2
「……おはよう」
翌日の朝、天井が教室のドアを開けると、
「あいたーん!」
青い髪の男子が、文字通り喜色満面の笑顔の糸目で、『飛んで』来た。
「うぇっ」
急いでドアを閉めると、その問題児はドアに激突し「ぐえっ、つれないやん」と残し、ずるずるぺたんと教室の床に倒れた。。
「……なんなんだ、朝から」
再び、天井が恐る恐るドアを開けると、長い黒髪の女子が青い髪の少年を引きずって教室の隅っこに放り投げているところに遭遇した。
「吹寄さん……過激だ」
「朝からとんだ災難だったわね、天井さん」
放り投げ終わると、長い黒髪の女子=吹寄制理は天井に軽く挨拶し、自分の席に戻っていってしまった。
「いや、その、まぁいつもの事だし」
天井もそう返して、自分の席へと向かう。その途中で、
「天井さん。今日うちのクラスに転校生が来る事知ってる?」
話しかけてきたのは、黒髪ロングの和風美少女=姫神秋沙。言ってる彼女自身が転校生だったりもする。
「いや、知らないけど」
転校生である。学園ドラマには付き物のベタな展開。
「女子なんだって。それも飛び切り可愛いんだって」
それも女子である。往々にして転校生というやつは、美少女か美少年と相場が決まっている。今回もそうだ。ベタである。実にベタだ。
かくいう天井自身もほんの一週間程前に転校してきた転校生だったりもする。つくづく転校生が多いクラスである。
――それにしても、一つのクラスに立て続けに転校生が来るものだろうか?
「へぇ」
気の無い返事を返しながら、教室を見渡す。
窓際。昼はポカポカ陽気、窓の外を見れば授業中の気分転換が可能な競争率高めの列。その最後尾に誰も座っていない机と椅子が増えている。昨日は無かったはずだ。
おそらく転校生用なのだろう。ちょいと手を伸ばせば個人用のロッカーにも手が届く。実に良い席である。羨ましい。
――美少女で……窓際で……転校生……。なんだこれ……。
ちなみに天井の席は、中央最前列。教壇のまん前である。
背の低い天井にとっては、仕方が無い事だが、正直損をした気分だ。
――私も窓際の席とか座りたい……。なんだってこんなに背が低いのだろう……。
鞄を置いて、席に着こうとした時、いつの間にか復活した青い髪の男子が天井の肩を掴んだ。
「ひぃっ!」
跳ね上がる心臓。裏返った声。=動揺、狼狽、そして驚愕。
振り返った天井の至近距離に、目が血走った青髪ピアスの少年が迫る。
「なあ……あいたん」
「……な、なに」
不穏な空気を察して、勝気な瞳を吊り上げた吹寄制理が席を立つ。拳をどこぞの拳王様の様に鳴らす。鳴らす。鳴らす。ツカツカと歩く。青髪の少年の肩を掴み、振り向かせる。
「青髪! 貴様は一体何をしているの」
翌日の朝、天井が教室のドアを開けると、
「あいたーん!」
青い髪の男子が、文字通り喜色満面の笑顔の糸目で、『飛んで』来た。
「うぇっ」
急いでドアを閉めると、その問題児はドアに激突し「ぐえっ、つれないやん」と残し、ずるずるぺたんと教室の床に倒れた。。
「……なんなんだ、朝から」
再び、天井が恐る恐るドアを開けると、長い黒髪の女子が青い髪の少年を引きずって教室の隅っこに放り投げているところに遭遇した。
「吹寄さん……過激だ」
「朝からとんだ災難だったわね、天井さん」
放り投げ終わると、長い黒髪の女子=吹寄制理は天井に軽く挨拶し、自分の席に戻っていってしまった。
「いや、その、まぁいつもの事だし」
天井もそう返して、自分の席へと向かう。その途中で、
「天井さん。今日うちのクラスに転校生が来る事知ってる?」
話しかけてきたのは、黒髪ロングの和風美少女=姫神秋沙。言ってる彼女自身が転校生だったりもする。
「いや、知らないけど」
転校生である。学園ドラマには付き物のベタな展開。
「女子なんだって。それも飛び切り可愛いんだって」
それも女子である。往々にして転校生というやつは、美少女か美少年と相場が決まっている。今回もそうだ。ベタである。実にベタだ。
かくいう天井自身もほんの一週間程前に転校してきた転校生だったりもする。つくづく転校生が多いクラスである。
――それにしても、一つのクラスに立て続けに転校生が来るものだろうか?
