「お・は・よ」
「ん……?」
上条はその声に開けた目を、左手でごしごしこすった。
「て……んげぇええ!?」
「るっさいな。お兄ちゃんてばもっと静かに目覚められないの?」
ちょっと顔が近い位で……などとぶつぶつ言ってるが、ちょっとどころではない。
ほとんど顔がくっつく位置だ。もしちょっと揺れでもしたら、…………、うん。
「あぁあもう。妹らしくしてみようと思ったのに、ほら、当麻。早く食べなくちゃ遅刻しちゃうよ」
インデックスが天花の後ろでご飯を持ったままうろうろしていた。
上条の視線に気づくと、なぜか睨んできた。
それからふいと視線を逸らす。どういう事だろうか。
「インデックスちゃんたら照れ屋さんねぇ。そんなんなるなら、『私だけ見て当麻』とでも言わないと」
「へっ!?? べっ、別にそんなんじゃないもん! とうまご飯!」
あーはいはいと溜息交じりに上条は立ち上がった。ついでに着替える為に二人を追い出す。
どうも天花といると調子が狂う。楽しいからいいかと息をついた。
ドアを開けると、インデックスが立っていた。
何故か、不安そうに見えた。緑色の瞳が、上条を真っ直ぐに見つめる。何かを言いたそうに言いにくそうに口を何度か開閉させるのを見て、上条の方から質問する。
「どうしたんだよ?」
「……てんげは、おかしいんだよ」
「へ? 何が」
おかしい、と言っても、上条の周りにはぶっ飛んだ知り合いが多すぎるせいか、普通に見える。
けれど、まだ子供とはいえ同性であるインデックスには違う風に映るのかもしれない。
「だって、一昨日も、昨日も。一睡もしてないみたいなのに、全然眠くなさそうなんだよ? ベット、てんげが寝た感触なかった。なのに、むしろ、昨日よりも元気かも」
放たれた言葉は、予想と全く違うものだった。
その意味を飲み込むのに数秒かかり、分かった後は、疑問符が頭を埋め尽くす。
「寝てない?」
頷くのを見て、さらに不可解な表情になる。寝ないですむ。
それが能力とでもいうなら別だが、彼女の能力は空中散歩の筈。寝ないで平気というのは異常だと思うのだが。
「ふーたーりーとーも。冷めるよ?」
「あああ、たべるーっ!」
とりあえずその疑問は置いておくことに決めた当麻は、天花が、その話を聞いていたことに気づかなかった。
そして、悲しそうな顔をしていた事も。
「ん……?」
上条はその声に開けた目を、左手でごしごしこすった。
「て……んげぇええ!?」
「るっさいな。お兄ちゃんてばもっと静かに目覚められないの?」
ちょっと顔が近い位で……などとぶつぶつ言ってるが、ちょっとどころではない。
ほとんど顔がくっつく位置だ。もしちょっと揺れでもしたら、…………、うん。
「あぁあもう。妹らしくしてみようと思ったのに、ほら、当麻。早く食べなくちゃ遅刻しちゃうよ」
インデックスが天花の後ろでご飯を持ったままうろうろしていた。
上条の視線に気づくと、なぜか睨んできた。
それからふいと視線を逸らす。どういう事だろうか。
「インデックスちゃんたら照れ屋さんねぇ。そんなんなるなら、『私だけ見て当麻』とでも言わないと」
「へっ!?? べっ、別にそんなんじゃないもん! とうまご飯!」
あーはいはいと溜息交じりに上条は立ち上がった。ついでに着替える為に二人を追い出す。
どうも天花といると調子が狂う。楽しいからいいかと息をついた。
ドアを開けると、インデックスが立っていた。
何故か、不安そうに見えた。緑色の瞳が、上条を真っ直ぐに見つめる。何かを言いたそうに言いにくそうに口を何度か開閉させるのを見て、上条の方から質問する。
「どうしたんだよ?」
「……てんげは、おかしいんだよ」
「へ? 何が」
