山奥の塔を後にし、エブラーナの忍者王子は草原を駆ける。
塔からまずはまっすぐ東へと走り、目の前に森が立ち塞がるが、躊躇なく入る。
夜の森とは、常人から見れば殺し合いの会場でなくとも入るのを拒否するほど恐れる場所だ。
だが、忍者である以上夜でも問題なく動けるし、むしろ障害物が多い場所の方が有利に動け、戦えるぐらいだ。
入ってからすぐに南下し、バロンを目指す。
そのまま特に誰とも会わず、もう少しで森を抜ける所で、音が聞こえてきた。
(ん?)
何かが森の中を木霊する。
耳をそばだててみると、それは爆音のようだった。
彼の仲間の中で、唯一このような音を立てることが出来そうなリディアは、ここにはいない。
だからと言って、あのような爆音が響いた場所を無視するなと言うのが無理だった。
もしも、あの場所で仲間が巻き込まれていたら。
また仲間ではなく、自分の宿敵にして、両親の仇であるルビカンテがあの音の原因と言う可能性もある。
来た道を引き返し、森を北上する。
やがて視界に、大きな木造の建物が入り込んできた。
そして、二人の男性の姿も。
片方はオレンジ色のバンダナに、黒を基調とした服装。
高貴な印象は受けず、どちらかと言うとアウトローなイメージが強いが、それでいて強者の風格が漂う。
もう片方は黄色い帽子にオレンジのベストが印象的な子供だということは分かるが、何を考えているかつかめない。
「動くな」
最初に声を発したのは2人の男性のうち、盗賊か海賊のような姿をした方だった。
それだけで、空気が一変し、殺気が辺りに漂う。
武器こそ持っていないが、この海賊の男は確かな実力を持っていることははっきりと伝わった。
「俺はあんたらの敵じゃねえよ。」
「悪いがつい先刻、女を殺してオレ達に襲い掛かってきた奴がいてな。
そう言われてはいそうですかと受け入れるのは無理ってものだ。」
ちっ、とエッジは舌打ちをする。
相手が信用してくれないだけではない。既に人が殺されているという事実を突き付けられたからだ。
勿論、彼自身もこれで相手の方を信用できるというわけではない。
この二人がその女を殺したのであり、その罪を誰かに擦り付けている可能性も拭い切れないからだ。
「そいつぁ残念だ。じゃあどうすりゃ俺のことを信用してもらえる?」
「そうだな。その支給品袋をこちらに渡せ。その後マスクと装束の裏を見せろ。
暗器の方も確かめたくてな。」
なかなかどうして、相手は警戒心がある奴だとエッジも感心する。
もし相手が敵だとするなら、合法的に自分に近づけるチャンスを作れるからだ。
「いいぜ……それなら、好きなだけ覗きな!!」
大きく振りかぶり、支給品袋を2人に投げつける。
しかし、海賊姿の男は彼の動作を見抜いて、それを強引に蹴とばした。
「ハヤト、下がれ!!」
男は少年に巻き込まれないようにと指示を出すとすぐに、猛然とエッジ目掛けて突進してきた。
しかもその右手には抜いたばかりのナイフを持っている。
カウンターをお見舞いしてやろうかとエッジは海賊男にハイキックを見舞うも、姿勢を低くして躱される。
懐に入り込まれるや否や、相手はナイフでエッジの足の付け根を串刺しにしてこようとする。
しかしエッジは自慢のスピードを生かし、海賊男のナイフを持っている腕の下から手刀で斬り上げる。
その方向から力を加えられるとは予期していなかったのか、ナイフは手から逃れ、遥か上空へと舞った。
これでナイフと言う相手の武器を奪い、俄然エッジは勢いづく。
そのまま身体を一回転させ、回し蹴りを命中させる。
蹴りを胸に入れたことで大きく海賊男を後退させる。
ところが、追撃に行く所、相手は予想外な行動に出た。
地面を強く蹴りつける。
エッジに当てるためにやったのではない。
視界を遮断する砂煙を巻き起こしたのだ。
だからどうしたとばかりに、エッジは砂煙の中に突撃する。
闇を友とする忍者は視界の利かない場所こそ、真価を発揮する。
「ならば……バギマ!!」
