の精霊の力を帯びており、ただ防御力が高いだけでなく、氷の魔法、吹雪系のダメージを抑えることが出来る。

【ホーリーランス@DQ7】
カインに支給された槍。
FF4にも同名の武器があるが、これは月の力を帯びた武器ではなく、凡庸な性能をしている。



【ミスリルヘルム@DQ7】
カインに支給されたフルフェイスの兜。
特に性能はないが、高い防御力を持っている。


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最終更新:2021年04月08日 11:19