おかしい、と言っても、上条の周りにはぶっ飛んだ知り合いが多すぎるせいか、普通に見える。
けれど、まだ子供とはいえ同性であるインデックスには違う風に映るのかもしれない。
「だって、一昨日も、昨日も。一睡もしてないみたいなのに、全然眠くなさそうなんだよ? ベット、てんげが寝た感触なかった。なのに、むしろ、昨日よりも元気かも」
放たれた言葉は、予想と全く違うものだった。
その意味を飲み込むのに数秒かかり、分かった後は、疑問符が頭を埋め尽くす。
「寝てない?」
頷くのを見て、さらに不可解な表情になる。寝ないですむ。
それが能力とでもいうなら別だが、彼女の能力は空中散歩の筈。寝ないで平気というのは異常だと思うのだが。
「ふーたーりーとーも。冷めるよ?」
「あああ、たべるーっ!」
とりあえずその疑問は置いておくことに決めた当麻は、天花が、その話を聞いていたことに気づかなかった。
そして、悲しそうな顔をしていた事も。
「秋沙ちゃああん!」
「いきなり。飛びつくのは。心臓に悪いかも」
「上条当麻、またこの子と一緒に来たわけ?」
学校へ着くなりクラスメイトに飛びついた義妹。
しかし、姫神はそれなりに楽しそうに見える。またひどいことになりそうなので吹寄はスルー。
「せーりちゃんもおはよう。ふーん、かみじょ……当麻のこと、好きじゃないのか」
ならそれは安心。と呟く天花に姫神も呟く。
「そろそろ。離れて」
「やだ」
にべもない。しかし離れる気がないというならこのままくっついて授業を受けるのだろうか。
さすがにそれは嫌だなと考えていると、天花が囁きかけた。
「けど、貴方は好きだよね?」
「……!?」
「ねぇ、当麻の事見ててあげてね。当たって砕けろなんて言わない。でも、見ていてあげて」
「天花さんは。どうして」
答えずに、天花は昨日と同じに綺麗に笑った。
「いきなり。飛びつくのは。心臓に悪いかも」
「上条当麻、またこの子と一緒に来たわけ?」
学校へ着くなりクラスメイトに飛びついた義妹。
しかし、姫神はそれなりに楽しそうに見える。またひどいことになりそうなので吹寄はスルー。
「せーりちゃんもおはよう。ふーん、かみじょ……当麻のこと、好きじゃないのか」
ならそれは安心。と呟く天花に姫神も呟く。
「そろそろ。離れて」
「やだ」
にべもない。しかし離れる気がないというならこのままくっついて授業を受けるのだろうか。
さすがにそれは嫌だなと考えていると、天花が囁きかけた。
「けど、貴方は好きだよね?」
「……!?」
「ねぇ、当麻の事見ててあげてね。当たって砕けろなんて言わない。でも、見ていてあげて」
「天花さんは。どうして」
答えずに、天花は昨日と同じに綺麗に笑った。
「当麻、先帰ってるね!」
「……しっかし天花ちゃんってお兄ちゃんの事好きやなぁ」
「これのどこがいいのかにゃー……?」
上条をドつきまわした二人は、当の本人そっちのけで話していた。
窓から走っている天花を見つめながら。
「これ言うな土御門」
「あれ? 門の向こうに居る女の子って……」
土御門が窓の向こうを眺めて呟く。青髪ピアスと当麻は同時に校門を見た。
「あーっ! カミやんとデートしてた子や―っ!」
「え、御坂?」
御坂と天花は何事かを話し、それから歩き始めた。
御坂の方はカチコチなのだが、天花は何も気負ってないようで、ふわふわと歩いている。
「どうして、二人が?」
義妹の不可解な行動は続いていた。
いつの間にか土御門が消えていることに気づかず。
「これのどこがいいのかにゃー……?」
上条をドつきまわした二人は、当の本人そっちのけで話していた。
窓から走っている天花を見つめながら。
「これ言うな土御門」
