敵の襲撃から逃れた3人は、隣のエリアに移動していた。
闘技場から離れて、ルビカンテが追ってこないと分かると市街地を歩いてしばらく進むと、風景が変わってきた。
とりあえず3人の目的は、休憩できそうな場所を探すことだった。
写真の男は恐らく遠くに行ってしまったし、探そうにもまた別の参加者に襲われる可能性も鑑みて、休憩を優先した方がいいと全員判断していた。
建物が林立する鉄の森を抜け、地面の色が人工的な灰から、天然の緑や茶に変わった辺りで、ぽつんとたたずむ1つの駅が見えた。
「あそこで休憩しない?」
その場所はのび太にとっては非常にありふれた場所であるのに対し、後の二人にとっては初めて見る施設であった。
彼が知っている駅という施設は、待合室などが備わっており、休憩するには適した場所ではないかと考えていたが、二人はそうではなかった。
「のび太はあの建物が何なのか知ってるのか?」
「オレも気になるぜ。どうにも入り口が狭っ苦しそうで落ち着けそうにないんだがな。」
「ええええ!?二人とも、駅って知らないの!?」
彼と同年代、ましてやそれより年上ならば知らない方がおかしいぐらいだ。
ただし、それは彼の世界に限ること。
「知らねえものは知らねえな。もしかするとハイラルの外にならあるのかもしれねえが。」
「いや……ちょっと待てよ……。」
駅の入り口になっている階段をのぼりながら、二人はそれぞれの反応を見せる。
あくまで知らないと言い切るダルボスに対して、覚はどこか思い当たるような表情を浮かべていた。
「この構造、東京で見たことがあるな。」
覚自身はかつてサイコ・バスターを求めて、廃墟と化した東京の地下を探索したことがある。
その際に、姿こそは全く違うが、構造が似ているような場所があった。
「やっぱり知ってたんだ……ところで、この字、何て言うの?カミサケ?カミキ?」
構内にある、駅の名前らしきものが書かれている看板を指さし、のび太が尋ねる。
今度は覚の方が疑問に満ちた表情を浮かべていた。
「……なんで、この名前があるんだ?」
「え?この駅の名前、読めるの!?」
「読めるも何も、この駅は俺の町の名前だ。神栖66町にはこんな駅は無かった。」
「……どういうこと?」
のび太までもわけがわからないという表情で聞いている。
「似たような話なら、こっちにもあるぜ。」
しばらく黙っていたダルボスが口を開いた。
指をさしているのは、駅の路線図だ。図の4隅に駅名前が書いており、北東の神栖駅のみ赤字で書かれており、現在地であることを示している。
だが、ダルボスの指先にあるのは北西の駅だ。
「こっちにハイラル駅ってあるだろ?ハイラルってのは、オレの生まれ育った国だ。でも駅なんてなかった。」
「へえ、あんたはハイラルって国から来たのか。てっきりバケネズミの変種(ミュータント)かと思ったぞ。」
「誰がネズミだ!」
「ダルボスさんは、どっちかというとネズミと言うよりゴリラかなあ。」
「オレはネズミでも、ゴリラでもなーい!!」
結局ダルボスは解せぬといった顔を浮かべていたが、それでも3人をずっと覆っていた緊張感が解れたのは事実だった。
それからは3人、鞄から地図と名簿を出し、待合室に座ってそれぞれ情報交換をし合うことにした。
この戦いが始まってから、誰かを追いかけたり追われたりと、話し合う暇さえ無かった。
なので、休憩も兼ねてこの場所で知り合いの共有をすることにした。
「くそ、何でこんな紙切れの束にしてるんだ。チマチマしてて読みにくいったらありゃしないぜ。」
名簿の様式に文句を言いながらも、知り合いだけを床に並べていく。
「のび太の知り合いはこの4人か。」
「後の3人は誰かを殺そうと考えたりしない……、でも、このデマオンには気を付けて。僕達の地球を狙っていた恐ろしい奴だ。」
覚の話で、この世界にはどういう訳か一度死んだ人間が参加させられていることは知っていたが、それでも驚かないわけにはいかない存在だった。
