静寂
1人の悪魔と、半ば無理矢理その配下にされてしまった2人の人間が、ただ歩く音のみが聞こえる。
これと言って話したいことなどなく、ただ目的地へとむけて歩いていた。
3人共沈黙は金なりを金科玉条とする性格ではない。
殺し合いの場だから、一言でも話せば死に直結するなど、そこまで気持ちが追い詰められている訳でもない。
だが、共通の話題をどうにも見つけることが出来ず、加えて互いが何を考えているかイマイチ分からないため、3人はだんまりを決め込んでいた。
その沈黙を破ったのは、意外なことにデマオンだった。
「2人共、何故先から言葉を発さぬ?映えあるデマオン軍の一員なのだぞ?」
それが一つの原因だ、と言いたい気持ちを二人は抑えた。
「今のうちに、ワシに聞きたいことあらば聞いておくがよい。配下の心情を知ることも、上に立つ者として重要なことだ。」
「一つ教えて欲しいことがあります。」
次に言葉を発したのは、アイラだった。
「デマオン様は、なぜ魔王になったのですか?」
「まさか、人間がその質問を投げかけるとはな。いいだろう、ワシが如何にして魔王になり、地球を目指すことになったか。」
アイラが見た大魔王というのは、デマオンが初ではない。
神に成りすまし、世界の全てを手中に収めようとしたオルゴ・デミーラがいたが、彼奴に比べると遙かに話の通じる相手だった。
「ワシが魔王になるまで、魔界星は腐敗しきっていた。」
彼の言う通り、数百年ほど共和政を通していた魔界の政治は、贔屓目に見ても腐り切っていた。
共和政というと聞こえこそ良いが、その中では賄賂と自らの保身、世襲悪魔同士の馴れ合いに、それを自らの力だと勘違いした愚か者の巣窟だった。
そんな烏合の衆で、魔界が好転するわけがない。
加えて腹が立ったことは、奴らが総じて「地球を我が手に」と言っていたことだ。
確かに地球は多くの魔界族が数百年・数千年単位で欲していた惑星だった。
優れた魔力を持つことでようやく生存が許されるほど、資源や住める場所に乏しい魔界星に比べて、地球は資源が非常に潤沢だったからである。
地球を手に入れれば、鉄や頑丈な木材を始めとする豊かな資源が手に入り、岩を魔法でくり抜いて住む住居からおさらば出来るはずだった。
加えて地球人という食糧を手に入れれば、魔界の至る所で問題になっている悪魔の餓死者を大幅に減らすことが出来る。
食糧不足のために、危険な帰らずの原に出向き、迷った果てに逆に怪獣の餌にされるような悲劇も、抑えることが出来る。
だが、彼らが考えていたのは、自分の権威の座とその日の食事に酒のこと。
地球のことなど全く意に留めず、ただ国民からの支持を得るためだけに地球侵略を声高に叫んでいただけだった。
気に食わなかった。
保身馬鹿、世襲馬鹿、高慢馬鹿、ただの馬鹿の悪魔政治家達も、中身のない演説に扇動される国民も、彼らを悪く言っておきながら、似たような案しか出せない反対者共も。
彼一人では寿命も時間も限られている以上、長いスパンでの計画の実行は難しかった。
だが、その前提を打ち破るきっかけになったのは、「心臓移しの術」である。
自らの命を司る場所を胸の内ではなく、異なる場所、しかも魔界から離れた星に移すという、とんでもない術を研究の果てにやってのけた。
これでデマオンには、デモン座のアルファ星が寿命を迎えるまで、言い換えれば永遠にも近い時間を保証された。