「あれ? 門の向こうに居る女の子って……」
土御門が窓の向こうを眺めて呟く。青髪ピアスと当麻は同時に校門を見た。
「あーっ! カミやんとデートしてた子や―っ!」
「え、御坂?」
御坂と天花は何事かを話し、それから歩き始めた。
御坂の方はカチコチなのだが、天花は何も気負ってないようで、ふわふわと歩いている。
「どうして、二人が?」
義妹の不可解な行動は続いていた。
いつの間にか土御門が消えていることに気づかず。
「美琴ちゃん。そんなかたまらなくったっていいじゃない。ああ、ほらあそこでお茶しましょ」
「アンタ、どうして私を呼び出したの?」
ぐいぐい腕を引っ張って行く少女に少し呆れを覚えつつ、美琴は聞いた。
それなりにおしゃれな茶店の前で、彼女は足を止めた。心底不思議そうに顔を横に傾ける。
くるり、と素早くその場でターンして振り向いた少女。その拍子に長く綺麗な髪が風にゆられる。
少女は口に指をあてて、にっこりと言った。
「アンタ、どうして私を呼び出したの?」
ぐいぐい腕を引っ張って行く少女に少し呆れを覚えつつ、美琴は聞いた。
それなりにおしゃれな茶店の前で、彼女は足を止めた。心底不思議そうに顔を横に傾ける。
くるり、と素早くその場でターンして振り向いた少女。その拍子に長く綺麗な髪が風にゆられる。
少女は口に指をあてて、にっこりと言った。
「私の為だよ」
ほら早く、と美琴を急かす。しょうがないかと妥協(年上に)して、彼女に連れられて店へはいった。
「お姉さん。私にアップルティーのあったかいの下さい。美琴ちゃんは?」
「……レモンティーで」
「あら、紅茶は好き? 私、大好きなの」
砂糖を入れてあのちょっと甘くて、ほんの少し苦い味と、フルーティーな香りがいいからね、と呟く。
それから、外を眺め始めた。ほんのちょっぴりだけ切なそうに。
「何の用?」
「ん、んー」
外に面白いモノなど無い筈なのに、外に集中してこちらを見ようとしない。
けれど、大声を出すのも淑女のマナーとしてどうかと思って静かに待つ。
……いや、もう十分ぐらいたったから、いいのか。
「あの……」
「聞きたいこと、あるのではないの?」
唐突に、そんな事を言われてびくぅっと動いてしまった。
ちょっと下に目をやる。それからそろお、と視線を戻すと、静かで、透明な眼差しを真っ直ぐに向けられていた。
「あるでしょ?」
「……どうして、私をよんだの」
「それは……あ、紅茶が来た。これを飲んで話そう?」
熱い紅茶を持ち上げて微笑する彼女は、いっそ何処かのお嬢様のようだった。
「アンタと、あのバカはどういうかんけ――」
「だめだよ。意地を張ったら失くしてしまう。ねぇ、名前を呼んでよ。ばかじゃなくて、当麻と」
カァアアア、と赤くなる音が聞こえる気がした。
何故赤くなるのかよく分からないけれどもとっても恥ずかしくて死にそうなぐらい顔がほてってしょうがないのだ。
「とっ! 当麻、とどういう関係?」
「義妹。そう、義妹なの。でも安心して。私には当麻を閉じ込める事は叶わないしね」
「……へ?」
閉じ込めるとはまるで鳥のようだ、と場違いな事を思う。
それにしても運ばれてきた紅茶が熱すぎてもてない。普通、もうちょっと冷めてるものだが、此処は学園都市だし――、
「なんで、もてるの?」
平然と紅茶を持ち上げている天花に質問をぶつけてみた。彼女は何の事だか分からなかったようで、ほえ?と呟いた。
「え、ああ、紅茶。うーん、熱い、かな? 私、温度を感じにくい体質なの」
「それと、一つ」
「なぁに?」
「貴方……何?」
いきなり現れて。いきなり当麻と、ベタベタして。
何故、受け入れるのか、何故不安に思わないのか。
