登場話
第一部
略歴
はるか遠い昔、サイン水郷に生まれ幼くして熱病で死んだ少女。
二つ目の名前すらない、サイン水郷のイーリエ。彼女は何を為すこともなくその命を終えた。
死の間際、
友人達とともに
メレの元を訪れた彼女に対し、彼は何か願いを聞いてやろうと言った。
サイン水郷の英雄、
巨人のメレに比べてあまりに弱く儚い生命。どうしようもないほど短い生しか生きられない彼ら
人間のために、メレはなにか大きなところを見せてやろうと思ったのだ。
メレは、
人間のような弱い連中とは違う。彼は最強の
巨人で、村の守り神なのだから。
イーリエは何も為すことなくその命を終えた。
しかし彼と交わした最期の約束は、この地平に並ぶもののない星の一矢となり、今夜も空に向かって飛んでいく。
「うん……うん。あのね、メレ……。ありがとね……ずっと……楽しかった……」
「そうか。そりゃ、良かったな。生きてて、楽しかったか。……イーリエ」
最終更新:2025年04月28日 00:05