男が見知らぬ詠唱を始めたと思うと、突然砂煙の中で風が起こった。
エッジの頬を真空の刃が掠める。
彼の世界にとって、風の魔法とはかなり珍しい物だったので、一瞬驚くもすぐに対策を練る。
「そんな術なら俺にもあるぜ!火遁!!」
エッジが印を組むと、炎が迸り、竜巻とぶつかり合う。
炎こそはダメージを与える前に無くなるも、竜巻も消え、再び自由に動き回れるようになる。
すかさず男の顔面目掛けて蹴りを放つが、肘のガードで受け止められる。
だが、彼の攻撃はそれで終わりではない。
元々、彼は武器を2つ使った二段攻撃を主流としていた。
そして、相手が躱した方向目掛けて、先程相手が落としたナイフを突きつける。
敵が持っているアイテムを盗むのも、エッジの得意分野だ。
「忍者舐めるなよ!」
これにて勝利かと思えば、それは否。
急にエッジの足元が崩れ、ナイフは相手に届かない。
蹴りを放った直後に勝利を急いだこともあって、蹴りを放ってから体軸が不安定だったのか。
それもまた否。
「マストのねぐらで育った海賊を舐めるな。」
男は地面スレスレに足払いを兼ねた蹴りを放ち、意識していなかった足元を狙ったのだ。
そのままアッパーカットをエッジは食らいそうになるも、先程の意趣返しの様に、肘でガードする。
密着状態から離れるかのように、エッジはトントンと3度バック宙を繰り広げ、後ろへ退く。
そのままナイフを投げようかと考えたが、気が付くとナイフが無かった。
盗みに長けているのはエッジのみではない。
「返してもらったぞ。」
「てめえ!」
海賊になる上で培った技術は、盗みも含まれる。
(こいつ、中々出来るな)
(この男、実にやりおる。)
空気がさらに張り詰める。
どちらもまだ本気を出していない。
そのまま互いににらみ合い、再度突進しようとした時―――
その間に、少年が割り込んだ。
「「!!」」
両者互いに少年を危うく殺しそうになり、慌てて筋肉を凝縮させて足を止める。
「下がっていろと言った……」
「テメ……どういうつもり……」
「戦ったらダメだ!!」
その『凄み』は10行くか行かないかの少年には思えない。
むしろ、セシルにも劣らないほどの決意を感じた。
その黄金の精神に押され、2人は戦うのを止める。
「下がっていろと言ったのに……なぜ前に出た。」
「もしこの人が悪人なら、吉良みたいに僕を狙ってくるはずだ。でもそうじゃなかった。」
「よしよし、君はそっちのオジサンと違って、ちゃんと正義と悪の区別がついているんだな。エライエライ。」
「「「…………。」」」
エッジが茶化すように早人を褒めるが、何とも言えない空気が漂う。
しばらく3人共沈黙を貫いていたが、やがて張りつめていた空気が解れ、最初にエッジが口を開く。
「俺はエッジ。向こうの建物で爆音が聞こえたから来たんだが、何があったか説明してもらえるか?」
「良いだろう。最も信じるか信じないかは勝手だがな。」
★
「そのキラって奴は、召喚士か何かか?」
シャーク・アイと名乗った男から清浄寺での一件を聞き、思い出したのはこの場所にいない想い人のこと。
「分からん。この坊主の話だとスタンドというらしいが、召喚魔術の一種だろう。」
「やっぱりか。俺の仲間……この世界にはいねえんだが、似たような技を使える奴がいてな。
それと、キラはどの方向にいたのか分からねえのか?」
「分からん。まだ森を彷徨っているかもしれないし、どこか遠くへ逃げたのかもしれん。」
ここでエッジは一つ考える。
まだキラがこの森の中にいるならば、それは奴を追い詰めるチャンスだ。
どのような力の使い手なのか情報を得たし、何より召喚士のことはよく知っている。
加えて相手は自分のことを知らない以上、自分は不意打ちを加えるにはこの上なく適した人材だ。
しかし懸念すべきところは、自分には武器が無いということだった。
「もう一つ聞きてえことがあるんだが、余った武器って持ってるか?俺はあるんだが、重くてどうにも使えねえ。」