そんな問いに、平然と天花は答える。
「天花、だよ」
「お姉さん。私にアップルティーのあったかいの下さい。美琴ちゃんは?」
「……レモンティーで」
「あら、紅茶は好き? 私、大好きなの」
砂糖を入れてあのちょっと甘くて、ほんの少し苦い味と、フルーティーな香りがいいからね、と呟く。
それから、外を眺め始めた。ほんのちょっぴりだけ切なそうに。
「何の用?」
「ん、んー」
外に面白いモノなど無い筈なのに、外に集中してこちらを見ようとしない。
けれど、大声を出すのも淑女のマナーとしてどうかと思って静かに待つ。
……いや、もう十分ぐらいたったから、いいのか。
「あの……」
「聞きたいこと、あるのではないの?」
唐突に、そんな事を言われてびくぅっと動いてしまった。
ちょっと下に目をやる。それからそろお、と視線を戻すと、静かで、透明な眼差しを真っ直ぐに向けられていた。
「あるでしょ?」
「……どうして、私をよんだの」
「それは……あ、紅茶が来た。これを飲んで話そう?」
熱い紅茶を持ち上げて微笑する彼女は、いっそ何処かのお嬢様のようだった。
「アンタと、あのバカはどういうかんけ――」
「だめだよ。意地を張ったら失くしてしまう。ねぇ、名前を呼んでよ。ばかじゃなくて、当麻と」
カァアアア、と赤くなる音が聞こえる気がした。
何故赤くなるのかよく分からないけれどもとっても恥ずかしくて死にそうなぐらい顔がほてってしょうがないのだ。
「とっ! 当麻、とどういう関係?」
「義妹。そう、義妹なの。でも安心して。私には当麻を閉じ込める事は叶わないしね」
「……へ?」
閉じ込めるとはまるで鳥のようだ、と場違いな事を思う。
それにしても運ばれてきた紅茶が熱すぎてもてない。普通、もうちょっと冷めてるものだが、此処は学園都市だし――、
「なんで、もてるの?」
平然と紅茶を持ち上げている天花に質問をぶつけてみた。彼女は何の事だか分からなかったようで、ほえ?と呟いた。
「え、ああ、紅茶。うーん、熱い、かな? 私、温度を感じにくい体質なの」
「それと、一つ」
「なぁに?」
「貴方……何?」
いきなり現れて。いきなり当麻と、ベタベタして。
何故、受け入れるのか、何故不安に思わないのか。
そんな問いに、平然と天花は答える。
「天花、だよ」
「土御門さん、私のこーどー気になる?」
「まぁな」
「優しい、ね」
美琴が去った茶店で向き合って紅茶をすすっていた。
普通、そこは飲むのだろうが、二人してすすっていたのだ、天花も土御門も。
「そうか?」
「私が、どうしてこんなになったのか、聞いたでしょう? こうしたのは私の意思よ。それでも、ちょっとだけ、良心がうずいてしまうようなキミは優しいよ」
例え、その手が汚れていたとしても、それに心を痛めるのならば善人。
――そう考えるのは間違っているだろうか。その答えは、誤りでしかないのだろうか。
それでも構わないと、天花は思うけれども。
「見届けてくれるの?」
「聞いた以上はな。もしも、お前が『失敗』したら話す」
「いいよ。でも、成功したら、最後までばれなかったら。黙っててね」
「約束はしておこう」
でもそれが守られるなんて甘っちょろい事考えるんじゃないぞと言った土御門に、天花は声をたてて笑う。
「ああ、やっぱり優しいなぁ、土御門さんてば」
「お前の保険だしな」
「まぁな」
「優しい、ね」
美琴が去った茶店で向き合って紅茶をすすっていた。
普通、そこは飲むのだろうが、二人してすすっていたのだ、天花も土御門も。
「そうか?」
「私が、どうしてこんなになったのか、聞いたでしょう? こうしたのは私の意思よ。それでも、ちょっとだけ、良心がうずいてしまうようなキミは優しいよ」