「へぇ」
気の無い返事を返しながら、教室を見渡す。
窓際。昼はポカポカ陽気、窓の外を見れば授業中の気分転換が可能な競争率高めの列。その最後尾に誰も座っていない机と椅子が増えている。昨日は無かったはずだ。
おそらく転校生用なのだろう。ちょいと手を伸ばせば個人用のロッカーにも手が届く。実に良い席である。羨ましい。
――美少女で……窓際で……転校生……。なんだこれ……。
ちなみに天井の席は、中央最前列。教壇のまん前である。
背の低い天井にとっては、仕方が無い事だが、正直損をした気分だ。
――私も窓際の席とか座りたい……。なんだってこんなに背が低いのだろう……。
鞄を置いて、席に着こうとした時、いつの間にか復活した青い髪の男子が天井の肩を掴んだ。
「ひぃっ!」
跳ね上がる心臓。裏返った声。=動揺、狼狽、そして驚愕。
振り返った天井の至近距離に、目が血走った青髪ピアスの少年が迫る。
「なあ……あいたん」
「……な、なに」
不穏な空気を察して、勝気な瞳を吊り上げた吹寄制理が席を立つ。拳をどこぞの拳王様の様に鳴らす。鳴らす。鳴らす。ツカツカと歩く。青髪の少年の肩を掴み、振り向かせる。
「青髪! 貴様は一体何をしているの」
「誤解やで、吹寄」
「五回でも六回でも、好きなだけ喰らわしてあげるわよ」
鳴《ぽき》。鳴《ぽき》。鳴《ぽき》。
「ちゃうねん、そうじゃなくてやね。席の交換をしてもらいたいだけなんや」
「誰と」
「亜衣たんと僕の席や、トレード材料としては悪くないはずや」
「はぁ?」
――なんでまた……。
天井の席は、一番人気の無い席のはずだ。理由は単純。サボれないから。学生なんて、みんなそんなものだ。それなのに、何で?
「私と席を交換したいっていうのか?」
「イエス」
――即答……。
話が上手すぎる。何か裏があるのだろうか。
「どうしてもか?」
「ぜひとも、お願いしたいから、こうして頭下げとるんや」
実際、お願いしますのポーズだった。
「理由は? 納得のいく理由でもあれば、替わってやらなくも無いけど」
「天井さん、甘やかす事無いわよ。こいつらすぐ調子に乗るんだから」
「僕はいたって真面目や! 理由だってあるで!」
「……一応聞こう」
天井の言葉に青髪の少年は、深呼吸して息を整えた後、こう言った。
「五回でも六回でも、好きなだけ喰らわしてあげるわよ」
鳴《ぽき》。鳴《ぽき》。鳴《ぽき》。
「ちゃうねん、そうじゃなくてやね。席の交換をしてもらいたいだけなんや」
「誰と」
「亜衣たんと僕の席や、トレード材料としては悪くないはずや」
「はぁ?」
――なんでまた……。
天井の席は、一番人気の無い席のはずだ。理由は単純。サボれないから。学生なんて、みんなそんなものだ。それなのに、何で?