だからこそデマオンは、自らの知識と魔力を数十年かけて蓄え、更なる時間をかけて魔界統一を果たし、数百年ぶりに独裁政治を敷くことに成功した。
そして長きに渡り、絵に描いた餅でしかなかった地球侵略の実行と、それに向けての政策を進め始めた。
最も、民衆の中にはデマオンの独裁を忌み嫌う者や、地球侵略を掲げたことで、同じ轍を踏むと思い込んでいた者も少なくなかった。
しかし、その意見がガラリと変わったのは、既に自身の心臓を移す際にもやってのけた、「魔界黒炎層突破案」だ。
魔界星の大気圏は、厚い炎の層に包まれている。
南極地域など、ごくわずかながら炎が薄くなっている箇所はあるが、それでも星外移動方法は限られる。
悪魔族なら魔術で結界を張れば耐えるのは難しくないが、問題は魔界星から地球へ移る際に重要になってくる、移動用魔界獣の存在だ。
そこでデマオンは魔法による魔界獣・魔界竜の改良方法を発見し、炎に強い毛皮や鱗を持つ種を作るのに成功した。
魔法の炎にこそ耐えるのは難しいが、魔界星の突破さえしてくれれば問題はない。
これこそ彼が大魔王として称賛される一件になった。
賞賛さえされれば、後はトントン拍子に侵略計画は進んだ。
偵察者を用意し、逆にナルニアデスのような自分達を嗅ぎまわる地球人を殺していき、魔力に優れた者を集めて魔界星の軌道を操作して地球に近づける。
「これがワシが大魔王になった過程だ。本当は実力もないのに威張り散らしていた輩が気に食わなかっただけだがな。」
壮大な自身の半生を二人に聞かせた。
どこか人間の世界に通じなくもない彼のサクセスストーリーは、いずれ敵になるはずの二人にとっても、魅力的なものだった。
「随分苦労したのですね。」
長らく言葉を発していたのはデマオンのみだったが、そこでアイラが口をはさむ。
「それほどでもない。逆に貴様らは如何にして今の座を掴んだ?ワシに隠しても無駄だ。どこか高貴な立ち居振る舞い、王家かそれに近しい者に違いない。」
(?)
アイラは疑問に感じた。
ゼルダこそ確かにハイラルの姫だというのは、会話で分かっている。
だが自分は、1つの住まいを持たず居住地を転々とするユバールの民。
言ってしまえば、王族とは完全に対である者だ。
確かにアルス達の冒険に加わり、グランエスタード王との親睦も深まったが、それで一目見て分かるほどの王族らしさが身につくわけでもないだろう。
「ええ。私の姫になった原因は……。」
そう思っているうちに、ゼルダの方が言葉を紡いだ。
そして、白の手袋から見せたのは、正三角形が3つ連なった文様。
仲間ではなく、一時的な同盟相手にこのようなことを教えるのもどうかと思ったが、相手に対して不躾だと思い、見せることにした。
「それが、王族たる条件ということか。」
知恵のトライフォース。
彼女の手に宿り、ハイラルの行く末を委ねる大いなる力だ。
それゆえ、ハイラルの侵略を狙う者も後を絶たない。
この邪悪な催しを開いたザントも、その一人だ。
「後天的な力ではなく、先天的な力によって、手に入れた力か。
ならばゼルダよ。時にその力、忌み嫌ったことはないのか?」
「本当のことを言えば……。ザントがハイラルを侵略したのも、恐らくこの力を求めたことでしょう。」
―――選ぶがよい。降伏か、死か。
―――ハイラル全土の、生か死を!!
