とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 5-748

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匿名ユーザー

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「く……は、あぁぁぁぁぁっ……うっ、く……」
 暗い、路地に天花は倒れこんだ。
 発作……いや、正しく言うなら、拒絶反応。
 体が燃やされているかのように熱くなり、心臓がドクンと言う音がうるさく聴こえる。
 こんな時に、と思わずにはいられない。天花は秘密を知ってしまった当麻の傍にいる事は出来ない、だから一刻も早く何処かへ、消えなくてならないのに。
「天花っ!? 何処だ!?」
 道の隙間から、インデックスを背負った上条が天花を探しているのが見える。
 無理矢理あげかけた悲鳴を押し殺す。その所為で、涙が頬をつたった。
 最後の秘密を知られる前に。上条へ迷惑をかけてしまう前に。――誰かを、傷つけてしまわないように。
 逃げなくてはいけない。
「土御門さん。失敗、したけど、言わないでね?」
 届くはずもないけれど、何も言わずに消えたなら、失敗だと分かっていても口をつぐんでくれるだろう。
 重たいものを背負わせてしまったかもしれないけど、許してほしい。
「ははは……誰を、傷つけても踏みつけても、当麻の傍にいようと思ったはずだった、のにね……」
 そう呟いて、壁に手をついて起き上がる。ふと、左手が真っ赤になっているのに気が付いた。さっき、インデックスを回復させた時についた血。
 壁にその血をこすりつけてふき取る。
「さぁ……っ!? くは……っ!?」
 いきなり、席が出て、口から血があふれ出た。たら、と頬から一筋流れおちる。
 これは、発作とは関係ない。
「あぁ……魔術、使いすぎちゃった、な。さすがの光速再生も効かないかぁ」
 軽く言うと、歩き出す。



「天花……何処行ったんだ?」
 背後で、インデックスが気が付いたようで、首にかけられてた手に力がこもる。
「とう、ま……?」
「あ、ああ大丈夫かインデックス。怪我は?」
 苦しそうではなかったが、一応確認を取る。
 大丈夫、とインデックスが言うのを聞いてほっと息をついた。
「それより、てんげは?」
「今、探してる」
 一人で何処かへ消えた天花。魔術結社と関わりを持ち、魔道書を所持している能力者。
 あれだけの量の魔術を使って、無事でいられるはずがない。
 どくどくとなる心臓の脈拍がいつもより早い。インデックスの手が、上条の服を強く掴む。
「てんげが私を回復させてくれた時にね、言ってたんだよ。『ごめんなさい、これ以上の迷惑はかけられないね』って。迷惑なんて、いくらだってかけてもいいのに……!」
 その時、インデックスは何も言えなかった。何も言えず、引き留める事も出来ず、天花が歩いて行くのを見ていただけだった。
 笑っていたけど、もしかしたら泣いてたかもしれない。
「……そうだな」
「私、てんげにお礼も言ってない。なのに、」
「大丈夫だよ。後で会える」
 けれど――何故だろうか。
 天花は、目を離したら淡雪のように溶けて消えていってしまいそうな気がしてしまうのは。



 辺りばかり見回していて、前を見るのを忘れていた。
 誰かにぶつかる。
「わっ! ……アンタ、どうしたの?」
「みこ……と、ちゃん」
 常盤台のレベル5、上条に向かって十億ボルトの電撃を遠慮なくぶっ放す、中学生の少女。
 一番最初、知っていた事はそれくらい。上条がどう思ってるかが知りたかった。けど、未だに分からない。
「え? ちょっと、その血、本当にどうしたのよ!?」
「……な、んでもない」
 平和な日常を生きているような彼女を見て、泣きだしてしまいそうになる。
 それは許されないし、何より此処から離れなくてはならないのだ、関わってる暇なんて……。
「何でもない訳ないでしょう!」
 ああ、これでは立場が違うと天花はぼんやり思う。
 いつも、お姉さんであろうとしたのに。美琴がお姉さんみたいじゃないか。
 くいっと手を引っ張られても、顔の血を拭きとられても、天花は動かなかった。
 天花にとって、一番羨ましかったのはインデックスで、その次がこの茶髪の少女。
 ――上条は天花だけのヒーローではない。
 奪ってみたかった。誰の手からもかっさらって、天花だけのヒーローに、変えてみたかった。
「美琴、ちゃん」
「なによ?」
「――今、幸せですか?」
 美琴が戸惑いながらも頷くのを見て、天花は顔を歪めた。
 どうしてそれを聞いたのかは分からない。ただ、無性に悲しくて悔しくてしょうがなかった。
 今度こそ、本格的に泣き始めた。もう涙なんて止められない。
 天花は美琴に縋りつくように抱きついた。
 声をあげて泣きだした天花を、どう扱っていいか分からない美琴は、ただ背中をさすってやる。
 しばらく、そうしていて、上条とインデックスが天花と美琴を発見する。
「あ、ちょっとアンタ、天花に何したのよ、泣いてんじゃない」
「え、う、いや、えと」
「……てんげ?」
 天花は必死に涙を拭くと、何かを言おうとした。
 その瞬間、体が燃え上がるように熱くなり、視界が暗転した。


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