「私と席を交換したいっていうのか?」
「イエス」
――即答……。
話が上手すぎる。何か裏があるのだろうか。
「どうしてもか?」
「ぜひとも、お願いしたいから、こうして頭下げとるんや」
実際、お願いしますのポーズだった。
「理由は? 納得のいく理由でもあれば、替わってやらなくも無いけど」
「天井さん、甘やかす事無いわよ。こいつらすぐ調子に乗るんだから」
「僕はいたって真面目や! 理由だってあるで!」
「……一応聞こう」
天井の言葉に青髪の少年は、深呼吸して息を整えた後、こう言った。
「転校生を間近で見たい!」
はっきりと言った。言い切った。むしろ清々しい程の笑顔はうざくて仕方が無い。
――もっとマシな理由は無いのか……。
「それだけか? というか転校生を見るのに、なんでこの席なんだ? 転校生の席はあっちだろう?」
天井の人差し指が『あっち』を指差す。青髪は首を静かに横に振る。
「ちゃうねん、亜衣たん席でないといけない理由がちゃんとあんねんねや」
「……」
無言の天井と吹寄。呆れた表情というのは、恐らく今の天井と吹寄の表情の事を言うに違いない。
「二人とも、刷り込み《インプリティング》は知っとる? 学園都市の人間なら当然知っとるわな」
頷く。
刷り込み。ローレンツという学者が提唱した鳥類などに見られる性質の一つで、生まれて初めて見たものを自分の親だと認識するというものだ。
例としてはアヒルやヒヨコなどが有名か。
『みにくいアヒルの子』という、その性質のせいで、自分をアヒルの子だと思い込んだ白鳥の雛の物語まであったりするのだから、学園都市の人間かどうかは関係無い。
「ヒヨコが転校生とどうつながるのよ」
「所詮、ヒヨコだしな……」
「あかんなぁ、君ら。ここまでヒントを出し取るんにわからへんのか? ほんまに君らは」
吹寄が拳を鳴《ぽき》。鳴《ぽき》。鳴《ぽき》。ちなみにあまり拳を鳴らすと指が太くなるそうだが、吹寄の指はほっそりとしていて、その傾向が見られなかった。
――むぅ、この娘も結構望まれたスタイルしてるよなぁ……。不公平だ。
「ええか、転校生って所に注目や」
「私も転校生だがな」「私も。転校生」
話に加わる姫神。
「亜衣たんは、すぐ馴染んだやんか」
そして姫神はスルー。
「心は不安で一杯だ」
「さよか、なら僕が」
「結構だ、遠慮する」
――もっとマシな理由は無いのか……。
「それだけか? というか転校生を見るのに、なんでこの席なんだ? 転校生の席はあっちだろう?」
天井の人差し指が『あっち』を指差す。青髪は首を静かに横に振る。
「ちゃうねん、亜衣たん席でないといけない理由がちゃんとあんねんねや」
「……」
無言の天井と吹寄。呆れた表情というのは、恐らく今の天井と吹寄の表情の事を言うに違いない。
「二人とも、刷り込み《インプリティング》は知っとる? 学園都市の人間なら当然知っとるわな」
頷く。
刷り込み。ローレンツという学者が提唱した鳥類などに見られる性質の一つで、生まれて初めて見たものを自分の親だと認識するというものだ。
例としてはアヒルやヒヨコなどが有名か。
『みにくいアヒルの子』という、その性質のせいで、自分をアヒルの子だと思い込んだ白鳥の雛の物語まであったりするのだから、学園都市の人間かどうかは関係無い。
「ヒヨコが転校生とどうつながるのよ」
「所詮、ヒヨコだしな……」
「あかんなぁ、君ら。ここまでヒントを出し取るんにわからへんのか? ほんまに君らは」
吹寄が拳を鳴《ぽき》。鳴《ぽき》。鳴《ぽき》。ちなみにあまり拳を鳴らすと指が太くなるそうだが、吹寄の指はほっそりとしていて、その傾向が見られなかった。
――むぅ、この娘も結構望まれたスタイルしてるよなぁ……。不公平だ。
「ええか、転校生って所に注目や」
「私も転校生だがな」「私も。転校生」
話に加わる姫神。
「亜衣たんは、すぐ馴染んだやんか」
そして姫神はスルー。
「心は不安で一杯だ」
「さよか、なら僕が」
「結構だ、遠慮する」
「はやく、続きを言いなさいよ! チャイムが鳴るまでもう時間ないわよ」
なかなか本題に入ってくれないので、吹寄は機嫌が悪くなってしまっている。もっとも彼女が機嫌の良いところなど、見たことが無いが。