例え、その手が汚れていたとしても、それに心を痛めるのならば善人。
――そう考えるのは間違っているだろうか。その答えは、誤りでしかないのだろうか。
それでも構わないと、天花は思うけれども。
「見届けてくれるの?」
「聞いた以上はな。もしも、お前が『失敗』したら話す」
「いいよ。でも、成功したら、最後までばれなかったら。黙っててね」
「約束はしておこう」
でもそれが守られるなんて甘っちょろい事考えるんじゃないぞと言った土御門に、天花は声をたてて笑う。
「ああ、やっぱり優しいなぁ、土御門さんてば」
「お前の保険だしな」
(てんげは、おかしいんだよ)
別に、彼女を疑いたいわけではない。
でも、確かに天花は、インデックスの言うように、おかしい。行動も、言動も。
微妙におかしな選び方をされた言葉、寝ずに夜徘徊する、上条の知り合いには片っ端から声をかけてこそこそ話し込む事がある等々。
「おにーちゃん、ご飯」
「ああ、後で食うから」
「……」
一応、風呂の時以外は上条の私室と化している風呂場、のドアに、少女のシルエットが映ったまま動かない。
シルエットが立ち去ろうとしないので首をひねっていると、ストンと彼女は壁越しに座り込んだ。
「悩んでる?」
「え、まぁ」
「私の所為?」
やはり、この義妹は鋭い。そして狡い。
気付いてるなら、何も言わなくてもいいだろうに。
「別に」
嘘がつけなくなってしまうではないか。
おかしな言葉は、きっと彼女がなるべく嘘をつかないようにするため。
天花が全く嘘をついていない訳は無いけど。
「そっか」
上条もドアにもたれかかる。天花もそれは嘘だと分かった上で何も訊かなかった。
「ごめんね。私、我儘だから。迷惑かけちゃう」
「大丈夫。あんまり気にやまなくったって平気だぞ? それならあのシスターも何もせずに居座ってるんだし」
別にそれが嫌なわけではないが。
「そうかぁ。でも、」
「ん?」
「ごめんね。迷惑、かけちゃうから」
だから気にすんなって、と返すと、ありがとう、と返ってくる。
たいした事でもないだろうに、と上条は苦笑した。
別に、彼女を疑いたいわけではない。
でも、確かに天花は、インデックスの言うように、おかしい。行動も、言動も。
微妙におかしな選び方をされた言葉、寝ずに夜徘徊する、上条の知り合いには片っ端から声をかけてこそこそ話し込む事がある等々。
「おにーちゃん、ご飯」
「ああ、後で食うから」
「……」
一応、風呂の時以外は上条の私室と化している風呂場、のドアに、少女のシルエットが映ったまま動かない。
シルエットが立ち去ろうとしないので首をひねっていると、ストンと彼女は壁越しに座り込んだ。
「悩んでる?」
「え、まぁ」
「私の所為?」
やはり、この義妹は鋭い。そして狡い。
気付いてるなら、何も言わなくてもいいだろうに。
「別に」
嘘がつけなくなってしまうではないか。
おかしな言葉は、きっと彼女がなるべく嘘をつかないようにするため。
天花が全く嘘をついていない訳は無いけど。
「そっか」
上条もドアにもたれかかる。天花もそれは嘘だと分かった上で何も訊かなかった。
「ごめんね。私、我儘だから。迷惑かけちゃう」
「大丈夫。あんまり気にやまなくったって平気だぞ? それならあのシスターも何もせずに居座ってるんだし」
別にそれが嫌なわけではないが。
「そうかぁ。でも、」
「ん?」
「ごめんね。迷惑、かけちゃうから」
だから気にすんなって、と返すと、ありがとう、と返ってくる。
たいした事でもないだろうに、と上条は苦笑した。
「てんげ」
「なぁに?」
今インデックスと天花は、膝を突き合わせてお喋りタイム。
むしろ……。