塔から降りた後、一度支給品を確認してみた。
しかし、支給された武器らしいものはマスターソードという、強そうに見えるが、余りにも重くて使えそうにない代物だけ。
普通の剣なのにどうしてもてないのかやはり刀なり手裏剣なり武器を持っておきたいところだ。
「残念だが俺の武器はこのナイフだけだ。ハヤトの武器は寺での戦いで壊れたしこちらが欲しいぐらいだな。」
加えて問題は、この殺し合いに乗ったであろう人間は、吉良だけではないはずだということだ。
エッジとしては、簡単に死んでしまう仲間ではないとは分かってこそいるが、早く仲間と再会したいし、1人でも多く危険人物は排除しておきたい。
この森の中で吉良を探そうとすると、それこそ他のマーダーを倒したり、仲間を探す時間まで浪費してしまいかねない。
2人は早人の仲間と再会できそうな杜王駅を目指しているという。
自分が目指しているバロン城の方向でもあるし、シャークや早人と共にそちらへ向かうのも悪くない。
少なくともこんな森の中をいつまでもうろつくよりかは、効率が良いはずだ。
「俺は南のバロン城って場所を目指しているんだが、その杜王駅までは同行させてもらうぜ。」
「いいのか。」
「ああ。」
こうして、海賊船長と忍者王子、そして黄金の精神を持つ少年の3人が、森の中を進むことになった。
(どっちにせよ、メリットもデメリットもあるよな……)
自分の判断がプラスになることを願いながら、先頭になって森を進む。
森を抜けるとすでに朝日が昇り始めていた。
その太陽は祝福をしているのか、絶望の光になり得るのか。
【C-3/森と草原の境目/ 早朝】
【エッジ@FINAL FANTASY IV】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、マスターソード@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス ランダム支給品(0~2)
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を探す
1. まずはシャーク・アイ、川尻早人と共に杜王駅へ
2. それからバロン城に向かうか
3. 朝比奈覚、奇狼丸、ルビカンテに警戒
※少なくともバブイルの巨人を攻略した後です。
※、シャークと早人から吉良吉影のことを聞きました。また、吉良をリディアのような召喚士だと思っています。
※エッジが使える武器は支給されていません
【川尻早人@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品 ランダム支給品0~2(武器ではない)
[思考・状況]
基本行動方針:シャーク・アイ、エッジと共に杜王駅へ向かう
1. スタンドが自分が見えることへの驚き
※本編終了後です
※名簿は確認しました。
【シャーク・アイ@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
[状態]:ダメージ(小) MP消費(小)
[装備]:鶴見川のナイフ@無能なナナ
[道具]:基本支給品 ランダム支給品0~2(武器ではない)
[思考・状況]ミチルに対する罪悪感
基本行動方針:アルスを探す、その過程で危なっかしい人物を倒す。殺し合いに乗る気はないが、最悪殺害も辞さない。
1.早人、エッジと共に杜王駅へ向かう。
※少なくとも4精霊復活後です
※少なくとも船乗り、盗賊、海賊の技は使えます。
[支給品紹介@マスターソード@ゼルダの伝説トワイライトプリンセス]
エッジに支給された剣。
単純に鋭い切れ味を持つだけではなく、特別な力を持ち、闇の力を払うことが出来るが、選ばれし者にしか持てない。
本作では原作で装備できたリンク以外に誰が装備できるかは不明。少なくともエッジには持てない。
最終更新:2021年09月22日 10:30