「大魔王……ね。そいつほどじゃないが、俺も一人、厄介な奴を知っている。」
覚は出した5枚のカードの中で、スペードの10を見せてきた。
その姿はむしろ貧相な風貌で、デマオンとは異なり恐ろしい印象は伝わってこない。
「他の誰を信用しても、スクィーラの言うことだけは信用してはならない。
コイツは俺たちの町に仕えるフリをして、町どころか日本中を征服しようとしていたんだ。」
「友達にはなれないのかなあ。」
冒険の中で、人の姿とは大きくかけ離れた者とも友達になれたのび太は、口惜しそうな顔をする。
「友好的なふりをして、どうにかして出し抜く機会を狙っているような奴だ。
それは難しいと思うぞ。ダルボスはどうなんだ?」
「オレの知り合いはこのリンクって緑帽子の……最初にアイツラに斬りかかって行ったヤツだ。あと最初の場所で死んじまったイリアって女の子もそうだ。」
思いの外人間の知り合いが多いダルボスに二人はいささか驚くも、彼の話はそれで終わりでは無かった。
「あと、オレと面識はねえが、このゼルダって人はハイラルの姫さんだ。これでオレの知り合いは……ちょっと待て!?」
カードをまとめて仕舞おうとした時、1枚のカードにダルボスは目を落とす。
スペードのKのカードに載るにふさわしい、絵からでも伝わってくる迫力を感じる男だった。
「コイツの名前は聞いたことがある。確か大昔に処刑されたハイラルの大盗賊だ。何でこんな所にいるんだ?」
その理由こそまったく不明だが、大盗賊と言う経歴や処刑されたということから、残念ながら協力は難しい相手だとは分かった。
「やはりあの二人、少なくともどちらかが時間を操ることが出来るかもしれない。」
大昔の人物が参戦しているという話を聞いて覚はその仮説をさらに固める。
「タイムマシンみたいな何かを持っているかもしれない。」
「その話に関して、どうにも腑に落ちない所があるんだ。さっき聞きそびれてしまったけど、そのタイムマシンと、ドラえもんって奴のことを教えて欲しい。」
覚に言われた通り、のび太は自分がかつてお正月に起こったことを話した。
彼が22世紀のお手伝いロボットで、自分の悲惨な未来を変えるためにやって来たのだと。
「それがおかしいって話なんだ。君が呪力が生まれる前の時代の人間なのは分かったが、呪力と言うのは21世紀、ドラえもんが来る前に生まれていたはずだ。」
のび太は未来から来たドラえもんと、自分の子孫であるセワシに会っただけではない。
タイムマシンに乗って、その先の未来の東京だって見たことがある。
そのため、朝比奈覚の話はどうにも納得のいかないものだった。
「わけが分からない。話がしっちゃかめっちゃかだよ。」
口を3の字に尖らせ、半信半疑、むしろ疑の方が強いというような表情を浮かべる。
「正直に言うと、オレも話が分からねえ。呪力が生まれるとか、過去とか未来とか、何なんだって話だ。」
それには自然と力を愛し、科学や魔力とはあまり縁のなかったダルボスも同じだった。
彼自身、魔力に無頓着だったことが原因で怪物になってしまったことがあったのだが。
「サトルよお、何が言いたいのか分からねえが、あまり難しいことを考えすぎるのも毒だぞ。」
「あ、そうだ!!パラレルワールドって知ってる?」
一度は覚の話を聞く気は無いと言った態度を見せたのび太が、大声を出した。
――魔法世界の人たちはどうなるの?
――パラレルワールドになるわけよ。
――つまり、あっちはあっちでこっちと関係なく続くわけ。
もしもボックスで元の世界に戻そうとした際に、ドラミとドラえもんから言われた言葉。
のび太は化学が中心になっている世界と、魔法が中心になっている世界を行き来したからこそ知っていることだ。
「俺も聞いただけだが、世界は1つだけじゃなく、あっちにもこっちにも、色んな世界があるってことだろ?