一人一人殺されていくハイラルの兵。
ザントに突き詰められ、彼女が選んだ選択は、降伏だった。
「あのデク人形も、下らぬことを。」
デマオンの言葉に含まれていたのは、ゼルダに対する同情などではなく、侵略する予定の国が1つ減ったことへの落胆だったのだが。
「まあいい。アイラ、貴様はどうなのだ。家柄か?それとも実力か?」
「お言葉ですが、私は王族ではありません。遊牧の民です。」
「なんと……ワシの目も曇ったものよ。」
目の前の相手が、王族とは真逆の生き方をしていることに、さしものデマオンも驚く。
「いえ、私の先祖に、遠い国の王子であったのに、私達の守り手になった方がいます。もしや、その方を?」
「王家から遊牧の民?逆ならともかく、王から平民の身へと移るなど、何があったのだ?」
これにはデマオンとしても驚きだった。
平民から王への成り上がりなら自分と同じ、相当なハングリー精神の持ち主だと褒め称えるべきだ。
だが、強制された場合はともかく、自分から進んで魔王から平民の身に成り下がった者など、見たことがない。
「私も詳しくは知りません。けれどその方は、王家での生活を嫌い、自由なユバール族にあこがれを持っていたそうです。」
デマオンにとっては、全く訳の分からない話だったが、詳細を聞いてみれば極めて納得がいく話だった。
(言われてみれば、あの薄汚い政権に愛想をつかす者がいなかったのが、おかしいくらいだな。まあ不快感を抱かなかったからこそ、あの政権に留まったか)
「なるほど。中々どうして面白い話だった。暇つぶしにはなったな。」
そこでデマオンが疑問に感じたのは、二人の配下から聞いた王国のことだ。
これほど多くの王国があるのは、いくら何でも異常ではないかと。
独裁制を始める前でさえ、あまり国そのものが少なかった魔界出身のデマオンだからそう感じたというのもあったが。
地球以外の別の星と捉えてもいいが、魔王がかつて見た「あるもの」と照らし合わせると、合致する点があった。
それは、かつて自分を討った青ダヌキが腹の袋から出していた道具。
奴等は姿を消したり、物を大きくしたり、空気の弾を飛ばしたりと、あの手この手で攪乱してきたが、それには全て謎の道具があった。
あれは悪魔族の手により作れる物では無い。
文明の差ではなく、もっと根本的な理由で作れないのだ。
自分にとって誠に荒唐無稽な話を持ち出すなら、「科学の力」の道具だ。
しかし、魔界でも科学の力というのはおとぎ話の世界に通じている。
だが、あの道具と言い、この首輪と言い、どうにも科学の臭いを感じる。
何らかのはずみで、科学の世界が、自分達の世界につながった様な。
そして、この殺し合いもまた、そのような者がいるはず。
(奴らは一体、何を考えている?)
この殺し合いを開いたデク人形のことだけではない。
思えば、科学の力を持った地球人が魔界星に攻め込んできた理由も、不明だ。
もしや面白半分、はたまた何らかの事故で、科学の力を持ったまま、魔法の世界に入ってしまったとか?
またしても無茶苦茶な考察をしてしまったが、再度考えてみても、スジが通っているため、余計不気味に感じてしまう。
話が逸れてしまったが、科学世界の地球人とは違う。
彼らは曲がりなりにも、自分を倒し、地球を守るという信念に基づいていた。
だが、デク人形共は何がしたいのかはっきりしない。
(まあ、今考えた所で分からぬか。)
考えを一度中断した所で、目的地の建物が見えてきた。
予想外なほどすんなり到着してしまった。
このまま上手くいけばいいのだが、と三人は願う。
叡智の宝庫とも言われる、図書館で何が待ち受けているのか、それはまだ誰も知らない。
【C-5/草原/黎明】
【アイラ@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
[状態]:健康 職業 調星者 (スーパースター)
[装備]:ディフェンダー@ FINAL FANTASY IV
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~2
[思考・状況]
基本行動方針:オルゴ・デミーラを再度討つ デマオンへの警戒
1.デマオンには警戒しながら同行する
2:アルス達を探して合流する
※職業は少なくとも踊り子、戦士、武闘家・吟遊詩人・笑わせ師は極めています。
参戦時期はED後。
【ゼルダ@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス 】
[状態]:健康
[装備]:アルテミスの弓@ FINAL FANTASY IV
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~2
[思考・状況]
基本行動方針:ザントの企みを阻止する デマオンへの警戒
1.デマオンには警戒しながら同行する
2.アイラの仲間(アルス達)を探して合流する
3.ミドナ…あなたもいるのかしら?
参戦時期はミドナとリンク(狼)が出会い1回目の頃。
※参加者のトランプは確認していない。
【デマオン@のび太の魔界大冒険 】
[状態]:健康 魔力消費(極小)
[装備]:世界樹の葉@ ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~2
[思考・状況]
基本行動方針:不遜なるデク人形(オルゴ・デミーラ、ザント)をこの手で滅し、参加者どもの世界を征服する
1.図書館に向かい、情報収集する
2.部下であるアイラとゼルダを引き連れる
3.刃向かうものには容赦しない
4.青だぬき共の処遇はこの場では不問とする
5.この世界は一体?
最終更新:2021年04月08日 11:14