「なぁに?」
今インデックスと天花は、膝を突き合わせてお喋りタイム。
むしろ……。
お説教タイム☆
「今日こそは寝てもらうんだよ!」
「んなこと言われてもなぁ……」
今日も今日とて夜の街を徘徊させてほしいのだが。
それに、寝っ転がったところで眠れはしないのだし、別にいいではないか。
と頬を引っ掻いてると、真面目に聞くっ! 、と怒鳴られた。インデックスちゃんのバーカ、と心の中のみで呟く天花。
「だって、ずっと寝てないもん。それじゃ、てんげが倒れちゃうよ!」
「あー、うん」
「体は大事にするんだよ! 全く、てんげは……」
真剣に体のことを心配してくれるインデックスに、天花は少し、苦笑してしまった。
実の父や母は、天花の事など何にも考えずに捨ててしまったというのに、血の繋がりも何もない、両親よりずっと幼い少女が、自分の事を考えてくれるという事実に。
「インデックスちゃん」
「あ、別にインデックスでも構わないよ」
「じゃあインデックス」
「なあに?」
「ありがと……」
そういって、小さな少女を抱きしめた。初めて、誰かと強く触れ合ったような気がする。
――天花には、昔から友達はいなかった。ずっと、一人ぼっちのような気がしていた。
でも、幸せだった。
「てんげ?」
「ねぇ、ごめんね。私は、貴女の為に何かをしてあげる事はきっとできない」
「別に、何もしなくていいんだよ。ただ、てんげは、此処にいてくれる?」
インデックスにとって、天花は友達と言うよりも、家族だった。優しい姉のような存在で。
それは家族を知らないインデックスにとって、大切な存在であるという事。
「うん……ごめんね、ありがと」
「んなこと言われてもなぁ……」
今日も今日とて夜の街を徘徊させてほしいのだが。
それに、寝っ転がったところで眠れはしないのだし、別にいいではないか。
と頬を引っ掻いてると、真面目に聞くっ! 、と怒鳴られた。インデックスちゃんのバーカ、と心の中のみで呟く天花。
「だって、ずっと寝てないもん。それじゃ、てんげが倒れちゃうよ!」
「あー、うん」
「体は大事にするんだよ! 全く、てんげは……」
真剣に体のことを心配してくれるインデックスに、天花は少し、苦笑してしまった。
実の父や母は、天花の事など何にも考えずに捨ててしまったというのに、血の繋がりも何もない、両親よりずっと幼い少女が、自分の事を考えてくれるという事実に。
「インデックスちゃん」
「あ、別にインデックスでも構わないよ」
「じゃあインデックス」
「なあに?」
「ありがと……」
そういって、小さな少女を抱きしめた。初めて、誰かと強く触れ合ったような気がする。
――天花には、昔から友達はいなかった。ずっと、一人ぼっちのような気がしていた。
でも、幸せだった。
「てんげ?」
「ねぇ、ごめんね。私は、貴女の為に何かをしてあげる事はきっとできない」
「別に、何もしなくていいんだよ。ただ、てんげは、此処にいてくれる?」
インデックスにとって、天花は友達と言うよりも、家族だった。優しい姉のような存在で。
それは家族を知らないインデックスにとって、大切な存在であるという事。
「うん……ごめんね、ありがと」
やはり、今日も結局夜の街に出る事にした。
「土御門さん。別に気にしなくていーよって、まさかこれからお仕事?」
「……」
「ちんもくはこーていってね。じゃぁね、がんばって」
ふらふらと歩いていると、昼間話した茶髪の少女と、クラスメイトの黒髪の長い少女を発見。
少々迷ったが、茶髪の少女が二人いたのでそっちを選ぶ。
「えーと美琴ちゃん?」
「あっ……えっと、アンタ」
「それと、多分、一〇〇三二号ちゃん?」