「焦らない、焦らない。つまりやね、こうや。美少女の転校生ちゃんは、我らが小萌先生に連れられて今頃職員室を出たはずや。
『先生、私友達が出来るかどうか……』『大丈夫ですよー、先生のクラスはみんな良い子ちゃんばかりなのですよー。友達だって百人ぐらい、ばぁーんと出来るはずです』
といっても僕らのクラスは百人おらへんけどな。
不安で転校生ちゃんは目を伏せる。そしてそんなこんなで、この教室のドアの前にたどり着き、小萌先生がドアを開ける。
『今日は転校生を紹介します。入ってきなさい』転校生も俯いたまま、教室に入る。
彼女の心の中はこうや。『ああ、人と目を合わせるのが恐い、でもでも』きっとシャイな子なんやね。
小萌先生に『自己紹介してください』と言われて、顔を上げなければ挨拶も出来ない事に気付く。教壇の前に立ち、そっと目を上げる。僕と目が合う――彼女は僕に惚れる」
しばしの間。冷たい視線だけが彼を見つめる。いや射抜く。少なくても教室の半分は道端のドブネズミでも見る様な冷ややかな視線を投げている。
「馬鹿だろう、お前」「……貴様、馬鹿か」「馬鹿。本物」
突っ込む天井&吹寄、そして姫神。呆れるような視線を少年へと送る。
「馬鹿か……」「馬鹿」「馬鹿がここにいる」「青ピ、馬鹿だ」「馬鹿だにゃー」「馬鹿すぎて」「ば、ばかだよ、あはははははは、駄目、お腹が、お腹が!」「馬鹿め」
クラス中の視線を集め、同時に嘲笑され、青髪の少年は悠然と宣言した。
「ええか、亜衣たん、吹寄、あとその他大勢」
「……なんだ」「なによ」
「男には、馬鹿にならないといけない時もあるんや! だってそうやろ、このクラスの女子は亜衣たんと吹寄以外はみぃぃんな、カミやんにフラグ建てられとんやで!
先手必勝で何が悪い!」
力説された。
「正真正銘の馬鹿か。まぁいい、好きにしてくれ……机のサイズが合わないから、せめて自分で机を持ってきてくれるなら替わろう」
「やった! 話が分かる美少女やね、亜衣たんは」
飛び跳ね喜ぶ青髪に、姫神が冷静に、
「もしかして気付いて無い? その席からでは授業中。一番後ろの転校生は見えない」
「大丈夫や、小萌先生を間近で見るっちゅうおまけもついとる」
「あ。なるほど」
嬉々揚々とした青髪ピアスの少年が天井の机と自分の席の位置を入れ替え、三人それぞれが席に着いた所で丁度、鐘の音が鳴り響いて担任教師、月詠小萌が教室に入ってきた。
なかなか本題に入ってくれないので、吹寄は機嫌が悪くなってしまっている。もっとも彼女が機嫌の良いところなど、見たことが無いが。
「焦らない、焦らない。つまりやね、こうや。美少女の転校生ちゃんは、我らが小萌先生に連れられて今頃職員室を出たはずや。
『先生、私友達が出来るかどうか……』『大丈夫ですよー、先生のクラスはみんな良い子ちゃんばかりなのですよー。友達だって百人ぐらい、ばぁーんと出来るはずです』
といっても僕らのクラスは百人おらへんけどな。
不安で転校生ちゃんは目を伏せる。そしてそんなこんなで、この教室のドアの前にたどり着き、小萌先生がドアを開ける。
『今日は転校生を紹介します。入ってきなさい』転校生も俯いたまま、教室に入る。
彼女の心の中はこうや。『ああ、人と目を合わせるのが恐い、でもでも』きっとシャイな子なんやね。
小萌先生に『自己紹介してください』と言われて、顔を上げなければ挨拶も出来ない事に気付く。教壇の前に立ち、そっと目を上げる。僕と目が合う――彼女は僕に惚れる」
しばしの間。冷たい視線だけが彼を見つめる。いや射抜く。少なくても教室の半分は道端のドブネズミでも見る様な冷ややかな視線を投げている。
「馬鹿だろう、お前」「……貴様、馬鹿か」「馬鹿。本物」
突っ込む天井&吹寄、そして姫神。呆れるような視線を少年へと送る。
「馬鹿か……」「馬鹿」「馬鹿がここにいる」「青ピ、馬鹿だ」「馬鹿だにゃー」「馬鹿すぎて」「ば、ばかだよ、あはははははは、駄目、お腹が、お腹が!」「馬鹿め」
クラス中の視線を集め、同時に嘲笑され、青髪の少年は悠然と宣言した。
「ええか、亜衣たん、吹寄、あとその他大勢」
「……なんだ」「なによ」
「男には、馬鹿にならないといけない時もあるんや! だってそうやろ、このクラスの女子は亜衣たんと吹寄以外はみぃぃんな、カミやんにフラグ建てられとんやで!