実は俺ものび太やダルボスの世界ってのはそうじゃないのかと思ってるんだ。」
「うん、僕は実際にそれを体験したことがあるんだ。」
彼は説明した。
もしもボックスと、魔法世界のことを。
そして自分の知り合いのうちドラえもん以外の3人は、魔法世界で出会ったということも。
「もしかすると、敵はそのもしもなんたらって道具みたいな能力を持っているのかもな。」
「ちょっと……冗談止めてよ!!」
のび太は敵がドラえもんのひみつ道具と同じ能力を持っているということを想像し、恐ろしくなる。
「……グゴー……。」
気が付くと、退屈過ぎたからかダルボスは丸まって眠っていた。
「おいおい、話が分からないからって寝るなよな。」
「んお!?寝てねえぞオレは!!」
「大体そう言うんだよね……。」
「まあ、起きたことだし、少し早いが食事にするか。」
覚は鞄から支給品を出す。
それは、のび太が良く知っている道具だった。
お洒落な花柄模様は、どうみても彼の仲間が持っていた道具である。
「あれ?それは、美夜子さんの!!」
「君たちに会う前に確認したんだが、まさかのび太の友達の物だとはな。」
「しかし、これが本当にウマイのか?」
「これは食べるんじゃないよ。『お子様ランチ』!」
のび太が食べ物の名前を言うと、北風のテーブルかけの上に、日本の旗が印象的なお子様ランチが現れた。
「へえ、俺もやってみるか。『トラバサミのスープと山芋団子』」
面白い物を見つけたという顔で、覚も地元の食べ物の名前を言う。
トラバサミは呪力の影響で彼の世界にしかいない生き物だったが、問題なくテーブルかけは料理を出した。
「まあ、オレのは出来ないだろうが、一応やってみるか。『特上ロース岩』」
続いて出たのは、骨付き肉の形をした岩だった。
「ええ?石ころなんて食べられないよ!?」
どう見ても人間が食べるのに適していない見た目の食べ物が現れ、のび太は驚くも、ダルボスはそれをバリバリ食べる。
「これは石ころじゃねえ。滅多に食えねえ高級な岩なんだ。」
否定する所、そこなのかよという空気が人間2人の間に漂うのだが、岩でも美味しそうに頬張るダルボスを見て、不思議と2人も食欲が出てくる。
「ごちそうさま〜。グゥ………。」
満腹になり、のび太は食べ終わると共に駅内の椅子に座ったまま眠ってしまった。
「仕方ないやつだなあ。まあ、俺も朝が来るまで一休みするか。ダルボスはどうする?」
「オレは外を見張ってくる。あの赤い格好した奴が来るかもしれないし、写真のオッサンが紛れ込んでくるかもしれねえ。」
そう言ってダルボスは駅の外へ行く。
【A-8/神栖駅構内/一日目 早朝】
【野比のび太@ドラえもん のび太の魔界大冒険】
[状態]:健康 睡眠中
[装備]:ミスタの拳銃(残弾5)@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ダルボス、覚と共に脱出する
1.朝まで休憩
2.仲間(ドラえもん、美夜子、満月博士)を探したい
3. デマオン、スクィーラ、ガノンドロフには警戒
※参戦時期は本編終了後です
※この世界をもしもボックスで移った、魔法の世界だと思ってます。
※主催者はもしもボックスのような力を持っていると考えています。
【朝比奈覚@新世界より】
[状態]:健康 睡眠中 早季への疑問
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、北風のテーブルかけ(使用回数残り17/20)@ドラえもん のび太の魔界大冒険 ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を探し、脱出する
1.その過程で写真の男を見つけ、サイコ・バスターを奪い返す
2. デマオン、スクィーラ、ガノンドロフに警戒
※参戦時期は26歳編でスクィーラを捕獲し、神栖66町に帰る途中です。
[支給品紹介]
北風のテーブルかけ@ドラえもん のび太の魔界大冒険
朝比奈覚に支給された魔法の道具。
ドラえもんのひみつ道具ではなく、美夜子が持っていた道具。
食べ物の名前を言うとそれが出てくる。
今回のロワでは以下の制限がある。
※食べ物を出せるのは20回まで
※食べ物を食べても腹が膨らむだけで、体力の回復が起こらない
(ヘルシーサラダ@ペーパーマリオやトニオの娼婦風パスタ@ジョジョの奇妙な冒険などを出しても、原作の様に傷が治ったりすることは無い)
「…………。」
階段を下りて外に出ると、空の色からして、朝になるのはそこまで長くはないことが分かった。
1人になった彼が出したのは、タイムふろしき。
最初に見た時は、ただの布切れだと思ったが、今は特別な力を持った道具だとは分かる。
(オレに巻いたら、過去の自分に戻れるのか?)
その時の意識ははっきりと覚えていない。
だが、自分はかつて、影の魔力に当てられて覚醒火炎獣マグドフレイモスへとなったという話は何度も聞いた。
この世界には、自分の力が到底及ばない敵もいるはず。
(もしそんな相手がいたら……)
のび太や覚、あるいはその友達守るため、怪物の姿に戻り戦う時が来るかもしれない。
(って、何を考えてるんだオレは!!)
そんなものになってしまえば、最悪守ろうとする者を殺してしまうかもしれない。
そもそも自分が怪物になって戦うことなど、誰も望んでいないはずだ。
第一、 これは首輪の解除に使うための物。
それをそんな風に使ってしまうなど論外も良いところだ。
(オレもやっぱり疲れているのかもな……。)
すぐにその考えを捨てようとする。しかし、どうにも捨てきれることが出来なかった。
【A-8/神栖駅外/一日目 早朝】
【ダルボス@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】
[状態]:ダメージ(小) 疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、タイムふろしき@ドラえもん のび太の魔界大冒険
[思考・状況]
基本行動方針:リンクと合流し、主催を倒す
1.のび太と覚、そしてその仲間を守る
2.なぜガノンドロフがここにいるんだ?
3. タイムふろしき、これを使えば……。
※参戦時期は少なくともイリアの記憶が戻った後です。
最終更新:2021年10月12日 21:16