「はい、とミサカは肯定します。こんにちは、し――」
「何? アンタ、こいつと――」
「天花」
くっと押し黙るともう一度御坂妹に美琴は聞き直した。
「天花と、知り合いなわけ?」
「ええ、とミサカは肯定を繰り返します」
「あ、ミサカちゃん、私は天花でいいから」
「そうですか、とミサカはゆっくりうなずきました」
おいていかれている美琴は眉根に皺をよせる。
「あんた達、どういう知り合い」
「「同じ病院で過ごしていたもので」、とミサカはきわめて簡潔に答えました」
御坂妹と天花のセリフが被った。
二人は顔を見合わせる。天花が吹き出し、御坂妹は頷いた。
そのきわめて打ち解けた様子に、美琴もくすりと笑う。
そして、彼女達の言葉の意味にふと引っかかった。
「……病院?」
「あーっあっとぉ……ちょ、ミサカ、ちゃんちょっといーい」
くぃっと御坂妹を引っ張って、小声で話し始めた。
「あのぉ、詳しい事は伏せておきたいんだけど」
「何故ですか? とミサカは疑問を口に出してみます」
「まぁ、いろいろ。うん。そーだ、ねぇ」
にやあ、とすごく楽しそうに天花は笑うと。
御坂妹にとって、爆弾発言をかます。
「――当麻の事、好き?」
「……なぜそんななことをきくのですか、とミサカは動揺を押し隠して質問します」
「ちょっと、何話してんの」
「へぇ。頑張って」
そう呟くと、天花は夜の町に去って行った。
去り際に何かを呟いたが、それは御坂妹にも美琴にも良く分からなかった。
「何だったの、あれ」
「さあ、とミサカはいまだ収まらぬ動悸を必死に鎮めながら答えました」
「土御門さん。別に気にしなくていーよって、まさかこれからお仕事?」
「……」
「ちんもくはこーていってね。じゃぁね、がんばって」
ふらふらと歩いていると、昼間話した茶髪の少女と、クラスメイトの黒髪の長い少女を発見。
少々迷ったが、茶髪の少女が二人いたのでそっちを選ぶ。
「えーと美琴ちゃん?」
「あっ……えっと、アンタ」
「それと、多分、一〇〇三二号ちゃん?」
「はい、とミサカは肯定します。こんにちは、し――」
「何? アンタ、こいつと――」
「天花」
くっと押し黙るともう一度御坂妹に美琴は聞き直した。
「天花と、知り合いなわけ?」
「ええ、とミサカは肯定を繰り返します」
「あ、ミサカちゃん、私は天花でいいから」
「そうですか、とミサカはゆっくりうなずきました」
おいていかれている美琴は眉根に皺をよせる。
「あんた達、どういう知り合い」
「「同じ病院で過ごしていたもので」、とミサカはきわめて簡潔に答えました」
御坂妹と天花のセリフが被った。
二人は顔を見合わせる。天花が吹き出し、御坂妹は頷いた。
そのきわめて打ち解けた様子に、美琴もくすりと笑う。
そして、彼女達の言葉の意味にふと引っかかった。
「……病院?」
「あーっあっとぉ……ちょ、ミサカ、ちゃんちょっといーい」
くぃっと御坂妹を引っ張って、小声で話し始めた。
「あのぉ、詳しい事は伏せておきたいんだけど」
「何故ですか? とミサカは疑問を口に出してみます」
「まぁ、いろいろ。うん。そーだ、ねぇ」
にやあ、とすごく楽しそうに天花は笑うと。
御坂妹にとって、爆弾発言をかます。
「――当麻の事、好き?」
「……なぜそんななことをきくのですか、とミサカは動揺を押し隠して質問します」
「ちょっと、何話してんの」
「へぇ。頑張って」
そう呟くと、天花は夜の町に去って行った。
去り際に何かを呟いたが、それは御坂妹にも美琴にも良く分からなかった。
「何だったの、あれ」
「さあ、とミサカはいまだ収まらぬ動悸を必死に鎮めながら答えました」
――誰が彼を好きでも、私は彼が誰を好きかを想うでしょう――