先手必勝で何が悪い!」
力説された。
「正真正銘の馬鹿か。まぁいい、好きにしてくれ……机のサイズが合わないから、せめて自分で机を持ってきてくれるなら替わろう」
「やった! 話が分かる美少女やね、亜衣たんは」
飛び跳ね喜ぶ青髪に、姫神が冷静に、
「もしかして気付いて無い? その席からでは授業中。一番後ろの転校生は見えない」
「大丈夫や、小萌先生を間近で見るっちゅうおまけもついとる」
「あ。なるほど」
嬉々揚々とした青髪ピアスの少年が天井の机と自分の席の位置を入れ替え、三人それぞれが席に着いた所で丁度、鐘の音が鳴り響いて担任教師、月詠小萌が教室に入ってきた。
「はいはーい。皆さん、席についてくださいねー。HRを始めちゃいますよー」
ピンク色の子供服。身長、天井よりアホ毛分だけ高い感じ。童顔というよりロリ顔。抱えるようにして持った出席簿=一年七組担任、月詠小萌その人である。
この容姿で○○歳だというのだから、彼女のIDを偽造だと疑う噂が流れても仕方が無い。
なんでも最近は、遠距離の彼氏がどうだとか、そんな噂まである。こちらは真偽の程は定かではないが。
壇上まで歩いた彼女は、珍しく教室の扉を閉めなかった。
教室をぐるりと見渡して、にっこりと微笑むと、
「今日は転校生ちゃんを紹介しちゃいますよー」
途端に歓声が沸き、一気に賑やかに。
「入ってきなさい」
扉の外に控えていた転校生が、姿を現した。
更に湧く教室。奇声を上げる青髪。
その転校生の姿を見たとき、天井のどこかがパリンと割れた音を立てた。
がしかし、小萌先生は、そんな天井を気にせず天井にとっての禁句を無情に告げた。
「転校生ちゃんです。みんな仲良くしてあげてくださいね」
見間違えようが無い、特徴的な容姿=桃色のショートツインテール。どこ見てるのかわからない焦点不明のハイライト率低めの瞳。
雪よりも白い肌。起伏の少ないスレンダーなボディ。手首に巻かれた包帯。天使の翼を模したヘアピン。紺色のセーラー服(悔しいことに似合っている)
人生何があるかわからない。そんな感想もいい加減飽きてきた。
「自己紹介してくださいねー」
「はじめましてエブリワン共。ひのは『神作《かんづくり》ひの』です。よろしくしてあげますから、どうぞよろしくです」
こうして、天井亜衣の楽しい学園生活は風雲急を告げるのだった。
ピンク色の子供服。身長、天井よりアホ毛分だけ高い感じ。童顔というよりロリ顔。抱えるようにして持った出席簿=一年七組担任、月詠小萌その人である。
この容姿で○○歳だというのだから、彼女のIDを偽造だと疑う噂が流れても仕方が無い。
なんでも最近は、遠距離の彼氏がどうだとか、そんな噂まである。こちらは真偽の程は定かではないが。
壇上まで歩いた彼女は、珍しく教室の扉を閉めなかった。
教室をぐるりと見渡して、にっこりと微笑むと、
「今日は転校生ちゃんを紹介しちゃいますよー」
途端に歓声が沸き、一気に賑やかに。
「入ってきなさい」
扉の外に控えていた転校生が、姿を現した。
更に湧く教室。奇声を上げる青髪。
その転校生の姿を見たとき、天井のどこかがパリンと割れた音を立てた。
がしかし、小萌先生は、そんな天井を気にせず天井にとっての禁句を無情に告げた。
「転校生ちゃんです。みんな仲良くしてあげてくださいね」
見間違えようが無い、特徴的な容姿=桃色のショートツインテール。どこ見てるのかわからない焦点不明のハイライト率低めの瞳。
雪よりも白い肌。起伏の少ないスレンダーなボディ。手首に巻かれた包帯。天使の翼を模したヘアピン。紺色のセーラー服(悔しいことに似合っている)
人生何があるかわからない。そんな感想もいい加減飽きてきた。
「自己紹介してくださいねー」
「はじめましてエブリワン共。ひのは『神作《かんづくり》ひの』です。よろしくしてあげますから、どうぞよろしくです」
こうして、天井亜衣の楽しい学園生活は風雲急を告げるのだった。